トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~ 作:Lycka
燐子「あ、愛はRose!」
あこ「誇りはCameIia!」
紗夜「二つが合わさりRoseliaとなる」
リサ「私達は5人で1つ☆」
友希那「......頂点へ狂い咲け」
巴「これなにやってんの?」
宗輝「MCの練習だとよ」
日菜「お姉ちゃんカッコいい!」
すみません茶番です。
46話、ご覧下さい。
いきなりで悪いが俺は意外と自転車に乗っている時間が好きかもしれない。颯爽と走り抜ける感覚は何故か心地良いものを感じるし、普段とは違った空気を吸い込みながら一人考えに耽る事も出来る。しかし、今はそんなことも言ってられない。まるで火の上を素足でペダルを漕ぎながら移動しているみたいにも思えた。少し意味の分からない例えかもしれないが、多分滅茶苦茶焦っているのが原因かもしれない。
「よし!着いた!」
こんな時でも安心してほしい。ウチのCiRCLEには駐輪場も完備してある。しっかりと防犯対策でロックも掛けられるようになっており超安心。今頼れるのはコイツしかいないだろう。仮にも事務所に借りてる自転車だ。盗まれたりしたらプロデューサーから怒号が飛んでくるに違いない。
「紗夜さん間に合いまし......たよ」
急かすように自動ドアに先に足を近づけ中へ入る。しかし、ロビーにいたのは我がCiRCLEのお勤め仲間であるまりなさんだけだった。相変わらず忙しそうにしてなくてホッとする。なんというか、ご苦労様です。うん、今はそんな事言ってる場合じゃないな。
「まりなさんこんにちわ」
「あれ宗輝君だ。今日はシフト入ってないはずだよね?」
「それより友希那達来てませんか?」
「ああ、Roseliaなら少し前に来て練習してるよ」
昨日は同じ時間にCiRCLEに来いとの命令だった。時計を見れば大体昨日と同じ時間なのでセーフ。30分違いなんて大体同じようなもんだろ。
「呼ばれてるので行ってきます」
「ついでに延長するかだけ聞いといてくれると助かるな」
「了解です」
短く返事をして友希那達が入っている部屋へ向かう。話が長くなるといけないので飲み物も準備。勿論、俺一人の分だけでは無くメンバーの分も用意してある。ここらへんは流石に出来る子宗輝君。もっと褒めてくれても良いんだよ?個人的には燐子先輩の膝枕希望。
コンコン
「はい、なんでしょうか」
この声は紗夜さんだな。今演奏の練習してなくて助かった。
「飲み物をお届けに来ました〜」
「私達は飲み物なんて頼んだ覚えが無いのですが......」
そりゃ勿論俺が一人で勝手に持ってきてますからね。しかし、流石紗夜さん大人の対応が出来て素晴らしい。多分ひまりとかハロパピの三馬鹿とかなら無理なんだろうな。あと香澄とかもキツそう。奇想天外な答えが返ってくる予想しか出来ない。それはそれで見てみたい気もするけど。
「嘘ですよ紗夜さん。すみませんお待たせしました」
「貴方また遅れたわね?」パクッ
「それに関しては寛大な処置を頂けると嬉しいです」
「取り敢えずは中に入りなさい」モグモグ
出会って早々トレイの上にあるポテトに手を伸ばし美味しそうに頬張る紗夜さん。ポテト関係となると少し、いやかなりポンコツ化してしまう紗夜さんはちょっぴり、いやかなりキュートだ。リスみたいにチマチマ食べてるのも可愛い。あ、口元にケチャップついてる。
「紗夜さんついてますよ」
「ん?何かついてますか?」
「可愛いお口がついてます」
そう言って何枚か持ってきていた油を拭き取る紙でケチャップを取り除く。偶に見せるこういうところが所謂ギャップ萌えなんだろう。
「あら、遅かったわね」
「仕方ないだろ。パスパレの撮影してたからな」
「みゅーじっくびでお?の撮影だったんでしょ!」
「おお、正解だ。あこえらいぞ〜」
こっちに気付いたあこがパタパタと足音を鳴らしながら自慢気に答える。今時ミュージックビデオの事を知らない子の方が少なそうだが、小動物みたいに可愛いあこを反射的に撫でてしまった。このせいで何度かお説教食らったのに懲りない自分がいる。
「飲み物......持ちましょうか?」
「大丈夫ですよ燐子先輩。取り敢えず座りましょうか」
***
練習スタジオの中で机と椅子があるちょっとした休憩スペース。そこに飲み物やらポテトやらを並べて6人で座っている。隣に座っている燐子先輩との距離が若干近すぎる気もするが良しとしよう。決して俺から距離を詰めた訳では無いからな。対面に座ってポテトもぐもぐしてる紗夜さんに誓って宣言しよう。
