トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~   作:Lycka

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まず新たに☆10評価頂きました ユッケ氏 さんありがとうございます!

久し振りの評価に嬉しみの舞を踊っております。
しかし、欲深いのが良くも悪くも人間の性というもの......。(訳:感想評価待ってます)

それでは、53話ご覧下さい。
(今回長くなっております)


Produce 53#ジェリーフィッシュアンサンブル

 

 

 

 

 

 

「......どうしてこうなった」

 

「ふ、ふえぇぇ......」

 

 

 

これはある日の出来事。

 

 

 

 

「なんでまた巻き込まれてるんだ」

 

「ちょっと宗輝君聞いてる?ここの電車って......」

 

 

 

 

常識人では恐らく経験することのないメルヘンチックな1日。

 

 

 

 

「もう一度......何度でも言おう」

 

『宗輝君......ここどこ?』

 

 

 

 

不思議な世界へ迷い込んでしまったかの様な錯覚にまで陥ってしまった愉快なお話。

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

「ちょ......もしかしてこの電車の方向逆なのかしら」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

~前日~

 

 

 

 

「斎藤君ここの資料なんだけど......」

 

「えーっと、ここですね」

 

 

 

「斎藤くーんちょっと良いかなー?」

 

「はーい今行きまーす!」

 

 

 

「宗輝君アイス買ってきて♪」

 

「了解......って素直にパシりに使おうとしないで下さい」

 

 

 

 

ここ数日はずっとこの様な感じで事務処理とライブに関する資料作り、その他諸々をこなす為事務所の一室にこもりっぱなしなのである。RASのライブまで残り一週間。チュチュに事情を説明したら普通に怒られてしまった。まぁ流石に顔出してなさすぎるから帰り際に寄って帰るか。

 

 

 

 

「頑張ってるみたいだね」

 

「まぁ自分でやるって決めた事ですから」

 

「手伝ってあげても良いけど?」

 

「俺がやりたいので別に良いです。というかプロデューサーは他にやる事あるでしょ」

 

 

 

 

俺が自分で持ち込んだ仕事だ。俺がやらなきゃ誰がやるんだ。某人気キャラのセリフみたいになってしまったが、今はその気持ちが痛い程分かる気がする......だけだと思う。

 

 

 

「あー!プロデューサーやっと見つけましたよ!」

 

「ほら、言わんこっちゃない」

 

「何を言っているんだい、私は今休憩中だよ」

 

「冗談はいいからさっさといきますよ!」

 

「あっ......ちょ.......宗輝君頑張ってね〜

 

 

 

毎度毎度プロデューサーの担当の方には頭が上がらない。俺がプロデューサーの担当だったら速攻で異動をお願いしてるな。仕事に関して言えば文句無いし容姿も綺麗で黙ってりゃ男の一人や二人居てもおかしくないのに。

 

 

 

「ごめんね斎藤君、ウチのプロデューサーが迷惑かけて」

 

「もう慣れてきたんで大丈夫ですよ」

 

「一回ガツンと言ってあげれば?」

 

「まぁあの人仕事は出来ますし綺麗な方なので逆に欠点が無い方が怖いくらいですよ」

 

 

 

人間何処か抜けてた方が好きって言う人も多いくらいだしな。完璧超人なんてこの世の何処探してもいないと思う。あの天才っ子の日菜ですら時々やらかすからな。

 

 

 

「あら......斎藤君もしかしてプロデューサー狙い?」

 

「あと10年早く産まれてればあり得た話かもです」

 

「でも意外な事にあんなプロデューサーでも社内では人気なのよ?」

 

「......マジっすか?」

 

「しかも驚く事に女性票の方が多いの」

 

 

 

あれだな、カッコいい女性は同性からも好かれるってやつだな。女性票の方が、って事は男性票もあるらしいし良かった。何故か子を見守る親の気持ちになった気分だ。

 

 

ガチャ

 

 

「お疲れ様です」

 

『お疲れ様でーす』

 

 

