絵描きのIS   作:Haganed

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何かお気に入り登録100名突破してるんですがそれは。

読みやすい読みやすい言ってくれてる読者さんの声はありがたいんですが、以前の作品が何かもうあれすぎただけであって(失礼)

正直、自閉症とかアスペルガーとかADHDとかの主人公ものって少ないのが現状ですからね。珍しいタイプと言われるのは予想してはいました。

話変わりますが(急)
よくテレビで私と同じような人が活躍している姿を映すじゃないですか。実際は親がその理解を示してくれているから天才ぶりを発揮するのであって、理解のない人に関わったら才能なんて地に埋まってしまいますからね。

……何が言いたいのかというと、今回はそんな感じの話です。


天才 3

 初めて生で()()()を見た時、違和感だけが芽吹いた。同クラスとなる女子に連れられながら席へと誘導される姿を見て、まるで介護のようだと思えた。しかし少ししてみればどうだ? 他クラスの者がこぞってそいつの周りに集まり黄色い声を出していたり、サインを貰おうとする者が居るではないか。本当にコイツが、テレビで出ていた奴なのかという永遠に解決しそうにもない疑問にぶち当たった。

 

 ()()()()()。それだけで世界で有名になるほど凄い奴とは覚えていたが、中身はこんなのだとは思っていなかった。だが織斑先生……千冬さんが言うには、高機能自閉症とアスペルガー症候群を患っているのであのような行動を取るのだと言った。

 

 ……この人生でそのような言葉は1度も聞いたことがない。いいや、そもそも興味自体もなく、知ろうともしなかった。ひたすらに剣を振り続けて、結果対戦相手から罵詈雑言を浴びせられた私には。病の知識は風邪だけしか分からない私には。その症状とやらは単に現実逃避したいだけの“逃げる”ための言い訳に過ぎないと、そんな風に思っていた。

 

 1度教室を抜け出したそいつは、あろうことか絵を持ってきて戻ってきた。あの千冬さんに対して露骨に嫌そうな表情を向けた後に、態々新作の絵を持ってきたその度胸。その時の我の強さ……成程、先程のオルコットとやらが言ってた通りだ。完全に()()()に生きているのが分かった。

 

 本当ならば私はここでそいつに言わなければならないのだろう。“勝手に出て行って勝手に戻ってくるなんて何様だ”と。普通なら言わなければならないのだろう。けれど、そいつだけは──

 

 

「えっとね、さっきね、終わったばっかりだからね。あとねー……明日にならないとね、見れないの。」

「ってフーくん、これまた立てて運んだでしょ。絵はちゃんと横向きにして運ばなきゃダメでしょ。」

「むー……だって……」

「だってじゃないの。ちゃんと他の人に頼まなきゃ。」

「怖いんだもん……。」

「ローマ法王と一緒に写真撮ったのに?」

「あの人、安心するから好きなの。何か、ここの人は、怖い。」

 

 

 ここの人は怖い。つまりはこの学園に居る生徒や教職員含めた全員が怖いのだろうか。はたまた教職員だけ、もしくは私達だけが怖いのか。それは兎も角として、そいつは言い(ども)ることもなく()()とハッキリ言い切った。それも全員に聞こえるぐらいの声量でだ。

 

 ──あんなように自分は本音をハッキリ言ったことはあったか?思い出してみるが全くない。いつもいつも隠してばかりで、そのせいで失敗していた。隠すことが私の“逃げ道”になっていることに気付いたのは、あの“怖い”という発言のすぐ後だった。

 

 今なら分かる。コイツは強いんだ。弱々しい第一印象があるが、その芯は真っ直ぐ立っている。誰に対してであろうともハッキリと自分の意見を言えるその強さ、私には無かった強さに──焦がれている。求めている。そんな思いだけが私の中を巡っていた。

 

 ……そういえば、一夏はアイツのことを良くないような雰囲気で言っていたな。今だからこそだが、そればかりは褒められたものでは無い。しかし一夏も何か考えていることがあって、そのように言ったと思いたい。授業が終わり次第、そのことについて聞いてみよう。

 

 

──

───

────

─────

 

 

 授業が終わると、途端に1組のクラスに人が押し寄せる。目当ては勿論織斑一夏と波山楓花の2名。しかしその扱い方に色々と差が生じているのは明白である。織斑一夏の方は見世物のパンダが如く、遠くでガラス越しに観察されているような感じだ。対して波山楓花の場合はというと、新作の絵を見せてほしいだの、サインを書いて欲しいだの、タトゥーみたく腕に絵を描いて欲しいだのと欲が見え見えである。

 

 そんな波山楓花の元に、1人の生徒が来た。先程織斑一夏と口論に発展しかけていた、あのセシリア・オルコットであった。

 

 

「失礼します、フウカ・ナミヤマ氏。」

「んぇ?」

 

 

 そう言いながら真横に首を傾けそうなぐらい、首を傾げる彼。オルコットの方は貴族、こうしてあの天才画家と同じクラスとなるだけでも一生の儲けものではあるのだが、個人的に交流を持っておけばイギリスの関係性がさらに深まると考えていた。

 

 

「チョコ」

「……はい?」

「チョコ」

「えーっと…………?」

「……フーくん、失礼なこと考えてる?」

「ん?」

 

 

 どうやら彼は彼女自身というよりも、彼女のそのロール髪がコロネに見えたようだ。チョココロネが好きなのだろうか、オルコットの巻き髪にチョコを入れたらチョココロネだと単純にそう思っただけであろう。そもそも彼にとって失礼かそうで無いかというのは本当に眼中にすらないのだろう。

 

 そんなことは悟れないのも仕方ない。チョコと言われたオルコットは彼の考えは知り得ない。

 

 

