トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~   作:Lycka

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更新遅れて申し訳ない。
少しスランプ気味で距離置いてました。
これからちょっとずつ更新頻度戻すつもりなので許してやって下さい。


1周年記念特別編3話ご覧下さい。



Special Produce 3#異世界って基本何でもアリだよね

 

 

 

 

 

 

 

~遺跡内部~

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ」

 

「なによ」

 

「一つ聞いてもいいか?」

 

「何か気になる事でもあるの?」

 

「いやだってさ.......遺跡入ってから一匹たりともモンスターに会ってないんだけど」

 

 

 

 

 

気になるもクソもない程率直な感想である。遺跡までの道のりは蘭達の言う通りならば、今までよりもモンスターの数が多かったくらいだ。なのに何故いきなり遺跡に入ってから一匹もモンスターと遭遇しないのだろうか。逆に不気味なんだけど。

 

 

 

 

 

「そもそも遺跡調査って何すんの?」

 

「だからアンタは......はぁ」

 

「依頼によって少し違いはあるんだけど、基本的には内部構造の調査とモンスター討伐になるよ」

 

「丁寧な説明ありがとさん」

 

 

 

 

流石はつぐみだ。蘭には呆れたのかため息をつかれてしまったが仕方ない。だって初めてなんだもん。もう少し初心者に優しい世界であって欲しかったと思います。

 

 

 

 

「でも本当に一匹もいないなー」

 

「ともちん残念〜?」

 

「モカ、戦闘狂じゃないんだぞ私は」

 

「そうだよ!モンスターなんかいない方がマシでしょ?」

 

「まぁひまりの攻撃は一切当たんないからな」

 

 

 

「だからそれは偶々だってば!」

「どうかな?さっきだって空振りしてたよな?」

「もー!!」

 

 

 

「二人共静かにして」

 

 

 

『はい、ごめんなさい』

 

 

 

 

 

蘭に怒られてしまったので素直に謝っておこう。今は魔法使いの蘭。本気で怒らせてしまっては何をされるか分からん。さっきのはひまりが悪いんだけどな。別に俺嘘言ってるわけじゃないからな。本当にコイツの攻撃当たんないし。盾構えて防御ばっかしてる俺が言えたもんじゃないけど。

 

 

 

 

それからは盗賊であるモカを先頭に、遺跡内部をくまなく散策して調査を行なっていった。その間やはりモンスターに出会す事は無く、安全なのは良い事だが何か違和感を感じる。ここがRPGゲームの世界であるのなら絶対に何かイベントが起こるはず。

 

 

 

 

 

「みんな止まって〜」

 

「モカどしたの?」

 

「これはちょっとヤバいかもな」

 

「巴ちゃん?」

 

「宗輝は下がってて」

 

「お、おう」

 

 

 

 

どちらかと言うと戦闘向きの役職であるモカと巴が何かに気付いたのか、一度止まるように指示する。今までのピクニックにでも来たような雰囲気とはガラッと変わり、みんな警戒態勢を敷き咄嗟の事態でも対応出来るように準備する。そして俺はと言うと、そんなみんなの後ろで盾を構えているだけ。何とも情けないのだが仕方ないだろう。前に出ても邪魔になるだけだしな。

 

 

 

 

 

「どうやらここが最後の部屋みたいだね」

 

「どうする?一旦戻るか?」

 

「でもそれじゃ依頼が......」

 

「ひまりの言う通り、私達が受けた依頼は遺跡の調査。最深部を調査しないと依頼は完了出来ないよ」

 

「モカちゃんもそう思う〜」

 

 

 

 

どうやら話し合いの結果、このまま目の前の大扉の部屋を調べる事になったらしい。念の為ということで傷を治す薬を2つ程渡されて調査へと向かう。5人だけで行った方がよろしいのでは?と一応進言してみたものの、蘭に"外に1人でいて襲われても知らないよ"と言われたので大人しくついて行くことを決心。

 

 

 

 

 

ガガガガガ

 

 

 

 

「モカお願い」

 

「任されました〜」

 

 

 

 

地響きかと思うレベルの音を立てながら大扉が開かれる。盗賊で索敵スキル持ちのモカが先頭でじわじわと進んでいく。

 

 

 

 

「何も無さそうだよ〜」

 

「はぁ......モカと巴が大袈裟に言うから緊張しちゃったじゃん!」

 

 

 

 

モカの索敵スキルには反応が無いらしく、5人共少し緊張していたのか肩の力が抜けていくのが分かる。

 

 

 

 