「それで話って何?」
「実は私達も聞かされてないんだよねー」
「何でリサ達が知らないんだよ」
「それは私がまだ伝えてないからよ」
果たして鬼が出るか蛇が出るか。俺の予想だが、多分ライブの演奏どうこうの話ではない気がする。それならば俺ではなくいち早くバンドメンバーに相談するに越したことはないからな。まぁ友希那の場合は最近キャラ崩れてきてるからワンチャンあり得る。
「もっと早く伝えるべきだとは思ったけれど......」
「何か心配事でもありますか?」
「最近声の調子が悪いとか?」
「それはむしろ絶好調ね」
「バンド関係じゃ.......ないんですか?」
燐子先輩の言葉を皮切りにスタジオ内が静粛に包まれる。あこは少しワクワクしたような様子。紗夜さんは流石にポテトを食べるのを中止して友希那が言葉を発するのを待っている。リサと燐子先輩も同様に、しかし紗夜さんと違い少し不安な表情をしている。そして、次に友希那から出てきた言葉はにわかには信じ難いものだった。
「———先日、個人的にスカウトをされたの」
個人的にということはRoselia自体をスカウトしてきた訳ではないんだな。俺も心のどこかではこうなることを予期していたのかもしれない。今だって俺自身そんなに驚いてないし。友希那の実力ならスカウトされてもおかしくはなかったからな。
「スカウトっていうとあれか、引き抜きみたいなもんか」
「ええ、多分そういう解釈で間違い無いわね」
「それってすごいことじゃないですか友希那さん!」
「宇田川さん、湊さんがスカウトされたという事はRoseliaを抜ける可能性があるという事ですよ?」
紗夜さんの口からでた"Roseliaを抜ける"という事を理解して漸くあこの表情が一変する。それもそのはず、元々Roseliaは友希那が集めたメンバーで結成されている。俺はあまり詳しくは聞いてないからハッキリとした事は分からない。けれど友希那のいないRoseliaはRoseliaでない気がする。それは他のメンバーに置き換えても言える事だと思う。つまり、友希那の返答次第では今後の活動自体をよく考えなければならなくなる。
「......それで友希那はどうすんの?」
「もう返事はしたんですか?」
「ええ、勿論その場で断っておいたわ」
「なら返事を.......え?もう断ったの?」
まさかの即答拒否。清々しいまでの友希那の様子に少し緊張がほぐれる。胸を張って答えるのは良いが理由を聞きたい。
「あんまり言うのも良くないけど、もしかして相手がそこまでだったり?」
「その場で返事したから分からなかったわ。USBを貰ったから一応聴けるけど」
「......はぁ、良かったぁ」
友希那の返事に安心してしまったのかリサが机に突っ伏して安堵の声を漏らす。安心しろリサ、お前らのバンドのボーカル兼リーダーは心配せずともお前らのこと大好きだと思うぞ。かと言って百合百合すんのはやめてくれ。
「友希那さん!あこ聞いてみたいです!」
「丁度持ってきてるからみんなで聴きましょうか」
「ごめん、ちょっくらトイレ行ってくる」
「3秒で帰ってくるのよ」
「紗夜さんそれは無理ゲーです」
ささっと部屋を出て何度も清掃させられた因縁深いトイレへと向かう。まりなさんは時々女子トイレも掃除してくれとか言ってくるから。もし鉢合わせでもしたらどうするんだよマジで。即お縄なんですけど。
「にしても友希那をスカウトかぁ」
相手のことなど全くもって何も知らないが少なくともセンスはある。今の友希那ならどこに出しても恥ずかしくない実力を持ってるからな。上から目線で失礼。
「......紗夜さんに
見たところ紗夜さん一人でほぼポテトを食べ尽くしていたのでおかわりポテトを用意していこう。因みにこのポテト、実は俺持参の物だったりもする。元々CiRCLEにはポテトなんて存在しない。まりなさんが何処からともなくフライヤーをゲットしてきたので流れでポテトをメニューに追加。するとあら不思議、紗夜さんに大人気の当店No.1になりましたとさ。
「味付けはシンプルに塩で......って、まりなさん厄介な客に捕まってんなぁ」
「Why⁉︎どうして⁉︎」
「今は練習中だからまたの機会にね」
ここは見つからないように颯爽と去ろう。ああいうのを押し付けてくるのもまりなさんの常套手段。基本働き者ではあるんだけど俺がいると真っ先に押し付けてくるからな。何処ぞのプロデューサーを思い出すよ。
