『あぶみ』さんという名前の目の前の綺麗な女性は、上下青の制服姿で、どことなくトレセン学園の『たづな』さんと似た雰囲気だった。
彼女は私にこの良馬繁殖センターの施設の説明を事細かにしてくれた。
この施設は、より効率よく、より多くの優秀なウマ娘を誕生させることを目的として、旧美浦トレーニングセンター跡地を中心に整備、建設された総合繁殖施設で、なんと年間10000件以上の種付けを一手に引き受けているのだそうです。
10000件というのがそもそも凄い数字ですけど、この施設は出産まで面倒を見てくれるということで、妊娠した繁殖ウマ娘は出産前にこうしてこの施設を再度訪れて生活をするのだそうです。
先ほどから私の前を行き来している多くのウマ娘は、妊娠した繁殖ウマ娘ということですね。
中には種付け後帰郷せずに、この施設で生活しながら出産を迎える人もいるそうで、そのような大勢が生活するこの施設は、娯楽施設やアメニティーも充実しているようです。
ジムやヨガ教室、映画館や温泉、各種スポーツ施設と当然競走用トラックも完備されていて、それらをここの人たちは自由に利用できるということ。
当然ですが、お腹の大きくなったウマ娘さんがハードなトレーニングや競争を出来るわけではないのですが、一線を退いたとはいえ、G1覇者が大勢集まっている場所ですから、模擬レースなどもかなり白熱するようです。
「つい先日、マルゼンスキーさんと、オグリキャップさんと、シンボリルドルフさんが2400mで模擬レースをしておられたんですけど、間近で見て本当に感動しました。すっごくドキドキで!」
とはあぶみさんの言葉。
すごく感動したということが、興奮具合から凄く伝わってきました。
私だって、この三人と走れたのは、あのウインタードリームカップでの一度だけ。
また競争したくてウズウズしているのを自分で感じた。
あぶみさんではないけど、私だってとっても見たい。
いえ、走りたい。戦いたい。
今度こそ決着をつけたいですもの。
そんな思いが沸々と沸くのは、私がまた未練を持っているといことなのかもですね。
そう思いながらあぶみさんの話の続きを聞きました。
「ええと、では、次に種牡ウマ娘についてご説明しますね」
あぶみさんは、私が何も知らないということを察して、事細かに説明してくれた。
種牡ウマ娘は常に種付けを実施するためにこの繁殖施設の内か、もしくは近隣に住まうことが一般的ということ。
私の知っているウマ娘さんで言えば、オグリさんはこの施設の中に部屋を借りて、ここで衣食住の全てを完結させていらっしゃるみたい。
マルゼンスキーさんとシンボリルドルフ会長さんは施設そばに住まいを用意してそこからこの施設へと通っているみたい。
その住まいも、種牡ウマ娘さんの為に施設が用意したものなので、実質的にはここの宿泊施設と同じような扱いの様だけど、自分の家があるということで精神的にリラックスできる効果があるということらしいです。
つまり、私が先ほど寄ったあの家もそういう意味合いで、あれは本当に私だけの家ということ。
はわわ……
でも、これは当然のことの様で、一度きりの種付けがほとんどの繁殖ウマ娘とは違い、種牡ウマ娘は一年間に何度も種付けを行う関係上当然収入も多くなりますから、かなり豪華な家を用意することは自然なのだそうです。
そしてその種付けの回数は言えば、人気種牡ウマ娘だと、なんと一年間に数百回以上というから驚きです。
特に春先は子供が作りやすいとのことで、丁度今時分……ここから2から3か月に種付けは集中するようです。
繁殖ウマ娘さんたちが一年に一回ということですから、この数はとんでもないですけど、そもそも種付けってどういうものなのか……?
「では、いよいよお待ちかねの『種付け』について説明しますね。もうそろそろドキドキしてきたんじゃないですか?」
「えっと……本当に良く分からないので……」
「そうなんですか、ひょっとしてまだ未経験だったりします?」
「未経験?」
私が繰り返すとあぶみさんはうんうんと頷いてから言った。
「別に童貞が恥ずかしい事ではないですよ。レースに集中するウマ娘さん達にとってレースが一番ですから。でも、長いウマ娘生を考えるならば、種牡ウマ娘に選ばれたのですから種付けが一番になります。きちんとお勉強して、目指せ種付け日本一ですよ。えいえいおー!」
「は、はい……」
天へと拳を突きあげるあぶみさんのその姿に一抹の不安を覚えつつ、私の見学は続いた。
繁殖ウマ娘さんの身体検査。
なかなか発情しない繁殖ウマ娘さんへのカウンセリング光景。
当てウマ娘さんとのラブラブデート風景。
当てウマ娘さんと良い雰囲気にまって、その気になった繁殖ウマ娘さんと種牡ウマ娘さん初顔合わせ。
嫌がったりする場合は、繁殖ウマ娘さんに
繁殖ウマ娘さんの○○に、種牡ウマ娘さんのペ〇スが……
あっという間の大量射精。
終了。
この間、たくさんの人が、裸で繋がる二人の種付け介助をしていました。
「さあ、これが種付けの一連の流れですよ。どうです? 簡単そうでしょ? 興奮してきましたらバンバン種付けしましょうね! れっつ、えんじょい、たねつけですよ!」
ぐっと手を握り込んで微笑むあぶみさん。
私はそれを見つつ……
卒倒した。
「きゅぅ……」
「す、スペシャルウィークさんっ!」