トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~   作:Lycka

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新たに☆9評価頂いた ムーンフォースさんありがとうございます!!
感想、評価は主のモチベにダイレクトに影響しますので滅茶苦茶嬉しいです!

今回は紗夜日菜回となります。
気付けば合計1万近い......すみません。
紗夜日菜推しの方々、思う存分召し上がれ。

それでは、35話ご覧下さい。


Produce 35#紗夜日菜サンドイッチ

 

 

 

 

"七夕"

 

 

 

皆さんはこの言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか。人によってはそれぞれで、例えば織姫と彦星の物語であったり短冊にお願い事をすることであったり。はたまた七夕祭りなんかもあるだろう。恋人同士でお祭りに浴衣着て行ったりなんかした日には幸せメーターが振り切れることであろう。

 

 

 

「しかし、何故こうなった」

 

 

 

 

今俺の目の前には美少女姉妹が無防備にパジャマ一つで眠っている。姉妹同じベッドで寝るんだなとか全然思ってない。朝早くに日菜から連絡が来て今すぐ家に来いとのことだったので、若干急いで来たのに肝心な二人が寝ててちょっとキレてるとか全然違うから。

 

 

 

「同じ色の同じパジャマ着て同じ布団で寝てるとか聞いてねぇよ」

 

「......んにゃ」zzz

 

「......すぅ」zzz

 

 

 

起こすのも憚られたので二人とも起きるまで待つか。流石にお昼頃まで寝てるとかは無いだろう。寝てたら最早それは紗夜さんでは無い。あの鬼の風紀委員である紗夜さんがお昼過ぎまで寝てるとか有り得ないはず。

 

 

 

「......俺も眠いし寝させてもらうか」

 

 

 

座布団の上に座りベッドに寄りかかる。俺とて寝ていたところを起こされているのでまだ睡魔は奥底に存在している。正直めちゃくちゃ眠たいので目を閉じればすぐにでも寝られる状況。別に二人とも寝てるから大丈夫だよな?

 

 

 

 

「おやすみ日菜、紗夜さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

~2時間後~

 

 

 

 

 

 

 

「......んぁ、やべ寝過ぎたか」

 

 

 

 

ふと目が覚める。確か机の上に携帯を置いていたので時間を確認する為に手を伸ばしたがそれらしき感触は見当たらない。下の方まで範囲を拡大して探してみると、どうやら充電されているらしくコンセントの近くまで移動していた。これは多分紗夜さんだろうな。

 

 

 

「やっと起きましたか」

 

「おはようございます紗夜さん」

 

「おはようございます」

 

 

 

俺の声が聞こえたのかドアを開けて中に入ってくる紗夜さん。既にパジャマからは着替えており部屋着なのか普段着なのかは分からないが可愛らしい服を着ていた。

 

 

 

「紗夜さんも最初寝てましたけどね」

 

「昨日は少し夜更かし......いえ、ギターのフレーズを考えていたので」

 

「まぁ俺としちゃ紗夜さんの寝顔が見られたので良しとしましょう」

 

「なっ⁉︎わ、忘れなさい!!」

 

 

 

分かりやすく顔を朱色に染め上げ照れる紗夜さん。美人って寝顔まで様になるって聞いてたけど予想以上だった。日菜の方が若干幼げな顔をしているが、紗夜さんの寝顔もあどけなさが見て取れて可愛らしい。唯一の心残りは我が携帯の"可愛いフォルダ"に保存できなかったことだ。有咲や沙綾、勿論香澄達の写真がいっぱいある。というより俺の写真はそのくらいしか無い。現実は悲しきかな、もっといっぱい写真撮ろう。

 

 

 

 

「今日は何の用ですか?」

 

「それは私から説明しよー!」

 

「日菜、どこ行ってたのよ」

 

 

 

部屋のドアを勢い良く開けて入ってくる日菜。紗夜さん同様に着替えを済ませているようで手にはコンビニのレジ袋っぽいのを持っている。俺はベッドに座り紗夜さんは机の前の座布団、そして日菜はてくてく歩いて俺の隣へ。

 

 

 

「まずは買ってきたプリン食べようよ!」

 

「お、良いな」

 

