トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~ 作:Lycka
いきなりですが感想、誤字報告等ありがとうございます。
感想につきましてはいつでもお待ちしております。
自分で見返す事も多いのですがそれでも誤字に気付かない場合もございますので何卒ご了承下さい。
それでは、48話ご覧下さい。
"RAISE A SUILEN"
俺達の前に突如現れたこのバンド。友希那とおたえをスカウトし、各々が圧倒的なまでのスキルを持つ。話によると自らDJとプロデューサーを兼務しているチュチュという英語交じりで話すあの少女。インターナショナル・スクールに通う帰国子女らしく、14歳でありながら成績優秀で飛び級しているとのこと。その他のメンバーもチュチュに引けを取らない大物だったりする。
「むーくんおはよ!」
例えばあの金髪のますきとかいうドラマー。ドラムの実力としては音楽業界で有名らしく、麻弥と同じくスタジオミュージシャンだったらしい。何でも演奏に夢中になると即興で音を入れることから"狂犬"と呼ばれている。まぁこれは麻弥に教えてもらったんだけどな。
「ねぇむーくん聞いてる?」
そして、おたえの幼馴染である和奏レイ。彼女もベースとボーカルの実力について言えば音楽業界で有名だったらしい。チュチュにスカウトされるまではどのバンドにも属さずあくまでサポートという形に徹していたという。
「大変だよあっちゃん!むーくんが動かなくなっちゃった!」
「宗輝、お姉ちゃんもうるさいしそろそろ反応してあげて」
「ああ、すまんちょっと考え事してた」
これが昨日半日で俺が集めた情報。勿論、詳しくは触れなかったがパレオについても紛れもなく実力者だ。実際演奏しているところを見てそれは肌で実感している。
「んじゃ行きますかね」
「むーくん朝有咲ん家寄って行こ!」
「へいへい」
兎にも角にも、まずはおたえの一件についてどうするかを考えるべきかもな。
~花咲川~
「さーやおはよ!」
「おはよう香澄。それと有咲と宗輝も」
「おはよう沙綾。昨日はありがとな」
「ううん、こっちも助かったし楽しかったよ」
「私はもうやんねーからな」
俺と香澄と合流した有咲の三人で登校。教室へ入る前に沙綾とエンカウントしたので昨日のお礼を言っておく。昨日はお昼に行った時にやれ香澄がパン焼きたいだの有咲も便乗してやってみたいだの言ったので手伝いそっちのけでパン作り。お陰で俺が代わりに働かされた。お昼でパン買いに来たのに何で働かされてんだ俺。千紘さん達も居なかったし仕方なく了解したけど。
「有咲パン作り楽しくなかった?」
「そんなことはねーけど」
「じゃあまた今度一緒に作ろうね!」
「ちょ、いちいち抱きついてくんな!」
令香は父さんと母さんのパンを持ち先に帰ってしまう始末。俺は俺で香澄達の作ったパン食べたから大丈夫だったけど。案外美味しかったのでまた作って欲しいところである。香澄はモチモチのお米を使ったパン。有咲は具材にたまごを使っていた気がする。沙綾が作ったのは言うまでもなく美味かった。
「有咲今日はお昼休み生徒会とかあるのか?」
「いや、今日は予定入ってないはずだ」
「なら良かった」
「宗輝何かあるの?」
「いんやこっちの話。ほら、もうSHR始まるぞ」
そこそこな時間だった為、SHRを理由に教室へ戻るよう促す。とは言え俺と香澄と有咲は同じクラスだから結局一緒なんだけどな。沙綾とは一度別れ教室へ向かう。正直俺の場合時間ギリギリでも担任に叱られかねないから注意が必要。
「じゃあSHR始めるぞー」
今日は特別連絡事項は無く、二枚程度プリントが配られて時間より早く終わった。プリントというのも勉強には直接関係ないものばかりだった。農業体験してみませんかという文字がデカデカと書いてあるチラシ。さらにはボランティアの協力を求めるポスター。それを見ていちいち誰かに話しかけているのはウチの幼馴染くらいだ。毎度それをうんざりした顔で受け流している有咲に労いの言葉を送ってやらねばなるまい。
「有咲これやってみない?」
「めんどくせーからパス」
「なら今度私に盆栽教えて!」