しかし、何故かは分からないが俺には見えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

「ちょっと待て、奥の方に誰か居ないか?」

 

「宗輝君?」

 

「モカの索敵に引っかからないモンスターなんていないって」

 

 

 

 

 

確かにここまでの道のりでそれは理解してたつもりだ。だけどそれは()()()()()に絞って索敵を行なっていた前提の話だ。

 

 

 

 

「......ダメ

 

「声?」

 

「やっぱり誰かいるのか?」

 

「早く助けないと!」

 

 

 

 

聞こえるか聞こえないかレベルの本当にか細い声。しかし、その声は俺達に助けを求めるではなく、危険を知らせる為の精一杯だったのだろう。

 

 

 

 

「ここに来ちゃダメッ!!」

 

「ッ!?ひまり危ねぇ!!」バッ

 

 

 

ドゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

間一髪のところで声の聞こえる先に向かっていたひまりを()()()から守る事が出来た。

 

 

 

 

 

「痛ってぇ......大丈夫か?」

 

「宗輝のお陰で何とかね」イテテ

 

「なら早いとこ態勢を」ムニュ

 

「......」

 

 

 

 

態勢を整える為に立ち上がろうとしたら何やら柔らかいものを感じる。

 

 

 

 

 

「ちょ......ひまりさん?これは所謂あれだからな?」ムニュ

 

「宗輝の......」

 

 

 

 

 

おかしい、ここはシリアスな場面のはずなのに。命懸けで俺がひまりを守って良い感じの雰囲気になるはずなのに。ちょっと俺に厳し過ぎる世界なのでは?

 

 

 

 

「宗輝の変態ッ!!」ペシ

 

「かぷこん!?」

 

 

 

 

 

前言撤回しよう。ひまりのフルスイングの平手打ちが俺の頬にクリティカルヒット。ひまりは素手なら攻撃が当たるとかそういうタイプなのかもしれない。

 

 

 

 

「って、そんな事してる場合じゃ無いよ!」

 

 

 

 

 

蘭の一声で一気に場に緊張感が戻る。俺達がさっきまで居た場所には、俺の身体の何倍もサイズが大きい岩石があった。そして、その奥の暗闇からこちらへ向かってくる影が一つ。

 

 

 

 

ドスン ドスン

 

 

 

 

「ガァァァァァ!!」

 

 

 

 

「なんだあの規格外のデカさのモンスター!」

 

「オーク......いや、あの大きさならオークロードかも」

 

「オークロード?もしかしなくとも強いのか?」

 

「何とか倒せない事もないけど、あの子も居るし遺跡内は少し狭いから分かんない」

 

 

 

 

蘭が目線を向ける先には、先程の声の主であろう女の子が鎖に繋がれていた。それはまたしても俺の顔見知りなわけで。

 

 

 

 

今度はお前かよはぐみ......

 

「蘭!私達はどうすれば良い!?」

 

「取り敢えずモカと巴で注意を引いて。その隙にひまりと私であの子を助けるから」

 

「つぐはむーくんを守ってあげてね〜」

 

「わ、分かった!」

 

 

 

 

 

蘭がそれぞれに指示を出して早速行動を開始する。遺跡までの道のりと同じく、モカと巴で前線を維持しつつオークロードの注意を二人へ集中させる。その間に捕まえられているはぐみの救出を蘭とひまりで担当。俺はというと、またしてもお荷物らしくつぐみと一緒に入り口付近で待機。

 

 

 

 

 

「オォォォォ!!」

 

「モカ!来るぞ!」

 

「はいは〜い」

 

 

 

 

オークロードは手に持つ棍棒の様な武器を力の限りに振り回して二人を攻撃してくるが、モカは持ち前の身軽な動きでヒラリと攻撃を次々に躱していく。巴も同じ様にして躱していき、二人へ完全に意識が向いている間にはぐみの救出に成功する。

 

 

 

 

「つぐみ、傷を治してあげて」

 

「分かった!ヒール!」

 

「モカ!巴!何とか助け出せたよ!」

 

 

 

 

所々に傷を負っていた様子のはぐみ。つぐみの回復魔法でみるみるうちに傷は塞がっていき、あっという間に完治してしまった。遺跡までの道のりでは擦り傷程度しか負わなかったから分からなかったが、回復魔法って案外凄いのな。

 

 

 

「つってもこれからどうするんだ!」

 

「何とかアイツを倒せる手立てがあれば......」

 

 

 

 

