深緑の火星の物語   作:子無しししゃも

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番外編です。とある人物達にまつわるエピソード集。

最近ホント筆が軽いです。


番外編 六つの時間、六つの記憶

××××年 6月 24日

 

ついに我々の計画が始動する。

これはあの神に反する考えを持つ一族どもへの抵抗の、神を作り出すための第一歩なのだ。

人間の『進化』などがくだらない事を、思い知らせてやる。

これが成功すれば、今回の音頭を執っている私の評価はうなぎ登りだろう。

 

 

××××年 9月 14日

 

計画の第一段階は成功した。報告員も潜入させた。後は成り行きを見守るだけだ。

あの家の人々には罪悪感を感じているが、これも人類の発展に必要な事なのだ。

 

 

××××年 2月 8日

 

計画は何事も無く進行中。生存も確認できている。すでに数回死線から生還したそうだ。

実にいい調子である。

 

 

××××年 12月 某日

 

徐々に立場を上げてきたようだ。監視員の一人が流れ弾により命を落とす。

追加を送り込まなくては。

 

 

××××年 7月 某日

 

順調に力を増しているようだ。今回の『カミサマ』は実にうまくいっている。

ここまで生存したのは、何人ぶりだろうか。

 

××××年 6月 某日

 

成功の可能性が高くなり、いよいよ機密性が高くなってきた。

このプロジェクトにはさらに多くの資金がつぎ込まれる事だろう。

 

 

××××年 9月

 

監視員3人が流れ弾により命を落とす。最近、監視時に巻き込まれて死ぬのが多くなってきた。

対策を考える必要があるだろう。

 

 

××××年 8月

 

今回はこれまでで最高の成功例である。

今度こそは成功するのではないだろうか。

監視員を5人手配する。

 

 

××××年 6月

 

あの家の子が……そんな……まさか……この計画だけは知られてはならない。絶対に。

 

 

 

××××年 7月 14日

 

全ての監視員からの連絡が途絶えた。何か非常事態でも起こったのだろうか。

会議が開かれた。

 

 

××××年 9月 2日

 

この本部に暴漢が侵入し、同志の一人が犠牲になったそうだ。

警官に踏み込まれでもしたら面倒だ、秘密裡に始末する。

 

 

××××年 10月 20日

 

本部の施設が爆破された。どうやら自爆テロのようだ。

今回もなんとか隠し通せたが、例の計画のための施設が少し損傷してしまった。

 

××××年 11月 11日

 

おかしい。何かが狂っている。

監視員を送り込んだ次の日には連絡が途切れる。どうなっているんだ。

 

 

××××年 11月 28日

 

抗争によって手負いとなった犯罪集団が本部に侵入。

なんとか皆殺しにしてやったが、多大な犠牲が出た。

 

××××年 12月 12日

 

計画の第一人者、ロドリゲス卿が自動車事故で死んだ。

犯人は逃走、行方不明だそうだ。くそっ、なんて日だ。

 

××××年 12月 20日

 

ロケットランチャーが数発本部に打ち込まれた。

死者多数。私は書斎にいたので助かった。

 

××××年 12月 26日

 

寝て起きたら、本部が半壊、同志達の約八割が首を切り裂かれて死亡していた。

もうダメだ。計画を放棄して逃走するしかない

 

××××年 12月 29日

 

逃亡しても逃亡しても、あの影はいつも私についてくる。

朝起きるたびに、隣で寝ていた、寝る前までは話をしていた同志が物言わぬ死体となっている。

もう嫌だ、これはいつまで続くんだ。

 

××××年 12月 31日

 

あの姿を私は見てしまった。あれはカミサマなんかではなく……

 

 

××××年 1月 1日

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

 

 

 

 

ルナライトジャーナル 2619年、8月号 夏のホラー特集!

