深緑の火星の物語   作:子無しししゃも

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第97話 朝焼けに幕が開く

―フィンランド エウラヨキ・第一生物工学研究所

 

 閉鎖都市、と呼ばれる都市の分類が存在する。

 戦略兵器の製造・研究所や大規模な軍事基地といった機密性の極めて高い重要設備が存在するため、情報の開示や外部とのやり取りが著しく制限されている都市のことである。

 

 ここフィンランド南西に位置する行政区、サタクンタ県の自治体であるエウラヨキ市も、その閉鎖都市に分類される地だった。

 国一つ吹き飛ばせるような物騒な兵器を開発しているわけでもない。

 軍事力としても都市を丸ごと機密にしてまで守る程のものを有してはいない。

 そもそもの話、閉鎖都市と言うシステム自体が2620年現在ではほぼ存在していない時代遅れな体制といえる。

 では一体、この都市の封鎖は何のために行われているのだろうか?

 

 答えは、北欧の小国であるフィンランドが世界に存在感を示す分野の先端研究が行われている地だから、である。

『生物工学』。その中でも特に生命の設計図を取り扱う遺伝子工学において、フィンランドは2620年現在中国やアメリカといった世界の超大国に比肩する程の技術水準を有している。

 国を牽引する最新技術の生まれる場所。

 

 それゆえに、この地は『生まれた人間は一生を内で過ごす』と言われる程の厳格な警戒態勢を敷いているのである。

 

 

「侵入者だ!」

 

 静寂そのものだった地下研究施設に、突如として警報が鳴り響く。

 危機を知らせる赤色灯に照らされた通路を、ドタバタと無数の足音が駆け抜けていた。

 

 そして、今この研究所を襲っている状況もまた、必然だと言えた。

 大規模な軍事力は持たず、かつ高度な技術を有する国。

 そこに各国の魔の手が伸びるのは当然の話だ。

 

 

「クソっ……どいつが仕掛けてきやがった!」

 

 自動小銃。最新式のボディアーマー。

 警備員、と呼ぶにはあまりに物騒な装備に身を包んだ彼らの内ひとりが吐き捨てるように呟く。

 

「アメリカか、中国か、それとも本家の連中か……最悪のタイミングだ……」

 

 ……などと理由を並び立てはしたものの、技術力云々は表向きに過ぎない。

 先端設備の研究施設。確かに重要だろう。

 しかし、それだけの理由で都市丸ごとを厳重な監視下に置き人々に重い制限を課す、などという政策は他のどの国も行っていない。

 当のフィンランド政府ですら、とある事実を知らない大多数の人間はこのような封鎖は不要である、と考えている。

 

 アメリカ、中国に続いてもうひとつ語られた陣営。

 機密性が高いとはいえたかが一研究所の警備員が口にした『本家の連中』という言葉が、現在この国を蝕んでいる元凶を物語っていた。

 

 ニュートンの分家、槍の一族(ゲガルド)

 ここフィンランドは、彼らが本拠地を置く場所だ。

 加えて言えば、その情報を握っているのはニュートンの本家、その中でもさらに限られた人間のみ。

 その秘密を徹底的に隠匿するために、この地は時代錯誤の厳戒態勢を敷いているのだ。

 

「その最悪を狙ってきたに決まってんだろ!」

 

 もし襲撃者が本家の手の者であるならば、事は重大を通り過ぎている。

 

 オリヴィエの行動により、ゲガルドの離反は既に本家の知るところである。

 だが、それでも両勢力はにらみ合い……というより、相互に手を出すことはしない小康状態を保っていた。

 得ている情報に差こそあれ、基本的にはアメリカと中国も同様の立ち位置と言えるだろう。

 敵対する理由こそあれど、それは決して今ではない。

 むしろ陣営内に協力者すら存在している。

 

 だがその静寂を破り、刺客が送り込まれてきた。

 それも、この国を裏から操る黒幕と言える存在が来訪しているタイミングで。

 要人の暗殺。

 言うまでもなく、技術の略奪などとは比べ物にならない敵対行為だ。

 