手詰まりの状況の中、未だにモカと巴の二人はオークロードの相手をしてくれているのだが、やはり少し疲れてきたのか動きが鈍くなってきている様にも見える。蘭も先程から頭を悩ませている。

 

 

 

 

「蘭、俺に考えがあるんだけどいいか?」

 

「......聞くだけ聞いてあげる」

 

「もうちょっと素直に......まぁいいや。時間も無いから手短に説明するぞ」

 

 

 

 

 

説明を蘭に行っている間も、二人には申し訳ないがオークロードの相手をしてもらう。これで上手くいかなかったら正直本当に手詰まりなのだが、ここまでくれば一か八かだ。俺だっていつまでも後ろで大人しく待ってるだけは嫌なんでな。

 

 

 

 

「本当に大丈夫?」

 

「理論上は可能......なはず」

 

「はぁ......でもまぁアンタを信じてみるよ」

 

 

 

 

 

どうにか俺の作戦を認めてくれたらしく、モカと巴にも声をかけて一度みんな集合させる。

 

 

 

 

「さっき話した通りでいくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカと巴に変わり俺とつぐみがオークロードの前へと躍り出る。後ろからは蘭が援護射撃と状況を見て声かけをしてもらえる体制を敷く。モカと巴とひまりには、入り口付近ではぐみを守ってもらう役目があり、先程とは真逆の配置となる。

 

 

 

 

 

「サンダーボルト!」

 

「ガァッ!?」

 

「ナイスだ蘭!」

 

 

 

 

蘭の放った雷属性魔法のサンダーボルト。低位魔法ではあるものの、オークロードには効力があるらしく少し嫌がっている様子。その隙に俺とつぐみがもう少し前へ出る。

 

 

 

「よし、ここまで来れば大丈夫だ。つぐみやってくれ!」

 

「う、うん!いくよ!」

 

 

 

 

つぐみの足元に魔法陣が描かれてから数秒後、つぐみの"えいっ!"という可愛らしい掛け声と共に魔法が発動し辺りに白い煙の様なものが散布される。

 

 

 

 

「オォォッ!!」ブンブン

 

「クソ!」

 

 

 

 

周りが見えづらくなったせいなのか、またしても棍棒を力の限りに振り回して攻撃してくるオークロード。少し錯乱状態なのか時々に地面に当たっていたりと先程より危険度は少なかったのだが、最前線にいるつぐみもオークロードと同じく視界が悪く距離も近いので適当に振り回しても当たってしまう。

 

 

 

 

ある程度把握していた場所と音を頼りにつぐみとオークロードの間に立ち塞がって盾を構える。棍棒が思いっきり地面に叩きつけられ、岩を穿つ音が段々と近くなってくるのを感じるが、ここで退いてしまってはつぐみに当たってしまう可能性がある。何より今までずっと役立たずで何もしていないのは俺的にもポイントが低いのだ。

 

 

 

 

「宗輝君!?」

 

「つぐみ下がってろ!」

 

「グオォォ!」

 

 

 

 

オークロードもタダの馬鹿ではないらしく、つぐみと俺の声を聞きその方向へ棍棒を一振りする。それを両手で構えた盾で身を退いて受け身を取りながら、つぐみ諸共後方へ吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 

「いってぇ......つぐみ大丈夫か?」

 

「宗輝君のお陰で何とか」イテテ

 

「二人共大丈夫〜?」

 

「その声はモカか。こっちは何とか無事だ、他のみんなは?」

 

「こっちは準備完了してるよ〜」

 

 

 

 

運良く入り口付近へ飛ばされたらしく、待機していたモカが様子見で来てくれたらしい。こんな状況なのに相変わらずコイツは気の抜ける返事をするもんだ。

 

 

 

 

だがしかし、これで全て準備は整った。部屋に漂う白の煙に未だに暴れているオークロード。俺達は入り口付近まで無事に到着。あとは仕上げにかかるだけだな。

 

 

 

 

「全員部屋の外まで出るんだ!」

 

「宗輝!私はどうしたら良い!?」

 

「蘭は俺とつぐみと一緒に扉の前だ!」

 

 

 

 

 

皆さんは"粉塵爆発"という現象をご存知だろうか。

 

 

 

 

粉塵爆発とは、ある一定の濃度の可燃性の粉塵が大気中に浮遊した状態で火花等により引火して爆発が起こる現象らしい。というのも、この作戦を考えた俺自身でも見た事も無く、この前偶々科学の授業で勉強した内容だから覚えていたに過ぎず、正直ダメ元なのだが大丈夫だと信じてる。

 

 

 

 

「蘭が魔法を放ったらすぐに防御魔法を最大で展開するんだ」

 

「分かった!」

 

「じゃあいくよ!」

 

 

 

 

 

白い煙で何も見えない部屋の中へ、蘭の容赦ない一撃が叩き込まれる。

 

 

 

 

「ファイヤーボールッ!!」

 

「つぐみ!」

 

「う、うん!」

 

 

 

 

立て続けにつぐみの展開した防御魔法で入り口を塞ぎ、部屋に閉じ込めて密閉する。その瞬間に、雷にも似た轟音と共に凄まじい爆発が引き起こされる。

 

 

 

ドゴォォォォォンンン!!!

