トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~   作:Lycka

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最近タイトルが適当になりつつある主です。
何とか捻り出してはいるのですが......やはり難しいものですね。
何処かにタイトル職人とかいないですかね(・ω・)

それでは、52話ご覧下さい。


Produce 52#For you

 

 

 

 

 

 

-翌日-

 

 

 

 

「おっきろー!」

 

「起きてるから静かにしろ」

 

「わかった!」

 

 

 

今日も今日とて幼馴染のコイツから俺の1日は始まる。去年なんか何回おはようダイブ食らったか分からん。それがないだけまだマシなのかもしれない。

 

 

 

「朝飯は?」

 

「トースターと玉子焼き、それとコーヒーもあるよ!」

 

「着替えるから先に食べてても良いぞ」

 

「むーくん二度寝したらダメだよ?」

 

「......ちっ、バレてやがった

 

「あー!やっぱり着替えるまで待つ!」

 

 

 

これも去年までは通用してたのに。着替えを見られて恥ずかしいとかはこれっぽっちも思わないけどな。まぁ全裸になるわけでも無いし。そこらへんの感覚はずっと一緒にいるからルーズになってるかもしれない。

 

 

 

「おにいちゃーん!

 

「むーくんれーかちゃんが呼んでるよ」

 

「どうせすぐ上がってくるだろ」

 

 

 

香澄との会話をBGMにパジャマを脱ぎ花咲川の制服に着替える。あと数ヶ月で今年も終わるというところ。2年生にもなり学校にも慣れて制服にも着られる事なく着こなせてきた感じ。俺的には羽丘のブレザーっぽいのも好きだったりする。勿論我が校の制服も好きである。

 

 

 

ガチャ

 

 

「もう!さっきから呼んでるのに!」

 

「さっき起きたばっかなんだよ」

 

「むーくんに用事?」

 

 

 

丁度着替えが終わったタイミングで令香がドアを開けエプロン姿で入室。制服の上にエプロンという何ともグッとくる着こなしである。流石は我が妹、男心を的確に突いてくる着こなしを知っている。

 

 

 

「お兄ちゃんとお姉ちゃん両方だよ」

 

「香澄も?」

 

「私何かしたっけ?」

 

「はぁ......窓から外見てみなよ」

 

 

 

 

何故か呆れた様な表情を浮かべる令香。言われた通り、俺と香澄で部屋にある窓から外を見てみる。部屋には窓が二つほどあるのだが、一つは玄関が丸見えなので多分そっちの窓だろう。

 

 

 

 

 

「どれどれ......」

 

「あれ、むーくん下にいるの有咲じゃない?」

 

 

 

 

最初は玄関を見なかったが香澄のその一言で急いで玄関を見る。すると、そこには香澄の言う通り有咲がいた。令香は有咲が来ていることを伝えたかったのだろう。でも今日は一緒に行こうなんて誘ってないのに何故?

 

 

 

「何で有咲がいるんだよ」

 

「れーかに聞かれても知らないよ」

 

「俺も別に呼んでないし」

 

 

 

となると犯人は一人しかいないわけである。

 

 

 

「私が一緒に行こって誘っといたよ!」

 

「それを早く言わんか馬鹿者」

 

「えへへ、忘れてた」

 

 

 

舌をペロッと出してウインクする香澄。これで許して欲しいとでも言うのだろうか。宗輝的に可愛いので許してあげたいがそうはいかないらしい。

 

 

 

「有咲さん怒ってたよ?」

 

「だってさ香澄」

 

「私のせい?」

 

『勿論』

 

 

 

 

その後有咲にしっかりと叱られた香澄。何故か俺にも飛び火してきたので途中から合流した沙綾に守ってもらいました。流石山吹家長女、あんなお姉ちゃんがいる純と紗南が羨ましい限りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~花咲川~

 

 

 

 

 

 

 

「ここのxの値を......」

 

 

 

 

 

問.何故こんなにも数学の授業は眠たくなるのでしょうか

 

 

 

 

 

「このyの値をこちらに代入して......」

 

「有咲が一人......ひまりが二人......燐子先輩が三人......」

 

「むーくん起きてる?」

 

 

 