 

 たとえ襲撃者がどの陣営であれ、それが指し示す意味はすなわち――

 

 

「――腹括ったらしいぜ。少なくとも裏側でなら全面戦争も辞さない、ってな」

「ッ!?」

 

 瞬間。警備員たちの合間を、冷たい声だけ残して辻風が通り抜ける。

 流石は機密施設の防衛を任されるだけの人材というべきだろうか。

 敵対者の奇襲に即座に反応し、彼らは銃口を背後へと向け躊躇なく引き金を引いた。

 

「ああ、やめといた方がいい。……ヘンに撃って暴発したら困るだろ」

 

 

 だが、銃声は一発たりとも響かない。

 彼らの持つ銃は全て、発射構造の要所を砕かれその機能を失っていたのだから。

 

 

「じゃあ後はよろしくな、エミリー」

「りょーかいですわ!」

 

 そして唖然とする警備員たちに、突如飛来した粘着質の物体が追い打ちをかけた。

 ある者は設置型の罠にかかったゴキブリのように地面にべったりと張り付けられ、またある者は脚だけを縫い留められる。

 

「貴様ら……どこの人間だ……!」

 

 申し訳なさそうに彼らを跨いで駆け抜けていく女性と、奇襲をかけた下手人と思われる青年。

 両者はその返答に答えることなく、研究室の深部へと足を進めていった。

 

 

――――――

 

「……お前さ、いっつもこんな事してたんだな」

「まあな」

 

 呆れたような、どこか罪悪感が入り混じっているような。

 血みどろの通路を駆け抜けるさ中、健吾は表情に影を落としながら隣の友を見る。

 

 短い肯定を返した俊輝の表情から、感情の変化は殆ど読み取れなかった。

 

「あまり隊長を責めないでいただけますと。決して貴方に悪意があって隠していたわけではありませんのでな」

「わーってますよ。それに関しちゃこの前話がついてるんでね」

 

 そこに差し伸べられたのは、両者の一歩後ろに付き抜け目なく周囲を警戒するクロヴィスの声。

 第七特務の二人と日本第二班の一人。

 暗殺任務にいささか奇異に見える人間を含んでいる彼らがこの場に赴いている理由に関しては、唐突な所属組織からの命令と個人的心情の混ざった少々複雑な事情が絡んでいる。

 

 

『U-NASA本部に常駐しているMO手術被験者の戦力、そのほぼ全てを各地に派遣する』

 ……という決定と各所への命令がU-NASA上層部によってなされたのは、ほんの数日前のことだった。

 

 U-NASA本部直属の戦闘部隊である第七特務、現在本部に長期滞在している元裏アネックス日本第二班、元裏アネックス米国第一班を主戦力とする特殊敵対勢力対策局実戦部隊。

 

 彼らに対してそれぞれ、米国内部や他国に点在する機密拠点への移動が命じられた。

 U-NASA本部が抱える戦力は、量の面で言えば大したものではない。

 

 アネックス計画における有力な戦力であった日米合同第一班、二班は既に解隊され、所属人員は軍の特殊部隊へと組み込まれる、民間人に戻る、といった形で既にU-NASAには残っていない。

 

 軍の要請でMO手術関連の協力を行うことこそあれど、本部に滞在する戦力はアネックス計画始動時と比べれば大きく減じられていた。

 U-NASAはあくまで航空宇宙局であり、有力な軍人を多数、それも長期間張り付けておく事に難色を示す政府や軍の人間もいたのかもしれない。

 

 故に、今回のこの命令は現在動かせる戦力を絞り尽くした乾坤一擲の作戦行動、と言えるだろう。

 しかし、健吾は今回のこの命令に少なくない数の不審な点を見出していた。

 

 まずひとつ、唐突が過ぎる。

 健吾が日本第二班U-NASA滞在組の代表者としてこの命令を受けたのは、俊輝が第七特務の任務に身を投じていたことを問い詰めていた最中だった。

 

「……このような夜更けにご苦労な事だ」

 