「あれ?千聖さん?」

 

「もしかして今休憩中だった?」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

 

 

千聖さんがやってきて手に持っていた飲み物を机に並べる。ここ数日千聖さんは気を利かせてくれているのかこうやって差し入れをしてくれるのだ。こうやって気が利く女性はモテるんですよプロデューサー。

 

 

 

「また今日も残業かしら」

 

「まぁ学校終わってからなんで残業と言えるかどうか分かりませんけど」

 

「なに言ってるのよ、立派な残業じゃない」

 

 

 

そうは言うが、俺以外のちゃんとした社員の方が残っている方が立派な残業だと思う。プロデューサーの手伝いを一人前に断っておいてなんだが他の人達には頼りっぱなしだからな。毎日残らせてしまって本当に申し訳ない。

 

 

「これ飲みながらちょっと休憩しましょう」

 

「でもまだ作業が......」

 

「なら私も手伝うわ」

 

「い、良いんですか?」

 

 

千聖さん達パスパレもライブの為に練習して疲れているだろうに。こんなところで無理をさせて身体を壊してしまっては元も子もない。実は他にも彩やイヴが時々様子を見て手伝うと言ってくることもあった。しかし、そういった点を考慮して今までは全部追い払っておいたのだ。

 

 

「良いもなにも私達のライブの為の作業でしょう?」

 

「まぁそうですけど」

 

「なら私達にもやる権利はあるはずよ」

 

「......じゃあそこの資料がさっき完成したんでプロデューサーに持っていってくれませんか?」

 

「分かったわ」

 

 

少し散乱していた資料の山を整理しつつ、プロデューサーへチェックしてもらう予定だった資料を持って部屋を出て行く。そして千聖さんが出て行ったのを確認して、事務所から少し隔離されたこの部屋の内側から鍵をかける。

 

 

「そんなことしてまた怒られるよ?」

 

「みんなに無理はさせたくないので」

 

「斎藤君ってちょっと不器用よね」

 

「そうかもしれませんね」

 

 

 

それからは黙々と作業を続け、ふと時計を見ると既に20時を過ぎており外は街頭の灯りがほんのりと夜道を照らす時間帯。不思議なことに鍵をかけたにも関わらず誰一人ドアを開けてこなかった。千聖さんもしかしてプロデューサーと話長引いてる感じ?

 

 

 

「もう遅いから今日は終わりにしようか」

 

「じゃあプロデューサーに伝えてきます」

 

「悪いけどよろしくね」

 

 

流石に連日こうしていると嫌でも疲れが溜まるというものだ。手伝ってもらっている社員の人も表情から疲れているのが見て取れる。

 

 

「ふぅ......明日は休日だしまとめて片付けるか」

 

「......宗輝君?」

 

「千聖さん!?こ、こんなところで会うなんて奇遇デスネ」

 

「ちょっと良いかしら」

 

 

鍵開けてプロデューサーのところ行こうとしたら千聖さんがガン待ちしてました。だから誰もドア開けようとしなかったのか。そりゃドアの前で千聖さんいたら入りにくいわな......。

 

 

「いたたっ、千聖さん耳!耳が取れる!!」

 

「聞こえないわ」

 

「ちょ、マジで耳がのっびのびトレジャーだって!」

 

 

ちょっと自分でも何言ってるか分かんない。けどそのくらい痛かったから仕方のないことだ。千聖さんを久し振りに怒らせてしまった気がする。まぁ本気ではないんだろうけど。

 

 

「おやおや、やはり捕まっていたか」

 

「言われた通り連れてきましたよ」

 

「......プロデューサーも共犯ですか?」イタタ

 

「手段については彼女に一任していたからね」

 

 

あくまで自分は関係ないと言っているようなものだ。言われた通り、と千聖さんが言っている時点で何か企んでるのは丸わかりですからね。

 

 

「宗輝君今何時だい?」

 

「20時過ぎだと思います」

 

「ウチの定時は?」

 

「確か17時だった気が」

 