「は?それもめんどくせーからパス」
「えー!有咲教えてよー!」
この様な会話を普通に周りにも聞こえる音量で毎度毎度行なっている。最初は有咲も猫被ってたけど香澄のお陰で素のままでいられるようになった。前より有咲の周りで関わっている人も増えたし俺は嬉しいぞ。なんか父親にでもなった気分だ。
「それじゃあ一時間目遅れない様に」
『はーい』
SHRは滞りなく終了し担任が踵を返し職員室へ。ドアが閉まると同時に周りからチラホラと会話が始まる。かくいう自分は一時間目が移動教室なのを考慮して教科書類を用意して一足先に授業がある教室へと向かう。因みに一時間目は物理。担当教師がちょっと癖があって学校では人気者。
「むーくん一緒に行こ!」
「一緒に行くんなら早く準備してこい」
「らじゃー!!」ビシッ
敬礼し準備の為教室へと駆け足で戻る香澄。それと入れ替わる様にして有咲がやってくる。
「......ほんと朝からうるせぇ」
「それに付き合ってる有咲も周りからそう思われてるかもな」
「私は別にうるさくないだろ」
「ツッコミ入れてる時は中々声デカイぞ?」
"じゃあ全部香澄の所為だな"と言ってフッと笑う有咲。みなさん、これが有咲の隠しデレの部分です。なんだかんだ言って有咲も香澄といる時間が楽しいんだな。いつもちょままだけ言ってる様に見えるが内心ではどう思っているのやら。
「ごめんお待たせ!」
「んじゃ行くか」
「そう言えば今日は問題誰が当てられてたっけ」
物理の授業では終了間際に問題が出される事が時々ある。思い返せば前回の授業で確かに問題が出されていた気がする。確かあの日の日直は.......俺と香澄?
「......香澄、有咲、全速力ダッシュ」
「誰が一番早いか競争だー!」
「はぁ⁉︎ちょっと待てよお前らぁ!!」
その後、無事に間に合い問題を解こうとしたところでチャイム。案の定物理の先生に怒られました。
一時間目の物理、二、三時間目の歴史、四時間目の数学を終えお昼休み。今日は令香と母さんの共同作業で作り上げたお弁当だ。鞄の中から取り出し机に置いておく。いつも通り中庭で食べる、前に一度お花を摘みに行こう。正直四時間目の数学始まってから我慢してました。
「おトイレおトイレ〜っと」
「あら?誰かと思ったら宗輝じゃない」
トイレへたどり着く前にこころに出会ってしまった。別に嫌でも何でも無いけど今はトイレ優先。もう私の膀胱のライフはゼロよ!!というかゼロだったら漏れてるからダメだな。
「こころもお花摘みにきたのか?」
「美咲と一緒にご飯を食べたかったから誘おうと思って!」
「おう、頑張れよ応援してるから」
「宗輝も頑張ってお花摘みに行くのよ!」
あらこの子なんて純粋なのかしら。本当に俺がお花を摘みに行くと思ってらっしゃる。誰だよこころに異空間とか言ったやつ。あと俺のこと異空間リモコンとか言うのやめてね。別に俺はこころを自在に操れる訳じゃないからな。どっちかと言うと操られてる方だから。具体的に言うと弦巻家のメイドちゃんとか何処ぞのフランクなメイドちゃんとか美人メイドちゃんとか。
こころとはお別れし男子トイレに群がる男子生徒数名の中をかいくぐり用を済ませる。みんな良く連れション?するよね。残念ながら俺自身連れション経験が無いのでいまいち分からん。時々香澄に一緒にトイレに行ことか誘われるけど。勿論丁重にお断りさせてもらってます。
「ふぅ......」
「あら」
「お、千聖さんみっけ」
手を洗いハンカチで拭き拭きしながら教室へ戻っていると今度は千聖さんにエンカウント。手には何やら資料の様なものを沢山抱えている。この先を真っ直ぐ行くと職員室。この様子だと職員室へ向かっているのだろう。千聖さん学校ではまぁまぁ猫被ってるからなぁ。プライベートになると容赦無くなるのに。
「良かったらそれ持ちま......」
「丁度良かったわ宗輝君、職員室まで一緒によろしく」
「あ、はい」
前言撤回、俺に対しては学校でもプライベートでも関係無いみたいです。というかこの資料重いんですけど。それにこういう時は半分くらい渡すのでは?この人全部俺に渡しちゃったよ。まぁ断れないし持っていくんですけどね!