「はい、これお姉ちゃんの分!」

 

「ありがとう。でも、二人分しかないみたいだけれど」

 

 

 

ちょっと日菜さん、まさかまさかの公開イジメですか?僕流石にそれは泣きますよ。安易に"お前の分ねぇから!!"って言われてるみたいで悲しい。やっべ目から汗出てきそうちょっとトイレ。

 

 

 

「ふふーん、これを二人で食べれば良いんだよ!」

 

「それだと少なくなるけど良いのか?」

 

「ん?ちゃんと半分こするよ?」

 

「いやそういう問題じゃなくて......まぁ日菜が良いんなら俺も別に良いや」

 

 

 

 

結論、3個買ってきたら良くね?なんてことは言わない。日菜の事だ、紗夜さんを焚きつけるために違いない。今も悪戯好きな子供の様な笑顔で紗夜さんを見ている。一方、紗夜さんは紗夜さんで頰を膨らませて俺の方を睨んでいる。紗夜さんここは睨む相手俺じゃ無いでしょうよ。別に美人に蔑まれて喜ぶ様な変態じゃ無いですよ?一部の人にとっては紗夜さんの蔑みはご褒美かもしれませんが。紗夜さん女子にも人気ありますし。

 

 

 

「何か言いたげな顔ですね」

 

「リスみたいな紗夜さん可愛い」

 

「今のお姉ちゃん最高にるんっ♪としてるよ!!」

 

「ッ!!......からかうのもいい加減になさい!!」///

 

 

 

『はーい』

 

 

 

俺と日菜は顔を合わせてニヒヒと笑い合いながら同じく返事をする。結局、日菜→俺→紗夜さんで食べさせ合いっこした。途中誰が食べて誰が食べてないか分からなくなって、日菜と紗夜さんの両方からスプーンで突っ込まれた時は死ぬかと思った。死因がプリンって逆に天才かよ。天才を体現してる日菜でも無理だな。つまり俺は日菜より天才って事?いや、まだ死んでないから大丈夫だな。

 

 

 

 

 

「そろそろ今日の用事話してくれ」

 

「あ、忘れてた」

 

「日菜貴女ね......」

 

 

 

時々極度のポンコツっぷりを披露するので、最近は完璧超人では無いことが発覚した日菜である。

 

 

 

 

 

____________________________________________________

 

 

 

 

 

 

気を取り直して氷川家リビング。今はダイニングテーブルに三人で座っている。紗夜さんがコーヒーを淹れてくれるとのことだったのでお言葉に甘えて頂いておく。つぐんところのコーヒーも美味しいが紗夜さんが淹れてくれたのも中々。コーヒーなんてすぐ飲み干すもんでも無いが、気付けば中は空っぽに。それに気付いた紗夜さんが"今淹れ直すわね"と優しく微笑みながら言ってくれた。

 

 

 

「それで、七夕祭りがどうしたって?」

 

「この三人で一緒に回ろうよ!」

 

「言っときますけど、私は仕方なくですからね」

 

 

 

そう、本日7月7日の七夕。近くの商店街で七夕祭りなるものが催される予定となっていた。天気は日頃の行いのお陰か現在雲一つない空。祭りの開催時間も問題ない予報ときてる。

 

 

 

「俺はそれで良いけど香澄達が何て言うか」

 

「何故そこで戸山さんの名前が出てくるのかしら」

 

「まぁ幼馴染なんで毎年あいつらと行ってるんですよね」

 

 

 

七夕祭りを香澄達と一緒に行くのは最早毎年恒例行事となりつつある。いつも香澄と令香が色んな屋台の物をねだってくるのでこの日にお財布の中身が少なくなるのも毎年恒例。それを心配して明日香がこっそり自分のお金で買ってるのも知ってる。ちっとは明日香を見習って欲しいもんだ。まぁ俺もそこまで嫌って訳じゃないから良いけど。

 

 

 

 

「ダメだよ!今年は私達と一緒に行こうよ!」

 

「んなこと言ってもなぁ」

 

「私達とでは、駄目なんですか?」

 

「ぐっ......ここで涙目上目遣いは卑怯ですよ」

 

 

 

秘技・童貞殺しの紗夜さんアタックを喰らいノックダウンしてしまう。着々と男を堕とす手段を身に付けている紗夜さん。このままでは俺の身が持たないだろう。そろそろ俺も男友達とか作った方が良さそうだな。てかマジで何で周りにいないわけ?