それから一応飲み物も入れ直し練習スタジオへ戻る。俺が居ない間に既に手渡された謎のUSBを差し込み音楽を聴いていた。一曲だけしか入っていなかったのだが、内容が恐るべきものだった。まさかこんなにも全員が聴き入ってしまうとは思いもしなかったからだ。荒削りの中でもしっかりとした技術があり尚且つ音楽に対しての熱意も感じ取れた。確実に今の5バンドとは違った形のものだった。
「......すげぇなこれ」
「ええ、まさかここまでとは思わなかったわ」
俺個人的に言えば、このバンドは一人一人が既にほぼ完成されていると言ってもいい。一口に完成と言っても完璧ではないし、プロから見たらまだまだなのかもしれない。俺は特にボーカルに魅力を感じた。力強く歌い人を惹きつけるような歌声。ある種友希那と同じと言えるのだと思う。
「まさかこんなバンドがあったなんてねー」
「私達もまだまだということよ」
「ならいーっぱい練習しましょう!」
一つの謎のUSBはRoseliaに火をつけてしまったのかもしれない。思い立ったが吉日、5人はささっと楽器の前に立ちそれぞれが準備を始める。全員でアイコンタクトをし準備が整ったことを伝える。ここら辺はなんかポピパでも見たような感じだな。
「貴方にはとことん練習に付き合って貰うわよ」
「おう、どんと来い」
前奏が始まりその後に友希那が歌い始める。何度も聞かされたLOUDER。しかし、確実に今までとは何かが違うものを感じる。それは果たして先程の影響なのかどうか。いずれにせよ良い方へ変わっていくのは良いことだ。出来るだけ俺もコイツらを手伝ってあげるか。
「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんお帰り」
「誰か来てんのか?」
時は過ぎ暖かい我が家へ帰宅。結局あの後はみっちり予約した時間まで練習に付き合わされてしまった。俺自身Roseliaの音楽を聴くのが久し振りだった気がする。少し時間が伸びてしまってまりなさんに叱られたのは内緒。
「それは見てのお楽しみ♪」
「見たことあるような靴ばっかだけどな」
「勘のいいお兄ちゃんは嫌いだよ?」
「わーい、お客さんいっぱいだなぁ」
令香に嫌われるとか世界が反転しても無いから。そんなのお兄ちゃん許しません。でも見たことあるしなんなら予想つくんだよなぁ。
バタバタ
「むーくんおかえり!」
「最早ここの住人レベルだよなお前」
「ん?ここはむーくんちだよ?」
「そういう意味で言ったんじゃない」
言葉のキャッチボールが一投目にして終了。グローブ買ったげるから練習してくれ。はぐみとか練習相手に連れてくるから。はぐみもはぐみでキャッチボール出来ないけど。ソフトボールは上手なのにな。
「みんな待ってるよ!」
「服伸びるからあんまり引っ張るなよ」
「はーい」
服を掴みリビングへ連れて行かれる。注意してからはちゃんと手を握って連れて行ってくれる。最初からそうしてほしいものだ。
「みんなむーくん帰ってきたよ!」
「むっくんお帰り〜」
「予想通りの面子で何よりだよ」
予想通りの面子で何よりだ。重要なことだから二回言います。おたえとりみりんはソファーに座ってテレビをまじまじ見つめている。今は特集でウサギについてやってるらしい。おたえが食いつくのも無理ないか。
「こんな時間まで何やってたんだよ」
「お姉様方に捕まってた、俺は悪くない」
「もっと早く帰ってこい」
「有咲はそんなに俺に早く会いたかったのか?」
「......んなわけないだろバカ」
と言いつつもほんのり頰を赤らめる有咲。最近はツンデレ成分足りなかったからなんか新鮮。そういうのもっと頂戴。
「というよりなんで俺ん家いるの?」
「香澄がみんなでご飯食べようって誘ってくれたの」
「なんかみんなで楽しく食べたくって」エヘヘ
「ならお前ん家でいいだろ」
香澄が言うに明日香の友達が泊まりにきてるからダメらしいです。今日は丁度両親が外食に行ってるんだよなぁ。それも香澄んとこの親と。相変わらず仲がよろしいことで。お陰様で俺は現在進行形で肩身が狭いよ。今なら父さんの気持ちがちょっとだけ分かる。
「それで沙綾が晩飯作ったのか?」
「おたえちゃんのリクエストでハンバーグだよ」
「流石おたえ、無類の肉好きは伊達じゃないな」
「みんなが手伝ってくれたからもうすぐ出来るよ」
香澄や令香を筆頭にお皿やお箸、コップを机に並べていく。既に置き場所を把握されているのも驚いた。もしかして俺より詳しいんじゃない?