 

……以上の日記は、森林の中に建っていた福祉施設と思われる廃墟から発見されたものである。その内容と,ある失踪事件の被害者が残したとされる日記に描かれていた最後の方の部分、合わせて数十年にも渡って記されていた物を一部抜粋し、掲載したものだ! 果たして、彼らは何をしようとしていたのだろうか、何が起こったのだろうか、そして、日誌をつけていた彼はどうなってしまったのだろうか。

 

……この真実は、『カミサマ』のみぞ知るのかもしれない……

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

僕は、白一色の廊下を歩いている。

 

手には資料の束、身に纏っているのは妻が苦しい家計の中から出してくれた新品の白衣。

今日はとても重要な日なんだ。なぜなら、大きな規模の国際研究発表・評価会があるからだ。

 

ここで僕は、自分が独自に進めていた研究を発表するつもりなのだ。

もちろん、他の発表者は団体だったり、国家的な支援を受けていたりする。

 

だが、だからこそ、個人で挑む価値があるのだ。

強力なライバルも多い。自分より恵まれている環境で研究をしてきた人間も多い。

特にあの、日本の誰だったか、車メーカーみたいな姓の彼は大きな壁となりそうだ。

 

そんな彼らを打ち破ってこそ、自分の力を証明できる。

 

表彰されれば、多額の賞金と科学者として最高の栄誉。

妻にも、今度産まれる娘にも楽をさせてやる事ができる。

これまで迷惑をかけてきた分、償わなくてはならない。

 

賞金が出たら、まずは指輪の一つでも……

いかんいかん、これはあれだな、『タヌキの皮がどうとやら』とかいうやつだ。

 

 

ふむ、最近目が少し悪くなったようだ。少し視界の奥の方が見えにくい。眼鏡でも買おうか。

我ながらきっと似合うと思う。同窓会でクラスメイトにも似合いそうとよく言われたものだ。

 

 

「きゃうっ」

 

唐突に耳に入ってきた可愛らしい悲鳴と共に、腰のあたりに軽い衝撃。そして、バサバサと紙が散らばる音。

いけない、考え事に夢中で前を見ていなかった。どうやらご婦人とぶつかってしまったらしい。

 

 

「これは失礼。大丈夫?」

 

一旦難しい考え事を止め、目の前でこけている女性を見てみる。

 

「すすすすみません! わたし、考え事に夢中で前を見てなくて!」

 

散らばった彼女の物と思われる資料を後回しにぺこぺこと平謝りするその女性は、ご婦人というよりはお嬢さん、といった年齢のようだった。

年はまだ十歳にも満たないくらいだろうか。

 

電燈からの光を弾き輝く、思わずため息が出そうな程美しい銀髪に、北欧の方の出なのか、白い肌。同年代と比べて明らかに小柄な体躯は、まるで妖精のようだ。

顔も、道ですれ違えば二度見してしまいそうな整ったものだ。

 

 

「いやいや、僕の方こそよそ見をしちゃってたからね」

 

そう言いながら資料を一緒にかき集め、渡す。

彼女は少し要領が悪いみたいで、時間がかかっていた。

 

 

「私なんかに、優しくしてくれるんですね」

 

そして、その直後に唐突に言われた一言。そこには負の感情が籠っているのが感じられた。

自己評価が低い子なんだろうか。

 

「君みたいな子がいたら、皆放っておかないと思うけどね」

 

もちろんお世辞ではなく本心だ。この子にはどこか、近くで見ておかないと危ういと思わせるものがある。

妻がいないのが幸いだ。ここに彼女がいたら、この子と別れた後で私はひどい目に遭わされる事だろう。

特に、こんな初対面の少女を内心でベタ褒めしたなんて知られてしまったら。

 

 

「わたし、どんくさいんです。間違えてばっかりなんです。だから友達もいなくて……皆にも嫌われてて……」

 

褒められ慣れていないのか、少し顔を赤くしながら小さな声で話しかけてくる。

 

