深緑の火星の物語   作:子無しししゃも

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第110話です。
回想&戦闘シーンとなっています


第110話 腐れし翼

──この世界は、不公平と理不尽に踏み躙られた屍を置き去りにして成り立っている。

 

 彼がその思考の種を芽吹かせたきっかけは、中学校に進学してしばらく経った後の出来事だった。

 ある日、彼は友人と互いに血を流す程の大喧嘩をしでかし、両親を交えての対話の席に向かうことになった。

 

 お互いに悪い部分があった。それが一夜明け頭を冷やした彼と友人の共通見解。

 大事にしすぎたと相手の親に謝り、水に流そう。

 事前にチャットで話し合い、迎えた当日。

 

 謝罪の席は、友人の両親がいっそ惨めな程に頭を下げ続け許しを求めるだけで終わった。

 後から知った話だが、友人の父は彼の父が経営する企業の下請けに当たる会社で務めていたという。

 

 それ以降、友人の態度はどこかよそよそしく怯えが混じったものになった。

 まるで、いつ爆発するかわからない不発弾の傍にいるかのように。

 

「こっちからたくさん謝るべきだったって、今ならわかるんだ。そしたらもう少しちゃんと、仲直りできたかも」

 

 自分がもう少し、空気に呑まれず歩み寄れていたなら。

 自分たちは今この場においてはただの喧嘩した人と人である、と公平な立場を表明できていたら、結果は何か変わっただろうか。

 そんな苦み走る後悔と共に、彼──風邪村宗明は過去を語り終えた。

 

「だって、根っこが対等じゃなかったんだから」

 

 戦国の世に名を馳せた大名に起源を持つという日本有数の名家『風邪村』。

 宗明はその本家筋に生を受け、一点を除き家柄には相応しくないほど平凡な少年に育った。

 

 その性分はよく学びよく失敗しよく悩む普通の青少年で、去年卒業した高校での成績は半分に入るかどうか。

 日本有数の学校でこの成績なら一般的には十分に秀才と言えたかもしれないが、ただの秀才程度ではとても足りないのは生まれの通りだ。

 

 学力面で特段優秀というわけではなく、魑魅魍魎の政界に身を投じるには性格が善良すぎる。

 本人に興味がないのもあって、数十年後に起こるだろう次次代の跡目争いには名も挙げられないのが身内からの評価である。

 

「そう。ソウちゃんは優し……余計なことばっか考えるのねぇ」

「なんで悪い方に言い直すんだよ!?」

 

 顔に深い影を落としている宗明の頭に、皺だらけの手が触れた。

 慈しむような所作に反して毒の入った表現に、宗明は思わずツッコミを入れる。

 

「ま、家族そろって金勘定と悪だくみだの知恵比べだのに精出すこともないさね」

 

 その手と声の主は、飾り気のない白のベッドに身を預ける老婆だった。

 

「おかげで賞金もガッポリだからね。ずいぶん贅沢させてもらったよ」

 

 親指と人差し指で円を作り他を広げ伸ばす……“お金”のジェスチャーと共に笑う老婆が視線を向けたのは、棚の上に並べられたいくつもの写真。

 いずれも、表彰台でトロフィーを掲げる宗明が映ったものだった。

 

 先にも述べた通り、宗明は風邪村の人間とは思えない程に平凡な人間である。一点を除いて(・・・・・・・)

 

「ひとりくらい、甘ちゃんで頭まで筋肉が詰まってるようなのがいてよかっただろうよ」

「だから言い方!」

 

 それが、身体能力。

 (まつりごと)を行うには最低限しか必要ないこの才能を、彼は天性のものとして有していた。

 

 そして宗明は、昔から身体を動かすことが好きだった。

 天賦の才と本人の希望が一致したのは幸運である。

 

“……外ばかり走っていないで休みなさい。疲れて勉強に集中できなかったらどうするんだ”

 

 同時に、周囲の環境がそれを許そうとしなかったのは不幸である。

 幼き頃の宗明は、未来の当主候補のひとりだった。

 彼の両親は名家の跡継ぎとして彼を送り出すべく、息子を正しく風邪村たらんと矯正しようとした。

 

「……でも、婆ちゃんのおかげだよ。いっしょに父さんと話してくれなかったら、今こうしてられなかった」

 

 そこに割って入ったのが、宗明の祖母であるこの老婆だった。

 幼少期の宗明が恐る恐る自分の進みたい道を主張した際、その肩を持ち庇護してくれた、ただ一人。

 

「投資してみただけって何回言やわかんだい。この年になっても、こういうのが趣味でねぇ」

 

 祖母の露悪的な態度は照れ隠し……とは少し違うが、それに近いものであると宗明にはわかっている。

 相当の資産家である彼女が現役世代と喧嘩してまでこれ以上の富や名声を求める必要は薄い。

 だから彼女の行動は、孫である自分を想って動いてくれただけなのだ。

 

