奏物語   作:ラトリラ

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「僕は思うんだよ」

 

 

無事、転生を果たし、新たな生を受けてから苦節12年──一人称を幼いこどもらしく“僕”に変えてから、11年程経った。長いようで短かった幼少期の事をかいつまんで話す前に、一言言っておこうと思う。

 

 

「僕に友人がいないのはおかしくない」

 

 

転生したからといって、前世と生活環境が変わるかといえば、そうではない。バカは死ななきゃ治らないとはいうが、転生者はその枠組みには入らない。何かしらの宗教に入っていた訳ではないが、輪廻転生があるのなら、それはやはり記憶はないものだと思う。記憶持ちの転生の場合、死んだバカは記憶も知識も引き継ぎ状態なため──バカのままなのだろう。

 

生きることを諦めた訳ではないが、生前からのコミュ障を発揮して、周囲の人に対して壁のない幼稚園から小学校低学年の間にできた友人なら、今でも連絡を取り合うぐらいだが、小学校高学年にもなるとある程度周りとの壁を作り始めグループというものも完成されてくるもの。趣味が合うもので集まった訳ではない僕の友人達は、それぞれ別の場所でグループを作り──僕はそのグループの間で揺れることになる。小学校を卒業する年には、大国に挟まれた小さな村のような立ち位置に、僕はなってしまっていた。大国の間で揺れ動き、対立したら関わらないように小さくなるしかないそんな状況だった。

 

そんなおかげか女子には恵まれず、遠巻きに悲鳴を上げられるようなまでになってしまった。コミュ障である僕は、同級生の少女達が笑顔で悲鳴を上げて逃げて行くのを、虚ろな目で眺めることしかできなかった。さらに女子関連の話題をいえば、高学年に上がって集団が善──少数が悪という風潮が蔓延すると、周りでふざけている男子グループを横目に、独りで本(ライトノベル等)を読んでいる僕は滑稽に映ったのだろう。女子生徒が視界の端で僕をチラチラ見ながらくすくす笑ったり悲鳴をあげたりするようになった。悲鳴を上げられてばかりである。

 

さて、少なくとも女子からは避けられ、男子にはどっち付かずになるしかなかった僕は、友人がいなくて当然なのである。そうだ、不幸の手紙ももらったことがある。怖くて中身は見てないが、可愛らしいピンクの便箋が僕の下駄箱に入っていたのである。

 

ラブレターをもらったと喜び勇んで帰った僕に、妹が現実を教えてくれたのだ。兄の恋文に興味を持った妹に、見せて上げる僕優しい──と思った矢先。妹が指から血を流し、これは不幸の手紙だ。と教えれくれたのだ。恐らく便箋の内側にカッターの刃でも仕込んであったのだろう。なぜ僕にとは思ったが、手紙の内容も恐ろしくて処分は妹に任せてしまった。小学一年生なのにしっかりした妹である。

 

不幸の手紙に至っては小学五年生ぐらいから頻繁に下駄箱に入るようになっていて、僕はどれだけ嫌われているんだと思ったほどだ。

 

そうだ。改めて自己紹介しておこう。僕の名前は如月奏音。奏でる音と書いてかなたと読む、小学校卒業式を迎えた、何故か女子に囲まれている。12歳だ。

 

うん。

 

うん、うん。

 

どういう状況だこれ。訳が分からない状況に巻き込まれたのは、

『友人がいないのはおかしくない(`・ω・´)キリッ』

と自虐的に小学校生活を振り返っていたところ、いつの間にか、本当にいつの間にか同級生の少女に囲まれて逃げ道がなくなったのである。いや、冗談ではない。僕は妹達に卒業おめでとう。お兄ちゃん大好きと言ってもらわないといけないのである。邪魔をしないでもらいたい。

 

いや、待て。もしかしてこれが噂のイジメというヤツなのではないだろうか。集団リンチではないだろうか。いや待て、確かに小学生の間は女子の方が力が強いとはいえ、こう暴力的なものに訴えるのは女子より男子の方で、女子はもっと陰湿な、気づかれにくいイジメを行使するはずだ。

 

じゃあいったい何故だ。

 

 

「き、如月君!」

 

「は、はい?」

 

「「「「好きです! 付き合ってください!」」」」

 

「え?」

 

 

なんだって。

 

俺は今告白されたのか。それも10人以上の可愛い感じの女の子たちから。もしかして遠巻きに女子が見ていたのはドラマとかで見る、〇〇君かっこ良くない。とかいうやつで、俺が見ると悲鳴をあげたのは、きゃーこっち見た。というやつなのだろうか。いや、待て待て。例えそうだとしても、百歩譲ってそうだったとしても、卒業式に告白する勇気があるのに、今までそんなそぶりは一度もなかったじゃないか。

 

いや。

 

いやいや。

 

あった。不幸の手紙として処理していた数多の手紙達。あれがまさか本当に噂に聞くラブレターだとしたならば。辻褄は合うのではないだろうか。僕は女子からの好意を古紙回収に出していたと言うのだろうか。最低じゃないか。いや、そもそも最初にもらった手紙が不幸の手紙だった事がいけないのだ。それを読もうとした妹が怪我したのも要因の一つだろう。

 

