トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~   作:Lycka

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主体調不良により前書き省略。


57話、ご覧下さい。


Produce 57#信頼と親愛

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

 

 

 

「......んぁ」

 

 

 

珍しく目覚ましの音より早く目覚めてしまう。昨晩も頭を悩ませてしまった。そのせいで夢にも出てくるかと思ったが、流石にそこまで精神的に参ってはいないらしい。かと言ってこの早起きの原因に関わっていないことはないだろう。

 

 

 

 

「お兄ちゃん時間......あり?何で起きてるの?」

 

「俺はゾンビか何かかよ。いや、確かにこの時間は寝てるけどさ」

 

 

 

 

可愛い顔して"何で起きてるの?"とか言ってるけど、別に俺ウイルスに感染してるゾンビじゃないからな。大事なことだから二回言いました。俺は至ってごく普通の高校生だから。......俺の周りの交友関係を除けば。

 

 

 

 

「朝ご飯出来てるから降りてきてねー」

 

「はいよ」

 

 

 

携帯から充電器を抜いてそのままパジャマのポケットへ入れる。しかし、ここでパジャマにはポケットが無いことに気付き仕方なく手で持っていくことに。いい加減覚えようぜ俺。前にも入れようとして携帯を床に落としたの忘れてたわ。

 

 

 

 

「おはよ」

 

「おはよう。アンタ寝癖付いてるわよ」

 

「......本当だ」ピョン

 

 

 

 

リビングに置いてある鏡で確認。俺と令香特有のアホ毛では無いところに寝癖を発見。一応手で押さえて直そうと試みるが寝癖の反発精神に負けてしまう。なんかもう一本アホ毛が生えてきた気分だ。

 

 

 

それから洗面台に行って寝癖を直し、そのついでに顔をパッと洗い歯磨きを終えてしまう。朝ご飯の後でも良かったのだが、二度手間になってしまうので済ませておいて損は無いだろう。でも物事や人間関係を損得で考え過ぎると駄目って何かの本で読んだ気がする。まぁ俺は損得とかで付き合ってる友達いないし大丈夫。それ以前に同性の友達がいない方が問題だと思うけど。

 

 

 

 

「今日は令香特製お弁当だからね!」

 

 

 

そう言ってくれるのはありがたいのだが、いかんせん弁当の中身がいつも通りなのは何故だろう。基本母さんが作る弁当とそっくりそのままなのだが、果たしてこの妹の言う事を信じても良いのだろうか。

 

 

ピンポ-ン

 

「ん?」

 

「令香出てくる!」

 

「宗教のお誘いは断るのよ〜」

 

 

 

宗教のお誘いとかこの早い時間に来られると流石にイラッとするからやめてほしい限りだ。普段は色々と誤魔化しつつ帰ってもらうのが俺流のやり方なのだが、今なら何も言わせず一蹴出来そうな気がする。

 

 

 

 

「むーくんおはよ!」

 

「おねーちゃんでした!」

 

「薄々みんな気付いてたよ」

 

「みんなって誰?」「誰の事だろうな」

 

 

 

最早デフォルトのように家にやって来た香澄。"明日一緒に行こうよ!"とか"だったら行く前に連絡するね!"なんて言うやり取り一切無し。まぁ断る理由も行かない理由も無いから良いけど。

 

 

 

「んじゃ行って来まーす」

 

「行って来ます!」

 

 

 

 

その後、香澄も朝ご飯が食べたいとの事だったので少し分けてやった。お陰で俺の分が少なくなってしまった。令香は令香で自分の分はきっちり食べるし、母さんは既に食べ終わってるしで所謂詰みの状況。仕方ないから喉飴でも食べながら行きますかね。

 

 

 

 

「むーくん今日は何するの?」

 

「放課後はおたえと一緒にRASで調整だな」

 

「もうライブ近いもんね」

 

「だから今日はおたえと俺抜きで蔵練頼むな」

 

 

 

 

首を縦に振り"むーくんも頑張って!"と親指を立て少し大袈裟に応援じみた事をする香澄。コイツに練習を任せるのは少々不安が残る。後で沙綾辺りにでも真面目にやるように伝えておこう。別に信用してないとか無いから。これは念の為なんだからね。

 

 

 

「あー!かーくんとむーくんみっけ!」

 

「はぐー!」

 

「ん、おはようさん」

 

 

 

