トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~ 作:Lycka
早めに出したかったのですが、土日ゴロゴロしすぎて…w
ちょくちょくは進めてたのですが、いかんせん眠くて。
睡魔には勝てませんな
俺はまだ小さかった頃、周りからイジメられていたことがあった。理由は様々だった。母が茶道と華道をしていて、それに小さい頃から付き合わされていた。それを理由にイジメられていたこともある。小さい子供がイジメを始める理由なんてものは単純かつ明確なものだった。
"周りとは違う" "あいつだけ違う"
そんな子供だからこその純粋な悪意が向けられていた。そんな時、香澄が、香澄だけが手を差し伸べてくれた。
「なんでそんなに悲しい顔してるの?」
「見りゃ分かるだろ。イジメられてるんだよ…。俺と話してたらお前までイジメられちまう。早くどっかいけ」
「そんな悲しい顔してるのにほっとけないよ」
「私は戸山香澄。君は?」
「……。斎藤宗輝」
「じゃあむーくんだ!よろしくね、むーくん!」
それから香澄と一緒に居ることが多くなった。正直、最初はただただ付きまとってくるウザい奴としか思わなかったが、段々と香澄と居る時間が楽しくなってきていた。そして、香澄と居る時間だけ周りのやつにイジメられることは無かった。
香澄が俺の居場所を作ってくれた。香澄のお陰だ。
だから、昔香澄が俺を救ってくれた様に、今度は俺が沙綾を救いたい。それは、香澄も同じことを思っていると思うから。同時に香澄も助けてやれる。香澄は昔の事はなんとも思ってないかもしれない。けど、俺は香澄に恩返しがしたい。
だから、沙綾を救う。
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今日は日曜日。
香澄達が有咲の家の蔵で練習をするというので付き添いで見学に行く。実は、今日初めて演奏を聴く。果たして、香澄に音楽が出来るのか不安半分期待半分の気持ちで香澄の家へ向かっていた。そして、香澄の家の前。
「おーい、むーくん!おっはよ〜!」
二階にある香澄の部屋の窓から俺の姿が見えたのか大きな声で挨拶してくる。昔っからこういうところも変わってねぇなぁ…。
「いいから早く準備して降りてこ〜い」
「もうちょっとかかるから家入ってて〜!」
もう約束の時間5分前だぞ。蔵に着く時間考慮してこの時間にしたんだがもう少し早める必要があるな。香澄に言われた通り、家に入ろうとした寸前で家のドアが勝手に開きだした。
ガチャ、ドンッ!
「いってぇ!」
「あっ、ごめん!大丈夫宗輝⁉︎」
この子は香澄の妹の戸山明日香。今は花咲川学園の中等部にいる。明日香とも小さい頃から一緒に居るので、俺も妹同然の感じだ。そしてなにより、可愛い。ここ、重要だぞ。テストにも出すからな。
「ああ、大丈夫だよ明日香」
「ごめん、外から声が聞こえたから…」
申し訳なさそうな顔をして少し俯く明日香。
こいつは昔から自分はなんにも悪くないのに自分のせいだと思うところがあるからなぁ。まぁ、香澄とは正反対の性格だな。こういう時にどうすればいいかを俺は知っている。
「明日香は悪くないだろ?俺は大丈夫だから。気にすんなって」ナデナデ
「んっ…。あ、ありがと///」
「ん?なんて言ったんだ明日香?」
「な、なんでもないっ!」ガタッ
ありゃ?怒らせちゃったかな?戻って行っちゃったよ。
まぁ明日香が元気になったならokだな。とりあえず、中に入っておくか。
そう思った矢先、またドアがひとりでに開いた。
ガタッ、ドンッ!
