トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~ 作:Lycka
一応この類のアンケートはラストになるのでご協力お願いします。
読んでくれてる人の推しとか分かってちょっと嬉しい......とかじゃなくてちゃんと結果の方は使いますので!笑
それでは、56話ご覧下さい。
(誤字報告ありがとうございます)
「やっぱ蔵には着いてるわな」
美咲と学校で別れてからは少しばかり早足で蔵へ向かった。美咲は答えが出てるとか何とか言ってたけど、俺自身はまだ答えには辿り着けていない様にも思える。美咲に見えて俺には見えていないものでもあるのだろう。期限付きというのも少々問題なのだが、そこは持ち前の臨機応変な対応力で何とかするしかなさそうだ。
「あら、宗輝君いらっしゃい」
「いつもお世話になってます」ペコリ
「みんなもう蔵に入ってるからね」
相変わらず優しい笑顔で迎えてくれる有咲お婆ちゃん。この人には俺のみならず、香澄達みんな助けられてきたのだ。最早、みんなのお婆ちゃん的存在とも言える。
有咲お婆ちゃんに背中を押される様ににして蔵へと向かい、少しの間入り口から中の様子を伺う。あまり良く見えないのだが、香澄がいつもの如く楽しそうにギターを弾いていたり、おたえとりみりんが二人で合わせの練習をしていたりと、よく見るポピパの練習風景で少しホッとした気分になる。
「何で宗輝入らないの?」
「うおっ!?」
「あはは、ごめん驚かせちゃった?」
完全に背後を取られてしまい武士として失格である。というイヴが好きそうな設定は無しにして、何故か後ろから声を掛けられたので振り向く。そこにはやまぶきベーカリーの袋を持った沙綾が。この鼻腔をくすぐるような甘いパンの匂い......と女の子特有の良い香りが合わさって幸せな気分になってしまう。
「そりゃいきなり後ろから声掛けられたら驚くだろ.......。沙綾こそなんで蔵に入ってなかったんだよ」
「見れば分かるでしょ?一旦家に帰ってたの」
「じゃあそれは差し入れってところか」
「ん、母さんに持っていけって言われたの」
千紘さんも相変わらず優しい。有咲お婆ちゃんに夜食を時々作ってもらう機会もあったが、基本的にはポピパメンツ全員やまぶきベーカリーの常連客なのだ。それを差し入れに貰うだけで練習にも精が出るというものである。かく言う俺もやまぶきベーカリーのパンは大好物なので、さっきから腹の虫が鳴りそうで我慢し続けている。
「取り敢えず入ろっか」
「おう」
やまぶきベーカリーの人気パンの一つである"うさぎのしっぽパン"にかじりつきながらドアを開けて中へ。俺と沙綾に一早く気付いた香澄は、まるで尻尾を振って"おかえり!"と言わんばかりの子犬の様に近付いてくる。
「むーくん何食べてるの?」
「うさぎのしっぽパンだよ、お前も食うか?」
「うん!」
いつもの如くと言っても良いのか不明だが、口を開けて待っていたのでパンを少しちぎって食べさせる。毎度毎度コイツは自分で食べるという選択肢が欠陥しているらしい。その様子を見たおたえも真似をして食べさせてくれと言い出す始末。なんだか鯉に食パンを餌付けしてる気分だ。
「流石はうさぎのしっぽパンだね」
「むーくんもう一口!」
「へいへい」
「りみりんはチョココロネね」
「ありがと沙綾ちゃん」
さっきまでは練習してたのに、今じゃただ飯食ってるだけの時間になってしまった。それよりさっきから有咲の姿が見当たらないのだがトイレにでも行っているのだろうか?