「はいはい。んじゃ、そろそろ行くから」

「……もう、つっかえは取れたかい?」

 

 立ち上がる宗明に、祖母は柔らかく聞いた。

 宗明は大一番の前になると、決まって過去の苦しみを思い出す。

 それを祖母に聞いてもらい集中力を取り戻すのが、彼の常だった。

 

「うん。ありがとな」

 

 唯一弱みを素直に明かせる人に、宗明は穏やかな笑顔で応える。

 

「絶対、負けられないからさ」

 

 それに、今回はいっそう特別なのだ。

 

「あんまり気負わないようにやりなさいね。いっそ天国から観戦した方がよく見えていいかもねぇ」

「冗談でもやめてくれって」

「ハハ、特等席だねぇ。ダメダメなことしたらブーイング入れてやるからね」

「だからやめてって」

 

 いつも通り自由な祖母に振り回されながら、宗明は壁にかけられたカレンダーをちらりと見て、拳を握り込む。

『手術日』という綺麗だが遊びのない筆記の二日前には、宗明がよく知る柔らかい書き文字で『本番』と記されていた。

 

「まったく……優勝で願掛けなんて、しわくちゃのばばあじゃなくてカワいい彼女にやってやるもんだろうに」

 

 そうして、苦笑交じりでぼやく家族の声に見送られ。

 

──2615年世界陸上競技選手権大会、十種競技。

 その有力候補のひとりと目される青年は、気力を滾らせながら病室を後にして空港へと向かった。

 

────

 

「きひ、ひっ!」

「おいナンパ野郎!」

 

 宗明が背に負った槍の一本を引き抜くと同時、鈴が警告を叫んだ。

 

「助かるっ!」

 

 同時、リックが潜んでいた家屋から二人分の影が飛び出す。

 銀色の光がその屋根を貫いたのは、それから秒と経つか経たずの内だった。

 

「……ひゅー」

 

 もたつくアシュリーを抱え道路へと跳ね飛んだリックは、素早く背後を確認し冷や汗を一筋流す。

 ふたりが潜んでいた部屋の中には、大槍が深々と突き立っている。

 

 まるで豆腐に針を刺したかのように、一切の抵抗を許さず建造物を貫徹せしめた投槍。

 空中での不安定な投擲で建物を貫くだけの威力を発揮しているのを見るに、手術ベースの筋力に加えて槍の側にもコーティング等特殊な加工がされている可能性が高い。

 

──ゆっくり照準を合わせるような時間は与えてもらえないか。

 

 リックはその威力を見て、いくつかの情報を繋ぎ合わせ分析する。

 槍が突き立っているのは、位置的に自分とアシュリーが潜んでいた場所ではない。

 結果論だが、逃げずにいたとしても命を落とすことはなかった。

 

 それは敵の精度がうっかり標的を外す程度だから……ではなく、遮蔽物越しに位置を探る手段を持たないからと考えるのが自然だろう。

 

「最初から追い出すのが目的だよなぁ……」

 

 しかし、運次第で即死するギャンブルにそう容易く乗ってやれる人間はあまりいない。

 当たれば致死の攻撃がやって来るとわかれば、退避せざるを得ない。

 少なくとも、リックはそうだった。

 

 当てるために乱発してくる気配はなく一発だけというのも、最初から命中を期待しているわけでなくマグレ当たりの最悪を恐れての選択を強要させるため、という目的だと考えれば納得がいく。

 

 相手は、正気を失っているように見えて随分と小癪な戦局判断を取ってきている。

 戦局は完全に、相手が優位。

 さて、どうしたものか。

 

「……アシュリーさ、敵に糸ぶつけるのって自信ある?」

「ぜったい失敗します、練習の成果ゼロです……! 鈴さんと作戦会議した時にも言ったじゃないですかぁ!」

 

 再確認と弱気な同僚の緊張をほぐす兼からかいながら、リックは考えを纏める。

 短い思考時間の後、すべきことは定まった。

 

「だよなぁ。じゃあ、第二プランなんだが──」

 

 小脇に抱えていたアシュリーを下ろし、数言だけ短く話し合う。

 ふるふると首を横に振る彼女をどうにか宥め、納得させ。

 そしてふたりは、それぞれ走り出す。

 

 

「ひ、ひひ……」

 

 真逆の方向に駆けだしたふたりの敵を見下ろし、宗明はきょろりきょろりと眼球を動かす。

 まず目を向けたのは片側、手ごろな建物に滑り込もうとしている女。

 額に目のようなものが形成されている辺り、MO手術の被験者には違いない。

 だが、弱敵。今までこちらに何かを仕掛けてきた様子はなく、その足取りも遅い。

 こんなものを殺しても、大した得点にはなりはしない。

 

 ならばもう片方、狙撃銃の男はどうか。

 強力な武器を持っている。その扱いも手慣れていた。

 こちらを殺せば良い得点になるだろう。

 