 

 

 

 

「じゃあ香澄達に聞いてみて下さい」

 

「まぁ許可はもう貰ってるんだけどね」

 

「嘘つけ」

 

 

 

とは言ったものの、日菜が差し出した携帯の画面に映っていたのは香澄とのメールのやり取り。

 

 

 

 

 

[From:香澄ちゃん]

(本文)

 

七夕祭りはポピパのみんなで行くので大丈夫です!

日菜先輩も紗夜先輩とむーくんと一緒に楽しんできて下さい!

 

 

 

 

 

 

 

「か、香澄に捨てられた」ガクッ

 

「そんな訳無いでしょう......」

 

「てことで今日は三人でお祭り回るよ!」

 

 

 

 

あの香澄が、毎年俺と一緒じゃないと行かないと断言していた香澄がだぞ。何故だかポピパのみんなに負けた気がしてならない。もういいもんね、それならこっちはこっちで楽しむから。

 

 

 

「でも祭りまでまだ時間あるぞ」

 

「そうですね、何かやる事があれば良いのですが」

 

「やる事ならあるじゃん!」

 

 

 

生き生きとした顔をしている日菜。こういう時は碌なことにならないのがテンプレだがもう気にしないことにする。若干紗夜さんも諦めムードだしな。

 

 

 

 

「今の内に浴衣の着付けしとこうよ!」

 

「確かに時間かかりそうだしな」

 

「なら早めに準備しときましょうか」

 

「一旦家に帰っても良い?」

 

「ダメ、宗輝も浴衣着るの」

 

 

 

浴衣着用を強要されてしまった。でも今まで香澄達と行く時も浴衣なんて着たことないからなぁ。勿論家にも浴衣なんてないし。まず父さんのやつなんて着たくもないし。かと言ってここで拒否するのも何か気が引ける。

 

 

 

 

「でも俺浴衣なんて持ってないぞ」

 

「それなら商店街のお店で一日貸し出ししてくれるところがあるらしいわよ」

 

「なら早く着替えてそのお店から直接お祭りに行こ!」

 

 

 

確かに何か見覚えあるな。商店街の老舗の古着屋か何かでそんなことやってた気がする。1日だけだったら買う必要も無いしお金も安いだろうし良いか。

 

 

 

「じゃあ俺はリビングで時間潰しとくから着替えてこいよ」

 

「覗いたらポテトで殴りますからね」

 

「え、紗夜さん今何て?」

 

「覗いたらポテトで......」

 

「お姉ちゃん早く着替えようよ!」

 

 

 

日菜が何か言いたげだった紗夜さんを連れて二階へ上がる。さっきのは幻聴だ、忘れろ斎藤宗輝。世の中には知らなくて良いことも沢山あるんだから。紗夜さんが無類のポテト好きなのは前々から気になってはいたが、まさかそこまでいっているとは。今の内に冷凍庫にあるポテトを移動させとこう。これは万が一の為だ、決して覗いたりする訳では無いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

~商店街ー

 

 

 

 

 

 

「まだ早いけど結構人居るのな」

 

 

 

日菜と紗夜さんの着付けが終わり、次は俺の着替えの為商店街へと足を運んでいた。流石は姉妹、浴衣までお揃いとは。正確にいうと所々細かいところで差別化はされているものの、ほとんど同じものと言っても遜色無かった。二人共素材が良いので浴衣姿が凄く似合っていて可愛い。という事をストレートに伝えてみたところ日菜は相変わらずの反応。紗夜さんは物足りない顔をしていた。

 

 

 

 

「紗夜さんヘアアレンジしてから印象変わりましたね」

 

「......具体的にはどのあたりが変わりましたか?」

 

「んー、うなじのあたりが実に......」

 

「へ、変態ッ!!」///

 

「ぶべらっ!!」

 

 

 

