深緑の火星の物語   作:子無しししゃも

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幕間的な感じのアレです。
 コラボ先の作者様がやっておられたのに我慢できず自分も、となった回。
 ベース予想等にお役立てください。



Mind Game:第10.5話 赤き虚栄

―アフリカ リカバリーゾーン

 

 珍しい晴れ空、しかし多数の木々とその葉に覆われその恩恵はあまり受けられない薄暗い熱帯雨林の中を、彼らは歩いていた。

 

 総勢で数十人からなる軍人の集団だ。自動小銃と防弾ベスト、隊から少し離れて少数で動いている数人にはスナイパーライフルが握られ、背には麻酔銃が負われている。

 彼らの胸に燦然と輝くのはトリコロールカラーのバッヂ。

 フランス共和国所属である事を示す証である。

 

 何故、このような熱帯雨林で完全武装した兵士達が動いているのか。

 高温と多湿という環境で不快感と疲労が溜まり、衣服にも汗が滲み気味の悪い質感を与えている。

 

 

「……マリアン隊長。たった一人の客人を迎え入れるために、これだけの装備が必要なのですか?」

 

 兵士の一人が、先頭を歩く男に疑問の色が濃い声で尋ねる。

 それは、任務そのものへの疑問であると同時に、隊長その人が何故ここで指揮官を務めているのか、という疑問でもあった。

 

 先頭を歩く男、マリアンはそれに曖昧な調子で頷いた。

 

 

 外人部隊の一部隊員と正規軍の混成部隊。それが、今この場所を歩く軍人たちの内訳である。

 統合参謀長から直々に受け取った、今回の任務。

 

 それが、ここアフリカのリカバリーゾーンに墜落したロケットに向かい、そこに搭乗している人間をフランスに迎える事。

 状況に疑問こそ何点か浮かびはするが、任務の内容を見る限りではこれだけの軍備が必要な理由は一兵士である彼には判断が付かなかった。

 

 もしこれがかの『シド・クロムウェル』の護送、などと言うのであれば、納得は行くところである。

 むしろ、この戦力で足りるのか? と真逆の疑問が湧く事だろう。

 

 しかし、今回の任務に関しては、どうにもこれだけの戦力を割く理由が見当たらないのだ。

 MO手術を受けた精鋭を動員し、装備も正規戦で持ち入るような大層なものばかり。

 

 末端の兵士には明かせない情報もあるのだろうが、それでも疑問は尽きない。

 

 

「……ヴァンサン、どうだ?」

 

「一人、います。状況から見て目標で間違いは無いかと」

 

 そこで、マリアンが立ち止まった事により隊全体も一度停止する。

 マリアンが傍らに控えるラテン系の男、ヴァンサンに尋ねれば、彼は自身の頭から生えた角のような器官を一度撫で、微かに緊張を滲ませる声でその結果を伝えた。

 

 『ミツクリザメ』の探知能力。

 『ロレンチーニ瓶』と呼ばれる電気受容器官を用いた生体電波を探知するレーダーは、木々に遮られて見えない数十メートル先、ロケットの不時着地点周辺に一人の人間が確かに存在する事を指し示していた。

 

 

 ここからは慎重に行かねばならない。マリアンは周囲の兵士、正規軍から出向してきた連中に聞かれないように、ひそひそとヴァンサンと言葉を交わす。

 

――大きさはどうだ。

――160cm程でしょうか。特筆する程では無いようです。

 

――動きは?

――ロケットの周りをゆっくりと歩き回っています。異常な動きは見られません。

 

 

 どうやら、アタリ(・・・)を引いたようだ。

 マリアンは表情に見せないながらも、心の中で安堵する。

 同時に、同様の任務で命を散らせた同士達に、黙祷を捧げながら。

 

 ロケットが落ちたのは二カ所。自分達がいるここアフリカのリカバリーゾーンと、ベネズエラの熱帯雨林。

 槍の一族の介入の可能性が高いベネズエラ方面にはフランス軍の精鋭部隊と共和国親衛隊長の一人が派遣されていると聞いていた。

 その結果は、速報として届いている。部隊の壊滅と、その隊長の重傷。そして、彼らが相対した怪物の情報が。

 3m近い巨体に、竜か鬼を想像させるような身体的特徴。そして、その外見に違わぬ膂力。人間離れした怪物だった。

 