「無視たぁ随分余裕だな?」

 

 バックパックに差し込まれている槍の一本に手を掛けた宗明へと話しかけたのは、苛立ち混じりの声だった。

 

「くひ……」

 

 三人目、先ほどから己と空中戦を演じている女。

 高度、自分と同じ。格闘戦、こちらが明らかに優位。先の一合で左手を握りつぶしたため、既に手負い。

 足先の爪による蹴りを腕で捌きながら、宗明は獲物に優先順位を定めていく。

 

「ひ、ひひひひぃっ!」

「ッ……!」

 

 口を大きく開く宗明の所作に、鈴が反射的に回避の姿勢を取る。

 強酸の吐瀉物による一撃を警戒したその動きは、しかし宗明の意図通り。

 

「うぐぁッ……!」

 

 回避のため動いた先を読み、宗明は力任せで槍を振り下ろした。

 投擲武器として設計段階で最適化されたそれは複数本を携帯したまま飛行するために軽量化されているが、それを差し引いても根本からして金属の棒という鈍器である。

 強かに打ち据えられ、鈴の体は遥か下方に吹き飛び家屋の一つへと叩き付けられる。

 

 宗明はその勢いのまま身を捩り、槍を投擲する。

 先のように遮蔽物からの炙り出しを目的としたものではなく、見えている標的を正確に射抜くための狙撃。

 未来位置を予測して放たれた大槍はリックの位置を正確に捉え、串刺しにする──とまでは、至らない。

 

 一本、二本がちょこまかとした動きにより避けられるが、三本目がその身を射抜いた。

 咄嗟に身を躱すのが間に合い死にこそ至らなかったが、掠めただけで脇腹を大きく引き裂いたようでリックの姿勢は大きく崩れ、地に膝を突く。

 

 そう、獲物なのだ。

 これは戦いなどではなく、宗明にとっては狩りに過ぎない。

 

 片やかつての火星派遣計画における非戦闘員がひとりと、最上位には見劣りする戦闘員がふたり。

 片やニュートンの分家に仕える最精鋭部隊、その一員。

 

 競技の世界において頂点に肉薄できた身体能力に強力な手術ベースを組み合わせた戦闘能力は、表裏アネックス計画の一般搭乗員、その殆どを凌駕する。

 

 たとえそれがゲガルドの王直々の任務を遂行する最高戦力たちには一歩及ばずとも、正気を失い技巧の多くが精彩を欠こうとも。

 

「ああ、点数だ。もっと、点数を取らないと──」

 

 獲物を逃さず始末するため、宗明は緩やかに飛行高度を落としていく。

 その表情には、歓喜と同時に。

 

「──死んでしまう」

 

 隠し切れぬ、焦燥があった。

 

────

「帰ったぞ、婆ちゃん」

 

 あれから三週間。現地での調整期間と大会の全日程を終え、宗明は帰国した。

 空の旅の疲れも押して真っ先に向かったのは、恩師の元でも実家でもなく、彼の最も大切な家族のいる場所だ。

 

「もうヘトヘトだ……こんなの、何回もやるやつの気が知れないや」

 

 十種競技。

 その名の通り、100m走、走幅跳、砲丸投、走高跳、400m走、110mハードル走、円盤投、棒高跳、槍投、1500m走、という十種目を二日間で行う陸上競技である。

 

 当然ながら、競技者に求められる能力は多岐に渡る。

 各種目への対応力、連続しての競技に対応しきる体力といった、純粋に競技を行うにあたっての技巧。

 短時間で次々と行われる種目の中でウォーミングアップや練習、競技後のクールダウンや休憩といった時間配分。

 運動能力や忍耐力、メンタル面でのタフネスに計画性。

 アスリートとしての高い総合力が試されるこの競技の覇者が“キング・オブ・アスリート”と称えられることからも、その過酷さが伺えるというものである。

 

「最後から二つ目のやつ……槍投げさ、あれもうちょっとで世界記録だったんだぜ。すごかっただろ?」

 

 この競技において、日本人のメダリストは多くない。

 ハードルの高さから、どうしても人種的特徴がひときわ大きく圧し掛かってくるのだ。

 その点で、今回の大会は極めて異例であった。

 

 まず、表彰台に上った三人の内ふたりが20歳にも満たない若者だった。

 アスリートの全盛期については諸説あるが、一般的に人間の肉体的ピークは二十台半ばであるとされている。

 つまり未だ発展の余地を残した状態で、彼らは頂をしのぎあっていた。

 

 そしてうち一人は、先述したように人種的には運動能力で一歩譲る日本人だったということ。

 

「他もあとちょっと高かったら……優勝できてたかもしれないかなぁ」

 

 宗明の手には、銀色の(・・・)メダルが握られていた。

 2615年世界陸上十種競技、世界第二位。

 惜しくも届かなかったが、その雄姿は多くの人間を勇気付けてやまなかった。

 

