剣製を為す転生者は好きな子のために剣を振るう。   作:星の空

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第3話 入園式と投影魔術(グラデーション・エア)

魔術回路が開かれて、属性が火と地、回路が50本、起源が武器と分かり、旅に出てから1年が経過し無事に実家まで帰ってきた今日、重要な事実を知った。

 

「あら、お帰りなさい。それじゃあとっとと着替えて入園式に行きましょうか。」

「は?入園式?何それ?疲れたから寝ようと思ったんだけど?」

「何言ってんのよ。日本の義務で5歳から幼稚園に行かないといけないんだからね?…………義務じゃないけど」

 

帰ってすぐにまた出ないとならない事実に固まる俺。それに気にせずにじり寄る我が母、美麗。

立ち直ったら俺はすぐさま玄関を飛び出して逃げる。しかし、美麗は見通していたのか、先回りをされていた。

結局、捕まり着替えさせられて幼稚園に連行されてしまうこととなった。

 

─ちなみに旅から帰ったときに持っていた荷物の中に世界で初めて脱皮した蛇の皮があるのだがそれは偶然拾った代物で、後に何処ぞの優雅たる紳士が触媒を用意出来ず初戦敗退したのは余談だ。

 

「───で、あるからして皆さん、仲良くしてくださいね?」

「「「はぁぁぁい!」」」

 

只今俺氏、園稚幼稚園(そのちようちえん)という幼稚園の体育館?にて入園式に出ていた。確かに数日前に5歳になったが帰宅直後に入園式は正直精神的にキツい。まぁ、師匠らの修行の方が全体的にキツかったのだが。

長かった式も終わり、教室に移される。教室に移動したら、お友達作りから始まった。

みんな、さ隣の子に話しかけたり、入園前から中がよかったのか、その子の所に行ったりしていた。

そんな中、俺はある子達と見つめ合っていた。

 

「「「………………」」」

 

俺は立ち尽くすが、目の前の2人は面白い。二人とも気が強そうだが、1人は無表情な子で俺に近づこうとして、もう1人の凛々しい子がそれを立ち塞がって俺を若干睨んでいるのだ。

その攻防に勝ったのは無表情の子だ。フェイントをかけて通り抜けて俺の方に来た。

 

「…………誰?」

 

──ガクッ

 

俺と俺を若干睨んでいた子は同時に崩れ落ちた。

 

「「じゃあなんだったんだあの攻防は!?」」

「…………む、雫が仲良さそうにしてる。」

「「何処が!?初対面だぞ!?」」

「…………それで、誰?」

 

どうやらこの無表情な子はマイペースな様で、凛々しい子は苦労性が伺えた。

 

「…………はぁ、俺は千子刃。好きな物は武器で特技は鍛冶だ。」

「……武器?鍛冶?じゃあ、刀造れるの?」

「造れるよ。日本の鍛冶師では当たり前だ。まぁ、銃刀法違反にかかるから今は(・・)造らないが。それで、あんたらは誰だよ。」

「…………八重樫巫都(やえがしみこと)。好きな物は刀で特技は剣道。」

 

マイペースな子が巫都と名乗った時にビリッと来た。そして思い出した。

この子が、1年前に小1時間も見つめ合っていた子だと。前世の幼馴染だと。

 

「私は─────」

「あぁ、向かい側の八重樫流道場んとこのか。」

「───八重樫って、何故挟んだ!?貴様もマイペースだな!」

 

苦労性な子が何か言っていたが、向かい側に住んでいるという旨を伝えるとツッコまれた。

 

「って、向かい側?貴様はあの屋敷に住んでるのか?」

「あぁ、1年前に1度だけ巫都(みこっ)ちゃんには会ったことがあるけどな。」

「………みこっちゃん………ポっ」( ⸝⸝⸝•_•⸝⸝⸝ )

「…………私の巫都を誑かすな!っと、私は雫。八重樫雫だ。覚えなくともいい。」

「OK、雫ね。もう覚えたから無理。」

 