「むーくんご飯大盛りね!」
「昔からお前はあれだけ食べてよく太らないよな」
「ギター弾いてるからかな?」
「いや、ギターは関係ないだろ」
「んー、じゃあどうしてかな?」
俺に聞くなよ。お前が食べた分が有咲に送られてるんじゃない?何処に送られてるかは言わん。本当かどうかも知らんし。
ご飯を俺がみんなの分をよそう。その間にお茶を入れてお箸をセット。沙綾と有咲がハンバーグの盛り付け。片手間に沙綾がサラダも作ってくれていた為、7人分を小皿に盛り付ける。俺自身ハンバーグを食べるのも久しぶりな気がする。
「んじゃ頂きます」
「ん〜!!美味しい!」モグモグ
「このハンバーグ......できるっ⁉︎」モグモグ
「有咲の愛情がたっぷり入ってるからね」
「そ、そんなもんいれてねーよ!!」
俺のハンバーグだけ大きかったりするのは気のせいか。あとソースの形がハート。こういうところでポイント稼ぎしてくるのは卑怯というものだ。ちょっと惚れちゃいそう。自分が単純過ぎて困ってます。
「むっくんむっくん」
「おたえおたえ」
「久し振りに幼馴染に会えたの」
「それは良かったな」
最初のやり取りなんなの。バカップルみたいで楽しい。多分おたえとかじゃないと出来ないな。紗夜さんとか半殺し案件だな。
「写真見てよ」
「どれどれ......ほーん、綺麗な人だな」
「名前はなんて言うの?」
「和奏レイって言うの。私はレイって呼んでる」
『......あー!!』
おたえの幼馴染の名前を聞いて有咲と令香が声を合わせて写真を指差す。ちょっとビックリしちゃったじゃねぇか。なに、因縁のライバルとかそんな感じ?