A.本日最後の授業&ただ単にやる気が無い

 

 

 

「起きてるぞ、目の前には楽園が広がってるからな」

 

「楽園?」

 

 

 

 

目を閉じればそこには楽園が。巨峰を実らせた三人組が俺を待っている。数学の授業なんて放っておいて今すぐそんな世界へダイブしてみたい。

 

 

 

「むーくん」

 

「何だよ今良いところ......」

 

「先生に当てられてるよ?」

 

「......はい?」

 

 

 

 

あと一歩で夢叶わず現実世界へ引き戻されてしまった。

 

 

 

「斎藤、この問題を解いてみろ」

 

「......えーと」

 

「3、2、1」

 

「聞いてませんでしたスミマセン!」

 

 

 

カウントダウンが0になる前に頭を机につけて謝罪する。これがフィギュアスケートの大会ならば技術点が10点付いていただろう。潔くなるというのも、また真の男なのである。経験値0の俺が言っても浅すぎる言葉だなこれ。

 

 

 

「授業終わりに集合な」

 

「了解です」

 

「じゃあこの問題を奥沢に......」

 

 

 

 

その後はスムーズに授業が進められた。俺のかわりに美咲が問題解いたり香澄に当たって意味不明な答え言ったり。あからさまに寝てるのに気付かれない奴がいたり。そんなこんなで数学の授業は終了。

 

 

 

 

「何やってんのアンタ」

 

「すまんな美咲、俺のかわりで当てられただろ」

 

「別にいいけどさ」

 

「呼ばれてるから行ってくるな」

 

「まぁ頑張んなよ」

 

 

 

 

 

約束通り数学の担任教師のところへ向かうとするか。あんまり遅くなるとまた叱られるかもしれないし。

 

 

 

 

「来たか斎藤」

 

「お待たせしました」

 

「お前には届け物をしてもらおうと思ってる」

 

「届け物?」

 

 

 

その先生曰く、俺たちのクラスとはまた別に担当しているクラスでノートを返すのを忘れてしまったのだという。そのノートを持ち主に届けて欲しいというのが今回のミッション。......ミッシェルじゃないぞ、ミッションだからな。

 

 

 

 

「それで、そのノートは誰に渡せば良いんですか?」

 

「3年A組の白鷺千聖、お前も知ってるだろ?」

 

 

 

 

まさかまさかの届け物の主は千聖さん。確かにこの先生一年生から三年生まで授業見てるもんな。しっかし、3年A組って千聖さん以外にも知り合いがいるからなぁ。

 

 

 

「それ俺じゃないとダメですか?」

 

「ん?授業態度でC付けられたいのか?」

 

「やりますやらせて下さいお願いします」

 

「よろしい」

 

 

 

今回悪いのは俺だから我慢しよう。授業態度でCなんか付けられたら父さんに何言われるか。父さんじゃなくても令香に小言を言われるのは確実だ。大体Cって一番下の評価だから。まず普通にやってればつかないからね。

 

 

 

「帰られると困るし行くか」

 

「ちょい待ち」ガシッ

 

「ん?......なんだ有咲か」

 

「私で悪かったな」

 

 

 

千聖さんのところへ行こうと思った矢先、クラス随一の優等生っぷりを誇る有咲に捕まってしまった。別にそんなに強めに制服掴まなくても逃げないから。俺が有咲から逃げるとかないから。今朝は沙綾に助けを求めただけで別に逃げたとかじゃないから。

 

 

 

「急にどした」

 

「その、なんていうか......」

 

「ん?」

 

 

 

珍しく......は無いのだが、有咲が歯切れの悪い感じでボソボソと何かを言っている様に見える。基本的には有咲は仲の良い奴ら以外とはあまり話さないタイプだと思う。何か言いづらい事でもあったのだろうか。

 

 

 

「お前さっきの数学の時間寝てただろ?」

 

「まぁ寝てたな」

 

「ノートも書いてなかっただろ?」

 

「......何で知ってんの?」

 

 

 