 夜も更けた頃合いに、第七特務と日本班への突然の招集命令。

 最悪の空気の中、俊輝とふたりで訪れた執務室には、不機嫌を隠そうともしないU-NASA高官の男が待っていた。

 セドリック・カルヴァート。

 U-NASA所属の実力部隊、MO能力者の政治的な元締めである。

 

 健吾が直接言葉を交わした経験はほぼ無い。

 せいぜいがU-NASAにおける第二班の待遇について短い相談をしたことがある、程度だ。

 だが、俊輝からの愚痴という形である程度人格を把握していた男だった。

 

 自身の保身と権力を第一に考えているオッサン。

 気難しい上俺たちを見下してていつも偉そうなのが気に入らない、と。

 

 事実、こうして話を聞いていて俊輝の言葉と違わぬ男であったが、そこはさておき。

 下された任務は初めに語った通り、第七特務と第二班、両陣営の海外拠点への移動および第七特務にはフィンランド内部の潜入と暗殺の任務。

 

「以上だ。何か質問は? 次も(つか)えているのでな、貴様らの理解力に期待したいところだが」

 

 健吾がいるにも関わらず第七特務としての任務を堂々と伝えた辺り、セドリックも現在の二人がどのような状況にあったのか把握していたのかもしれない。

 渋面を浮かべる俊輝をよそに、セドリックは反論など許さん、という態度で話を打ち切った。

 

 今すぐにでも荷物を纏めて出立しろ、と言わんばかりの温度感。

 それは恐らく、セドリックが報連相を碌にしない無能というわけではないのだろう。

 そこまでしなければならない、急な情勢の変化が訪れたのではないかと健吾は考える。

 

 そしてその上で不審点、ふたつめ。

 情勢の変化を考えたとしても、今回の指令は不自然だ。

 軍事力を動かすということは、それが必要になった状況ということ。

 つまり、何かしらの敵対者との激突が予想される。

 

 ならばなぜ、自分たちの本丸と呼ぶべきここU-NASAから貴重な戦力を引き剝がすような真似をするのだろうか?

 

 軍からの派兵で防衛能力を補うのだとしても、U-NASAの内部状況などを考えれば自分たちのようなU-NASAの施設構造に明るい人間が防衛に回った方がいいのではないか。

 そもそも、つい先日本部への襲撃があったにも関わらずこのような本部を手薄にするような決定が通るものなのだろうか?

 

「どうした、副班長。難儀な顔をしているな?」

「……いいえ、自分からは何も」

 

 結局、健吾がその疑問を口にすることはなかった。

 恐らくこれは、自分が抗おうとしてもどうしようもない、大きな流れでしかないのだ。

 抗ったところで、自分や仲間が余計な被害を受けてしまうだけ。

 

「そうか。では次だ。先ほど告げた任務の詳細説明だ。第七特務に向けての話だからな、お前はもう下がっていい」

 

 もう下がっていい。

 その言葉から、第二班は少なくともすぐに戦いに身を投じることにはならないのだろう。

 

 同じ班の仲間たちを守る。

 それが、今の健吾を突き動かす理由だった。

 もし皆に被害が及びそうなのであれば、健吾は迷いなくそちらに駆け付けるだろう。

 

 だが、今はそれに次ぐ行動理由、したい事、がある。

 怒り、なのかもしれない。後悔、かもしれない。

 ……横で居心地悪そうにしている男に対する。

 

―何故自分たちに打ち明けてくれなかったのか。

―わかってる。俺だって同じ状況に立たされりゃ言えねえよそんなの。

 

―何故気付いてやれなかったのか。

―俺が鈍かったから。バカ野郎だったから。

 

 俊輝に言おうとした言葉や、自分に対する疑問。

 それらがモヤモヤと胸に留まるからこそ。

 この馬鹿も同じようなことを考えているのが、痛い程伝わったからこそ。

 

「俺も、その任務に参加させてください」

 

 不器用な友の決定を、目を逸らさずに見ようと思ったのだ。

 

 

――――――

――北欧・某国地下

 