 何とか命を拾った兵士の中でも正気を保てていた人間が語ったのは、モンスターパニック映画か、と言いたくなるようなにわかには信じ難い情報であった。

 だが、それだけでは無い。この結果は、三つ巴で争ったものでは無かった。フランス軍と槍の一族。腕の立つ軍人とニュートンの一族が咄嗟の事態に共同戦線を張った末の、壊滅という結果なのだ。

 

 

――聞いた時にゃ俺達はどんな化物を捕まえてこいと思ったもんだが、こっちは普通の人間の範疇のようだ。

 

 ここからは、声を出すな。

 ハンドサインで部隊に指示を出し、狙撃手にはそれぞれで動かせ、配置に付かせる。

 木が邪魔でそこまで遠距離からの狙撃はできないが、致し方ないだろう。

 

 

 ただ、普通の人間のようだ、と内心で思っていても、マリアンの中に油断などほぼ無かった。

 二方面に部隊が派遣され、自分達が動員されている、という事は、即ちこちらが担当しているのも、あちらが遭遇した魔人と同格の存在であるという可能性が高い。

 

 果たして、この戦力で捕えられるものかどうか。

 

 

 彼に、慢心は無かった。最悪の事態も考慮の内であった。ただ。

 

 

 

 それでも、微かな希望的観測をしてしまっていたのだろう。 

 これから相対する事になる人間が、目の前に広がる光景が、正気のままに受け入れられるものである事に。

 

 

 

 

「……あら?」

 

 標的が、ぴたりと立ち止まる。木の葉越しに姿を観察していた兵士達の中に、緊張が走った。

 最初に標的を捕捉した時、目を疑ったものだ。

 

 

 さあ蛇が出るか鬼が出るか。

 覚悟と共に開けた空間、ロケットの不時着地点のヴァンサンの能力が告げる生体反応があるポイントを葉に隠れながら覗き込んだ時、そこにいたのは楽しそうに、興奮を抑えきれない様子でスキップをしている一人の女性だった。

 

 

 年齢は二十を少し超えたくらいだろうか。美しい容姿をしている。兎の耳を彷彿とさせる二又が長く伸びた髪飾りに、金の長髪。

 その身を包むのは、胸の部分が大きく開き豊満な谷間を晒しているワインレッドのウェディングドレス。

 所々にはチェス盤や帽子といったある古典文学作品をモチーフとしたかのような意匠で飾られている。

 

 そして、ドレスの腰の左右部には林檎の芯に巻き付いた幼虫、という周りから浮いた模様が描かれていた。

 

 

 この模様で、マリアンは確信を強めた。

 ベネズエラ方面の怪物にも、同様の模様が見られたらしい。標的はこの女で間違い無いだろう。

 

 

 一度標的から目を離し、スナイパー達に指令を出す。

 麻酔銃で眠らせて拘束する。

 

 その指示に了承の返事が返って来たのを確認した後、マリアンは再び視線を標的に戻そうとして。

 

 

 

 

 

「初めまして、地球の人! ……間違っていないかしら? おさるさん、では無いのよね?」

 

 

 

 興味津々、という様子の表情が、マリアンの眼前に広がっていた。

 

 

「ッ!? 総員、戦闘態勢! 拘束を第一だ!」

 

 木から転げ落ちるように飛び退きながら、マリアンは無言を破り全員に指示を飛ばす。

 それに従い、銃口が標的へと向けられ、躊躇無く弾丸が吐き出される。

 

 

 

「……まあ! 私と遊んでくださるのね!」

 

 

――アストリス・メギストス・ニュートン。それが、標的の片割れの名だと聞いていた。

 ニュートンというその名は、恐らく他人の空似の類では無いだろう。

 

 成程、謎の怪物と対を成す、ニュートンの一族か。これは厄介な。

 マリアンは努めて冷静を保ち、部隊単位での砲火によってアストリスの動きを封じようとする。

 

 行動を制限して、麻酔銃の狙撃により眠らせる。

 いくらニュートンの一族とは言え、体格は普通の人間と変わらない。

 

 

「一緒にスナークを探しましょう?」

 