何処からともなく取り出された冷凍ポテトにより殴打されてしまう。紗夜さん、それは一体何処に隠し持ってたんですか。ポテト持ち歩いてる紗夜さんの方がよっぽど変態に見えますけどね。

 

 

 

「ねーねー、私は?」

 

「日菜は逆に大人っぽくなった感じがする」

 

「やったぁ!!お姉ちゃん私大人っぽい⁉︎」

 

「そういう事聞く辺りまだまだ子供っぽいわよ」

 

 

 

紗夜さんの反応にぶーぶー言いながらも嬉しそうな日菜。こうしてみると二人共色んなところが違うがやはり姉妹なんだと改めて実感する。ウチに似てるところもあるしな。

 

 

 

「着いたな......"彗星堂"って何か有咲ん家のパクリか?」

 

「老舗な訳だし多分違うでしょう」

 

「まぁどっちでもいいじゃん、とにかく入ろうよ!」

 

 

 

日菜に連れられて入店。物凄く腰が低いが優しい笑顔を向けていらっしゃいと迎えてくれるお婆ちゃんが一人。もしかして一人でここやってんのか?見たところ数も多そうだし無理じゃね?

 

 

 

「祭り用の浴衣貸し出しかい?」

 

「あ、はい」

 

「あんた男前だから何でも似合いそうさね」

 

「......やっぱそうっすかね?」

 

「貴方は少し謙虚という言葉を知った方が良いですね」

 

 

 

紗夜さんに頰をつねられて赤く染まってしまう。日菜は一人で中を見て回って"これ可愛いね!"とか"これお姉ちゃんに似合いそう!"とか独り言言ってる。何か子供っぽいな。んー、日菜が子供だとすると俺と紗夜さんが夫婦と......。うん、中々悪くない。

 

 

 

「また変な事考えてますね」

 

「痛い痛い、紗夜さん離してお願いします」

 

「あんたら恋人かい?そっちの子もべっぴんさんでお似合いさね」

 

「やっぱそう思います?」

 

「だからそれを辞めなさいと言ってるんです!」

 

 

今度は両手で右左両方の頰をつねられた。流石は紗夜さん、全然加減してくれない。そろそろ俺の頰が赤く染まりすぎてお肌に良くないので紗夜さんの腕を持って少し離す。すると紗夜さんはキョトンとした顔をする。そんな表情しても無駄ですよ、ぜんっぜん可愛さは隠れてませんから。

 

 

 

「さっきのは紗夜さんの事ですからね?」

 

「というと、どういう事ですか?」

 

「紗夜さんが超絶美人だってことです」

 

「......貴方はいつもズルイです///

 

 

 

 

紗夜さんが何か呟いた気もするが気にせずいこう。お婆ちゃんが何やらさっきから俺の浴衣を見繕ってくれてるっぽいのでそちらへ向かう。丁度日菜が紗夜さんを引き連れて女性用の浴衣コーナーに行ってくれたし。

 

 

 

 

「ほら、こっち来なさい」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

~祭り会場~

 

 

 

 

 

 

『へいらっしゃい!!』

 

『安いよ美味いよ!!』

 

 

 

 

「あちぃ......」

 

「余計に熱くなるからやめなさい」

 

「そうだよ!今最高にるんっ♪っとしてるよ!」

 

 

 

 

着替えも終わり祭り会場。屋台が立ち並び、人の熱気と物の熱気をダブルで感じ既に汗をかき始めていた。そんな俺に畳み掛けるようにして熱さが襲いかかってくる。それは何故かって?

 

 

 

「何で二人共そんなにくっついてんの?」

 

「一緒に回るって言ったじゃん!」

 

「離しておくと逃げかねませんからね」

 

「さいですか......」

 

 

 

右にはりんご飴を片手に俺と手を繋いでいる紗夜さん。対して左にはわたあめをパクパクと食べながら俺と腕を組んでいる日菜。二人共総じて距離が近すぎる為人肌の温もりなんて言えるレベルじゃない。それに加えて浴衣なんていうのを着ているせいで感触がいつもよりダイレクト。紗夜さんは手を繋いでいるだけなのでまだいいが、日菜は何せ腕を組んでいる為ふにっとした柔らかさが上腕二頭筋と三頭筋の辺りに。

 

 

 

 