北沢印は元気印。これは今も昔も変わっていません。昔なんか全然知らないけどな。まぁはぐみがいつも元気なのは当たり前っちゃ当たり前の事だな。アフグロ流に言うといつも通りってやつだ。

 

 

 

「二人で登校?」

 

「うん!はぐも一緒に行こ!」

 

「じゃあお話しながら行こっか!」

 

 

 

案外、というか普通に香澄とはぐみって似た者同士だから惹かれ合うものでもあるのだろうか。別に混ぜるな危険って感じはしないから良いんだけど。俺の中で一番混ぜちゃいけないのがハロパピ三馬鹿だったりする。混ぜちゃいけないのに同じバンドって収拾つかなくなってるからな。

 

 

 

 

いつもの様に香澄と二人で登校していた道を、今日ははぐみを混ぜて三人でワイワイと話しながら歩いていく。香澄とはぐみが話している一歩後ろを離れない様についていくのが俺流。今は二人で話してるから良いものの、三人で話すとなると何故か俺が真ん中で二人に挟まれながら話すという若干窮屈な状況に。香澄は普段から距離が近いのは知っているのだが、いかんせんはぐみも距離感バグってるから近いのなんの。

 

 

 

 

「あ、そういえばむーくん」

 

「どした」

 

「こころんが言ってたけど、今度文化祭でライブするんだよね?」

 

「俺こころに言ってなかったはずなんだけどなぁ」

 

 

 

推測するに、多分黒服さん達からのリーク情報だろう。大方、身辺警護班の黒井さん辺りが俺の周りをうろついて情報集めしてるといったところか。最近黒服さんを見ないと思ったらしっかりと裏で働いてて感心。忠誠心というか何というか、仕事に対する熱意だけは尊敬します。何処ぞのプロデューサーにも言える事ですけどね。

 

 

 

 

「ハロハピにも出てもらうつもりだからな」

 

「え!はぐみ達も出ても良いの!?」

 

「当たり前だろ、なぁ香澄」

 

「うん!みんなで一緒にライブしよ!」

 

 

 

 

嬉しさのあまり俺に突撃して(抱きついて)くるはぐみ。あのですね、貴女良く猪突猛進とかって言われません?これ香澄とかで慣れてなかったら倒れてたぞ。まぁコイツの場合は冗談抜きで突撃だからな。

 

 

 

 

「むーくん大好き!」

 

「待て待てはぐみさん、誤解されるから取り敢えず離れてくれると助かる」

 

「分かった!」

 

「ヨシヨシ、聞き分けの良い子はお兄さん好きだぞ」

 

 

 

代わりに少し頭を撫でておいてやろう。流石にこんな登校中の歩道で抱きつかれるのは勘弁願いたい。それに告白とも取れる言動も謹んで頂きたいものだ。ただでさえそれが原因で絶賛お悩み中だというのに。そんなの関係なく人を笑顔に出来るのは、やはりはぐみだからこそだろうか。

 

 

 

 

結局それからも俺を間に挟んで三人であーだこーだ言って花咲川へ到着。その間ずっと距離がほとんどゼロだったのは気のせいだろう。制服にまで匂いが付いてるのもきっと気のせい。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

キ-ンコ-ン

 

 

 

さてここで問題。このチャイムは一体いつの時間を指し示すチャイムでしょうか。学校には様々なタイミングでチャイムが鳴らされる。それは大体どこの学校に行っても大して変わることのない出来事だろう。

 

 

 

例えば朝の登校時間5分前のチャイム。俺にとってこのチャイムは親友みたいなものだ。花咲川へ入学してから1年半と言ったところ。これまでの長い月日を共に過ごしてきたチャイムを親友と呼ばずして何と呼ぼうか。きっとチャイムの方も俺の事を親友と思ってくれている事だろう。うん、きっとそうに違いない。しかし、実際このチャイムが鳴って尚校舎内に入れていないという事は、即ち風紀委員の紗夜さんからお叱りを受けるという事の裏返しである。

 

 

 

 

「おーい宗輝君」

 

 

 

 

次にお昼休みを知らせるチャイム。このチャイムは、苦手な数学やめんどくさい物理の授業で疲れ切った俺の心を癒してくれる時間の始まりだったりする。最初はポピパメンツと俺の六人で中庭でお弁当タイムだったのだが、いつの間にかこころや美咲達ハロパピ勢や彩や千聖さんのパスパレ勢も一緒に食べることも多くなってきている。毎日みんなとお弁当の中身を交換しつつ楽しむお昼休みは、最高のひと時と言って差し支えないだろう。