「むーくん!お待たせ!……あれ?むーくんどこ?」
「お前もかよぉ…。いってぇ」
「おお!むーくんごめん!ほら、遅れるから早く行くよ!」
姉妹揃って仲のよろしいこって。
お陰でこっちはたんこぶできちまったぜ。しかも、明日香と香澄にぶつけられたところ一緒だしな。俺はなんとか起き上がり、既に道路に出ていた香澄に付いて行った。
***
時間は約束の10時を少し過ぎた頃。
俺も香澄も途中から遅れる気配がしたのでダッシュ。その甲斐あって、なんとか集合時間には間に合った。有咲が気を利かせて飲み物を出してくれたのでありがたく頂く。
「今日は練習するんだろ?なんの練習するんだ?」
「そーいえば言ってなかったな。私ら近頃ライブ予定だから」
「あー、はいはい。ライブねライブ。……はぁ?」
「有咲ちゃん、それじゃ説明不足だよ…」
「どういうことなんだ、りみりん」
「あのね、私達はまだまだ下手だから有咲ちゃんのお婆ちゃんに練習の成果を見てもらおうってことになったんだ。」
「そう。蔵でライブするの。名付けてクライブ!」
蔵とライブをかけてクライブか。おたえ、自慢げにしてるけど全然上手くないぞ。
「そのクライブはいつ予定なんだ?」
「一週間後だよむーくん!」
「全然時間足りないんじゃないかそれ」
「だから、むーくんに指導してもらおうと思ったの!むーくん昔音楽やってたでしょ」
「音楽っていっても、ピアノやらギターやらを触ってた程度だぞ」
確かに前まではピアノ習ってたし、ギターも弾く練習はしてた。最近はあまりやってないからできるかどうかわからんが。まぁ、実際に俺がやるわけじゃ無いんだし教えるくらいならやってやるか。
「練習みてアドバイスするくらいならいいぞ」
「やったぁ!じゃあ、みんな準備しよ!」
それから香澄達は手っ取り早く準備を済ませた。
見たところ有咲がキーボードで、りみりんがベース、おたえと香澄のダブルギターってとこか。…なら沙綾はドラムか。
「準備できたか?」
「うん!ばっちし!」
「なら、頼むわ」
そして、香澄達がクライブで披露するのを予定していた曲を聴いた。自分でもびっくりだが、あっという間に演奏が終わっていた。どうやら香澄達の演奏を聴き入ってしまっていたらしい。そのくらい上手だったと思う。しかし、問題点が無いわけでは無かった。
「どう?何か感想は?」
「すごかったよみんな。香澄はしっかり歌えてるしおたえはギターで香澄のフォローしつつ自分のところも弾けてる。りみりんもベースの役割果たせてるし有咲がみんなを引っ張っていってる感じだな」
『やったぁ!(よっしゃ!)』
「でも…」
「香澄は歌えてはいるがギターが厳かになり過ぎ。ボーカルとギターの両立はすごく難しいことだ。香澄の場合歌は文句ないからギターの方を重点的に練習だな」
「了解であります!」
「そんでおたえ。おたえは基本的に技術は申し分ないな。香澄の分のフォローも的確にできてる。でもその分自分のソロパートが単純になってる気がするぞ。もっとおたえなりのギターを聞かせてくれ」
「うん、わかった。ちょっとだけアレンジしてみる」
「りみりんもベースとしての基礎的なことはできてるな。ベースはあんまり他の音に埋もれて聞こえにくいかもしんないけど一番重要といっても良いレベルのものだ。途中ちょっとだけ音ズレたろ?何ヶ所かあったから、通しで何回も練習だな」
「宗輝君すごいね!ありがとう!」
「最後に有咲。良い意味で言えば満遍なくこなせてる。でも、それも言い換えれば器用貧乏だ。それに、ギターとぶつかったりしてる部分もあれば、それを心配してスカスカになってるところもあった。もうちょいギターと相談していこうな」
「なんで一回聴いただけでわかんだよ…」
「キーボードについてはピアノ習ってたからそれなりに分かるんだよ」
こうして、みんなの問題点を出し合いながら練習を積み重ねていった。練習にちょくちょく沙綾も顔出してたけど、やっぱりあの感じは…。
でも今はクライブに集中だ。有咲のお婆ちゃんや明日香達にカッコ悪いところみせらんないもんな。
それに、今回のクライブで少しでも沙綾の気が引ければ儲けもんだ。頼むぜ沙綾、お前がいなきゃこいつらはこれからどうすればいいんだよ…。
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~クライブ前日~
俺は今やまぶきベーカリーに居る。もちろん沙綾も一緒だ。明日はクライブがあるからな。一応、沙綾も来てくれるらしいからあいつらも気合が入ってる。
俺は、あいつらのサポートに徹するだけだ。頼むぜみんな。
「なぁ沙綾。明日のクライブ一緒に行かね?」