「花火は確か19時から開始か」

 

「あんまり時間もありませんし回りましょうか」

 

「あれ、むーくんだ!!」

 

「香澄ちゃん走ったら危ないよ......」

 

 

 

 

遠くから俺を見つけたのか走ってくる香澄。それに連れられてポピパメンバーもこちらへやってくる。勿論みんな浴衣を着ているので走りづらいだろうが、香澄にそんなことは関係ない。

 

 

 

「むーくんこれどう⁉︎」

 

「んー、毎年見てるから新鮮味が無い」

 

「そんな⁉︎じゃあ今から着替えてくるね!!」

 

「そんなこと出来るわけねぇだろ!」

 

 

 

相変わらずナイスツッコミだ有咲。香澄の浴衣姿なんて毎年恒例なのであまり新鮮味を感じなかったが他の4人は違う。りみりんはピンクっぽい浴衣に花柄、おたえは青を基調とした浴衣に白を所々取り入れたデザイン。沙綾は橙色に茶色のアクセントが効いてて綺麗だ。有咲は浴衣云々の前に大きい、何がとは言わない。浴衣はお胸が小さい方が似合うとか誰か言ってた気がするがそんなことない。有咲めっちゃ可愛い惚れそう。

 

 

 

 

「さっき向こうで蘭ちゃん達に会ったよ!」

 

「蘭達も来てんのか」

 

「いつも通りの面子だったよ」

 

「アイツらも相変わらず仲良しなこって」

 

 

 

蘭には言ってないから先に見つけたら避けよう。ひまりとかに見つかるとめんどくさそうだ。意外とつぐみもめんどくさそう。

 

 

 

 

「ん、どうした有咲?」

 

「いや、お前も浴衣着るんだなって思って」

 

「おい、それは俺に喧嘩売ってんのか?」

 

「有咲はむっくんの浴衣似合ってるって言いたいんだよ」

 

「お、おたえお前なぁ!!」

 

 

 

 

アフグロと変わらずポピパもいつも通りで安心した。取り敢えずコイツらと別れてさっさと回ろう。さっきから隣で紗夜さんがずっと睨んでくるから。心なしか日菜の抱きつく力も強くなってきてるし。ちょ、紗夜さん手を握る力強くなってきてません?

 

 

 

「じゃあ俺達も回ってくるから」

 

「むーくんまたね!」

 

「......私達の事忘れてませんでしたか?」

 

「忘れてたら手なんて握って無いですよ、ささっと回りましょうか」

 

「今度はあっち行ってみようー!!」

 

 

 

それからは知り合いに出会う事もなく、ただひたすらに日菜に連れ回された。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、もうお腹いっぱい!」

 

「食い過ぎな」

 

「貴方も結局は食べてたじゃない」

 

「男の子舐めてもらっちゃ困りますよ」

 

 

 

 

祭りの屋台巡りでお財布の中が半分になるとは思ってなかった。使わないだろうと思ってそこまで入れてきてなかったから危なかったな。来年からはちょっと余裕を持たせてくるとしよう。来年はまた違う奴らと行きそうな予感。ひまりとかと行ったらマジで空っぽになるかもしれん。

 

 

 

「今はどこに向かっているのですか?」

 

「まぁ着いてからのお楽しみってことで」

 

 

 

 

これ以上日菜に主導権を握らせておくと危険だと思った為、行きたいところがあると言って現在祭りをしている近くの山に来ている。ここは小さい頃俺や香澄達が良く遊んだところ。今にして思えば、俺がこういう場所に連れ回したお陰で香澄は運動神経とか良いのかもな。明日香も悪い方じゃないし令香なんて毎年リレーでアンカーだし。

 

 

 

 

「よし、着いた」

 

「んー、ここあんまりるんっとしないね」

 

「良く見えないけど下は崖になってるから気を付けてな」

 

 

 

夜で周りが薄暗く見えづらいが、下の方は崖になっていて大変危険だ。日菜や紗夜さんが年上だとしても、こんなところで女の子に怪我させる訳にはいかない。注意の意味も込めて日菜と紗夜さんの手を握り少し力を入れる。

 

 

 

「......そろそろ始まるな」

 

 

 

 