「俺のこと“英雄”なんて言ってる人もいるんだってさ。嬉しいけど恥ずかしすぎだろ」

 

 国内の熱心なウォッチャーの中には彼をそう呼ぶ声も少なくはなく、まさに彼は栄光を手にしたと言えるだろう。

 語りたいのはそれだけではない。笑い話から嬉しかったこと、失敗談までいくつもある。

 

 競技を通じて、外国の友達が何人もできたこと。

 選手村の料理が驚くほど不味かったのでライバルたちとの愚痴が大盛り上がりしたこと。

 昔から自分の道を応援してくれていた従兄が、結果が出て真っ先に祝電を送ってくれたこと。

 負けた悔しさから、優勝者である同年代の少年には直接お祝いを伝えられず後悔していること。

 

 ゆっくりと、彼はひとつひとつお土産話を伝えていく。

 

「なあ、婆ちゃんもさ……感想、教えてくれよ……情けない、とか説教でもいいよ……」

 

 棺の中で眠る、もはや言葉を交わすことは叶わない家族へと。

 

「手紙だけじゃなくてさ、直接聞きたいよ……」

 

 宗明の祖母は、彼の奮戦を見届けた後に手術へと臨み──予後が悪く、目覚めることはなかった。

 

 宗明が優勝できなかったせいで祖母は死んだ。

 そう彼を責める人間は、外部内部含めて誰もいなかった。口に出さないだけで本心ではそう思っている、という人間すらいなかっただろう。

 

 願掛けの成否による影響を大真面目に信じているような人間がいない、というだけではない。

 元々、宗明の祖母は限界が近かったのだ。

 純粋な老衰で身体にガタが来ていて、その上で風邪村の家系特有の病と他の重病が重なった末の手術だった。

 宗明が奇跡に縋ろうとしたのは、元々状況が最悪だったからでもある。

 

 だからこれは、間が悪かっただけ。

 

「ごめんな……俺が、ダメだったせいで」

 

 宗明が己を赦せるかというと、また別だ。

 自分が誓いを果たせなかったせいで、祖母は死んでしまった。いくら周りが否定し慰めようとも、心に突き刺さった棘は抜けない。

 心の奥底で完全に飲み下すにはまだ時間がかかるのは間違いない。

 

「でも次は絶対リベンジしてやるからさ……だから、そっちで見ててくれよ。天国からはよく見えるんだろ?」

 

 だが、宗明は現実をどうにか間際で受け入れ決定的な破綻を堪えられた。

 祖母が最後に冗談めかして語った言葉が、彼をどうにか正気の此岸に繋ぎ止めていた。

 

 このまま月日が経てば、宗明は健やかに育っていただろう。

 心に影を落としながらも、何気ない話で笑い合う友人や切磋琢磨する好敵手(ライバル)たちと過ごす時間が、少しずつ少年の傷を塞いでいくのだ。

 他ならぬ彼の祖母も、きっとそう願ったように。

 

 

 

 

「御祖母様のことは残念だったね。お悔やみ申し上げるよ」

 

 そうなる、はずだった。

 

 不意に聞こえた声に、宗明は振り返る。

 葬儀も終わり静まり返った斎場を誰かが訪ねてきたことに、話しかけられてようやく気付いた。

 

「ありがとうございます……あなたは?」

 

 白のスーツを着た、西洋人と思わしき青年である。

 少なくとも、宗明の記憶にある人間ではない。

 

「大統領秘書……フィンランド」

 

 宗明が尋ねるのとほぼ同時に渡された名刺に書かれていたのは、意外な国の意外な地位。

 ただ、宗明にそこまでの驚きはない。

 祖母は、若かりし頃には外交官として各国を飛び回っていたと聞いていた。

 だから海外に知り合いがいて悼みにくるのも、決しておかしな話ではないと納得できる。

 

「君の御祖母様を悼みにきたのは、そうなのだけど……私は、君に用があってね」

「その、嬉しいんですけど今はそんな気分じゃ……」

 

 次いで青年が始めようとした話を先読みして、宗明は失望を抱いた。

 この青年も、わざわざ喪に服す席に押しかけてまで金の話がしたいのか、と。

 

 大きな結果を残した宗明に対してスポンサーだのなんだののアプローチをかけてくる集団は多い。

 祖母が冗談めかしていたお金の話みたいに、きっと大金が手に入るのだろう。

 でも、今の精神状態でそんなことを考えてはいられなかった。

 

「今の君に儲け話をするつもりは無いよ。ただ、私個人として聞いてみたいことがあったんだ」

「あっ……それは失礼しました」

 

 青年は宗明を取り巻く事情を察したのか、宗明の予想をやんわりと否定する。

 勘違いでの負い目もあり、宗明は恐縮し聞く姿勢に。

 