「えーっと、チョコが欲しいのですか?」

「ううん、要らない。」

「あら?」

「それ。」

 

 

 おや、彼がオルコットの巻き髪を指さしているではないか。

 

 

「これ、ですの?」

「チョコ入れたらチョココロネー。」

「──あぁ、成程。」

 

 

 オルコットはそれ以上ツッコむことを止めた。

 

 

─────

────

───

──

 

 

「一夏、ちょっといいか。」

「んぉ、箒。どうしたんだよ、目を向けてもそっぽ向くし。」

「それは……いや、それよりもだ。」

 

 

 久々にこうやって箒と話をするなぁ。もう結構な年数経って、箒は本当に綺麗になったな。

 

 

「聞きたいことがあってな……まぁ、ここではなんだ。屋上にでも行って話さないか。」

「え?……おう、別に良いけど。」

 

 

 そう言って箒と一緒に屋上へと向かう。その屋上へと着くが、あまり人がいる様子はなさそうだ。しかしここで大勢で弁当を食べてピクニック気分を味わうのも良さそうだしな。俺と箒は柵にもたれかかっていたら

 

 

「なぁ、一夏。」

「何だよ?」

「オルコットとの言い合いの際、なぜ波山楓花を引き合いに出した?」

「何でって…………というか、さっきオルコットだって引き合いに出してたじゃないか。」

「……言い方が悪かったな。なぜ波山楓花に対してあのようなことを言った? 先程千冬さんが言っていた筈だが。」

「いや、だってさ───本当はアイツにそんな病気は無いんじゃないかって。」

「それは何故?」

「だって聞いたこともないじゃないか。」

 

 

 そう言ったあとの箒は何でかため息が出て視線を下げていた。

 

 

「聞いたことないから、その病気は本当は存在しないと決めているのか?」

「箒も聞いたことないだろ。」

「──一度だけ、波山楓花を密着した番組を見たことがある。私はな。」

「知ってたのかよ。」

「その番組で知ったというべきだな。その時、私も一夏と同じような反応をした。本当にあるのかと…………でも違っていた。」

「箒?」

「一夏。最初生でアイツを見た時、私は違和感を覚えた。ニュースで報道されるアイツとの違いがそうさせていた。……こういうのもあれだが、アイツは強い。そう思った。」

「いやどこが?」

「それは──」

 

 

 その時授業を開始するチャイムが鳴り始めた。

 

 

「──その話はまた後だ一夏!」

「っておい! 箒待てって!」

 

 

 アイツが強い。 何で箒はアイツのことを強いと言った。分からない、強いのは千冬姉とかだろ。何であんなワガママな奴が強いって思うんだ?そんな疑問を孕んだまま急いで教室に帰ったら、千冬姉に拳骨を貰った。……本当に痛い。

 

 

──

───

────

─────

 

 

「いよぃしょっと」

「よしょっと……ありがとー」

「どういたしまして。でも今度運ぶ時は、ちゃんと他の人にも手伝ってもらうこと。良い?」

 

 

 決められた寮の部屋、鷹月静寐と同じ部屋で就寝する部屋に絵を運んだ。波山は幼馴染に言われてとしょんぼりとする。正直なところ、彼は人とのコミュニケーションを取るのが苦手だ。コミュニケーションの取り方がそもそも理解できない上に絵との接し方しか知らない彼の場合、学生生活では致命的である。

 

 彼自身が閉鎖的な上に、画家としての関わりしか持とうとしないので彼が困ってなければそれでも良いのだろうが。生憎、それを良しとしない者は必ず1人ぐらい居たりする。SPの方は既に別の人物に護衛を任せているので帰っている。

 

 コンコンとドアをノックする音が部屋内に響くと、鷹月が“はーい”と返事をして誰なのかを確認するために扉を開けた。すると身の丈にあっていない制服を着た人物、同じクラスメイトの『布仏本音』が来ていた。

 

 

「やっほー。」

「本音さん、何か用事?」

「言っても良っか。ナーミんの護衛をすることになったの〜。」

「あぁ……放課後SPの人が言ってた後任の人って、本音さんだったんだ。」

「といっても、緊急時に動くぐらいだね〜。何か起きたらかんちゃんとナーミん、シズシズを守るだけだし。他にも護衛居るからね〜、私の出番無いかも〜。」

「それでも挨拶に来てくれてありがとう。フーくん、ちょっと来て。」

 

 

 呼ばれたので来てみれば、彼からすれば人形みたいな小ささの人が居るという認識が生まれた。そして彼はこうも思った、“このお人形さんみたいな人を抱きしめたら安心するかも”と。そして本音の背筋に何やら変なものが通って行った。

 

 

「フーくん、本音さんはね…………あれ、フーくん?」

 

 

 呼びかけに答えない。代わりにその場でしゃがむと───

 

 

「むぎゅう」

「!?」

「フーくん!?」

 

 

 本音をめいっぱい抱きしめたではないか。本音はその中から出ようにも目の前にいるのは重要人物、下手に傷付けては護衛の意味もなく本末転倒である。しかし今この状態は本音にとって地味に呼吸が出来ない事態にある。

 

 当の抱きしめている本人はというと、本音から漂ってくる幼馴染とはまた違う不思議な香りを楽しみつつ抱き心地が良いので笑顔になっていた。総合的に見ていると──おのれ波山楓花、羨ましいぞ。

 

 

「フーくん、本音さん苦しそうだから離してあげて。」

「やー」

「やー、じゃないの。ほら、バタバタしてるからね。あ、それか少しだけ力抜くのは?」

「やー!」

「もう、やーじゃないの。」

「ムグムグムグぐぐ……」

 

 

 本音はこの時悟った。“この人何をしでかすのか本当に理解できない”と。

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