「これは千聖さんが自主的に?」
「違うわよ、今日は偶々日直だったのよ」
「デスヨネー」
『失礼します』
資料で手一杯なのにも関わらず職員室のドアを俺が開ける。千聖さんの指示に従い先生の机に置いて職員室を出る。やっぱり千聖さんパワーなのか職員室に入った途端にザワつき始めた。もう三年生だし慣れて欲しいものである。
「ご苦労様」
「まぁこれもマネージャーの仕事と思えば楽勝ですよ」
「そうそう、マネージャーで思い出したわ。近々打ち合わせあるから予定空けとくように」
「へ?」
「へ?じゃないわよ。前に言ったぱすぱれさんぽのゲスト出演の件よ」
半信半疑で今まで何ともないように過ごしてきたけどこの人ガチだったのね。前にも言ったように私は単なる一般市民なのです。そんな何処の馬の骨とも知らん奴がいきなりゲスト出演して大丈夫なんですかね。ウチのプロデューサーなら楽しければオッケー出しそうだけど。
「プロデューサーねぇ......」
「ん?何か言ったかしら」
「いや何も。また日程決まったら教えて下さい」
プロデューサーって何なんだろうな。昨日去り際にRASのプロデューサーであるチュチュには一応名刺だけ貰ったけど。あれだけのメンバーを集められる程の実力を持っている事は確かだと思う。ますきさんの事教えてもらった時に麻弥なんて興奮し過ぎて最後の方は何言ってるか分かんなかったし。
「これからどうなるんだろうな」
~中庭~
「お、揃ってるな」
「あ!やっとむーくん来た!」
「すまんすまん、案外トイレが混んでた」
教室に戻ったら弁当と水筒が机の上から消えてた。正直その瞬間は滅茶苦茶焦ったけど香澄が中庭まで持ってきてくれてたらしい。それならそれで一言欲しいもんだ。思いつくところを大体探しまくって恥ずかしかった。クラスのモブ子ちゃん二人、あれは笑うところじゃねぇ。知ってたなら最初から言ってくれ。
「はいよ」
「ん、あんがと有咲」
「じゃあ食べよっか」
有咲から弁当を貰い隣へ座り、各々いただきますして弁当を食べ始める。今日の俺のお弁当の中身を教えてしんぜよう。やはり鉄板のだし巻き玉子とタコさんウインナーは欠かせない。それと昨日の晩飯の残りである唐揚げとサラダを上手に盛り付けされておりセンスを感じざるを得ないといったところ。ご飯の上に子持ち昆布が乗ってるのもポイント高い。
「玉子焼きもーらい」パクッ
「宗輝のも寄越せ」
「はいよ。やっぱ有咲んちの玉子焼きも美味い」
「なら私ももらおっかなー?」
「何かと交換なら良いぞ」
こうして毎度の事ではあるがお弁当の中身を交換しながら食べすすめている。中でも有咲の玉子焼きは好評でリピーターも多い。有咲のお婆ちゃんが有咲のお婆ちゃんのお婆ちゃんに教えてもらったらしく、前にイヴが食べた時には"伝統を感じる"とまで言わせたレベル。俺も将来は玉子焼きと味噌汁が美味しく作れる奥さんが欲しいもんだ。
「そんでりみりんは相変わらずチョココロネなのな」
「沙綾ちゃん家のチョココロネ美味しいから」モグモグ
「毎日食べてて飽きないの?」
「沙綾ちゃん家のチョココロネだから」モグモグ
あまり回答にはなっていない気がするが良しとしよう。チョココロネをリスの様に食べているりみりん。これはこれでキュンとくるものがある。俺だけかも知れないが、りみりんには時々庇護欲を掻き立てられる事があるのだ。決して誤解しないで頂きたいのだが俺はそういうタイプの変態では無い。俺は悪くない、可愛いりみりんが悪い。
「おたえはお弁当食べないの?」
「......うん、あんまり食欲無くて」
「大丈夫?」