「残念、正解は16時50分だ」

 

 

 

この人マジで一回懲らしめてやろうか。

 

 

 

「明日の予定は?」

 

「まだ完成出来てない資料があるので......あっ」

 

「晴れて明日は休日。しかし、このところ残業続きの君を休日を使ってまで働かせようなんて思っていないよ」

 

「いやでも間に合いませんし」

 

「それでもやり過ぎよ宗輝君」

 

 

 

千聖さんに諭されてここ数日を振り返ってみる。学校が終わり、香澄達と別れ一人事務所へ。パスパレのみんなと時々会うにしても少し話すくらい。基本的にはあの部屋でずっと作業だ。帰ったらだいたい21時手前の真っ暗な時間。その繰り返しのお陰か令香の機嫌がすこぶる悪いのがお兄ちゃん的に良くない。

 

 

 

「だから明日からの土日は完全にオフとする!」

 

「じゃあ代わりに誰かやってくれるんですか?」

 

「勿論、私を含め宗輝君の案に乗ってくれた社員で進めておくよ」

 

 

 

"休日出勤でお金も手に入るしね♪"と付け加えるこの上司は果たしてどこまでが本心なのか。別にお金に困ってる風には見えないけどな。

 

 

「そしてさっきの罰として明日は私に付き合ってもらうわよ」

 

「......まぁオフですしとことん付き合いますよ」

 

「じゃあ今日はもう解散ってことで」

 

 

そそくさとその場を去って行ったプロデューサー。多分あれは帰ってからお酒でも飲むんだろう。社員の人が言ってたけどプロデューサーは大のお酒好きらしい。毎週末自宅で飲んでる写真を担当の人に送りつけてくると言っていたから確かなのだろう。

 

 

 

「それで、明日は何するんですか?」

 

「買い物に付き合ってもらおうと思って」

 

「買い物ですか?」

 

「ええ、花音もいるけど大丈夫よね?」

 

「......大丈夫だと思いますよ(圧が強い)」

 

 

 

 

 

さぁここで今一度おさらいしておこう。知っての通り、花音先輩は百戦錬磨の迷子マスターである事実は既にお披露目済。どこかへお出かけへ行こうものなら必ずと言っていい程迷子になる。それは勿論学校生活の中でも効果を発揮する。やれ購買の人波にもまれて辿り着いた先で迷子になったり、職員室や移動教室を渡り歩いている内に迷子になったり。

 

 

 

しかし、ここで忘れてはならないのが花音先輩の迷子ではなく千聖さんの意外な弱点である"電車"である。詳しくは電車の"乗り換え"が苦手であるという事だ。お買い物というのなら電車を使う必要が出てくる。そうすると乗り換えももしかするとしなければならない可能性がある。

 

 

 

 

 

果たして俺は花音先輩の迷子と千聖さんの苦手な乗り換えを抱えたまま無事にお買い物を終えることが出来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

という長い長い回想を経て現在()に至るわけである。今朝は少しでも面倒な事態を回避する為に花音先輩の家へ集合。千聖さんと花音先輩と俺の三人が揃ったのでお買い物へと出発。どうやら今日はお買い物ついでに少し遊んで帰るらしく、都内ではあるが大型のショッピングモールに向かう為に駅へと到着した。

 

 

 

『ふえぇ......宗輝君助けて〜』

 

「花音先輩周りに何が見えますか?」

 

『周り?えーっと......クラゲ?』

 

「それ本気で言ってます?」

 

『ちゃんとクラゲさん見えるもん!』

 

 

 

少し幼児退行じみた言葉遣いをする花音先輩にちょっぴりきゅんとする。クラゲにさん付けする人を初めて見た気がする。可愛いからもっと言って欲しい。

 

 

「花音先輩はそこで待ってて下さい」

 

『わ、分かった!』

 

「はぁ......千聖さん取り敢えず花音先輩のところに」

 

 

と話しかけたは良いものの独り言言ってる変態みたいになってしまった。というか千聖さんどこ行ったんだよマジで。さっきまで俺の横でブツブツ言ってた気がするんだけど?なに、もしかしてあの人瞬間移動まで使える超人なの?