 アストリスが手に持っていたもの。それは、まるで宝石のような一つの飴玉だった。

 この状況で栄養補給をするとは思えない。ならば、考えられる最も有力な可能性は一つ。

 

 MO手術の能力を発現させるための『薬』だ。

 

 

 これ以上動かさせるわけにはいかない。マリアンは制圧射撃の指示を、出そうとして。

 

 

 

 その場の誰も、気付かなかった。気付けなかった。不可視不可触の風が、周囲を流れた事を。

 

「え!?」

 

 背後で驚く彼の部下、コゼットの声がマリアンに異常を知らせてくれた。

 思わず背後を振り向く。

 

 そこには、倒れ伏してぴくりとも動かない、兵士達。

 何かの攻撃を受けた!? 動揺する中でも、マリアンは倒れ伏した仲間達の様子を見る。

 

 

 痙攣等の動きは一切見られない。絶命している可能性が高い。

 だが、外傷は無ければ、苦しんだ様子も見られない。そして、何よりも異常なのが。

 

 

「大丈夫かお前ら!?」

 

「何も、ありません」

 

「え、何コレ、何コレ!?」

 

 冷や汗を流しながらも冷静。焦り。それぞれの反応を見せる、マリアンの元々の部下達。

 フランス外人部隊の隊員達は、誰一人として何の被害も受けてはいない。 

 

 一体何をされた? 逆に、苦しむ隙すら与えず絶命させるような何かを受けて何故我々は無事だ? MO手術は超常の力であるが、魔法では無い。

 

 能力の基となる生物があり、それが持つ力を何らかの形で運用した結果だ。

 再び眼前に迫るアストリスの姿を見て、一体何なのか分析を試みる。

 

 

「隊長!」

 

 頭頂から、十字架のようなものが伸びている。そして、それを中心に同心円を描くような配置で矢印のような形状の物体が複数生えている。

 王冠のようだ、と何となしに思う。

 

 

 しかし、ここから元の生物を判断するには情報が足りなかった。

 今ここで我々が全滅しこの怪物が敵の手に渡ったとしても、対処できるだけの情報を、残さねばならない。

 

 

「オオォォ!」

 

 例え死んだとしても、後に託せるだけのものを残す。

 マリアンは変態により腕に発現した牙を振るい、アストリスに真っ向から相対する。

 

 相手はニュートンの一族。打ち合っても勝てない相手だ。

 だが、能力の一端、生物の特徴の一つでも、引きずり出せれば。

 

 自分の命を、一欠片の情報と引き換えにする決意の元、アストリスの振るうナイフ、細かに振動しているそれが自身の喉を正確に狙い放たれた事実すら傍に置き、マリアンはアストリスの腕を切り落とさんと自分の得物を振り下し。

 

「水くせぇよ隊長!」

 

「ヒャアアァァァ!!」

 

 アストリスの右方から、荒々しいながらもマリアンを心配する声と共に、刃が振るわれる。

 

 狂気じみた掛け声と共に、アストリスの左方から放たれた鋭い蹴りが、マリアンの喉を狙ったナイフを持つ右腕をかち上げる。

 

「オーギュスタン! コゼット! すまない!」 

 

「まあ、まあまあ! セイウチさんはいないもの! 食べきれないわ!」

 

 

 変態を追えた、連れてきた外人部隊の二人の武闘派。彼らの攻撃を横入りに受け、アストリスは思わず一歩下がる。

 コゼットの一撃で骨が折れたのか、右腕はだらんと力を失いぶら下がっている。見るに、再生能力は無いのだろうか?

 

 

「オラオラァァァ!」

 

 普段の大人しい様子とは打って変わった好戦的な動作で、コゼットは体勢を立て直すアストリスに向けて連撃を放つ。

 

 羽毛に覆われた体は鳥類型のものだ。だがその凶暴性は際立っており、本人の変貌っぷりも見れば原生の鳥類では考えらえない程。

 

 甲殻型の鎧すらも剥ぎ飛ばす連撃が、見たところ硬い組織も発現している様子は無いアストリスに襲い掛かる。

 

 

 三人がかりであれば、無力化できるか?