確かにそれはある。だが、それだけで友達がいないという事はないだろう。

たぶんこの子が受けているのは、女子からの嫉妬から来るいじめ、男子からは好意の裏返しという意味のいじめではなかろうか。何より、ジャパニーズマンガによるとドジっ娘とやらは人気があるらしいではないか。

 

ありがとうルドルフ、お前のオタク知識が初めて役に立ったよ。

 

 

「だから、この研究で見返してやるのです! って事はおにいさんとも勝負ですね! 負けませんよ! それもそのはず、この私が頑張って研究してきたこの成果が誰にも負けるはずがないのです! ふふふ……これはもらいました! ここからわたしの新たなスタートが始まるのです! だからおにいさん、残念ですが勝つのはわたしなのですよ、えへへへへ……」

 

早口で長文でまくし立ててきて、いきなりのライバル宣言。困ったなこれは。負けるわけにはいかない。

小さなライバルの誕生に内心嬉しさを覚えないでもないが。

 

 

「じゃあはい、指切りです!」

「はいはい」

 

その後は赤い顔のままぶんぶん手を振る少女と別れ、自分の待機室に。さあ、負けないぜ!

僕の研究発表は始まったばかりだ!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「お前、そろそろここには慣れたか?」

 

強化ガラスで作られた分厚い水槽の中のそいつに話しかける。俺の日課だ。

べしべしと体をガラスに打ち付けている。肯定なのだろうか。

 

「お前も可哀想にな。実験でいろいろムチャさせられたりしてさ。……俺と一緒だな」

 

ガラスに体をすりすりとしている。懐いている……のか?

そんなに知能が高い生き物じゃなさそうだが。

 

「そうそう、聞いてくれよ。俺さ、初めて友達ができたんだよ」

 

何の動きも見せない。丸まってしまった。

 

「いやいや、お前もある意味友達、だぜ。心配すんなって!」

 

ちらっと頭をこっちに向けてくる。こいつ、実はかなり賢いんじゃないだろうか。

 

「いやー、変な事ばっか言う奴でさ、でもバカ話してるとめっちゃ楽しいのよ。いいもんだな、お前にもいたのか、友達」

 

ぐったりしている様子だ。……元気が無い?

 

 

「でもさ、せっかくできたのに、火星に着いたらさ……」

 

動かない。反応ナシだ。いつも俺の話には耳……はないけど興味深そうに体を向けてくるのに。

 

 

「おいおい、どうしたんだよ、サンプルも採取されて、移植も終わって、お前もうすぐ故郷に帰れるんだろ?」

 

動かない。力なく垂れ下がっている。おいおい、どういう事だよ。

お前、帰れるんだぞ? また野生の、仲間が待っている場所に戻れるんだぞ?

……俺と違って。だから、頑張れよ、ぴくりとでも動いてみろよ。なあ、何とか言えよ、なあ……

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

俺は自由だ。

 

俺は自由なんだ。

 

逃げ出した。あのクソ看守共はみんなブッ殺してやった。

この力があれば。今まで以上に幸せな人生を送れる。

 

何が手術に成功して作業に従事すれば自由の身、だ。

俺は無敵だ。

 

雨が降っている。現在は深夜、真っ暗闇で逃走にはもってこいだ。

 

警官が追ってくる。拳銃を手に持っているな。

即射殺ってか。俺が怖いんだろ? そうなんだろ?