「なら私ギター弾こっか?」
「なんでそうなるんだよ」ペシッ
まぁあんなことがあればそうなるかもな。実際俺だって授業に集中出来なかったし。当の本人であるおたえなら尚更気になって仕方ないだろう。
「何か気になることでもあんのか?」
「......みんなは自分に足りないものってある?」
有咲の質問に質問で返すおたえ。"足りないもの"ねぇ。正直ポピパはまだ結成してから1年ばかし。幼馴染で組んだアフグロやズバ抜けた技術のRoseliaとは確かに差はある。それは技術であり経験であり、或いは感覚的なところもあるかもしれない。
「んー、私はもっと歌もギターも上手くなりたい!」
「それを言ったら私もリズムキープを確実に......とかかな」
「私は細かなミスが多いから......」
香澄は歌とギターを、沙綾はリズムキープ。りみりんは細かなミスを減らす。ここ最近ではあまり練習に付き合えてないから分からんがそういうところを個人的には気にしてるんだな。俺自身そういうのは聞いたことなかったからこの機会にしっかりと聞いとくのもアリかな。
「有咲は?」
「......私はただお前らに迷惑かけないように」
「すまん、最後の方が聞こえなかった」
「別になんでもねーよ!迷惑かけないようにしたいだけだ!」
こんな時でもツンデレ有咲は健在。聞くところによると有咲が一番練習頑張ってるらしい。有咲のお婆ちゃんからのリーク情報だから信頼性は高い。
「......私は技術、それと経験」
「おたえ、そろそろ話しても良いんじゃないのか」
『......?』
「実は———」
それから俺とおたえで昨日あったことをみんなに話した。RASの事、おたえがスカウトされてること。話していくにつれて沙綾の表情は陰っていくばかり。香澄やりみりん、有咲もまた同様に不安の色がうかがえる。
「私、もっと上手くなりたい」
「......じゃあおたえはポピパ辞めちゃうの?」
「それは......」
「コホン、それについては俺に考えがある」
一つ咳払いし一歩前へ進む。何故か演技じみたことをしてしまった。考えといっても一から俺が考えた訳でもないのに。
「考えって何だよ」
「おたえの事についてはさっき話した通りだ。スカウトに関してだけ言えば、今はプロデューサーのチュチュからの誘いでは無くあくまで幼馴染の和奏レイからの頼みって事だ」
「それがどうしたの?」
実は昨日もう一つ演奏の練習用でデータを貰っていた。ていうか何処行くにもデータ持ち歩いてるとかガチのプロデューサー?名刺もちゃんとしたもん作ってたし、俺もポピパのプロデューサーとして名刺作っといた方が良いかもな。まぁ非公式なんだけど。
「近々RASもライブをするらしくてな。それでサポートギターって形でまずはやってみないか?」
「サポートギター?」
「りみりん説明してやってくれ」
「う、うん。あのね香澄ちゃん......」
話によると、RASもライブを予定しているらしくギターが足りないとのこと。まぁ前回のライブで前まで契約してたサポートギターの人が辞めちゃったらしいからな。まずはサポートギターとして様子見をしようって訳だ。
「おたえはどう思う?」
「......私はもっと上手くなりたい。RASの音を聞いた時は痺れた。どうしたらこんなに上手くなれるのかなって思った。あの人達と、レイと一緒にやれば何か分かる気がする」