確かに先生に叱られた後でもちょくちょく寝てはいた。だって仕方ないじゃん、眠たかったんだもん。それに今日の授業は復習問題を解くだけだったからノートも要らないと思って書いてないし。というか気付いたらノートが机から無かったんだけどな。しかし、何故このことを席が斜め前付近の有咲が知っているのだろうか。また香澄が内容を変に捻じ曲げて伝えてなかったら良いけど。

 

 

 

「そ、それは別にどうでも良いだろ!」

 

「お、おう」

 

「......ノート」

 

「ん、ノート?」

 

「だ・か・ら!ノート代わりに書いといてやったぞ!」

 

 

 

何故有咲が俺のノートを持っていたのかは謎だが、正直助かるから追求はしないでおいてやろう。有咲から渡されたノートを見てみると5色程で綺麗にまとめられており、事細かく先生の解説と自分なりの解き方を記してあったので滅茶苦茶分かりやすかった。

 

 

 

「これ全部有咲が書いてくれたのか?」

 

「そう言ってるだろ」

 

「なんで書いてくれたんだ?」

 

「......お前最近頑張ってるし。それで疲れて寝てんのかなって思って、出来る限りの事は手伝おうと思っただけだ」

 

 

 

 

有咲さん、勘違いしそうになるからやめて頂きたい。健気な有咲とか宗輝的に100点満点中200点だから。でも心配させるようじゃまだまだ俺もダメだな。まぁさっきはマジで眠かっただけなんだけどな。

 

 

 

「そういう有咲も最近練習気合入ってるって聞くぞ」

 

「まぁ久し振りのライブだからな」

 

「俺がいない時は香澄の制御任せたぞ」

 

「ったく、しょうがないけどやるしかないか」

 

 

 

 

なんやかんやで有咲も香澄の事が好きなのだ。でなきゃあんなに世話を焼く事はない気がするし。というかポピパは全員が全員の事好きだからこそのポピパだ。今更そこは揺るがないし揺るぎようがない。俺って案外蚊帳の外に置かれてたりする?

 

 

 

「んじゃ俺行ってくるわ」

 

「まぁ頑張れよ」

 

「ありがとな有咲」

 

 

 

 

少し話過ぎたかもな。千聖さんにノート渡す前に俺が有咲からノート渡されたから仕方ない。これで千聖さんいなくてノート渡せなかったら先生に怒られる。多分俺がノート持ってる事知ったら千聖さんにも怒られそうだから走っていくか。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ

 

 

 

「失礼しまーす」

 

 

 

 

時刻は17時過ぎ。放課後になって10分程度経ったといったところ。一応走っては来たのだがまだ帰ってないと良いけど。

 

 

 

「......宗輝君?」

 

「燐子先輩まだいたんですね」

 

「何か用事?」

 

「はい、千聖さんっています?」

 

「さっき教室を出て行ったと思うよ」

 

 

 

やはり有咲と話してる間に帰ってしまったか。めんどくさいけどノートを届ける様に言われたからにはやり切らないといけないな。

 

 

 

「家に帰ったんですかね?」

 

「ごめんね、そこまではちょっと......」

 

 

 

燐子先輩を困らせてしまったらしく、少しタジタジしている様子。周りを見渡せば他のクラスメイトがこちらを見ている。もしかして見られているのが恥ずかしいのだろうか?だとすればこれは俺のせいってことになる。燐子先輩の性格を考えて場所を移して話せば良かったか。

 

 

 

「あら?何故貴方がいるのですか?」

 

「氷川さん、おかえりなさい」

 

「紗夜さん?風紀委員か何かで仕事ですか?」

 

「今度の合同文化祭の事で少しね」

 

 

 

やはり生徒会や風紀委員はそろそろ忙しくなってくるし、今では文化祭実行委員なんかも立ち上げられるっていう話が出てる。俺自身はライブ関係でやらなきゃいけない事が山積みだけど、出来る限りは燐子先輩や紗夜さんのお手伝いもやらなきゃいけないな。二人には色々とお世話になってるし。取り敢えず日菜にいつも振り回されてる紗夜さんには労いの言葉を送ろう。

 

 

 

「氷川さん、わざわざありがとうございます」

 

「いえ、白金さんも忙しいでしょうから」

 

「何かあれば俺も手伝いますよ」

 

「それは嬉しいけれど、何か用事があって来てたんじゃないの?」

 