時刻は19時、祭り会場を見下ろしてみると屋台に立ち並びながらも上を見上げる人が沢山居る。ベンチに座っているひとも居れば、シートを敷いてその上に座って見ている人も居る。

 

 

 

 

そして、今日の目玉イベントである花火が一斉に打ち上げられる。

 

 

 

 

ヒュー、バンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここ香澄と偶然見つけた場所なんですよ、何にも邪魔されずに花火が見えるんでより綺麗に見えますよ」

 

「ええ、とても綺麗ね」

 

「やっぱりここるんっ♪とするね!!」

 

 

 

 

一つ、また一つと花火が打ち上げられる。打ち上げられた花火に照らされて日菜と紗夜さんの顔が見える。狐のお面を付けている日菜だが、無邪気な笑顔でこちらを向いて微笑んでくれている。

 

 

 

「今日はありがと宗輝!!」

 

「どういたしまして」

 

 

 

 

一方で、紗夜さんは途中の屋台で俺が買った髪飾りを触りながらも日菜同様にこちらに微笑みながら俺を見つめる。花火の色のせいなのか若干頰が赤く見えた。

 

 

 

「これ大事にしますね」

 

「気に入って貰えて嬉しいです」

 

 

 

 

毎年香澄やら令香やらがはしゃいでうるさいながらも花火を楽しんでいたが、今回のような楽しみ方も悪くないと思った。それは紗夜さんも日菜も同じようなら嬉しいけどな。

 

 

 

 

「お姉ちゃん、星も綺麗だよ!」

 

「花火のお陰かより美しく見えるわね」

 

「また来年も三人で来られたら良いね!」

 

「予定が合えば俺は大丈夫だと思うぞ」

 

 

 

 

実際今日だって行けたしな。日菜がいつ香澄に許可とってたかは知らんが大丈夫だろう。最悪じゃんけんでも何でもして決めてくれりゃ良いし。

 

 

 

「じゃあそろそろ短冊でも書きに行くか」

 

「そうですね、時間も遅いし行きましょうか」

 

 

 

 

山を下り再びお祭り会場へ。中央広場に笹が置いてあり近くに短冊とペンと机が併設されている。それぞれ短冊を取りお願い事を書いていく。

 

 

 

「んー、適当に恋愛成就とかでも書いとくか」

 

「れ、恋愛成就⁉︎」

 

「宗輝好きな人でもいるの?」

 

「失礼な、俺も立派な男の子だぞ」

 

 

 

 

つっても俺の好きなんて"LIKE"だからな。昔のトラウマ働いてどうにも"LOVE"まで進まないんだよなぁ。だからそういう意味での好きな人ってこと。せっかくの七夕なんだから少し分不相応なお願い事しても大丈夫だろう。

 

 

 

「よし、書けた」

 

「私も書けました」

 

「じゃあ飾りにいこ!」

 

 

 

 

既にみんなが短冊を書き終えていた為か飾るスペースがあまり見当たらなく端の方になってしまった。途中、"もっとパンが食べたーい"とか"スイーツ食べてダイエット成功!"とか見えたけど書いたの誰か分かる気がする。中には"いつも通りの日々を"とかいうエモいのもあったけど。

 

 

 

「高いところに付けた方がお願い事が叶えられやすいらしいぞ」

 

「私もう付けちゃった」

 

「なら私は......痛っ!」

 

「紗夜さん大丈夫ですか?」

 

 

 

紗夜さんも高いところに付けようとしたのか、爪先立ちで短冊を付けていたら足をくじいてしまったらしい。少し赤くなっているのでこれはキツイだろう。

 

 

 

「仕方ないですね」

 

「な、何ですか?」

 

「おんぶですよ、流石に歩かせられません」

 

「じゃあ私が代わりに付けとくね!」

 

 

 

俺がおんぶしている間に紗夜さんの分の短冊を日菜が付け終えてくれた。それにしても紗夜さんめっちゃ軽い。今でも時々令香をおんぶすることはあるけど女の子ってどうしてこんなに軽いんだ?ちゃんとご飯食べてる?ほら、何か歌の歌詞でもあったじゃん。沢山食べる君が好きとかって。要するに今の時代大食い女子がモテるんだな。前にテレビでも大食い特集やってたし。