あの時に見た笑顔。笑っているのにも関わらず寂しそうにも見えた。あの人に会うのは初めてだったはずなのに、俺はそれを既に見ている気がするのだ。そして、何故かは分からないが助けてやりたいとも思った。本当におたえとバンドやりたくて、それでもおたえの事を考えて身を引こうとしていたのなら......何処か昔の俺と重なって見える部分があるのかもしれないな。
「みんなはどう思う?」
「私は大丈夫だよ!」
「おたえちゃん応援してるね」
「ライブ見に行くからね」
「まぁコイツは変なところで頑固だからな」
「......みんなありがと」
***
時は過ぎ、今日は日曜日。おたえの件で話がまとまってほぼ一週間。こちらの意思としてプロデューサーであるチュチュに連絡を取ったところ、簡易的ではあるが実力を見させてほしいとのことでお呼ばれしてしまった。という理由もあり、この一週間は課題曲である"R・I・O・T"の練習に明け暮れた。ポピパらしい曲とは真反対の様にも感じるが、俺が二日前におたえの様子を見にいった時には既に弾ける様になっていた。その時に俺はおたえの実力を改めて実感した。
「むっくんおはよ」
「おう、おはよっつっても時間的には昼だぞ」
おたえと俺の二人だけで来るようにチュチュには伝えられた。どういう訳かは分からないが、チュチュは俺の事を正式なポピパのプロデューサーだと思っているらしい。RASは既に音楽業界でも有名であり、"大ガールズバンド時代を終わらせる"とまで言われている。そんな大物バンドのプロデューサーとは違い、俺はただスケジュール管理やライブ先で代わりに対応しているだけに過ぎない。なんならパスパレの専属マネージャーの真似事してる様なもんだな。
「緊張してるのか?」
「うん、こんなに緊張してるのはいつ以来だろう」
「まぁ緊張もおたえの味方だ」
「むっくんは味方じゃないの?」
「味方じゃなかったらこんなに世話焼いてねぇよ」
こんな会話を素の状態で何も考えずに出来るのはおたえだからなのだろう。俺なら世話好きなのもあるが、やはりポピパのみんなには幸せでいて欲しいのだ。それは何もポピパに限って言えた話ではないけど。
「取り敢えず行くか」
「場所は?」
「ははん、斎藤様を舐めてくれるなよ」
と言ってもチュチュと連絡を取る中で教えてもらっただけだ。いかんせんあの子何故か上から目線でくるのよね。聞けば高校1年生だと言うが年齢的には14歳。まさか令香と同い年だとは思わなかった。まぁ令香もチュチュもまだまだ子供であることには変わりないか。これ言ったら両名からお叱りを受けそうだな。
「むっくんむっくん」
「何かしらおたえさん」
「本当にここであってるの?」
「実は俺もそう思ってたところだ」
ナニコレ、超高層ビルみたいなところなんですけど。本当にここであってんのか?俺の携帯壊れてない?使い所なさ過ぎて携帯としての機能が失われつつあるのかもしれない。
「なんか俺まで緊張してきた」
「......」
エレベーターに乗り、チュチュ達がいるであろう場所へ向かう。
ガチャ
『失礼しまーす』
玄関?のドアを開けるや否や耳に入ってくるのはドラムの音。何かの曲の練習なのか、はたまたドラムソロでやりたいように練習してたのか。いずれにしても物凄く激しい音だったのには変わりない。俺達に気付いたのか叩くのをやめてこちらへやってくる。
「お前は前にいた奴だよな?」
「は、はい」
「それでお前は......」
「俺は付き添いで来たんだ」
「ふーん......」
品定めするようにおたえと俺を見てくるますきさん。ちょっと距離感近すぎません?相変わらず柄はうさぎだし。というか高校2年生でタメなんだから敬語はやめたいんだけど、ますきさん怖くて無意識にさん付けしてしまいますぅ!