 光明が少しだけ見え始めた。

 

 姿勢を崩しているが、コゼットの一撃を受けきるだけの格闘能力はあるとみていいだろう。ならば、自分とオーギュスタンで同時にかかる。

 

 

「うふふ、素敵ね、本当に素敵よ! ……でもね、ヴォーパルの剣はここには無いのよ?」

 

 

 コゼットが、その蹴りでアストリスの頭を潰そうとした、その時。

 

 折れた様子であった右腕が、突如として動き出す。

 コゼットを迎撃しようとするその姿を見て、マリアンは普通では無い、と判断する。

 

 観察していたが、徐々に治癒している、という様子では無かった。

 ……まるで、再生能力が無い状態から強力な再生能力が発現し一瞬で回復したかのような、そのような動きだったのだ。

 

 

 やはりそれは、油断だったのだろう。腕利きの戦士が三人集まれば、ニュートンの一族といえど、制圧できる。そんな、間違っていない自信に基づいた。

 

 彼らが違えたのは、ただ一つ。

 

 

 

 目の前の相手が、まともなニュートンの人間などでは無かったという一点。

 

 

「……一緒に踊りましょう?」

 

 

 

 

 コゼットが襲い掛かった瞬間、アストリスの右腕が、五つに開いた(・・・・・・)

 指を開いた時のように、腕そのものが五分割され、別々に動き出す。

 

 

 それぞれがぶるりと震えた後、異形へと変質していく。

 

 蟷螂の鎌。

 飛蝗の後ろ脚。

 蟻の大顎。

 蜂の毒針。

 鳥の翼。

 

 全く異なる生物たちの特徴を発現した五つの腕が、コゼットを地獄に引きずり込まんとするかのように伸びる。

 鎌で捕え、脚で蹴り、大顎で引き裂き、毒針を突き立てる。一方で、鳥の翼は何の役目を負う事もなくただ動かず、細かく震えるのみ。

 

 その乱れ打ちの初動、鎌による拘束をすんでの所で避けたコゼットは、本能的な恐怖から思わず距離を取る。

 

 

「おいおい……! 限度があるだろ……!」

 

 同時に襲い掛かったオーギュスタンも、同等のものを以てお出迎えされる。

 

 ドレスにも構わず振り上げられたアストリスの右足が五つに分割され分裂し、それぞれが全く異なる生物の全く異なる部位へと変質する。

 

 

「……」

 

 一方のマリアンは攻撃を中断し、周囲へと目を移した。退路があるか、確認しようとしたのだ。

 だが、その状況判断は、それが夢である事に気付けていない悪い夢の中にいるかのような、不可解さから来る絶望に塗りつぶされる。

 

 

 周囲の森林は、もはや原型を留めてはいなかった。

 

 ゼンマイのようなシダ植物が人間よりも大きく成長し、肩に触れた木は実の代わりに昆虫の目玉が無数に成っている。

 

 鳥の羽が葉の代わりに一面に茂っている大樹がある。

 

 その樹皮が、哺乳類と思しき動物の皮膚へと変わっている木がある。

 

 

 

 

 心が、その周りの肉と同時に折れる音がした。

 

 

「総員……撤退だ……即座に離脱しろ! ……俺が、殿を務める。いいか、周りに一切目を向けるな」

 

 吐きそうになるのを必死にこらえ、マリアンは三人の隊員達に撤退を伝える。

 隊員達は、それを無言で受け入れた。変態し熱狂しているコゼットまでもが。

 

 

 

 散開して離脱した三人を、アストリスは追う事はしなかった。

 その興味は、マリアン一人に向いているらしい。

 

「化物……め」

 

 声を絞り出し、マリアンはアストリスと向き合う。

 その手足の異形は元通りとなり、元の人間そのものの姿へと戻っていた。

 

 

「ずっと運動していなかったんですもの、楽しかったわ! さようなら、勇士になれなかった勇士さん」

 

 名残惜しい、という感情を少しだけ見せながら、アストリスが一歩、また一歩と近づいてくる。

 

 

 

「誇り高いフランスの兵として、貴様だけはここに留めさせてもらうぞ!」

 

 そもそも、規格が人間と異なる何かなのだ。触れて良い存在では無かったのだ。

 だが、それを後悔するには遅すぎる。

 

 優秀な部下達は、きっとこの戦いで得た情報を持ち帰り、この化物を討ち果たしてくれることだろう。

 そんな死に対する恐怖を誇りと後を託した部下への期待で塗りつぶし、マリアンはアストリスに躍りかかろうとし。

 