 ザッザッ、と秩序だった足音が響きわたる。

 狭い地下通路を埋め尽くす軍勢が一歩の乱れも無く移動し合流し、数を増し隊列が整えられる。

 

「ひ、なんだいきな――あぎぃ!?」

「う、うわああぁぁっ!!」

 

 かつてこの場所を流れていた、大量の水のように。

 彼らの進路に存在する遍く命を飲み込み、軍勢は一点を目指し足を進めていく。

 

 モグラ族と呼ばれる人々の住居のひとつ。

 既に水が枯れて久しい大規模な地下貯水槽の跡地、その最奥部に彼らの王の玉座は在った。

 

「じ、ぎ、ぎぎぎ」

 

 屑鉄や針金、機械部品の残骸。

 文明の残滓を固めて作り上げた、現代アートを彷彿とさせる御座に、一匹のテラフォーマーが腰を下ろす。

 通常のテラフォーマーと違い、頭髪の無い頭部。

 その額に刻まれた『≒』を彷彿とさせる記号。

 醜く膨れた、赤黒い異形の腕。 

 

 国すら押し流せるのではないか、という大軍勢を眼下に望み、彼は満足げに皿へ盛られた蚕を摘まむ。

 その傍らに置かれた旧式の通信設備は、ざざ、というノイズ混じりにこの星の同盟者からの言葉を彼へ伝えていた。

 

「そろそろ、動くとしよう」と。

 

 それから、より詳細な状況の説明も。

 

 

 いよいよ、己の悲願は叶う。

 古臭い王を廃し、己こそがテラフォーマーの真なる王へと。

 

「それにしても、威勢のいい事だけど。彼らは少し勘違いをしているのかもしれない」

 

 通信機から響く、いっそ呑気ささえ感じさせる声。

 同盟者の言葉に同意するように、にたり、にたりと簒奪者は笑う。

 

「我々と戦って、もしかしたら一方的に勝利を収められるかもしれないなー、などとね」

 

 これは戦争なのだ。

 おまえたちが一方的に攻め込めるなど、夢想しているのではあるまいな?

 

 まるで、そうとでも言いたいかのように。

 

 

――――――

――U-NASA 本部 中央会議棟

 

「皆々様、本日はお集まりいただきありがとうございます!」

 

 錚々たるメンツが集った場に、快活な声が響いた。

 普段はあまり使用されていないが、常に埃ひとつ無いように整えられた会議室。

 

「セドリック氏は欠席ですか。まッたく、このような非常事態に……」

「いや、彼には実務に回ってもらいたイ状況だ。致し方あるまい」

 

 U-NASA内部の予算管理、外部組織との折衷、その他各分野のトップ。

 国家で例えるならば各省庁の大臣と言える人間たちが一堂に会し席を囲んでいた。

 

「いやはや……此度の事態……大変、大変に嘆かわしい状況です」

 

 彼らが集ったのは、国防総省からの緊急の知らせが入った為であった。

『U-NASAおよび軍の主要施設の防護を準戦時体制にシフトする』と。

 

「表立っての戦争などではなイようですが、我々ヤ軍基地が高度な警戒を要する状況……。察スるに……マフィアか何か、裏社会の大規模な掃討作戦……といったところでしょうか?」

 

 急な状況に首をかしげる一人に、何人かが頷き何人かは沈黙を守る。

 此度の戦いに関わっているニュートン家や槍の一族について、同じU-NASAの幹部と言えど持っている情報量には違いがある。

 

『ニュートン本家からの要請により政府が槍の一族へ敵対的な干渉を行うため、反撃の恐れがある』という詳しい事情を知っている者もいれば、何も知らされていない者まで。

 彼らに共通している認識は『このU-NASAになんらかの武力的な危険が及ぶ可能性が存在する』である。

 

「しかしマあ、不幸中の幸いというベきか。準戦時体制ということは軍からも応援があるのでしょう?」

 

 だが、場の空気はあまり重くはない。

 今のU-NASAには先の襲撃を踏まえて強化された防衛体制もあり、正規軍による増援も予定されているという状況だ。

 アメリカの厳しい検問をすり抜けられる程度の規模の敵に奇襲をかけられたところで、守りは突破されないだろう。

 