「コイツは同じミュージックスクールに通ってた奴だ!」
「れーかも見たことある!」
『......え?有咲さん(令香ちゃん)も?」
今はもう卒業しているが、令香は昔ミュージックスクールに通っていた。いや、通わされていたというのが正しいかもしれない。今でこそ落ち着いた父さんだが昔は厳しかったからな。最近では親バカの分が前に出過ぎているかもしれない。俺は残念ながら1年と続かずリタイア。その代わり令香の送迎が俺の仕事となった。
「そう言えば2つ下にとんでもない女の子がいるって聞いたことあるけど......」
「それ多分令香の事だな」
「そんな風に言われてたの知らなかったよ」
「奇遇だな、お兄ちゃんも初めて知ったよ」
ていうか有咲もミュージックスクール通ってたのな。もしかするとそのタイミングで有咲には出会ってた可能性もあるな。ちっこい有咲とか想像するだけで可愛いな。いや、決して俺はロリコンとかじゃないからな。幼児体型でしか興奮しないとかないから。
「なら明日レイに会いに行こうよ」
「まぁ明日は予定ないし大丈夫だけど」
「なられーかもついていこーっと」
「うぅ、こういう時に限って予定が......」
「お前にしては珍しいな」
明日は沙綾の手伝いでやまぶきベーカリーで一日働くらしい。それも有咲とりみりんも一緒で。いつもならついて来ると言って聞かないのだが今回はそうでもなかったな。それはそれで少しこそばゆい感じがするけど。
「ただいま〜」
「あ、お母さん達帰ってきた」
「あらあら〜、お嫁さん候補がこんなにも沢山」
「お義母さんお帰り〜」
「ねぇおたえさんなんでそんなにフランクなの?あともしかして漢字間違えてない?」
面倒くさいタイミングで母さん達が帰ってきやがった。父さんは巻き込まれないようにこそっと寝室行ってるのバレバレだからな。というかいつのまにおたえ達と話せるようになったの?もしかして令香の謎のコミュニケーション能力は母親譲りだったりするのか。
「お義母さんだなんて、ちょっと早いわよおたえちゃん♪」
「なら......奥さんだ」
「馬鹿、それもこれも全部ちげーよ」
「お母さん案外早かったねー」
「お父さん達が早く令香と明日香に会いたいって」
そう言えば香澄の父さんも親バカだったっけ。どっちの両親も変わったもんじゃねぇな。というか母さん達はちょっかいかけてくるし父さん達は娘溺愛してるしでなんか似てる。確実に一番苦労してるのは明日香だろうな。
「このハンバーグ誰が作ったの?すごく美味しいわね」
「母さん話ぶった切るの得意だよな」
「あはは、それは私達が作りました」
沙綾が答えながらも有咲の手を取り挙手するような形で上へ持ち上げる。先程から一言も話していない有咲だが、今は真っ赤に茹で上がったタコの様になってしまっている。そういや有咲は初めて会うのか。すまんなこんな母親で。
「貴女が有咲ちゃんね。宗輝に聞いた通り可愛いのね」
「なっ!!お、お前そんなこと言ってんのか!!」
「仕方ないだろ、令香使って脅されたら俺も対抗出来ん」
「ねぇねぇむーくんママ!」
「どうしたの香澄ちゃん」
何故か自然な形で食卓に混ざり始めた母さん。結局そこからは母さん含め8人でワイワイしながら過ごした。因みにこの一連の流れの中、ずっとりみりんは母さんに捕まって撫で撫でされてました。理由は"なんかもふもふしてて撫でたくなったから"だそうです。満更でもないりみりんの顔を見てると意外と居心地は良かったのかもしれない。
***
「はぁ〜、生き返る〜」
時刻は夜の10時過ぎ。沙綾と有咲の愛情がたっぷりのハンバーグをたらふく食べて至福のお風呂タイム。みんなは後片付けやらなんやらでせっせこ働いている。相変わらずおたえはテレビのウサギ特集に夢中だったけど。俺は邪魔という事で一足先にお風呂に入っている次第でございまする。
「残りのハンバーグは明日にでも食べるかな......」
意外と俺は独り言が多かったりする。一人っきりの時限定だけど。
「......はぁ〜」
「なーにおじさんっぽい声出してるのお兄ちゃん」
「令香か、もう片付け終わったのか?」
「うん、みんなも帰ったよ」
流石にこのまま全員と混浴する流れでは無かったらしい。だとしても俺の身が持たんからやめてほしい。
「むーくんまだ出ないの?」
「おい、帰ったんじゃなかったのか」
「お姉ちゃんは今日お泊まりだよ」
「安心してむーくん!ちゃんとむーくんと同じ部屋で寝るから!」
「それの何処が安心出来るんだよ」