 

 

 

「重かったら下ろして頂いても......」

 

「全然重くなんか無いです、むしろ軽いくらいですから」

 

「お姉ちゃんだけズルイなー」

 

「紗夜さんも怪我してるし帰るか」

 

 

 

 

花火もちょうど良いタイミングで終了して七夕祭りも終わりが近づいていた為、混雑しないように少し早めに帰るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

~氷川宅~

 

 

 

 

「やっと着いたな」

 

「降ろしてもらって結構ですよ」

 

「ここまで来たんですから中まで行きますよ」

 

 

 

無事日菜と紗夜さんの家に到着。少し早めに帰り始めたお陰であまり混雑に巻き込まれずに済んだ。行きと帰りが混雑するのも毎年恒例なので困る。日菜に玄関を開けてもらい紗夜さんを部屋へと送り届ける。

 

 

 

 

「じゃあ後は頼んだぞ日菜」

 

「うん、任せて!」

 

「本当にありがとうございました」

 

「いえいえ、大した怪我じゃなくて良かったです」

 

 

 

 

そうして俺は帰ろうと思ったが、日菜が送ると言って聞かなかったので玄関まで送ってもらうことに。

 

 

 

 

「今日は誘ってくれてありがとな」

 

「こっちこそ凄い楽しかったよ」

 

「じゃあ俺も帰るから」

 

 

 

そう言って振り返り玄関を出ようとしたところを日菜に止められる。まだ何かあるのかと不安に思い再度振り返ってみると、俺と日菜の距離は零になっていた。

 

 

 

 

「こ、これは今日のお礼!」///

 

「お、おう」

 

「じゃあまたね!」///

 

 

 

日菜は猛スピードで階段を駆け上がっていってしまった。まさか日菜に不意打ちでキスされるとは思ってなかった。想定外の出来事に脳がついていけないが取り敢えず帰ろう。

 

 

 

 

「やっぱ最初のお願いにしときゃ良かったかな」

 

 

 

 

 

 

少し短冊に書いた内容を変更したくなった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

~To Be Continued~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗輝「おまけのコーナーで御座います」

 

 

宗輝「今回のゲストは巴&あこの宇田川姉妹だ!」

 

 

巴「これって何すりゃ良いんだ?」

 

 

あこ「あこ知ってるよ!夢幻の常闇に潜む......えーっと、適当にお話するやつ!」

 

 

宗輝「おう、大体合ってる」

 

 

巴「もうグダグタだと思うけどな」

 

 

あこ「お姉ちゃんは七夕祭りで太鼓叩いてるんだよね?」

 

 

巴「そうだなー、あれ着替えがめんどくさいんだよ」

 

 

宗輝「と言うと、浴衣からわざわざ着替えんのか」

 

 

巴「まぁ楽しいから良いんだけどな」

 

 

宗輝「ソイヤって言いながら叩くのか」

 

 

巴「何だかそれネタ扱いされてないか?」

 

 

あこ「私はカッコいいと思うよ!」

 

 

巴「ああ、あこありがとう」

 

 

宗輝「というかあこは七夕祭り行かないのか?」

 

 

あこ「その日はNFOで特殊イベントがあるから!」

 

 

宗輝「じゃあ燐子先輩も当然一緒だな」

 

 

巴「私としては一緒に行きたいんだけどな」

 

 

あこ「じゃあ来年はお姉ちゃんと一緒に行く!」

 

 

宗輝「だってさ巴、感想は?」

 

 

巴「私の知らない間にこんなにも立派になって......」グス

 

 

宗輝「何で泣いてんだよ」

 

 

あこ「そのかわり七夕祭り前夜祭イベント頑張る!」

 

 

宗輝「それは巴の前では言わないようにしような」

 

 

 

 

 

 

-End-





やはり七夕と言えば紗夜日菜、紗夜日菜と言えば七夕な気がしました。
いつも場面場面を出来る限り想像して書いていますが、今回は中々やり易くて楽しかったです。

他の方の作品を見る機会がありますが、挿絵が最近気になってます。
誰か宗輝君描いてくださる方居ないですかね?

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