 

 

 

 

「気付いてないのかな?」

 

 

 

 

最後に放課後のチャイム。正直に言おう、俺はこのチャイムが数ある内で一番好きなのだ。理由は至って簡単、学校が終わるという事はその先は楽しい事ばかり。ポピパの蔵練しかりRASの練習しかり。勿論、羽丘に行くも良し家に帰ってゴロゴロするも良し。"学生の本分は勉強"とは言うものの、勉強だけでは得られないものはこの世には沢山存在する。そんな"勉強だけでは得られないもの"を探すのが放課後の一つの形だと思うけどな。

 

 

 

 

「だったら気付かせれば良いのよ」ペチッ

 

「あうっ」

 

 

 

問題の正解は放課後のチャイム。香澄は有咲を連れて既に蔵へ向かった。俺はと言うとただボーッとしていただけなのだ。というか、千聖さんのデコピン案外痛くてビックリ。千聖さんのSっぽい部分がまた露呈してしまった。

 

 

 

 

「彩に花音先輩に千聖さんまで、どうかしたんですか?」

 

「どうもこうもないわよ。貴方に用があって来てみればずっとボーッとしてるだけだし」

 

「そういうお年頃なんですよ」

 

「ならあと一回くらいデコピンしとこうかしら」

 

「右手をお納め下さい」

 

 

 

デコピンのポーズを取る千聖さんを何とか鎮めることに成功。"なら代わりに彩ちゃんが"とか言う千聖さんの言葉を真に受けた彩が"上手く出来るかなぁ"と練習を始める始末。俺がデコピンされるのは確定で話を進めないで頂きたい。さっきから隣でずっと困った顔をしてる花音先輩がかわいそうだ。

 

 

 

 

「どういったご用件でしょうかね」

 

「此処では何でしょうから場所を変えましょう」

 

 

 

そう言って、千聖さんはささっと俺の手を掴み教室を後にする。彩や花音先輩も同様に後をついてくるばかりで何も答えてはくれない。俺が知らない間に後輩を拉致する遊びでも流行っているのだろうか。

 

 

 

「......ここなら良さそうね」

 

「なんだか既視感凄いなぁ」

 

 

 

何時ぞやの校舎裏へ到着。やはりこの間三人共何も言ってくれない。そろそろ俺の心がゆら・ゆらRing-Dong-Danceを踊りそうな勢いなのだ。千聖さん達の用件を俺が言い当てたらはなまる◎アンダンテでも歌ってくれるだろうか。

 

 

 

うん、このパスパレ曲ボケは全然ウケてなさそうだからこれまでにしとこう。じゃないとプロデューサーから愛の鉄拳制裁(ロケットパンチ100連発)が飛んできそうで怖い。

 

 

 

 

「宗輝君」

 

「はい」

 

「最近悩んでいる事はないかしら」

 

 

 

 

千聖さんのこの問い、一見ただの悩み相談にしか聞こえないが本質は違うところにあると思う。下手には答えられなくなってしまったか。

 

 

 

「最近じゃ夜にあんまり寝付けない事ですかね」

 

「だ、大丈夫?私が一緒に寝てあげようか?」

 

「いやいや、多分花音先輩いた方が眠れなくなるので」

 

「そ、そうかな?」

 

 

 

花音先輩と一緒に寝るとか最高か......コホンコホン、勘違いして欲しくないのだが決してR-18的意味で想像してた訳じゃないからな。俺はただ花音先輩に頭を撫でられながらゆっくりと眠りにつくのを想像してたんだ。.......まぁこれも充分やべぇか。

 

 

 

「じゃあ腰が痛いとかかなー」

 

「私がマッサージしてあげようか?」

 

「彩が?マッサージなんて出来るのか?」

 

「小さい頃はお母さんの肩叩き手伝ってたもん!」

 

 

 

それがマッサージの自信に繋がっているのだとしたら、彩はとんでもなくポジティブ思考だという事が分かる。それだったら今も尚母さんと令香の指先としてマッサージや肩叩きを任せられている俺はプロにでもなれるだろうか。まぁ彩にマッサージして貰えるのは役得だから是非お願いしたいところではある。

 

 

 

 

「じゃあ......寝癖?」

 