自己紹介を済ませた後、しばらく他愛ない話をしたら先生から声がかかった。

 

「皆、仲良くなれた子はいるかな?今日はこれだけしかないけど明日から色んなことをして遊ぼうね!それじゃあさようなら!」

「「「さようなら!!!」」」

 

バラバラに親の元に駆けて行ったり、新しく出来た友達とお喋りをしながら外に出る子がいる中、俺は音を立てずに外に出る。

母の元に向かうと何処かの両親と仲良く話をしていた。

 

「母さん、早く帰ろ。」

「あら、終わったのね?刃、この人達は──」

「初めまして、刃君。俺は八重樫虎一、刃君の後ろにいる雫と巫都の父さ。………………娘達に手を出したら殺───」

 

────ゴスっ

 

「あらあら、手が滑っちゃいました。気にしないでね?あ、私は八重樫霧乃。雫と巫都の母よ。…………手を出したら責任とってね?」

 

この夫婦の第一印象は親バカとおっとりして抜け目がない奴だった。

 

「……ハハハ。そ、それじゃさようなら。行こ、母さん。」

「刃ったら何を急いでるのかしら?進行方向は同じなんだから雫ちゃんや巫都ちゃんと一緒に帰ればいいじゃない。私たちは後ろにいるから気にしなくていいのよ?」

 

逃げること叶わず、俺は一緒に帰ることとなった。まぁ、何事もなく無事に帰ったあとはすぐに布団にこもって寝たのは悪くないだろう。

3時間後に目を覚ました時は夕飯の時間になっており、エプロン姿の美麗と上半身裸で蒸気を出している村正が待っていた。

今日の夕飯は俺の好きなビビンバだった。

 

「さて、始めるか。」

 

夕飯を食べた後は、蔵の武器庫に来ていた。武器庫には様々な武具防具が入っており、この中で最も高いのは聖剣エクスカリバー(約束された勝利の剣)の鞘と、都牟刈村正(つむかりむらまさ)だろう。

今日は都牟刈村正を投影魔術(グラデーション・エア)投影をするためにここに来たのだ。

 

投影魔術

┗本来は失われたオリジナルを数分間だけ自分の時間軸に映し出して代用する魔術であり、外見だけのレンタル。投影した道具はオリジナルの道具と比べると劣化が激しく、さらに時間を経れば投影したものは世界の修正により魔力に戻ってしまう。また、イメージに破綻が起きても霧散してしまう。非常に効率の悪い魔術で、投影でレプリカを作るなら、ちゃんとした材料でレプリカを作った方がよほど手軽で実用に耐える。このため、野外で必要な道具をその都度調達する必要があるなどの特殊な状況ならともかく、魔術としては儀式で道具が足りない際に間に合わせで用意する、などの目的くらいにしか活用できない。

 

しかし、千子家は通常の投影魔術とは違う特殊な投影魔術なのだ。

投影で造り出したレプリカが本物とほとんど変わりないもので、本領も発揮出来る。だが、その本領を発揮したら壊れてしまうという欠点もある。

その上、本来ならば脳が焼き切れてしまう様な投影をしてもなんの問題もないという破格なものなのだ。

聖杯戦争にて出現するサーヴァントやそれらが持つ宝具、神造兵装の投影などといったものが、脳が焼き切れてしまう例えだ。

 

なので、現存する宝具となった都牟刈村正の投影をしても問題はないのだ。

説明する間に都牟刈村正を投影し終えたため、試し斬りをすることにした。

既に完璧に投影が出来る三池典太を投影し、これまた投影した模型に持たせてから構える。

 

「シッ!!!」

 

──チンッ

 

袈裟懸けで都牟刈村正を三池典太に切りつけた結果、都牟刈村正が折れてしまった。

まぁ、完璧に投影出来る三池典太と初めて投影した都牟刈村正では、三池典太が残るのは道理だろう。

 

「まだまだか。」

 

この後、三池典太が刃毀れするほどの出来栄えになるまで都牟刈村正を投影し続け、それが出来たら、風呂に入り、明日に備えて寝ることにした。

 


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