「君は……他の参加者たちに、悪感情を抱いたりはしなかったのかい?」

 

 気を楽にしてほしい。

 そう伝えながら、告別式の参列者用に設けられた椅子に腰を下ろした青年が尋ねてきたのは、予想外の内容だった。

 

「悪感情、ですか?」

「ああ。君には譲れぬとても大きな目的があった。では、共に競った選手たちは君の願いを阻み御祖母様の命を奪った敵だ……というのは、少々穿って見すぎかな?」

 

 宗明は目を閉じ、考える。

 青年の言うとおり、それは恨みがましい暴論だ。

 だが……全くそんなことを思わなかったかと問われれば、きっとそれは嘘になる。

 

「他に聞いている者は誰もいないよ。どうか、偽りなき本音を聞かせておくれ」

 

 穏やかな、慈愛すら感じる声が宗明の耳にゆるやかに入り込んでくる。

 何故初対面の人間に、心の底を晒さなければならないのか。

 そんな当然の疑問と警戒心を溶かすような声だった。

 

「俺に譲ってくれ、と思わずにはいられませんでした。有力な選手が走っている時には、失敗しろ、と願ったこともあります」

 

 ゆっくりと息を吐き、宗明は心の底に閉じ込めていた淀みを吐き出していく。

 なんとしてでも頂点に至りたいと、願ってやまなかった。

 自分が最も上に輝ける能力に達していないなら、他がずり落ちて自分より下になることを望んだ。

 

 選手ひとりひとりに事情を話して、どうか勝ちを譲ってくれと懇願しようかと思った時もあった。

 それが道義にも規則にも反する行いで、首を縦に振ってもらえる可能性は極めて低く侮蔑が返ってくる可能性が極めて高かったとしても。

 

 そして結果として、宗明は世界二位という敗者になった。

 

「でも、恨んだりはしたくありません。みんなそれぞれ抱えているものがあるのは俺と一緒だったと思うし、ばあ……祖母は俺がそんな事考えるのを、望まないと思う」

 

 でも、大きなものを背負っているのは自分だけだという考えは傲慢だと思い至ったのだ。

 誰しもが、周囲の期待や支えてくれる人たちの愛情を抱えて、大舞台に臨んでいる。

 もしかしたら、同じように切実な願いをかけている人だっていたかもしれない。

 そんな人間にとっては、自分は同じように恨めしい敵だろう。

 

 だから、自分が臨んだ戦いは平等だったと宗明には言い切れた。

 

「……そうか。君は立派な人間だね」

 

 たった一言、落ち着いた声での賞賛に、宗明は目を開く。

 立派。そう思っていいのだろうか。

 祖母は、自分のことをそう思ってくれるだろうか。

 

「だからこそ……実際に君の願いを阻んだ人間が、君の真摯な想いを踏み躙るような真似をして栄冠に輝いたのには憤りを隠せないな」

 

 そんな宗明の思考は、青年の次いでの言葉で薄っすらとした暗闇に包まれた。

 

「……それは」

 

 考えるな。相手を恨むな。

 内心で立てつい先程青年に語った己の誓いを守るのに、それ以上を聞くのは逆効果だ。

 青年もしまった、と思ったのか、小さく眉を潜めている。

 やめろ、聞くな。そう内心がブレーキをかけようとしている。

 

「それは、どういう?」

 

 ……結局、宗明は己の内に立った小波(さざなみ)を、止めることができなかった。

 

「──ジョセフ・G・ニュートン。君を下した者の名前は、それで間違っていないかな?」

 

 青年が口にしたのは、ひとつの人名。

 聞き覚えがある、どころか幾度となく耳にし勝つことを望み敗北を恨んだその名に、宗明は目を丸くする。

 

「彼は、特別な家の出身でね……。簡単に言えば、品種改良して人為的に生み出された最新最強の人類だったんだ。最初から土台が違ったというわけだ……君が勝てなかったのは、必然だった」

 

 宗明の返事を待つことなく、青年は続きを口にする。

 その内容は陰謀論のように荒唐無稽で根拠もなくて、だが切って捨てるには思い当たる節が多すぎた。

 

 これ以上なく整っていながら友好的な雰囲気を与える顔立ちに、聞いた学歴が証明する知能の高さ。その上で、世界一に輝くような身体能力。

 全てにおいて完璧が過ぎて、理不尽な程だと冗談半分に思った。

 

 それが、本当に理不尽だったら?

 

「彼が何のために参加したかと言えば、箔付けだよ。目的の為に、それに相応しい実社会での経歴が必要だっただけさ。だからひょいと参加して、当然のようにひょいと優勝した」

 

 大なり小なり、大勝負に臨む人間には覚悟と理由があってそれは平等に尊ばれるべきだ。

 宗明は己のどす黒い思考をそう納得させ抑え込んでいた。

 

「う、あ……」

 

 でも──他への足掛かりにするため、なんて動機は、本当に尊ばれるべきなのか?