 

 

「......もしもし、千聖さん今どこにいます?」

 

『ようやく繋がったわね、誰と話してたのよ』

 

「花音先輩の現在地を確認してました」

 

『それより乗り口はこっちじゃないの?』

 

「そこ次の乗り換えの時の乗り口です......」

 

 

ホントこの人なんで乗り換え苦手なんだよ......。花音先輩はクラゲが見える位置にいて千聖さんは次の乗り換えの乗り口。ただ一人、俺だけが乗る予定の電車の正しい位置にいるこの悲惨な状況。もう勘弁してくれモカ神様。

 

 

 

「───って書いてるところに来てて下さい」

 

『宗輝君はどうするのよ』

 

「迷子を迎えに行きます」

 

 

 

千聖さんにこの位置を伝えたところで電話を切りポケットへ落ちないようにしまいこむ。ここからはクラゲと俺の一騎打ちといったところだろうか。まだ到着まで少し時間はある。それまでにクラゲを見つけられるかが勝負の分かれ目だ。

 

 

「取り敢えず来た道戻るか」

 

 

 

ここに来るまでに通ってきた道を取り敢えず戻りながらクラゲを探す。階段を登ったり降りたりして細かく周りを見渡すが一向にクラゲは見つからない。多分花音先輩は本物のクラゲではなくポスターか何かでクラゲを見たのだろう。

 

 

 

このままでは埒があかないと思ったので駅員さんに話を聞いてみることにする。花音先輩の容姿を含めこれが最適解だと思うし。

 

 

 

「すみません、水色の髪の女の子見ませんでしたか?」

 

「水色?そう言えばクラゲっぽい缶バッチをつけたリュックを背負った子がそんな髪をしてたような......」

 

「どっちに行ったか分かりますか?」

 

「その子なら多分そっちだよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

そういえば今朝はそんなに反応しなかったけど、確かに花音先輩リュックサックにクラゲの缶バッチつけてた気もするな。水族館か何かの来場記念で貰ったとか何とか。家に違う種類の缶バッチいっぱいあるって言ってた気もするし。

 

 

 

「クラゲクラゲっと......あれか?」

 

 

 

駅員さんに教えてもらった方向へ走ること数十秒。少し周りの人に見られてしまったが今は気にしている場合では無い。走りながらも周りを見ていると"ジェリーフィッシュ祭り開催!"とデカデカと書いているポスターを発見。そこにはクラゲも沢山描かれており、多分花音先輩が言っていたのはこの事だろう。

 

 

 

「水色......可愛い......ふえぇ......」

 

 

最早気持ちの悪いただの独り言だなこれ。花音先輩と結びつく重要な情報が勝手に口から漏れてしまっている。これはあくまで自分の意思ではなく勝手に漏れているのでセーフ。別に執拗なストーカーとかじゃないから。

 

 

 

「......花音先輩見つけましたよ」

 

「ふえぇ?む、宗輝君!?良かったぁ......」

 

「まだ目的地にも着いてないのに心配させないで下さい」

 

「ご、ごめんね?」

 

「ほら、千聖さんも待ってるので行きましょう」ギュッ

 

 

 

二度とはぐれないようにしっかりと花音先輩の手を握って歩き出す。まだまだ人が多いので時折ちゃんと着いてきているか後方を確認。なんだか安心したような表情の花音先輩と目が合ってしまい反射的にお互い目をそらしてしまった。......うん、悪くないぞこれ。

 

 

 

またもや周りの人に見られつつも千聖さんがいるであろう場所へ向かう。花音先輩は照れているのか、それとも見られているので恥ずかしいのかほんのり頬を紅く染めながら手を引かれてついて来てくれる。

 

 

 

「えーっと、千聖さんは......」

 

「宗輝君、あそこにいるんじゃない?」

 

 

 