「ここにきてそれ?私達じゃ直しようがないじゃない」

 

「だって実際直すのめんどくさいですし悩みの種ではありますからね」

 

 

 

 

女の子から見たらどうでも良く見えるかもしれないが、案外男の子からしたら寝癖ってめんどくさい部類ではあるよね。特に寝相が悪かったりしたら爆発した髪型になってる事も少なくないし。今朝のはまだマシだった方だ。

 

 

 

 

「もっと真剣な悩みはないの?」

 

「まるで寝癖が真剣な悩みじゃないみたいな言い方しますね」

 

「寝癖よりも頭を悩ませる事なんて沢山あるでしょう」

 

「それもそうですけどね」

 

「本当にないの宗輝君?」

 

 

 

可愛く首を傾げて問いかけてくる花音先輩。大抵の悩み事なんて花音先輩見てたら吹っ飛びますよ、って言ったらどんな反応するだろう。試したいのは山々だが千聖さんが怒りそうなので自重しておく。怒らせるのダメ、ゼッタイ。

 

 

 

 

「はぁ......オフレコで頼みます」

 

「やっと話す気になったわね」

 

「え、やっぱり何か悩み事でもあるの?」

 

 

 

よくよく考えてみれば千聖さんが口外する様な人にも思えない。花音先輩も同様に信頼できるだろう。彩はなんか大丈夫そうだから良いだろ。

 

 

 

 

「家に父さんと母さんがいるのは知ってますよね?」

 

「お世話になったんだし当然でしょう」

 

「親御さんがどうかしたの?」

 

 

 

 

確かに父さんや母さんの都合で今こうして悩んでる最中なのは合ってる。でも正確には俺自身の問題なんじゃないかって思いつつもある。父さんや母さんが、なんてのは問題の大元なだけであって悩むべきポイントでは無い。"どうするか"じゃなくて"どうしたいか"だって令香も言ってたし。

 

 

 

「今週末に海外に仕事の為に戻るんだ。それに付いて来るかって話が出て令香と二人で考えてる最中なんです」

 

「なら簡単に言えば二択なのね」

 

「二択って事は......宗輝君が向こうに付いて行くかこっちに残るかって事?」

 

「まぁそんなところだな」

 

「令香ちゃんの答えを加味すると4通りにはなるけれど」

 

 

 

千聖さんの言う通り、俺と令香が必ずしも同じ答えを出すとは限らない。千聖さんの4通りと言うのは、俺と令香が二人揃って向こうに行くか残るかの二択と先程の二択の4つだ。選択肢としてはこの4つで間違い無いだろう。

 

 

 

「宗輝君はどっちか決めたの?」

 

「まだそれに時間がかかってますね」

 

「他には相談したの?」

 

「一応令香と美咲にだけは」

 

「......そういうことなのね」

 

 

 

 

令香には相談したのに答えは結局教えてくれなかったし。美咲だって同じく答えは教えてくれず自分で考えろって言われただけだったし。これってやっぱり人を頼らず自分で解決しろって事なのか。

 

 

 

 

「宗輝君」

 

「なんですか?」

 

「貴方がどう考えているかは聞かないわ」

 

「千聖ちゃん?」

 

「だけど、私達がどう思うかだけは聞いて頂戴」

 

 

 

 

そう言う千聖さんの目は真剣そのもの。かつてのアイドルライブや女優の白鷺千聖として活躍している時と同じ様な目をしているのを見て、本気なのだと俺なりに察する事が出来る。

 

 

 

 

「私に答えを強制する事は出来ない。かと言って変な事を言って深く悩ませてしまうのも駄目。だから私から言える事はただ一つよ」

 

「......はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分自身が幸せになれると思う方を選びなさい」

 

 

 

 

 

 

 

眩しいくらいの、それでいて包み込む様な優しさも持ち合わせた千聖さんの笑顔。これが白鷺千聖の素顔なのだと、そしてそれを自分だけ知っているという事への優越感に浸ってしまいそうになる。

 

 

 

「私は今でも迷子の癖が治らなくて、その度に宗輝君に迷惑かけてばっかり。本当は行かないでって手を引っ張って引き留めたい。だけど、私も千聖ちゃんと同じで決めたよ」

 

「花音先輩......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は宗輝君を信じて待ってるよ」

 

 

 

 

普段の花音先輩からはあまり想像が出来ない程の意志の強さを感じ取れる。自分を信じて待っていてくれる。そんな人がいるだけでこんなにも心が暖かくなれるのだ。

 

 

 

 

「......