あれがなければもしかしたら、僕はラブレターを受け取って小学生のうちから恋人がいたかもしれない。だが、それは過ぎ去った事象だ。今はこの目の前の事に対処しなければならない。告白の返事を待つ少女達に、どう対応するべきか。悩む。遠巻きに舌打ちをしながら見ている男子諸君。助けてはくれないか。なるべく早く。あ──無理のようだ。彼らは親の仇でも見るかのような目でこちらを一瞥した後、関わりたくないといった様子で、視線を逸らした。

 

どうしよう。

 

・『ごめんなさい』

・『今は誰とも付き合えない』

・『実は僕、好きな子がいるんだ』

 

この中で一つ選ぼうか。みんなが納得してくれて、かつ安全にこの場を撤退できる方法。考えないと視線の圧で潰される。

 

「・・・えっと。ごめんなさい」

 

「「「「えぇ〜!!?」」」」

 

「ぁ、あー。僕、好きな奴がいるから」

 

 

そう言って固まった女子達から逃れ、家族の待つ場所へ小走りで向かう。ある意味地獄を抜け出した僕は安堵の息を一つついた。助かった。そう思った、思ってしまったのである。

 

思えばこの発言から、僕の妹はおかしくなったのかもしれない。今、もう一度選び直せるのなら、ぜひとも『今は誰とも付き合えない』を選びたい。

 

地獄を抜け出したと一息ついた僕を待っていたのも、また地獄──いや、地獄に住む鬼のようだったのだから。

 

 

「お兄ちゃん! 好きな子って誰なの? 私の知ってる子? まさか、せんちゃんなの?!」

 

「待て待て待て! 月火ちゃん。僕の好きなやつがなんだって? せんちゃんって確かお前の同級生だったよな!? そんなわけないだろ! 僕が好きなのは月火ちゃんの知らない子だと思う!」

 

「兄ちゃん兄ちゃん。その好きな子っての、いつか紹介してくれよな!」

 

「なに両親が息子に彼女出来たのを喜んだ反応してんだよ! お前は僕の妹だろうが!」

 

 

そうだ。この子達の事も、紹介しておかないと。

 

おっきい方の妹、如月家長女。如月火憐。兄である僕に対し、なぜか運動面での対抗意識を持ち、僕とは違い実戦空手の道場に通っている。

 

ちなみに僕は前世ではやったことのなかった合気道の道場に通い、思い通りに動く体で無双し、順調に力をつけていた。

 

小さい方の妹、如月家次女。如月月火。可愛らしい容姿とは裏腹に、短気でヒステリック。将来はヤンデレにでもなるのではないかと不安が募る。

 

あ、そうだ。もう一人、家族ではないが、家族になりかけの人物。老倉育。ツインテールが可愛い女の子だ。

 

お察しの通り、妹が生まれたとき、名前で僕は察した。ああ、僕は阿良々木暦の立場に立っているのか、と。初めは本当にそう思っていた。だけどそうじゃないことに気づいた。

 

僕はアニメの中に転生したんじゃない。どちらかと言えば実写ドラマに近いだろう。僕が、いや、僕たち転生者が転生するのは、生まれ落ちるのは、原作など存在しない、世界を綴る制作者などいない、そこに生きる人達が作る世界。

 

その事に小学校三年生で気づいた僕は、この世界を本気で生きようと決めた。それと同時に、『キャラクターでハーレムをwww』等と考えるものは、恐らく転生した世界を原作と認識していると認定した。

 

転生を果たしても現実を認識できていない、馬鹿は死ななきゃ治らないってヤツだ。

 

確かに、主人公成り代わりの場合、彼らの動きを模倣すれば、原作と呼ばれる世界に繋がるだろう。だがそれは、あくまで原作に近い世界であり、決して漫画の世界ではないのだから。

 

僕はハッピーエンドが好きだ。みんなが笑って物語が終わるのならどれだけ素敵なことだろう。と思っていた時期が僕にもありました。

 

 

まさか苦労せずに生きていると、苦労したくなると思うのは初めての経験で、僕はこの満たされない欲求を満たすために、中学に進級するという節目のこの時期に、何かを新しく始めてみようと思う。




月火side

お兄ちゃんはすごくモテる。

本人に自覚はないみたいだけど、イケメンだし、大人びてて、女子から見たらとってもかっこよく見えるのだ。

ある日お兄ちゃんが小躍りして帰って来たから、何かあったのか聞いたことがあった。するとラブレターをもらったらしい。まだ開けていないというので、見せてもらうことにした。

お兄ちゃんがラブレターをもらったことがなんかムカついて、破り捨ててやろうかと思ったけど、紙をごみにするのはお兄ちゃんに怒られるのでやらなかった。

だけど紙で指を切って、思い付いた。大袈裟にいたがって、これはラブレターに見せかけたイタズラだとお兄ちゃんに教える。お兄ちゃんは私の手にある手紙を見てわなわなと震え、自分の部屋に飛び込んでた。

手紙は捨てておいてと言われたが、流石にただ捨てる気にはなれず、中を読んで後悔した。お兄ちゃんは学校で有名な美少女達から好意を寄せられているらしい。

その後もラブレターをもらって帰っては来るものの、古紙置き場にポイポイ入れるお兄ちゃんを見てると、不幸の手紙作戦は上手くいったのだと、思った。

でも予想外だったのが卒業式。お兄ちゃんに6年生の美少女が群がりあろうことか直接告白をしたのだ。目を白黒させていたお兄ちゃんだが、意を決して断った。

でもお兄ちゃん。わたし、


お兄ちゃんの好きな子なんて

知らないんだけど?
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