花音先輩が示した場所には何故か人だかりが出来ていた。何故か、というよりは既に理由はハッキリしている気もする。今やパスパレのベースとして、また一人の女優として人気を博している千聖さんだ。白昼堂々というわけではないものの、駅という人が多数いる中で見つからないということはないだろう。

 

 

 

「ちょっと行ってきます」

 

「う、うん」

 

 

一か八か、野次馬が次々に集ってくる前にここを切り抜けないと買い物云々の話だ。

 

 

 

「すみませーん、通してくださーい」

 

「む、宗輝君?」

 

「流石は千聖さんって言った方が良いですか?」

 

「この状況どうするつもりなの?」

 

「良い案があるので合わせて下さい」

 

 

 

ここは千聖さんの女優力を頼りにしよう。密かに千聖さんが主演のドラマや出演している番組はほぼ全て録画をして暇な時間に見ている事はまだ内緒。言うとなんだかんだ言ってきそうだからな。

 

 

 

「すみません!実は現在ドラマの撮影でこの駅にお邪魔させてもらっています!」

 

「撮影?」「だから白鷺千聖がいたんだな」「てことはあのドラマ!?」

 

「スムーズに撮影する為に通行人の役を皆さんにはお願いしたいです!」

 

「皆さん、よろしくお願いします!」

 

 

若干ザワついているものの、何とか誤魔化す事が出来た様子。それからは先程まで出来ていた人だかりも無くなり、まるで千聖さんに誰も気付いていないかのようにも思えた。というか団結力すげぇな。

 

 

「今の内に電車に乗りますよ」

 

「花音はどうしたのよ」

 

「ち、千聖ちゃ〜ん」

 

「花音!貴女一体何処に行ってたのよ......」

 

 

無事三人が合流出来たグッドタイミングで電車が到着。もうはぐれるのも面倒なので右手に千聖さん、左手に花音先輩という何とも豪華な両手に花状態で乗車する。休日の朝ということもありそこまで混み合っていないのが唯一の救いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

~大型ショッピングモール~

 

 

 

 

 

 

「やっと着いた......」

 

 

 

電車に乗り、一本乗り換えて数十分。目的地であるショッピングモールの最寄駅へ到着。教訓を生かしあれからはずっと手を繋いで歩いていた。そのせいで周りから嫉妬とも取れる目線を感じたり、かと思えば暖かく見守ってくれる様な視線を送られてしまった。

 

 

「ここが千聖ちゃんが行ってみたかったところ?」

 

「ええ、最近新しく出来たカフェがあるらしいわよ」

 

「ならまずそこいきません?流石にこのままお買い物に付き合わされるとキツいです」

 

「まぁ時間もお昼前だし仕方ないわね」

 

 

 

仕方ないわねって千聖さんが一番言っちゃいけないでしょうに。誰のせいで走らされたと思ってるんだこの人は。ホント俺にだけは容赦のない人で困る。こんな時は花音先輩に癒してもらうに限る。この人身体からマイナスイオン出てんのかってくらい癒してくれるからな。

 

 

 

「花音先輩は疲れてませんか?」

 

「私は大丈夫だよ。宗輝君こそ大丈夫?」

 

 

この気遣い、そして不安げな表情。これだけで健気さが十分すぎるほど伝わってくるというものだ。

 

 

 

「お腹も空きましたしカフェ行きましょうか」

 

「うん!千聖ちゃん、カフェはどっちにあるの?」

 

「確か2Fの中央あたりに......」テクテク

 

「ちょっと待てーい」ガシッ

 

「あうっ」

 

 

 

危うく千聖さんをこの人混みの中に一人解き放ってしまうところだった。正直千聖さんに限って言えば見失ってもすぐ見つかるけど。だからこそ見失うと面倒なことになりかねないので単独行動NGなのだ。宗輝は"私に任せて"から"良いから大人しく"に作戦を変更。千聖さんには悪いがエスコートは俺に任せてもらおう。

 

 

 

「闇雲に歩いてどうするつもりなんですか」

 