 それは、他人の切なる祈りを叩き壊すに値するのだろうか。

 

「……ずるい、だろ」

 

 漏れ出たのは、彼が内心に隠していた子どもの我儘のような言葉だった。

 風邪村宗明は心優しい少年だった。

 恵まれた生まれにあって、だが他者と何かを比べる時には公正で在りたいと願った、善性の人間だった。

 

「それは、ダメだろ……? 最初から勝負にならないようなヤツが、そんなことしちゃいけないだろ……?」

 

 この世界は、彼が願ったようにはできていなかった。

 宗明が危うい中でもどうにか精神の平静を保てていたのは、祖母の死は自分が弱かったからという自罰心とそこから脱した姿を祖母に見せたいという目的を持てていたからだ。

 そんな彼に突き付けられたのは、“お前の悲劇はお前のせいではなく、覆しようがない世の摂理である”という現実だった。

 

「……残念に思うよ。君やような正しき願いを抱いた者が踏み躙られ、ただ生まれ持って強かっただけの者が抱いた俗悪な願いこそが叶う。実に、この世界は理不尽だね」

 

 青年が今どのような表情をしているのか、もはや宗明にはわからない。

 心の内側が虫食いのように、黒色に覆われていく。

 

「う、ウ……ああアアァァッッ!」

 

 獣のような慟哭と共に、少年は斎場の冷たい床に蹲る。

 その翌日から、風邪村宗明の行方は何処とも知れない。

 

──この世界は、不公平と理不尽に踏み躙られた屍を置き去りにして成り立っている。

────

 

「ひひひ……」

 

 地上に降り立った宗明は、事前に確認した通りの順で獲物を仕留めるべく、リックへと歩み寄っていく。

 

「……あーくそ。これ治っかなぁ……」

 

 対して、大きく引き裂かれた脇腹の傷を庇いながらリックは狙撃銃を構える。

 言うまでもなく、鳥類の多くは空を主な活動領域とする生物である。

 状況からすれば、相手が自らこちらのホームグランドに踏み入ってくれたようなものだ。

 

 にも関わらず、相手が空中にいる時と全く優位劣位の度合いが縮まったようには思えない。

 

「くひぃぃぃ!」

「うおっ……」

 

 凶笑と共に突貫してくる宗明の圧に、リックは後退しつつトリガーを引く。

 放たれた弾丸は宗明の頬を掠め、傷を刻む。最低限命中したが、それだけ。

 こちらが外したわけではない。避けられた。

 そう理解した瞬間には、次弾を放つ隙が無い程に距離を詰められている。

 

 宗明がその身に宿すヒゲワシもまた、大多数の鳥類の例に漏れず手術ベースとしては空中戦を得意とする種である。

 だが元アスリートという経歴が得手としているのは地上での白兵戦であり、その中でも追撃に他ならない。

 

「く、おぉぉっ!」

 

 咄嗟に銃を横に構えて盾にし、振り下ろされた猛禽の爪を受け止める。

 負傷者である上手術ベースも特別筋力が強いわけでないリックと、本人から手術ベースまで筋肉の塊である宗明の迫り合いは、あっという間にリックの形勢不利となる。

 

「う、う゛」

「そりゃ……」

 

 リックと組み合ったまま、がぱりと口を開ける宗明。

 先にも見た、強酸の吐瀉物による追撃の予備動作。

 ただでさえ追い込まれている状況に、これだ。

 リックは頬を引きつらせ──

 

「待ってたぜ」

 

──そのまま、笑った。

 

「ひ……づぁッ!?」

 

 宗明の顎が突然の殴打にかち上げられたのは、その瞬間だった。

 驚愕に彼が目を瞠ると同時、吐き出されんとした吐瀉物が強制的に上向き閉じられた宗明の口内で暴発した。

 

「うヴっ……、う゛う゛ぇぇ……!」

 

 ごぶごぶと気味の悪い水音と共に吐瀉物を吐き捨て、宗明は苦痛にうめき声をあげる。

 その口からは蒸気が上がり、こぼれ落ちた吐瀉物が伝う口元に焼け爛れたような痕が刻まれていく。

 

 MO手術の強みは、生物の持つ性質を強化した上で人間が運用できる点にある。

 体構造からして異なる上加えて高い知能を持つ人間の手によって、MO能力は元々の生物と全く異なった手段で活用されるというのは多くの実例が示している通りだ。

 

 本来は消化能力を支えるための胃液を吐き出して攻撃に用いるというのも、その一つ。

 だが同時に、本来の用途ではないそれは諸刃の剣となる。

 本来吐瀉することを想定していないため、口内がわざわざ耐える構造をしていないように。

 

「どうしたァ、ハトが豆鉄砲喰らったような面して」

 