「ハナゾノさんいらっしゃいませ〜♪」
「貴女がタエ・ハナゾノね?」
「はい」
「そして貴方がPoppin'Partyのプロデューサーね」
「そういうことにしといてくれ」
ますき......さんに続いてパレオとチュチュがやってくる。パレオはいつもチュチュの側にいるって感じだな。前もご主人様って言ってたし。まぁ詮索は無しにしとこう。触れられたくないことだってあるだろうし。
「レイは?」
「レイヤは仕事よ。前の契約がまだ残ってるみたい。でも、それも今日で終わりよ」
「それで、おたえのテストはどうするんだ?」
「よくぞ聞いてくれたわね。パレオ」
「任せてくださいチュチュ様♪」
RAISE A SUILENと書いてある垂れ幕、というよりはスクリーンに映し出されているだけだと思うが、それをパレオがリモコンで操作する。
「知っての通り、私の最強のバンドであるRAISE A SUILENに半端な音は要らないの。私だって誰でも良いって訳じゃないわ」
「お眼鏡に叶わなかった場合どうなるんだ?」
「その時は申し訳ないけどレイヤには諦めてもらうだけよ」
「......レイ」
「大丈夫だおたえ、今日まで頑張ってきたんだろ」
「うん......いってくるね」
ギターを持ち先程までますきさんがドラムを叩いていたブースへ入る。ギターにシールドを繋ぎアンプと接続しチューニングを行なっていく。まだおたえの表情から不安の色は伺えるのだがここは信じよう。
「じゃあ、よろしく頼む」
「ええ、それじゃあRASのテストをはじめるわよ!」
『.......』
「パレオ!これじゃ中の様子が見えないじゃないの!」
「申し訳ありませんチュチュ様〜!」
「.......なんか調子狂うなぁ」
そして、おたえのテストは始まった。
~1時間後~
「......なるほどね」
「チュチュ様?」
「大体分かったわ、取り敢えずテストは終了よ」
テスト開始からほぼ1時間。基本的な技術はすっ飛ばしていきなり応用が出来るかどうかのテストから入った。それからますきさんやパレオが入って合わせのテスト。それから最後に課題曲として出されていたR・I・O・Tの演奏。これで約1時間。おたえに関して言えば弾きっぱなしで大分疲れているはずだ。
「お疲れさん」
「むっくんありがと」
「中々上手く弾けてたぞ」
勿論、贔屓目無しの単純な第三者的感想だ。チュチュ達にそういうのが通じないのは理解してきたからな。音楽に対する熱意や想いは人一倍強いのは話してみて、演奏を聴いて分かった。だからこそ、そんな中でも引けを取らないおたえを誇りに思ったのかもしれない。それを踏まえて考えると贔屓目なんてレベルじゃないかもしれないな。
「お前、中々上手いな」
「ありがとうございます」
「結果は追って伝えるわ」
「今教えてくれないのか?」
「please wait 。ちょっと考える時間を頂戴」
その回答から考えるに一発アウトとかいう最悪の展開は免れたとみて良さそうだな。まぁこれでアウトなら誰が合格出来るんだって話だけど。
「なら俺達はこれで」
「......どうするんだアイツ」
「チュチュ様どうされます?」
「タエ・ハナゾノ、彼女はもしかすると......」
チュチュから合格の回答を貰ったのは、それから更に一週間が経過した日のことだった。
~To Be Continued~
宗輝「やってきましたおまけのコーナー」
宗輝「今回のゲストは麻弥とイヴだな」
イヴ「最近寒いですねムネキさん!」
宗輝「俺は寒がりだから余計にな」
イヴ「マヤさんは何か対策とかありますか?」
麻弥「寒い時は狭い隙間に入ると良いッスよ!」
宗輝「麻弥は関係無く入ってるだろ」
麻弥「寒い時は特に入りたくなりますね!」
イヴ「それがマヤさんの強さの秘訣ですね!」
宗輝「勘違いするなよイヴ、ただの変態だからな」
麻弥「あぁ、隠れスポットではあるのですがウチの事務所の椅子の下も中々良い隙間なんスよねぇ......」
イヴ「ふむふむ、勉強になります!」
麻弥「いまから行きます?私のIDカードで鍵は大丈夫ッスよ」
宗輝「専属マネージャーとして全力で阻止させてもらうッスよ!!」
-End-
やっぱり新しくキャラを追加すると幅が広がりますなぁ。
とは言ったもののいまいちRASのキャラが掴みきれてませんが......