「だから2Fの中央あたりに行こうと」

 

「残念ながらそっち映画館しかないですよ」

 

「......ワザとに決まってるじゃない」

 

「ち、千聖ちゃん?取り敢えず宗輝君に任せてみない?」

 

 

 

この人見知らぬ地だからなのか花音先輩の迷子癖が乗り移っているのかもしれない。これじゃ休日に子供のお守りしてるみたいだな。

 

 

 

「取り敢えずインフォメーション行きますよ」

 

 

 

 

このショッピングモールの全体図を把握しておきたいので先にインフォメーションへ向かう。どうせこの後も買い物するんだったらルートを決めておきたいのが本音。別に効率を重視するわけではないが如何せんこの二人がいるので念には念を作戦だ。

 

 

 

「えーっと、2Fのカフェ......この"cafe de star"ってところですか?」

 

「そこで間違いなさそうね」

 

「......」ツンツン

 

「ん?花音先輩どうかしましたか?」

 

「ここ......」

 

 

 

花音先輩が指差した場所にはペットショップ?的なお店が書かれていた。何でもここのペットショップは最近リニューアルオープンしたらしく、内装や種類云々を一新したのでセールをしているとデカデカと書き出されている。

 

 

 

「丁度カフェから近いですし寄って行きましょうか。千聖さんも良いですよね?」

 

「ならここのアクセサリーショップにも寄りましょう」

 

「決まりですね」

 

 

 

 

 

 

-cafe de star-

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、三名様で宜しいですか?」

 

「はい」

 

 

 

まずは千聖さんの行ってみたかったカフェへ到着。そう言えば千聖さんと花音先輩はカフェめぐりが趣味みたいで、二人だけでも予定が合えば色々なカフェをめぐっているらしい。

 

 

「ふぅ......やっと一息つける」

 

「千聖ちゃんこれ美味しそうだよ」

 

「これもそれも美味しそう......どれを食べるか迷ってしまうわね」

 

 

こうやってメニューに載っているデザートを見て無邪気にはしゃぐ姿を見ていると、やはり年相応の女の子なんだと感じる。千聖さんも花音先輩もとてもじゃないが自分の一つ年上のお姉さんには見えない。勿論良い意味で。

 

 

 

「宗輝君は何にする?」

 

「コーヒーとショートケーキにします」

 

「なら私はコーヒーとモンブランにしようかしら」

 

「私もコーヒーと......ガトーショコラにしようかな」

 

 

嘘だろモンブラン何処にあったんだよ。モンブランあるの知ってたらショートケーキなんて頼まなかったのに!!

 

 

「ご注文は以上ですか?」

 

「それでお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 

しかし、時既に遅く千聖さんが丁寧に俺の分まで注文してくれていた。千聖さんにモンブランを一口貰うか否か迷っている間に注文したものがきてしまう。

 

 

「宗輝君食べないの?」

 

「食べないなら私が食べるわよ」

 

「......千聖さん、モンブラン一口貰えませんか?」

 

「だったらそっちのショートケーキも一口貰うわよ」

 

 

物々交換成功。別にショートケーキが嫌いとかじゃない。ただモンブランの方が魅力的だっただけだ。

 

 

「はい、あーん」

 

「んっ......もう一口下さい」

 

「はぁ......さっきの一口は嘘だったのかしら」

 

 

とか言いつつも一口くれる千聖さんは宗輝ポイント高い。前に彩にもらったモンブランも美味しかったがここのモンブランも負けてないな。今度令香とか連れてこよう。

 

 

「今度はショートケーキですね、あーん」

 

「んっ、クリーミーで美味しいわよ」

 

「ち、千聖ちゃんだけズルいよ!」

 

「もしかして花音も欲しいの?」

 

 

 

もしかして花音先輩もモンブランが好きなのだろうか。だとしたら数少ない同志ということになる。花音先輩と一緒に甘味処をめぐるのも悪くない。

 

 

「千聖ちゃんのは要らない」

 

「ちょ......か、花音?」

 