 

素早く薬を体に取り込み、俺が手に入れた力を使わせてもらう。

 

体から無数の糸が、触手と呼ばれるらしいそれが瞬く間に警官の体に絡みつく。

 

声もあげずに崩れ落ちる警官。

 

 

「オレ、サイキョーーーー!!」

 

説明なんて碌に聞かなかったが、この能力は、世界一の毒を持つクラゲの力らしい。

もう俺に敵なんていねえ。検問にも探知機に引っかかる事もない最強の武器が手に入った。

 

 

ここから俺の第二の人生が……

 

 

「こんにちは、今日はいいお天気ですね」

 

ふと気が付くと、ガキが目の前にいた。

……ロシア帽なんて、国籍アピール激しいじゃねえか。

 

よく見れば結構な上玉だ、まずはこいつを拉致って奴隷市にでも……

 

「それ、もしかしてくらげさんですか?」

 

俺があの力を使ったのを見ていたらしい。

 

もっと先に突っ込む所があるだろうが。なんで人からクラゲ生えてるのとかよ。

 

ボケたガキだぜ。まあいいや、今はそんな事は。

 

「おうよ、嬢ちゃん、クラゲ、好きなのか? 俺と一緒に来たら、見せてやるぜ?」

 

それににっこりと笑うガキ。

 

 

「よし、じゃあ着いてきな」

 

いやはや、力は手に入るは、こいつを売りとばして先立つ金は手に入るは、全く、U-NASA様様だぜ!

 

――――

 

―――本日未明、特殊収容所から脱獄したと見られる死刑囚が、死体となって発見され――

 

「あーあ、最近は物騒な話題が多いな。おじさん悲しいよ」

 

「まあまあ、きっといいニュースもたくさんありますよ」

 

「ん? その触手、例のベースの奴か? おじさん固いカニだから効かないぞー」

 

「違います、攻撃しようとか思ってません! ちょっと見せたかっただけです!」

 

「ほう、なんか凄い種類なのか?」

 

「はい! キロネックス、っていうらしいですよ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

‐文科大臣を凶弾から救ったお手柄!

 

‐国の未来を守った英雄、盾となり緊急搬送

 

‐大手柄、日本警察の誇り

 

 

「どの新聞も、君を褒め称える内容ばかりだ。今回の働きは本当に素晴らしかった」

 

 

……声が聞こえる。この職に就いた時から、命を捨てる覚悟は出来ていた。

だが、こんな事になるなんて。こんな情けない……

 

 

「君の治療費は、我々が責任を持って支払おうと思う。君の親族にも、謝礼が出ているよ」

 

……そんな事は、上辺だけの話はどうでもいい。その謝礼とやらは、あいつらが社会に出るまで暮らせる程じゃない事、俺はよく知っている。

 

「そして今回の件、本当に残念に思うよ。君を失ってしまったのは、我々にとっても苦痛だ」

 

……治療してもこれがどうしようもないものである事くらい、俺が一番よくわかっている。

二度と現場に立てないばかりか、まだ育ちざかりのあいつらとキャッチボールもしてやれない体になってしまった。

 

 

「一つお聞きしてよろしいでしょうか」

 

「なんだね?」

 

「私の親族への補償はどこまで出るのでしょうか」

 

「そ、それはまた相談してみてだねえ……」

 

ほらな。結局こうなるんだよ。せっかく、あいつらを養えると思っていたのに。

生きたまま、自分の家族が苦しむ所を見せられるのか。

 

いっその事、殺してくれ。そうしたら、楽になれるだろう。俺も、俺の家族も。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あの店のオーナー兼シェフ、知ってるか? 有名な歌手の……」

 

「知ってる知ってる、超カッコイイよねー」

 

「行ってみた事ある?」

 

「あの人の歌聞きながら美味い飯食えるの? 最高じゃん」

 

「ただ、ちょっと怖い噂があるんだよ」

 

「なにそれー」

 

「たまにお客さんが、行方不明になるとか。そしてその次の日のステーキはいつもより美味しいと……」

 

「……うわあ……」

 

「なんてな、都市伝説都市伝説! あの人に嫉妬したどっかの奴が流した噂だろ、どうせ」

 

「だよねー」

 

「じゃあ今日行ってみようぜ? 開店日なんだろ?」

 

「賛成ー」

 

「今日はいい夜になりそうだぜ!」

 

 




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