 

 

紗夜さんが自然に会話に入ってきたせいか少しの間完全に忘れてた。合同文化祭も大事なイベントだが、今は千聖さんにノートを届けるのが最優先な気がする。

 

 

 

「千聖さんどこに行ったか知りませんか?」

 

「私は知りませんね」

 

「即答ですか」

 

「知ってる人に聞けば良いでしょう」

 

 

 

とは言っても千聖さんがどこに行ったかなんて知ってる人がいるのだろうか。ただでさえ女優とパスパレの掛け持ちで忙しい千聖さんだ。悪気云々は全く無いと思うが、行き先を伝える程のクラスメイトが何人もいるとは思えない。

 

 

 

「知ってる人と言われましても」

 

「松原さん......とか?」

 

「......燐子先輩ナイスです」

 

「はぁ......貴方気付いてなかったのね」

 

 

 

 

確かに花音先輩なら千聖さんの情報を知ってるかもしれない。所々花音先輩には甘々な千聖さんの事だ。仕事の話からプライベートの話まで花音先輩になら気兼ねなく話す事が出来るだろう。

 

 

 

「すみません、ちょっと電話しますね......もしもし」

 

『宗輝君?急にどうしたの?』

 

「少し聞きたいことがあったので」

 

『聞きたいこと?』

 

 

 

花音先輩のパッシブスキルである迷子が発動した時の為の連絡手段として携帯番号を教えられてからというもの、何故か回収担当が俺固定になってしまった。最近では勘でどこに行ったのか当てられる様にもなってきたし。そろそろプロを名乗っても良いかもしれない。というかその前に花音先輩の迷子癖を治さないといけない気がする。

 

 

 

「千聖さんって今日何か言ってました?」

 

『えーっと、これは内緒だよ?』

 

「分かりました」

 

『......じ、事務所』

 

 

 

事務所?今日は確か千聖さんはオフだったはず。事務所に何か用事があるのだろうか?

 

 

 

 

『とある事務所のプロデューサーがこの前失敗して、次の仕事ではもう......』

 

「カット!カットです花音先輩。それ以上はダメです」

 

 

 

千聖さんそんなことまで花音先輩に言ってるんですか......。花音先輩ピュアなんだからそこら辺のブラックな部分は極力避けましょうよ。本当にあったのかも知れないですけど。似た様な話前にも聞きましたけどね。......そんなことにならない様に俺も頑張ろう。

 

 

 

「今日どこか行くって言ってませんでした?」

 

『そう言えば事務所に寄って帰るって言ってたよ』

 

「やっぱり事務所ですか」

 

『それがどうしたの?』

 

「ありがとうございます花音先輩、今度何か奢りますね」

 

『う、うん』

 

 

 

無事千聖さんの情報を得たところで通話は終了。相変わらず花音先輩のゆるふわ感は気持ちを和ませてくれる効果がある。よく迷子になるのがマジでたまにキズというかなんというか。そこが花音先輩の魅力だと薄々感じてきている自分がいる。

 

 

 

「それで分かったの?」

 

「もうバッチリです」

 

「そう、なら良かったわ」

 

「紗夜さん、燐子先輩もありがとうございました」

 

「うん、力になれて良かった」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子先輩と紗夜さんと別れてからも少し急ぎ気味で事務所へ向かった。今日はポピパの蔵練に付き合う予定だっだがまたしてもドタキャンしてしまった。そのせいか香澄が来て欲しいと駄々をこねはじめているらしい。RASの方もチュチュに無理を言ってここ最近は見にいけていないのが現状。もう少しでライブなのに情けない。

 

 

 

 

事務所に着き鞄の中に常に入れているIDカードをスキャナーにかざす。基本的にうちの事務所はこれで勤怠記録を取っているとのこと。俺は何かと特別な立場だから来る時と出る時にかざすだけで良いらしい。その分、本当に仕事がない限りはお給料は発生しないけど。別にお金稼ぎでマネージャーなんてやってないから良いんだけどな。

 

 

 

 

「ちょっと仕事を抜けてみれば懐かしい顔だね」

 

「別にそこまで懐かしくはないと思いますけどね」

 

 

 