 そして同じように、MO手術の神髄たるベース特性の戦闘への応用を行ったのが、ここにもう一人。

 悪戯っ子のような笑みを浮かべ、リックは不意打ちを見舞ったものを口の中(・・・)に引き戻す。

 

──カメレオンの舌。

 

 種によっては体長の二倍にまで伸び、停止状態から時速90キロに到達するまで僅か0.01秒。

 そして舌とは、構造として筋肉で構成された器官である。 

 

 時速数百キロという尋常ならざる機動力を与える手術ベースのような高速ではないが、近接戦闘における手足以外の攻撃手段として、この特性は有効に機能する。

 以前の戦いでリックがこれを用いた際には、ニュートンの血が流れる戦士にすら十分な対処を許さなかった程に。

 

「ひ、へ、ひひひひ……!」

「……まあ、これでK.O.ってのは、ちょっと都合良すぎるよなぁ」

 

 これで決着すれば、晴れてハッピーエンドだっただろう。

 しかしそんな希望的観測は、リックの内にはない。

 己の武器に灼かれながらも立ち直った宗明の瞳は、爛々と輝き未だ衰えぬ戦意をはっきりと示している。

 

「……ってなわけで」

 

 へらりと笑いながら、真正面に敵を見据える。

 

(思ったより粘れはしたが、まぁここまでか。悪いな、班長、チャーリー……)

 

 そして意図を悟られぬよう、リックは内心で謝罪した。

 自分の上官たちと……宗明の背を狙ってふらつきながらも駆けてくる、ふたりに向けて。

 

──まず何より大事なのは、時間稼ぎだ。んでもってどうにか地上に引きずり落として……最悪、誰かが囮で死ぬ覚悟で仕留める。

 

 この都市外部を三人で担当すると決まった後、話し合った結果たどり着いた作戦がこれだった。

 目的は、本隊が背後から強襲されるのを防ぐためと退路の確保、輸送機内に残って分析を行っている人員の保護。

 施設に突入した皆と大きく違うのは、この戦線は敵を倒す必要性が薄い、という点にある。

 

 死なないように時間稼ぎをして釘付けにしておけば、本隊が背後を突かれることはない。退路の確保という点においては、敵を倒せずとも撤退時には本隊が戻ってくるため共同戦線を張って突破するという手段が取れる。

 輸送機内に残っている人員の保護に関してが懸念点だったが、これも前線を張る三人が抵抗を続ければ非戦闘員に手を出している余裕はないだろう、という点で認識が一致した。

 実際に作戦が始まってみても、幸運なことに宗明は輸送機には目もくれず三人との戦闘に集中しているようだった。

 

 想定外だったのは、敵の攻撃能力と機動力が予想を上回っていたこと。

 相手の攻撃を受けながら時間を稼ぐのは難しいと判断したリックが選んだのは、鳥類の強みを殺せる地上戦・接近戦に持ち込み仕留めるという第二案。

 致死的な長距離攻撃の手段である投槍を使い切らせれば、敵に残っている武器は鉤爪による格闘と吐瀉物。

 その内、吐瀉物はそれそのものの殺傷能力が際立っているわけではない。

 ならば必然、敵は槍を回収するため地上に降り立つか手間を嫌ってそのまま襲い掛かってくるだろう。

 つまり、接近戦に持ち込むチャンスが生まれてくる。

 

 敵が自ら地上に降り立ってきたのは、思いがけぬ幸運だった。

 おかげで最低限(・・・)の被害で勝てそうだ。

 

(んじゃ、後よろしく)

 

 もはや、まともに動ける体力は残っていない。

 自分の役割を無事果たせたことに安堵し。

 精一杯最後まで囮を務めてやろうと、リックは無駄な抵抗と知りながら銃を構える。

 

「ひひ、ひっ、これで、今日こそは一位……?」

 

 そんなリックの感情などどこ吹く風というように、猛禽の爪が振り下ろされ──

 

「おい、バカ……!」

 

──唖然と暴言を呟いたリックと宗明の体に、影が差した。

 

「バカはどっちだよ、ナンパ男」

 

 頭上から聞こえてきたのは、味方に対しても相変わらずの悪態。

 リックの想定していたタイミングとしては、自分が引き裂かれるのと宗明を背後からの不意打ちで仕留められるのはほぼ同時だった。相打ちだ。

 だというのに、鈴はわざわざ再び翼を広げて頭上を取った。

 

「おれ、の。おれより、も」

 

 リックが動揺したのは、飛ぶという余計な動作で攻撃が遅れるから……では、ない。

 今までの戦いを見るに、敵が狙いを定める優先度の一つに、予測が付いていたからだ。

 

「おれよりも、高いところに、高いところ高いところ高い高い高い高い高い高いィィィ!!」

 

 頭上を仰ぎ見た瞬間、宗明は感情を炸裂させた。

 自分より高い場所を飛ぶ人間がいてはいけない。自分は一位にならなくてはならないからだ。

 排除せねば。他の何に先んじても。

 