「宗輝君のが欲しいな」

 

「か、花音......反抗期なの?」

 

 

残念ながらモンブランよりショートケーキ派だったらしい。というか千聖さんがモロダメージ食らって崩れ落ちてるんだけど大丈夫?流石に花音先輩の右ストレート(精神的ダメージ)はキツかったのだろうか。

 

 

「どうぞ」ア-ン

 

「......凄い甘くて美味しいね」ニコッ

 

「......はっ!!」

 

 

 

どうやら花音先輩の満面の笑みを拝んでから数秒間気を失っていた様だ。俺の脳内の女神フォルダに先程の笑顔を保存。因みに今現在このフォルダには燐子先輩とウチの妹が保存されている。

 

 

 

 

 

 

-ペットショップ-

 

 

 

 

「えへへ......可愛いなぁ」

 

「千聖さんも落ち着きましたか?」

 

「取り敢えず大丈夫よ」

 

 

あの後は特に何事もなく食べ終わりペットショップへ。本当に何もなかったのだが、強いて言うならずっと千聖さんが放心状態だったことくらい。その千聖さんも犬や猫を見て何とか正気に戻ったらしい。

 

 

「まさかリニューアルオープンでクラゲも見られるとは」

 

「そのお陰で花音は凄く幸せそうな顔してるわね」

 

「俺達はその花音先輩を見て癒されときましょう」

 

「それが妥当ね」

 

 

それからは犬→花音先輩→猫→花音先輩→魚→花音先輩→花音先輩→花音先輩......と後半は花音先輩しか見てなかったが特に怪しい動きはしてないのでセーフ。あれだ、子を見守る親の気持ちだ。これは千聖さん公認なので間違いない。

 

 

「私アクセサリーショップに行ってきても良いかしら?」

 

「迷子にならないのであれば」

 

「それはもう大丈夫よ」

 

 

という訳で千聖さんだけアクセサリーショップへ向かった。ここで花音先輩と離れるわけにもいかないので俺は引き続きペットショップにて動物達を見て癒されるとしますかね。

 

 

「あれ、千聖ちゃんは?」

 

「アクセサリーショップに行きましたよ」

 

「行かなくて大丈夫なの?」

 

「花音先輩こそクラゲはもう良いんですか?」

 

「もう十分見たから大丈夫だよ」

 

 

そうは言いつつも目はチラチラとまだ水槽の方へ。花音先輩がどれだけクラゲが好きなのかがこれだけで判断できるというものだ。

 

 

「なら追いかけましょうか」

 

「うん!」

 

 

今日の流れでデフォルトになりつつあるが手を繋いでアクセサリーショップへ二人で向かう。アクセサリーショップへ着き千聖さんを見つけるがなんだか考えている様子。

 

 

「千聖ちゃんどうしたの?」

 

「花音、もうクラゲは良いの?」

 

「うん」

 

「千聖さんはどうしたんですか」

 

「......何でもないわ」

 

 

 

......嘘だな。こちとら専属マネージャーでドラマも細かくチェックしてる所謂ファンなんだ。最近では千聖さんの嘘でも見抜けるようになってきたのだ。俺の方の嘘もみんなから見抜かれるから成長してるのかどうか分からないけど。

 

 

「ちょっとトイレ行きたいのでさっきのカフェの前で待っててくれませんか?」

 

「分かったわ、花音行きましょう」

 

「宗輝君迷わないでね」

 

 

 

その台詞を花音先輩から言われるとは思わなかったぞ。

 

 

 

 

「すみません、このネックレスって......」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「......すぅ」zzz

 

「......ん」zzz

 

「二人ともこんな無防備に寝顔晒して......」

 

 

 

時は過ぎ今は帰りの電車内。女の子特有の"買わないお買い物"に付き合わされショッピングモールを右往左往すること数時間。俺の両隣で可愛らしい寝顔で気にすることなく眠っている二人。俺が一番寝たいくらいなのだが三人共寝てしまうといけないので我慢。

 

 

「ほっぺた柔らかいな......」ツンツン

 

んにゃ......