というかこの人さっき仕事抜けてきたって言わなかった?なんかいつものことみたいに流しちゃったけど大丈夫?まぁ多分後から皆に叱られるんだろうけど。これはプロデューサーあるあるだから覚えておく様に。

 

 

 

「今日はどうしたんだい」

 

「千聖さん来てませんか?」

 

「ああ、ついさっき来て中に入って行ったよ」

 

「何か言ってましたか?」

 

「私には何も」

 

 

 

てっきりプロデューサー辺りに用があるんだと踏んでたんだけど。そうじゃないとなると何故千聖さんがわざわざ事務所に寄ったのか分からない。まぁ本人に直接聞けば良いか。

 

 

 

「後でプロデューサーにもお話があるんで」

 

「なら時間を開けておくよ」

 

「助かります」

 

 

 

 

プロデューサーとは一旦別れ、千聖さんが向かったと思われる事務所内にある部屋へと歩を進める。千聖さんのスケジュール管理の一部を任されている身分としては少し疑問符を浮かばざるを得ないといったところ。今日はオフなので家に帰りゆっくりするのかと思ったのだが違ったらしい。

 

 

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

 

 

どうやらこの部屋で当たりらしい。千聖さんは俺が来ることなど微塵も考えてはないはず。落ち着いた声色であくまでも女優白鷺千聖として対応していることが伺える。これを幼い頃からずっと通してきたのだとしたら中々のものである。もっと千聖さんに楽させてあげよう。

 

 

 

「失礼しまーす」

 

「なんで宗輝君がここにいるのよ」

 

「千聖さんに用事です」

 

「私に?」

 

「はい、取り敢えずこれを」

 

 

 

鞄を開けて一番安全な場所に置いておいた千聖さんの数学のノートを取り出して渡す。勿論千聖さんは不思議な顔をしている。それもそのはず、何故か自分のノートを知人が事務所にまで持ってきているのだ。俺が逆の立場だったら......駄目だ、個性的な奴が多過ぎて考えられん。香澄とかなら普通に家まで来そうだし日菜とかは場所時間関係なくやってきそうで怖い。

 

 

 

「これ私が提出してたノートじゃない。何で宗輝君が待ってたのよ」

 

「色々と理由はあるんですけどね」

 

「まぁ理由は聞かないでおいてあげるわ」

 

「そうしてくれると助かります」

 

 

 

数学の授業中に寝て先生に怒られました、なんて言ったら千聖さん怒りそうだし。千聖さんが本気で怒ってるところを未だに見たことがないから何とも言えないけど。多分千聖さんのタイプは怒らせてはいけないタイプだと思うし。

 

 

 

「それで、用事はこれだけ?」

 

「......実はですね」

 

 

「あー!千聖ちゃんと宗輝みっけ!!」

 

「日菜さん、走ると危ないですよ」

 

「日菜!?というか全員集合!?」

 

 

 

偶然なのか分からないが、もう一つの用事を済まそうとしたらまさかの全員集合。バタバタと足音を立てて日菜がこちらへやってくる。その日菜を宥める様に麻弥や彩、イヴが次々に入室。終いには先程まで話していたプロデューサーまでもが来てしまった。

 

 

 

「やっと来たわね」

 

「え?もしかして千聖さんが呼んだんですか?」

 

「いいえ、残念ながら私ではないわね」

 

「今回は私が呼んでおいたよ」

 

「ならさっき言っといて下さいよ......」

 

 

 

マジでこのプロデューサーだけは......。まぁ全員集まったのならそれはそれでラッキーだ。結局はみんなに話そうとは思ってたからな。

 

 

 

「なんで集められたのかな?」

 

「彩達も聞いてないのか?」

 

「うん」

 

「私から皆に話があってね、すぐに終わらせるから」

 

 

 

専属のマネージャーなんか任されてはいるが、実質パスパレ関連の事に関してはプロデューサーの方が権力があるといっても良い。言わばこの人は俺の直属の上司みたいなものなのだ。最近良く聞く報連相は何処へやら。要らないことばっかり話すからもうわけが分からなくなってきてるし。

 

 

 