コイツはマジで俺に対して警戒心というものがないのだろうか。仮にも高校2年生の男女が一つ屋根の下に一緒にいるのだ。普通は間違いがあったとしてもおかしくない場面だろうに。しかし、俺も俺でもうそれが普通みたいになってきてるところあるからなぁ。いや、流石に一緒のベッドとかで寝たりしてないからな。あったとしてもそれは香澄が勝手に忍び込んできた時だけだ。
「次お前ら入るんだろ、そのままにしとくから出来るだけ早めに入れよ」
『はーい』
浴槽から出てもう一度頭からお湯をかけてから出る。途中からめんどくさくなったので軽くタオルで拭いてからリビングへ向かう。少し髪濡れてるけど時間経てば乾くだろ。
「冷凍庫にアイスあるわよ」
「ん、あんがと」
母さんの言った通り冷凍庫の2段目にお目当てのアイスを発見。香澄と令香が出てくるまでテレビでも見ますかね。丁度ウサギ特集も終わって映画始まるみたいだしな。
~10分後~
「むーくんきてー!」
「おにいちゃーん!」
「呼ばれてるわよ宗輝」
「どうせドライヤーだろ。そろそろ自分でやってほしいんだけどな」
「とか言ってやってあげてるんでしょ」
「仕方なくだよ」
少し良い展開になってきたところで呼ばれる。SFで世界観がしっかりとしている映画の2作目で正直何もわからんから良いんだけどな。こういうのって初代が一番面白かったりするよな。
「さぁ今日はどっちからだ」
「れーかからだよ」
「さっきジャンケンで負けちゃった」
ドライヤーをセットして熱風を送り髪を乾かしていく。時々ピョンと跳ねるアホ毛を邪魔臭く思いながらも黙々と進める。5分程でほとんど乾いたので香澄と交代。香澄と令香曰く、人にやってもらった方が早く終わるとのこと。
「明日はやまぶきベーカリー頑張れよ」
「うん、むーくんも頑張ってね」
「別に頑張る要素ないけどな」
令香と同様にして乾かしていく。もう慣れてしまったのか分からないが、ドライヤーをしてても普通に会話出来てしまっている。変な特技を覚えてしまった。
「はい、どっか気になるとこあるか?」
「ううん!むーくんありがとね!」
「アイスあるらしいからリビングな」
「はーい」
香澄と令香がアイスをかじりながら母さんと色んな話をしている。それを横でなんとなく眺める。もう見慣れてしまった光景。だけど、俺にとってかけがえのない大切な時間。......いかんいかん、なんかシリアスムードが出てしまった。こんな時はさっさと寝るに限る。
「んじゃ寝るわ」
「おやすみお兄ちゃん」
「風邪ひかないようにね〜」
全員分のアイスのゴミをゴミ箱に捨ててリビングを出る。2階にある自室へ行きベッドへ横たわり部屋の電気を消して目を閉じる。そして、そこまでしてやっと気付いたことが一つ。
「なんでお前がいるんだよ」
「え?だって一緒に寝るんじゃないの?」
「さも当たり前みたいに言うなよ」
「だって......」
「......ああもう!分かった、ただし絶対にくっついてくんなよ⁉︎」
どうやら香澄の涙に弱いのはまだ治ってないらしく渋々了承してしまった。許してもらえて嬉しかったのか笑顔を見せる香澄。こういうところがあるのが少し卑怯だと思う。
しかし、その日の夜は寝ぼけた香澄がくっつき過ぎてほぼ眠れなかったのであった。
~To Be Continued~
宗輝「おまけのコーナー」
宗輝「今回のゲストは紗夜さんと日菜だ」
日菜「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
紗夜「日菜、もうちょっと静かにできないの?」
日菜「だってお姉ちゃんと一緒だもん」
宗輝「あらやだ可愛い、流石紗夜さんの妹ですね」
紗夜「そんなの当た......ポテトで殴りますよ」
宗輝「ちょ、ちょまま。何処に隠し持ってたんですか⁉︎」
日菜「お姉ちゃん今度一緒に彩ちゃんのところいこーよ!」
宗輝「ほらほら紗夜さん、このポテト全サイズ100円チケットあげますから」
紗夜「仕方なく受け取っておくわ」
宗輝「やっぱりポテトの事になると紗夜さん優しくなりますね」
紗夜「......貴方カラッと揚げますよ?」
宗輝「ここにきて新ジャンルですか?」
紗夜「焼き加減はレア?それともミディアム?」
宗輝「両方却下で」
紗夜「ウェルダンね分かったわ」
宗輝「いや嘘ですよね?」
日菜「もーっ!!二人ばっか話してて暇だよ!」
紗夜「もう少し待ちなさい、すぐに揚げるから」
宗輝「待つのは紗夜さんの方......って、日菜助けてー!!」
-End-
なんか後半はポピパの日常回っぽくなったけど良いや。
こういうの好きな方居ません?
自分はまったりな感じ案外好きですよ。