「私はそれで良いけど宗君は大丈夫?みんなの手伝いとか…」
「それなら大丈夫。俺の手伝いはクライブまで。明日はお客として行くことになってるから。」
「うん、分かった。ならどーする?」
「俺が沙綾迎えに行くよ。時間は少し早めでいいか?」
「問題ないよ」
これでとりあえず沙綾をクライブに連れてくるミッションは成功だ。だが、まだ本命が残ってる…。それは香澄達にかかっていると言っても過言ではないだろう。俺に出来ることは、香澄達を信じることだけだ。この一週間、香澄達にアドバイスをしながら練習に付き添っていたが、香澄達が本気だということは見ていれば分かった。
だから、俺は信じてる。
***
~クライブ当日~
ピリリリリリ、ピリリリリリ。
目覚まし時計の音が鳴り響く。
今日はクライブの日だから寝てて遅刻なんてしてたら有咲になんて言われるか…。だが、身体の方は正直で思考回路とは違った動きをしてしまう。
目覚まし時計のアラームを止め、再度襲いくる睡魔に身を任せようとしていた。
しかし、俺には違った悪魔が迫ってきていた。
「むーくん!おっはよ〜!今日のクライブ楽しみだね!」
そう言いながら香澄がドアを開けダイビングするポーズをとるのが横目に見えた。
次の瞬間。
「まだ眠いからもう少し…」
「むーくん、おっきろ〜!」ドンッ
「ごふっ…。み、みぞおちはいったぁ…」
香澄の華麗なダイビングが俺のみぞおちを直撃した。
見事一発K.O。数分は枕に顔をうずめ悶えていた。しかしながら、時計を見てみると沙綾との約束の時間が迫っていることに気付く。今日が香澄達にとっても、俺にとっても、沙綾にとっても大切な日だ。寝過ごす訳にもいかず、身体を起こし準備を始めた。
~やまぶきベーカリー~
あの後、香澄はクライブの準備があるので先に有咲の家に向かった。そして俺は沙綾を迎えに行くためやまぶきベーカリーへ。ドアを開け周りに迷惑をかけない程度の声で沙綾を呼ぶ。
「沙綾〜、来たぞ〜…。って、純と紗南じゃないか。沙綾お姉ちゃんはどこだ?」
「奥で準備してるよ〜!」 「どっかいくの〜?」
「おうよ。今日は香澄達のライブ観に行くんだ」
「らいぶ〜?」
「そうだぞ〜。お姉ちゃん昔バンドやってたろ?」
「ごめんおまたせ〜。遅くなってごめんね宗君!」
「おう、おはよう沙綾。準備出来たし行くか!」
~有咲宅蔵~
「失礼しま〜すっと」
「あ、むーくん!遅かったね!」
「すまんすまん。純と紗南相手してた」
「香澄、揃ったし準備終わらせるぞ」
「うん、みんな頑張ろう!」
「クライブ成功させようね」
「オッちゃんも呼べばよかったな」
みんな気合入ってんなぁ。一人だけ違う方向に向いてる気がするが…
まぁ、香澄達ならやってくれるだろう。練習には俺も付き添ってきたし、やれることは全部やったはずだ。
人事尽くしてなんとやらとも言うし。運命なんてのは信じない派なんだけどな。
でも、こいつらの事は信じてる。音楽で人を変えられる。そのことを証明してくれ。
「よし!準備ok!」
準備が終わったみたいだ。このクライブに足を運んでいるのは、俺、沙綾、有咲のお婆ちゃん、りみりんのお姉さんであるゆりさん、明日香の5人だ。有咲のお婆ちゃんは光る棒を手に持ってる。
こっちも気合入ってるな。そんなお婆ちゃんを見て有咲が顔赤くしてるのはなんでだ?照れてるんだったら……めちゃ可愛いな。
りみりんはゆりさんが居るから緊張してるんだろうけど真剣な眼差しだ。おたえはさっきまでオッちゃんとか言ってたが、今は雰囲気が違う。香澄はいつにもなく少し緊張しているらしく耳の部分がぴくぴく動いている。香澄の癖である。あ、もちろん髪の耳の部分な。
「今日は集まってくれてありがとうございます!私たち一生懸命練習しました。頑張って演奏するので聞いてください!」
香澄がそう言ってメンバーと一通り顔を合わせた。
そして、香澄達の演奏が始まった。
驚いた。
練習には付き合っていたが、今までで一番の出来だったと思う。香澄はしっかりと歌いながらもギターを弾けてるし、おたえはソロパートの部分難しめだがこなせていた。りみりんのベースもミスなくできていて、有咲のキーボードもおたえや香澄と相談して決めた要領で弾けてた。演奏に聞き入っていて終わるのがあっという間だったように思える。有咲のお婆ちゃんは満足げにしているし、明日香や沙綾も楽しそうに笑っている。クライブはどうやら成功したようだ。俺も頑張った甲斐がある。
しかし……
「ッ!……」
「え⁉︎」
「……」
「なんで…⁉︎」
「なんでむーくん泣いてるの…?」
そう
俺は泣いていたのだ。
多分、次の投稿も遅れるかと思われます…