 標的が、リックから逸れる。

 己の頭上を取る、忌々しき敵対者へと殺意の全てが注がれる。

 

「へっ……」

 

 狂った男の想定通りの挙動に、鈴は鼻を鳴らした。

 先の交戦で片手がひしゃげていて、落下の衝撃で全身が軋んでいる。血もだいぶ流れてしまった気がする。

 今ここで宗明が爪を振るえば、自分は死ぬのだろう。

 にも関わらず、鈴は迷わずこの選択を取った。

 

 

 もし、風邪村宗明が正気であったなら。その技量を万全に振るえて、冷静な戦局判断ができていたなら。

 もし、三人が誰かを生贄に差し出した代償に、勝利を収めていたなら。

 

 この戦いの結末を分けたのは、ごく単純なただ一点に集約される。

 不公平と理不尽に踏み躙られて、悪魔に囁かれ差し出された手を取った。

 そうして、彼の歩みは止まってしまった。

 

 フィンランド共和国国家研究院特殊作戦群“エインヘリャル”。

 その名は、北欧神話において、死後に神の世界へと迎え入れられ来るべき終末の戦争(ラグナロク)に備えて毎日蘇り戦い続けると語られる戦士たちに由来する。

 

 一度の致命的な敗北を経てなお、譲れぬ目的や理想のために再び立ち上がらんとした者たちをスカウトし迎え入れたことから、この部隊名は付けられたという。

 

 その定義で言えば、宗明は違った。

 狂い壊れてしまった彼という人間に、もはや未来を見据える機能は残されていなかった。

 彼は蘇った戦士ではなく、動いているだけの屍だった。

 

 

「てぇぇいっっ!」

「くひ……!?」

 

 少し空回りした、無理をしているのが明らかな掛け声はその時響いた。

 瞬間、鈴へと槍を打ち上げようとした宗明の足がもつれ、その姿勢が大きく崩れる。

 

 驚愕を隠せない宗明が背後を見れば、そこには目元いっぱいに涙を貯めながらこちらへと手を翳しているひとりの少女がいる。

 彼女の手術ベースである、ナゲナワグモの能力。非戦闘員で運動神経が悪かった彼女が練習してもちっとも当たらなかった、投擲できる糸。

 

「……やりゃできんじゃねえか!」

「二回目は無理ですー!」

 

──こんなものを殺しても、得点になりはしない弱敵。

 宗明がそう判断した少女の糸が、ふたりどちらかの犠牲でしか成り立たないはずの未来予想図を、覆そうとした。

 理不尽に踏み躙られるだけの存在だと侮った、弱者が。

 

「っ、あ、あぁぁァァ!!」

 

 宗明は、それを理解すると同時に錯乱した。

 そんなわけが、あってはならない。この世界は、理不尽でなくてはならないのだ。

 そうでなければ、自分は──。

 

 一瞬だけ戻った思考能力を、彼は自ら真っ黒に塗りつぶす。

 そして強引に足を踏み締める。

 再び槍を構えて、己の頭上にいる敵を捉え投擲の構えに。

 

 驚愕に硬直するアシュリーを見て、宗明は笑った。

 ほら見ろ、やっぱりこうなるのだ。

 その嗜虐に満ちた表情を、狂気に赤く染まった視界を、

 

「ぁ」

 

 不意に雲間から差した陽光が、焼いた。

 その動きが、致命的な一瞬だけ停止する。

 喉に迫る鈴の鉤爪を回避できる余裕は、当然ない。

 

「……あぁ」

 

 それはただの息遣いだったのか、それとも何かを思ったのか。

 崩れ落ち息絶える間際、狂い果てた青年は、ただ小さく声を漏らした。

 

 

 

 

「……死ぬかと思った。てか今から全然死にそう」

 

 決着に、リックが締まらない感想を漏らす。

 戦いの決着となった最後のピースは、言ってしまえば偶然の産物だ。

 だが人事を尽くし最後に天命が味方したからこそ、たどり着けた道があった。

 皆が己のできる役割を全うし、仲間の為に選択し続けた末に得られた成果。

 

「死んだら殺すぞ……ここで死んだら意味ねぇだろ」

「そうですよリックさん……頑張ってください……!」

 

 元々の数が違う。母数はたった三人プラス後方人員だけだ。

 敵がどのような相手かも違うし、他あらゆる条件が違う。この場所はひとつの戦線というだけだ。

 ケチを付けようと思えば、いくらでも付けられるだろう。

 

「全員生存、なんですから!」

 

 それでも、三人は達成感に頬を緩めた。

 自分たちは、かつて皆が切望しながらも成せなかった結末を迎えられたのだと。




ご観覧、ありがとうございました!

エインヘリャル勢の過去、宗明ともう一人だけちょっと長めで後はあっさり目の予定です。
詳しくは章後の登場人物紹介で! となりそう。
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