「有咲は何処にいるんだ」
「用があるとか言ってたよ!」
「多分家の方じゃないかな?」
「俺ちょっと探してくるわ」
有咲だけやまぶきベーカリーのパンが食べられないのは不公平だろう。有咲のお婆ちゃんにも家に入る許可は貰ってるし大丈夫。有咲には悪いが勝手に探させてもらおう。
「有咲〜、何処にいるんだ〜?」
取り敢えず玄関のドアを開けて呼びかけてみる。しかし、一向に返事を貰える様子も無さそう。
「確か有咲の部屋は......」
こっそりと教えてもらっていた有咲の部屋へ向かう。というより、有咲のお婆ちゃんの方から有咲の部屋の場所を教えてくれたのが本当だったりする。何故か有咲のお婆ちゃんは俺に好意的に接してくれるのだ。基本的にはポピパメンツにも好意的なのだが、俺の場合は過保護とも言えるレベルだから少し気にかかる。
コンコン
「有咲いるのか?」
一応常識としてノックはしてみるが返事は無し。少しドアノブを回すと鍵は掛かって無いようなので、悪いとは思いつつもドアを開ける。
「......なんだよ」
「いるんなら返事くらいしてくれ」
勉強机に向かって突っ伏している様子の有咲。見た感じ体調が悪い様にも思えなかったので何か他の理由だろう。この感じだと香澄達にも話してないと思うし。ここは仕方なく俺が相談には乗ってあげますか。
「......何か悩み事でもあんのか?」
「別に何にも」
「......嘘だな」
「何で宗輝にそれが分かるんだよ」
顔を見ると少し元気が無い様にも見える。そんな有咲が何も無いと言っても信憑性は薄い。俺レベルになると何かあったとしか聞こえないから。悩んでいるのなら助けてやりたいのが俺の想いだ。
「俺と有咲の仲だからかな?」
「......またお前はそうやって」
「ん?」
有咲が何か呟いた気がするのだが良く聞こえなかった。ここで聞き返すのもあまりよろしくないだろう。そこら辺は雰囲気で察するのがベストアンサーだったりする。
「......なら聞いても良いか?」
「おう、どんと来い」
「今日の授業休んでたの、体調不良じゃ無いだろ」
まさか有咲が美咲と同じ事を言い出すとは思わなかった。有咲の一言から数秒間、部屋の中と頭の中が空白で埋め尽くされてしまう。その事実に少し動揺してしまうが、何とか取り繕う為に言葉を絞り出す。
「な、何言うてますのん有咲はん?」
「動揺してんのバレバレだぞ」
どうやら俺は動揺すると言葉遣いがおかしくなるタイプの人間だったらしい。彩にさんざん言ってきたが、まさか自分も似たようなタイプだとは思わなんだ。
「理由教えろ」
「......生徒会室で寝てました」
「それは知ってる」
「なら別に......知ってる!?何で有咲が知ってるんだ!?」
おかしい、生徒会室に来たのを確認してるのは先生くらいだ。俺が寝てる間に見つかってたら説教されてるはずだ。まさか有咲の奴鎌かけてきやがったな?
「あ、そういえば保健室だったような気も......」
「毛布なんて最初無かっただろーが」
「毛布?」
思い返してみると確かに。俺が眠りについた時には何も無かった気がする。起きたら毛布かかってたから無意識に自分で自分に掛けたと思ってたけど......。よくよく考えてみたらそんな事ありえんな。
「有咲が持ってきてくれたのか?」
「起こしはしなかったけどな」
「なんで?」
「......笑わないか?」
「おう」
何か理由でもあるのだろうか。それとも寝ている俺の顔が面白かったから毛布で隠したとか?だったら俺的には普通に笑えない。だって寝てる時の顔が面白いとか自分じゃどうしようも無いし。今度令香に聞いてみよう。
「......お前泣いてたんだよ」
「......え?泣いてた?俺が?」
「最初はどうしてだろうって考えたんだ。でも、考えてる間に全部繋がった」
「繋がった?」
話している有咲の顔が段々暗くなっていくのが見て取れる。俺の涙の理由が有咲には分かっているのだろうか。昨日から俺が知らない事を周りのみんなが知ってる事が多い気がする。
「......実は生徒会室で燐子先輩と話してるの見てたんだ」
「はぁ......何処まで聞いてた」
「全部」
「それじゃあ隠す意味も無いな」
まさかあの会話を見られていたとは思わなかった。あの場面で警戒して鍵を閉める程俺の頭は回ってくれなかったし。それと燐子先輩に勘違いされても困るしな。
「だから、それが理由かなって思って」
「どういう事だ?」
「お前の事だからまた責任感じてるだろ?それで寝てる間の無意識の内に泣いてたのかなって」
