1枚の写真を手に取る。
他にも写真はあるのだがこれはまた特別な1枚で軍人時代の所属分隊、
泥と埃にまみれた装備を身に纏い、くたびれた雰囲気を出しながらも輝く笑顔の6人が写っている。
こいつらといれば無敵だ。
どんな戦場でも生き残れる。
そう思える程に固い絆で結ばれたチームだった。
そんな彼らはもういない。
彼らの生きた証は写真と装備と自分の首から下げた全員分の
そして、自身の脳裏にこびりついて離れない最期の瞬間のみである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聞き慣れた起床ラッパが脳を揺さぶり、意識が水底から引き上げられる。
訓練の賜物か意識のチャンネルは覚醒に切り替えられている。
「よう、レナート」
寝床から這い出でると二段ベッドの上から声をかけられる。
「おはよう、ルーカス。アイツらは?」
「あー、さっき出て行ったのを見たぞ」
同じタイミングで起きたハズなのに分隊のメンバー数人は既に食堂へと向かったようだった。
ワープでも出来るのか、アイツらは。
心の中で呟きながらいつもの迷彩服を着ると食堂へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルーカスと連れ立って食堂へと向かうと、いつもの特等席を確保している分隊メンバーの姿が見えた。
「いよう!お二人さん!今日もいい朝だな!」
「今日も特等席は俺らのモンだぜ」
陽気に出迎えたのはスキンヘッドが特徴の黒人、グリッグ・マーティンであり、ニヤリとしながら机を軽く叩く金髪白人の青年がウィリアム・レッドウォーターという。
「いっつもこの席だよな」
「あぁ、なんかここじゃねぇとメシが旨くねぇんだ」
そんな他愛の無い会話を繰り広げていると6人分のコーヒーをトレーに載せた人物がこちらに歩いてきた。
「おはようございます。レナート軍曹、ルーカス軍曹」
爽やかに挨拶をしてきたのは黒髪に茶色の瞳を持った黄色肌の少年だった。
彼はこの基地にたった一人しかいない18歳の日本人である。
18歳という若さに加え、まだ幼さを残すあどけない顔立ちにコロコロと変わる豊かな表情からこの基地のマスコットとして可愛がられている。
礼を言ってコーヒーを受け取るとがっしりとした体格を揺らしながら歩いてくる人影が見えた。
右の頬と左の眉に傷を残す歴戦の軍人といった言葉が似合う我が分隊の隊長、マーシャル・ベルトピアである。
「おはよう。早速だが朝メシを食ったら出撃準備だ。E.L.I.Dの群れが出たらしい。まぁ、出番があるかは知らんが」
アルファベットから受け取ったコーヒーを啜りながら彼はそう告げた。
「やれやれ、人気者はつらいねぇ」
「全くだ。これじゃファンのみんなに合わせる顔の手入れもできねぇじゃねぇか」
ウイリアムがおどけた様に零すと即座にグリッグが喰らいつき、自分の顔を撫でながら調子を合わせる。
「テメーのどこが人気者なんだよ。えぇ?」
そうルーカスが問いかけると
「なんだと?俺を見ろよ、ビル・デュークそっくりだろうが!」
「お前が使ってるのはM60じゃなくてM249だろ」
「レナート軍曹の言う通りですよ」
「アルファベットぉ〜お前まで俺を裏切るのかっ!!」
そんな寸劇を見ていた周りの兵士たちから大きな笑いが起きる。
「ほら、じゃれあいもそこまでにして早くメシを食うぞ」
そう締めくくったマーシャルに率いられ、5人はトレーを持って朝食を取りに向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝食を終えて装備保管庫に向かい、いつもの様に
この数年で世界は目まぐるしく移り変わった。
古い遺跡内部での
ま、簡単に言えばそいつらのせいでコーラップス汚染が全世界に拡散。その被害を受けて自国第一の方針を進めた国家たちにより第三次世界大戦が勃発。
コーラップスの汚染も合わせて世界はめちゃめちゃになっちまった訳だ。
そんな中、各居住区の自治など細かい事はPMCに任せて我々軍隊はE.L.I.D発症者の対処に従事している。
迷彩服の上にアーマーベストを着用し、背負うような形で強化外骨格を身に纏い、腕には多目的のウェアラブルコンピューターを、背中には様々な物資とバッテリーを備えたバックパックを背負い、コーラップス被爆防止の防護マスクとヘッドマウントディスプレイを備えているヘルメットを被る。
装備品を身に纏ったら次は銃火器のチェックに移る。
今は大戦の影響もあり、武器の生産もままならない為、ある程度は私物の使用も許可されている。
普段使用しているメインアームは7.62ミリを使うSCAR-Hというアサルトライフルである。
また、銃身下部にM26 MASSというアンダーバレルショットガンを装備し、ホロサイトとマグニファイアを取り付けて好みのタンカラーで運用している。
サブアームはH&K社製の拳銃、H&K HK45を装備。
ストッピングパワーに優れる45口径のハイパワーな拳銃だ。
大口径とショットガンを装備しているのは奴らが痛みを感じない化け物であり、大口径と散弾で脳髄を吹っ飛ばして黙らせる方が早いからだ。
自分の準備を終えて所定の位置で待機し、発表される作戦要項を聞く。
──居住区近くに現れたE.L.I.Dの群れとその地区を担当していたPMCが交戦しており、万が一に備え待機せよ──との事だ。
それぞれの番号がマーキングされたヘリコプター、UH-60─通称「ブラックホーク」に乗り込み、駐機場で待機しヘリの排気ガスを吸いながら出撃を表す本日の
この手の任務は中止が多い。
10回招集され、1度の出撃のみなんてことがザラだ。
毎度毎度フル装備でヘリに乗り込み、座席に座って出撃を待ち、何もやらずに終わる。
だがこの日は違った。
どうやらいつもよりE.L.I.Dの数が多く、変異種まで現れたようでPMCが押され始め、このまま行くと最終防衛ラインを突破されて居住区にヤツらがなだれ込むとの事。
オペレーターから「アイリーン」が告げられ、兵士たちは胸を高鳴らせた。
「クソ、アイリーンだ!」
パイロットが低い声で嬉しそうに告げ、回転するエンジン音が高まって地面を震わせ、ブラックホークの巨体が地面からふわりと浮かび上がる。
駐機場から飛び立っていったヘリに続き、地上車両部隊も出発する。
基地の重厚な正面ゲートが開き、フィフティー・キャリバーことブローニングM2重機関銃を搭載したハンヴィーが次々と飛び出していく。
空中でもUH-60にAH-6が隊列を組み、大空に舞っていた。
オイルをたっぷりと注いだヘリコプターに乗り込み、満載の装備を持った最高の戦闘マシーンたちが戦場へと向かっている。
レナート・ブラックバーンもそのただ中にいる。
いかがでしたでしょうか。
感想とか貰えると泣いて喜びます。