 

「フランス? 今、フランスっておっしゃったの!? まあまあ、何という事でしょう!」

 

「……何?」

 

 自分の士気を上げるために叫んだ一言。それが、マリアンの命脈を左右した。

 

「わたし、アダムおじさまからフランスかフィンランド、エドガー君かオリヴィエ君、先に会った方にお世話になるんだよ、って言われてるの! ぜひぜひ、案内してくださいな!」

 

 

 怪物は、人間の情動になど左右されないものだ。いくら強く意思を持っていたとしても、それを容易く踏みにじれる存在にとって、そんなものはまるでどうでもいい事としか映らない。

 マリアンは、今日そのような事を、知った。

 

―――――――

 

「……胸にフランスの国旗は付いていたはずでは?」

 

「あの子、覚えてなかったんだよきっと」

 

 まるで映画でも見るかのようにポップコーンを片手に映像を見ていたアダムは、隣のプライドの呆れた声に、適当な相槌を打つ。

 

「しかし……まさか、アレが適合する人間が、存在したなど」

 

 憔悴しきったマリアンとその後ろをピクニック気分で歩いているアストリス。

 その姿を複雑そうに眺め、プライドは独り言のように呟く。

 

「うーん。それに関しては僕もビックリだったな。まさか友達がそれに適合してたなんてね! 聞いてみるものだよ!」

 

 携帯端末をスライドし、アダムは一枚の写真とそれに添えられた文章を見る。

 彼が言う"友人"との物々交換によって火星に届いた、二つの品を。

 

 

"α(アルファ)MO(モザイクオーガン)詰め合わせパック"。

 

 一つは、アダムに合わせたおふざけなのか、お歳暮のような箱に詰められた無数の臓物。

 

「まあ、αMO手術でしか成功しないっていうのは兎も角、本当に大事なのはやっぱり合う人、だよね」

 

『あ、それ私なら適合するかもね』

『嘘でしょ!?』

 

 与太話の中であっさりと決まった、もう一つの材料。見つかったのもすごいし提供してくれたのも不思議。

 いやぁ瓢箪から駒ってあるもんだねぇとしみじみ考えながら、アダムはもう一つの輸入品を見る。

 

 

"オリヴィエ・G・ニュートンのクローン胚"。

 

 ニュートンの一族の歴代当主の複製品たるその肉体。

 しかし、その元とは微かに異なる遺伝子が、偶然にも適合したのだろう。

 

 

 槍の一族の王、その胚から成長させ、アダムが太鼓判を押す手術ベースを組み込んだ。

 

 

 狂気の研究の結晶体を身に宿した、神の写身……即ち、アダム・ベイリアルとニュートンの一族の複合体―――それこそが、赤の女王アストリスの正体である。

 

 

 

「さぁて、地球がどんな風に変わるのか、見逃せないね」

 

 

 アダムは明るく言うと、愉快そうに笑った。

 最強と最狂を混ぜ合わせた、『最悪(災厄)』――その存在に、人はどう抗うのか、と。

 

 

 盤外にすら滲み出る狂気を、隠す気など微塵も無い様子で。

 

 




・オマケ1
―コラボ先キャラ紹介
マリアン・ヴィクトル(インペリアルマーズ)
 MO手術を受けた精鋭、フランス外人部隊の隊長。原作では直属の部下を率いて暗殺任務に赴いていた。
 フランス外人部隊の皆は様々な手術ベースを取り揃えているので是非読んでみてください。
 名前が女性っぽかったためちょっと迷って確認をしにいったのは内緒。


・オマケ2

オリヴィエ「ふむ……資料を読むにこの子は私の娘みたいなもの、って事でいいのかな? アダム君はおじさん、って言われてたし私の兄弟的な関係性になるのかな?」

グリード「【小生は叔父さん、と呼ばれていたから貴様の兄という事になるのかな? よろしくな、弟よ】」

オリヴィエ「嘘だろ……(素)」

・オマケ3

オリヴィエ「君は自分のクローンが勝手に女体化されてた人間の気持ちを考えた事があるのかい?」

エドガー「(ただひたすらに面倒くさそうな顔)」
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