「簡単に説明するよ。まだ決まった事ではないけど近いうちにライブを計画してるんだ。そこで君達の意見を聞きたいと思ってね」

 

「ライブ?もしかして主催ですか?」

 

「パスパレが、とはいかないまでもウチの事務所主体で動く予定にはなっているけどね」

 

 

 

これまた大きな話を軽く話すのかこの人。というかもう少しで花咲川と羽丘を合同イベントがあるのに主催ライブなんて厳しすぎるにも程がある。最悪の場合彩達が文化祭に出られなくなる可能性だって出てくる。そんなのは彩達も嫌だろうし、勿論俺の思うところでもない。

 

 

 

「みなさんどうしますか?」

 

「ジブンは今のところなんとも......」

 

「私はどっちでも良いかなー」

 

「日菜ちゃん適当に決めるのは良くないわよ」

 

「......その件で一つ提案しても良いですか?」

 

 

 

一か八か、事務所でそんな話が出ているのならそれに俺の計画をぶつけるまでだ。正直ダメ元だけど当たって砕けろ精神も時には必要だって田舎のじっちゃん言ってた。

 

 

「何か案があるのかい?」

 

「実は花咲川と羽丘で合同イベントがもう少しであるんです。そこで文化祭ライブをやろうと思ってて、パスパレもそれに出演して欲しい......っていうのが俺の案なんですけど」

 

「......宗輝君?それ私達初耳なんだけど?」

 

「まぁ今初めて言いましたからね」

 

「プロデューサー大丈夫なの?」

 

「正直に言うとちょっとキツイかな」

 

 

 

千聖さんにほっぺたをつねられながらも話はしっかり聞いておく。だって仕方ないじゃないですか!こうやってめんどくさくなりそうだからって一番先に千聖さんに伝えようとしたのに皆来たんですから!というかそろそろほっぺを弄るのやめて欲しい。

 

 

 

「......宗輝君に聞いても良いかい」

 

「はい」

 

「じゃあ君の本当の想いを聞かせてもらおうかな」

 

「宗輝の本当の想い?」

 

 

 

やはりこの人は人の気持ちとかマジで読めるんじゃないのか不安になってきた。その内人心掌握の達人とかになりそうで怖い。どうやら俺がただ文化祭ライブを計画してるだけではないと気付いていたらしい。

 

 

 

「......最初は別に特別な意味なんてありませんでした。」

 

「じゃあ何故?」

 

「でもやっぱり思ったんです。彩達には随分と助けてもらってて、その分俺がしてあげられる事はあるのか。そこでこの文化祭ライブの案を思いつきました」

 

 

 

過去はもう変えられない。でも、この先の未来なら変えることが出来る。みたいな事を何処かの誰かが言ってた気がする。今を生きる自分達がこの先の未来を良いものに変えていくには何をすれば良いのか。その中の一つに、きっと大切で忘れられない思い出を作ることがあると思ったから。

 

 

 

「彩達にとって最後の文化祭であり、俺にとっても最後の文化祭なんです」

 

「宗輝君には来年もあるんじゃないのかい?」

 

「確かに来年も文化祭ならあるかもしれません。それでも彩や日菜、千聖さんや麻弥やイヴ達みんなと過ごす文化祭はこれで最後なんです」

 

「......宗輝君」

 

「......分かった、この件は私からお願いしてみるよ」

 

「自分が言っといてなんですけど、良いんですか?」

 

 

 

さっきも言った通りダメ元の玉砕覚悟で言ったつもりなのにあっさりokをもらってしまった。てっきりダメなものはダメみたいな感じで拒否られると思ったのに。案外ウチのプロデューサーはそういうところが弱点なのかもしれない。

 

 

 

「宗輝君に質問、ここで私が取るべき行動はなんだと思う?」

 

「はぁ......分からないですけど、主催ライブの案を進める事ですかね」

 

「まぁほぼ当たりと言えるね。だけどそれは"プロデューサー"としての私が取るべき行動であって"一人の大人"としての私が取るべき行動は他にある」

 

 

 

プロデューサーとして取るべき行動と一人の大人として取るべき行動。その二つに違いがあるとしたら何なのだろうか。それは俺達より何倍もの経験をしてきたプロデューサーだからこそ分かる答えなのかもしれない。