少し勘繰り過ぎな気もしないこともないが、概ねその通りだと思う。紗夜さんと燐子先輩から気持ちを伝えられ、それにYesともNoとも答えられない自分が少し許せなかったのかも。あそこで雰囲気に流されて答えるのは一番の愚策であり侮辱だ。それを選択しなかっただけ自分を褒めても良いのかもしれない。
「それか他に悩み事がある......とか」
「悩み事ねぇ......」
「あるのか?」
既に美咲に相談したので今更感が凄いが良いのだろうか。果たして有咲やポピパメンツにあの事を相談すべきか。RASのライブや文化祭ライブに支障が出る可能性だって十分ある。俺の一番の心配の種は幼馴染のアイツなんだけどな。
「有咲、実は俺......」
「あー!有咲とむーくんみーっけ!」
しかしながらタイミング悪く、心配の種である香澄がここぞとばかりに登場。想像出来なかった不測の事態だった為、俺と有咲はなんとも言えない表情のまま数秒が経過する。
「香澄ぃ!お前なー!」
「わー!むーくん助けて〜!」
「どうしてここが分かったんだ?」
「お婆ちゃんが教えてくれた!」
成る程、それなら納得出来る理由だ。香澄が俺と有咲が居ないことに気付き、自分一人でこの場所を探し出せたのなら一等賞あげたのに。
「二人で何してたの?」
「んー、文化祭ライブの打ち合わせ」
「ちょ、おま......」
「だったらみんなで話そうよ!」
ここで"実は俺今週末に海外行くんだ"とか言ったらコイツ何しでかすか分からん。適当に誤魔化しておくのが一番無難だろう。有咲には悪いが今はそうさせてもらう。
「ほら、有咲もむーくんも行くよ!」グイッ
「はいはい」
「......」
香澄に強引に連れられて、俺と有咲は蔵へと戻り練習を続けた。
「たでーま」
「おかえりお兄ちゃん」
「おかえり宗輝」
玄関に入りパッと時計を見ると既に20時。あまり遅くなって迷惑をかけてもいけないので解散。終始有咲の顔が晴れない様子だったが大丈夫だろうか。大方俺の話が聞けなかったからだろう。またタイミング見計らって話しといた方が良さそうだな。
「ご飯出来てるから手洗って来なさい」
「ん、分かった」
「れーかも洗う!」
少し窮屈だが二人で一緒に洗面台で手を洗う。今日の晩ご飯はハンバーグ。おたえが聞けば即座にやって来そうなメニューだ。香澄は今日は自分の家で過ごす予定らしく途中で別れた。令香は相変わらず来て欲しいみたいだけど。
『頂きます』
「朝の件、決まったのか?」
「.....明日まで待ってくれ」
聞かれるだろうとは察していたが、ご飯に手をつける前とは思わなかった。しかし、父さんも母さんもそれからは何も聞くことは無く、いつもの夕飯の様にワイワイと食卓を囲んだ。そこら辺は流石両親と言ったところだろうか。俺がまだ迷っているのは既に伝わったらしい。
「あ、そう言えば忘れてたわね」
「何を忘れたんだよ」
「ついさっき宗輝を訪ねて来た子がいたわよ」
「多分日菜さんだと思うよー」
日菜が俺を?何か急ぎの用事でもあったのだろうか。いや、それだったら携帯に電話かけてくれば済む話だ。それなのにわざわざ家まで来て話す様な事。今朝の紗夜さん辺りが怪しいが今日はもう遅い。また明日にでも日菜の方から動きがあるだろうから待つしかないか。
「明日にでも聞いとく」
「パスパレ関係じゃない?」
「そうだと良いんだけどな......御馳走さん」
「もうすぐお風呂も入るから」
それまで部屋で時間でも潰すか。今日は色々ありすぎて頭がパンクしそうだからな。ちょっと頭の中でも整理する時間も必要だろう。
「紗夜さんと燐子先輩か......」
その二人が自分にとってどんな存在なのか今一度考えてみる。
紗夜さんは最初こそ厳格でしっかりとした人のイメージがあった。しかし、それも触れ合っていく中で良い意味で段々壊れていった。かつての俺と同じ悩みを持ち、一度はギターすら辞めてしまおうと打ち明けた紗夜さん。そんな紗夜さんが変わる事が出来たキッカケが俺だと言った。勿論日菜の存在も大きいのだろうが、俺はその事実を聞いて素直に嬉しいと思ったし誇らしいとも思えた。
燐子先輩に限って言えば、最初は避けられてるんじゃないかって思う程だったと思う。だがそれも束の間、Roseliaとしてや一人の女の子として接していく内にお互いを知っていったのだろう。正直俺の方が燐子先輩には助けてもらってばかりな気がする。ライブの時だって一番気にかけてくれてたのは燐子先輩だ。学校生活の中でも何かと心配してくれる事が多かったのも事実。そんな小さな事かも知れないが、それが燐子先輩を変えていったのだと教えてくれた。