 

 

 

俺が千聖さんと花音先輩のほっぺたの感触を楽しんでいるところで我がスマホが震えだす。別に誰かに会いたくて震えだしたわけでは無く着信だ。しかし、相手は意外にも彩であった。

 

 

『もしもし宗輝君?』

 

「この電話は現在使われておりません」

 

『......あれ?日菜ちゃん、これ宗輝君の携帯番号で合ってるよね?

 

「番号をお確かめの上、再度お掛け直し下さい」

 

『もしもし宗輝?お姉ちゃんと代わろうか?』

 

「どうしたんだ何の用だ何が欲しいんだ言ってみろ」

 

 

 

なにそれ、紗夜さんと一緒にいるとか聞いてない。案外彩と紗夜さんって話するらしいから怒られるに決まってる。それこそ必要以上に彩をおちょくったとなれば鉄拳制裁では済まない。

 

 

『今何処にいるの?』

 

「電車の中だ」

 

『それなら帰りにCiRCLE寄ってね』

 

「何故に」

 

『それは来てから彩ちゃんが説明してくれるよー』

 

 

 

ばいばーい、と言って彩に代わること無く通話が終了。元来た駅へはあと一駅といったところ。偶然か奇跡か俺達以外の人がこの車両にいないのが救い。じゃないと寝てる二人に悪戯出来ないし。

 

 

「どうせまりなさん辺りがやらかしたんだろうな」ナデナデ

 

「......むぅ」zzz

 

「あーいやだなー」プニプニ

 

「......むにゃ」zzz

 

 

 

そうやって悪戯してる間に駅に到着。何もなかったかのように二人を起こして三人帰路に着く。まぁ俺は送ったあとCiRCLEなんだけどな。

 

 

 

「宗輝君は寝なかったの?」

 

「眠くなかったので」

 

「さっき欠伸してたくせに良く言うわね」

 

「お陰で可愛い寝顔を拝めたので」

 

 

顔を赤くする花音先輩はやはり可愛らしい。多分こういうタイトルで売り出したら人気出ると思うよ。うん、切実に売れることを願う。

 

 

 

「なら私はここで失礼するわ」

 

「私もこっちだから」

 

「花音先輩大丈夫ですか?」

 

「うん、流石に家までは悪いよ」

 

「私の心配は?」

 

「千聖さんは大丈夫でしょ?」

 

 

 

 

結局そこで数分程話が弾み、千聖さんの一言で取り敢えず解散。終始千聖さんと花音先輩に振り回された日だったけどまぁ楽しかったし良しとしよう。美味しいカフェも見つかったし俺の方も満足だ。

 

 

 

「でもこれからCiRCLEかぁ」

 

 

 

間違いなく何かが起こりそうな予感。まぁ明日もオフだし明後日まで長引くような事にならなければ問題ないか。

 

 

 

「何もありませんように......」

 

 

 

気休めついでにモカ神様にでも祈っとくかな。

 

 

 

 

 

 

~To Be Continued〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗輝「おまけのコーナー」

 

 

宗輝「今回は香澄とおたえだ〜」

 

 

香澄「おたえ!」

 

 

おたえ「どうしたの香澄?」

 

 

香澄「ピック飛ばし上手くなったの!見て見て!」ピュ-ン

 

 

おたえ「それなら私も練習してるよ」ピュ-ン

 

 

香澄「私両手で投げられるよ!」ピュ-ン

 

 

おたえ「私はカーブ」ピュ-ン

 

 

香澄「口に咥えて三刀流だよ!」

 

 

おたえ「なら鼻と唇の間に挟んで四刀流!」

 

 

香澄「流石はおたえだね!」

 

 

おたえ「香澄も中々やるね」

 

 

宗輝「ここまでカオスなのは初めてだな」

 

 

 

 

 

 

-End-

 

 

 

 

 

 

 





最近花音先輩が可愛すぎて困ってます。

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