「第七特務や対策局といっタ戦力も、今はアりますカらな。職員たチの為にも、我々が慌てフためくような姿は見せず、どっしリ構えましョうぞ」

 

 だから、安心して事に当たろう。

 ひとりの言葉に、うむ、その通りだ、と賛同の言葉が集まる。

 

「ええ。皆さまのおっしゃる通りかと! さてそれでは、次の議題ですが……」

 

 彼らの声は一つに纏まっている。

 場の空気を認識し、議場の中央に立ち音頭を取っている男はにこやかに頷く。

 

 

「第七特務と対策局の廃止、ですね?」

 

 それから、次の話題へと。

 

「このU-NASAに相応しくないいつ裏切るかもわからない荒くれ者の集団と、これまた信用の欠片も無い殺人鬼が実戦部隊の指揮官。この非常時において、彼らは大きなリスクとなってしまうのではないでしょうか!」

 

 すらすらと台本を諳んじるように、淀みない言葉が会議場に響いた。

 第七特務と特別敵対勢力対策局、どちらも腕利きのMO能力者が所属する組織である。

 彼の言葉はある種の正論であったが、しかし現実を見れば賛同しかねる意見といえる。

 

 地球と火星の戦場を生き抜いてきた彼らは有力な戦力である。

 槍の一族云々を抜きにしても各国のテラフォーマーの不審な動きが報告されつつある現在、何かの確証があるわけでもないただ不信で彼らを削ぎ落す、などという現実的でない意見は通るのだろうか。

 

「私ハ賛成しマシょう! あのような乱暴者共は相応しクないト前々かラ考えテイた!」

「仰ル通り! 迅速に事を進めるのがよろしいかと」

「いツ我々を裏切るカわカったもノデはない!」

 

 その結果は、同意に次ぐ同意。

 否を挟む者はひとりとしていない。

 決を取るまでもなく、これで第七特務と対策局の廃止は決定されたとみていいだろう。

 

「しかシ、彼らが大人シく言う事を聞くでショうか?」

 

「よい、よい質問ですよ。ですが、問題ありません! 軍部に要請を出して、それが通らなければ私の私兵もございますので!」

 

 投げかけられた懸念にも、男は穏やかに答える。

 彼の背後を見れば成程、数人の武装した人間が付き従っている。

 なるほど彼がそういうのであれば安心だ。

 よかった、よかった。

 会議の場に兵を連れてきていることに触れる人間は、誰一人としていない。

 

「素晴ラシい!」

「いヤはヤ、全ク! 貴方が特別顧問ニ就任ナさレてから、話ガとんとん拍子でススみマすネ!」

 

「えエト、アア、次は何の話デシたカな?」

「コレカらノココノ指揮系統ヲドノよウにスルか、トイう話デシたネ」

 

「ええ、ええ! これは間違いなく危機的状況なのですから! 一丸となるにはやはり、一人の人間に権限を集中するのが望ましいかと!」

 

「ソノ通リデスナ」

「ハイ、ヤハリ貴方ハ良イ意見を出サレル!」

 

「つまりつまり、皆様が持つU-NASAの各権限を、この度運営顧問を拝命しました(わたくし)――」

 

 賞賛と賛同の言葉が、拍手が、口笛が、万雷のように会議室に響き渡る。

 壊れたように繰り返されるそれを一身に受けるのは、ただ一人。

 

 

 

「ランベール・ノウア・アポリエールへと委譲する、というお話ですね!」

 

 穏やかに微笑む、所々に紫をあしらった司祭服の男だった。

 

 

 

 2620年、12月22日。

 西洋諸国では聖夜を前にし人々が浮足立つこの日。 

 地の底の研究室を全ての始まりとして、人類の未来を懸けた闘争が幕を開ける。




観覧ありがとうございました!

大変お待たせしました……(二年半ぶり)
今後も不定期ではありますが更新していきますのでよければお付き合いいただけますと嬉しいです……!


次回後編~次次回あたりから本格的に戦闘に入っていきます
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