「......どうすりゃ良いんだろうな」
結局、最後の答えのところでどうしてもつまづいてしまう。それでも、ただ一つこの二人に共通して言える事があるのだ。それは"二人の変化"に必ず俺という因子が存在しているという事。正直自覚はあまり無いのだが二人が言うのだから本当なのだろう。それと同時に、やはり二人は俺にとって大切で大事でかけがえのない存在だという事を再認識する。だからこそ答えを出せずにいるのかもしれないな。
コンコン
「お兄ちゃん起きてる?」
と言いつつ部屋のドアを開けて中を確認する令香。ドアをノックして入ってくる辺りは流石だが、こっちが返事する前に入ってくるのはどうなんだろうな。
「起きてるぞ、なんか用か?」
「お兄ちゃんの考え聞きたくて来ちゃった」
「考え?父さん達について行くかって話か?」
令香が首を2.3回コクリと縦に振ったので正解なのだろう。コイツもコイツで考える必要がある事だからな。俺とコイツが別々の選択をする事だって可能性としては大いに残ってるわけだ。
「まだ考えてる最中なんだけどな」
「因みに令香はもう決まってるよ」
「お?どうするつもりなんだ?」
「それは教えなーい」
この妹は煽り能力もこっちにいる間に上がってるらしい。もう決まってるんなら教えてくれても良いと思うよ。特に絶賛頭の中パニックのお兄ちゃんには重要な判断要素だったりするからね。
「んー、じゃあ一つだけヒント!」
「ヒントじゃなくて教えて欲しいんだけどな」
「それだと面白くないじゃん」
俺にとっては面白いか面白くないかで考えられる様な内容じゃ無いんだけどな。まぁヒントくれるって言ってるから許してあげるしかない。てっきり俺は"お兄ちゃんについて行く!"とか言うと思ってたんだけど内緒にしておこう。
「"どうするか"じゃなくて"どうしたいか"で考えると良いかもね」
「それが難しいんだよなぁ」
「うん、難しいに決まってるじゃんか。だからこそ考える意味があるんだと思うよ」
「......まぁ確かにな」
俺の知らない間にこんなにも成長していたのかと思うとグッとくる。妹に泣かされそうになるのなんていつぶりだろうか。出産の時とか初めて喋った時とか七五三の時とか......考えれば数え切れないくらいありそうだからやめとこう。
「誰かに相談したのか?」
「まぁ数人にはね」
「参考になったか?」
「勿論、相談しなかったらまだ悩んでたと思うし」
相談したにも関わらず悩んでる人が現在進行形で居るのでスルーしておく。こういう点においても差がつくのは何故なのだろうか。少しは何かしらお兄ちゃんの方に分があっても良いと思うの。
「はぁ......まぁ明日中くらいには決めとく」
「最後に一つ」
「ん?」
「令香はいつだってどこにいたって、お兄ちゃんの妹だからね!」
ならば、俺が返すべき言葉はこれしか無い。
「俺は何があってもお前のお兄ちゃんだからな」
「うん!」
本当にコイツが妹で良かったと心の底から思う。こういう風に支え支えられての関係が成り立っているのもきっと令香だからこそだろう。今でも充分コイツには甘いのだがもっと甘くなりそうな気がしてきた。
「二人ともお風呂沸いたから入りなさーい」
『はーい』
頭を使い過ぎて疲れてしまった。そんな時は熱々の湯船に使って疲れを取るのが一番だ。俺と令香はお風呂が好きでついつい長風呂してしまう癖がある。今日はなんだか長風呂しそうな予感がするから先に令香に入ってもらうか。
「お前先入っても良いぞ」
「じゃあお先に頂きまーす」
「おうよ」
「お兄ちゃん覗いちゃダメだよ?」
「覗かねーよ」
このやり取りが出来る兄妹は、果たして地球上に何人いるのだろうか。
~To Be Continued~
今のところ3rd seasonと自分の考えてたのが被ってなくて安心してます。
お好きなキャラをお選び下さい(RAS)
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レイ
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六花
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ますき
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Chu²
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パレオ