 

「彩?......うおっ!?」バタッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む"ね"きくん!行かないでぇ!!」

 

 

 

 

泣きじゃくる子供の様に俺の胸へ飛び込んで来た彩。せっかく千聖さんと花音先輩が良い感じに言ってくれたのに。まぁこれはこれで何とも彩らしいと言うか。千聖さんも花音先輩も仕方ないみたいな感じ出してるし。

 

 

 

「はいはい、取り敢えず泣き止もうな」ナデナデ

 

「うっ......行っちゃやだよ......」

 

 

 

自前のハンカチを彩に渡して零れ落ちた涙を拭き取る。泣き過ぎるとメイク落ちちゃうからやめといた方が良いと思うんだけどな。彩とかは薄化粧だからあんまり目立たない部類ではあるけど。それとそろそろ離れて欲しい。泣きながら抱きしめる力徐々に強くなってきてるから。軽くダウン取られて10カウント数えられそうだからな。

 

 

 

 

 

 

 

~5分後~

 

 

 

 

 

 

「そろそろ大丈夫か?」

 

「う、うん。ごめんね宗輝君?」

 

「いんや、お陰でちょっとは進んだ」

 

 

 

未だ目が少し赤くなっている彩。あれだけ泣けばそうなるのも当然と言えるだろう。千聖さんも彩だからなのか流石に怒る事なく泣き止むまで待ってくれてたし。花音先輩もちょこっと泣きそうだったの知ってる。俺自身も涙脆いんだからやめて欲しい限りだ。もう少しでもらい泣きしてしまうところだった。

 

 

 

「それじゃあ私達は練習に行くわね」

 

「ありがとうございました」

 

「良いのよ、ほら彩ちゃん行くわよ」

 

「うん!じゃあ宗輝君また明日!」

 

 

 

 

確かに今日はパスパレは全員揃っての練習の予定だったからな。遅くなり過ぎて迷惑かけるのもマズイだろう。日菜辺りなら何かとブーブー言ってきそうだし。想像に難く無いのが日菜らしいと言えるというか。

 

 

 

「花音先輩はこの後どうします?」

 

「今日はこころちゃんちに行く予定だよ」

 

「何かの打ち合わせですか?」

 

「文化祭ライブをするって言ってたかな」

 

 

 

 

あ、それ多分俺が提案したやつだ。朝のはぐみからこころに伝わって早速打ち合わせときたか。まぁこの後すぐ打ち合わせだったらわざわざ俺から教える事もないか。花音先輩には三馬鹿のまとめ役である美咲のお手伝いを頑張って貰わないといけないからな。

 

 

 

 

「だったらここでお別れですね」

 

「宗輝君は?」

 

「ちょっと用事があるので」

 

「......また無理してない?」

 

 

 

 

念のため確認、といった様子の花音先輩。忙しさや体調面はあまり表には出ないように気を付けていたのだがやはり分かりやすいのだろうか。最早俺の方が分かりやすい性格をしているだけなんじゃないかと思い始めた今日この頃。

 

 

 

「無理しない程度に頑張ってるつもりです」

 

「辛くなったらいつでも言ってね」

 

「はい、ありがとうございます花音先輩」

 

 

 

 

そして、花咲川の校門で花音先輩とは別れを告げる。おたえには携帯で先に行くように伝えてあるし、チュチュには昨日の時点で少し遅れるとは伝えてある。元々今日の放課後は誰かに相談しようと思っていたのだ。そこで運良く千聖さん達の方から話を持ってきてくれたのでありがたく便乗させてもらったに過ぎない。

 

 

 

 

「......こっからが頑張りどころだな」

 

 

 

 

 

今一度気合を入れてRASの練習場所であるビルへ向かう。

 

 

 

 

 

花音先輩が信じて待ってくれる。

 

 

 

 

 

千聖さんだって俺の背中を押してくれた。

 

 

 

 

 

彩なんて何言ってるか分からないレベルで泣いてたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな大切な人達を悲しませる事の無いように、俺はこれからも精一杯頑張っていこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~To Be Continued~

 

 

 

 





感想、評価頂ければ幸いです。

p.s
誤字脱字報告ありがとうございます。
出来るだけ見直しておりますが見落とす事もありますのでご容赦下さい。

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