 

 

 

「......正解は"子供達の意思(君達の意思)"を汲んであげる事だ」

 

「どういう意味なんですか?」

 

「私は常に社会人でありプロデューサーであり一個人としてこの世界にいる。そして子供達の指標になるべきはそんな大人達であり私達だ」

 

「......」

 

「生きていく中で君達子供は壁にぶつかる事が必ずあるだろう。そこでどう乗り越えるかや誰と乗り越えるかは君達の問題だ。そこで大人のすべき事は素直に手を差し伸べる事でもなく傍観する事でもない」

 

 

 

俺を含めみんなが真剣に話を聞く。先程まで俺のほっぺで遊んでた千聖さんも今では真面目に話を聞いている。それもそのはず、この話は俺だけでなくパスパレメンバーに向けても話しているのだから。

 

 

 

「私のするべき事は一つ。君達が壁を乗り越えられるように出来る限りの支援をする事だ。だから、私は今回のライブに関しては君の案を勧めるよ」

 

「でもスケジュール調整とかどうするんです?」

 

「それは俺が何とか調整する!」

 

「それと宗輝君には企画書を提出してもらうことになると思うけど良いかな?」

 

「勿論です!」

 

 

 

そうと決まれば時間が惜しい。今すぐ企画書を書いて提出すべきだ。どうせ俺が一人で考えた企画書なんて一回で通るわけない。こうなればプロデューサーに納得のいくまでチェックしてもらうしかない。その後はスケジュール調整に練習、セトリの曲を考えなきゃいけないし.......あれもこれもプロデューサーと彩達に感謝だな。

 

 

 

「それじゃあ企画書書いてきます!」

 

「あ、ちょっと宗輝君!」

 

「あちゃー、行っちゃったね」

 

「ムネキさんやる気満々でしたね!」

 

 

 

 

 

 

「君達も随分と彼に好かれているんだね」

 

「私達がですか?」

 

「聞けば過去に辛い経験をしたのだとか何とか」

 

「.......」

 

「それでも彼が君達に尽くす理由は何だろうね」

 

「んー、彩ちゃん分かる?」

 

「えー!わ、私?」

 

 

 

 

(夢に向かって一生懸命な君達だからこそ彼は......)

 

 

 

 

 

「さぁ私達も出来る事からやっていこうか」

 

 

 

 

 

 

~To Be Continued~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗輝「おまけのコーナーでございます」

 

 

宗輝「今回のゲストは蘭とモカだ」

 

 

モカ「モカちゃん参上〜」

 

 

蘭「モカ前のお店で借りてたお金返す」

 

 

モカ「およ?そう言えばそんな事もありましたな〜」

 

 

宗輝「何処か行ったのか?」

 

 

モカ「この前蘭とラーメン三郎に行ってきたよ〜」

 

 

蘭「私は巴の代わりだったけど」

 

 

宗輝「何だよ、ラーメンなら俺も行きたいぞ」

 

 

モカ「むーくんもラーメン好きなの〜?」

 

 

宗輝「最近行けてないけど一人暮らししてた時は良く食べてたな」

 

 

蘭「なら私の代わりにモカに付き合って」

 

 

宗輝「何言ってるんだ?蘭も一緒に行くんだよ」

 

 

蘭「でも......」

 

 

モカ「蘭〜、むーくんに天地返し教えてあげないとダメでしょ〜?」

 

 

宗輝「天地返し?ラーメンは好きだけど詳しいわけじゃないからなぁ」

 

 

モカ「ほら見たことか〜」

 

 

蘭「そういうことなら、まぁ行っても良いよ」

 

 

モカ「蘭がいつも通りで安心したよ〜」

 

 

蘭「モカ、それどういう意味」

 

 

宗輝「確かにモカの言うようにいつも通りだな」

 

 

モカ「エモいですなぁ〜」

 

 

 

 

 

-End-





ポピパのオリコン1位はTwitterで最初に見た時は滅茶苦茶ビックリしました笑
未だ購入してないので近いうちに買いに行きたいと思います......笑

お好きなキャラをお選び下さい(アフグロ)

  • モカ
  • ひまり
  • つぐみ

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