 

 

 

 

「くっ!」

 

「耐えてくれ二人共!」

 

 

 

 

内部からの衝撃が防御魔法を伝って俺達三人へ襲いかかる。それでも何とか抑え込む事に成功し、無事作戦も成功。何とか役立たずの汚名も返上する事が出来ただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー!一時はどうなるかと思ったな!」

 

「あんなの初めてだったよ本当に!」

 

「モカちゃんのお陰かもよ〜?」

 

 

 

 

あの後、部屋を確認するとオークロードは存在しておらず、黒い消し炭の様なものしか残っていなかった。今は遺跡を出て街へと帰る途中。少々やり過ぎてしまったとも思ったが致し方あるまい。やらなければこっちがやられていたかもしれないのだ。弱肉強食にも似た何かを感じずにはいられない。大体このおかしな世界で死ぬわけにもいかないしな。

 

 

 

 

「それで、はぐ......コホン、何であんなところに?」

 

「はぐみにも分からないよ。拐われて気が付いたらあの遺跡にいたの」

 

「大変だったね」

 

「もう大丈夫だから。取り敢えず街へ帰って考えよう」

 

 

 

 

やっぱりはぐみなのね、というツッコミは最早不要。一々蘭達に変な目で見られるのも辛いのでな。

 

 

 

「というか獣人族?」

 

「獣人族、というか狐人族だよ」

 

「狐人族?」

 

「宗輝知らないの?」ニマ

 

「おい、今笑っただろひまり表へ出やがれちょいと宗輝君の実力を見せてやるけぇのぉ!!」

 

 

 

 

何かと俺の事をイジってくるひまりは一旦置いておこう。俺は心が広く優しいで有名だからな。決してひまりの挑発じみたイジリに反応したわけではない。本当だよ、嘘なんてつかないもん。僕悪いスライムじゃないよ。

 

 

 

 

「狐人族は不思議な力が扱える。だから、その力欲しさに拐われて人身売買......なんてのは良くある話だよ」

 

「不思議な力?」

 

「妖力っていうんだよ」

 

 

 

その妖力欲しさに誘拐されて人身売買されてしまったと。胸糞悪い話だが実際に目の当たりにすると少し怖さが勝ってしまう。あの時蘭達が居なければ助けられなかっただろうし、助ける事もしなかったかもしれないな。

 

 

 

「へぇ、どんな力なんだ?」

 

「ズバババーンって敵をなぎ倒していくって聞いたぞ!」

 

「巴は黙っててくれ......」

 

「ほわわわ〜んと変身するとも聞いたよ〜」

 

「お前もだモカ......」

 

 

 

 

こういった話は、やはり蘭やつぐみに聞く方が適切なのだろう。擬音の多い巴やふざけてしまうモカに、アホの子予備軍であるひまり。はぐみに聞いても"よく分かんない!"と元気いっぱいの返事を貰ってしまった。街に帰ってリサにでも聞いてみるかな。

 

 

 

 

「はぁ......やっと街が見えて来た」

 

「宗輝君もお疲れ様」

 

「やっぱつぐみが一番だな」

 

「ど、どういう事?」

 

「いんや何でもない」

 

 

 

 

疲れてる時はつぐみ成分を摂取するのが良いってそれ一番言われてるから。なんなら常識まであるから。しかし過剰摂取すると昇天してしまうので注意。大天使つぐみの前では皆兄弟なのである。さっきから何言ってんだ俺。

 

 

 

 

 

 

 

~城砦都市サークル~

 

 

 

 

 

 

 

「オークロードを倒した!?」

 

 

 

『はぁ!?』『はぁぁ!?』『あぁぁん!?』

 

 

 

 

某三兄弟っぽい反応をありがとう。俺達は街へ帰って早々ギルドへ向かい、受付嬢マリーナさんことまりなさんにオークロードを討伐した事を伝えた後の反応がこれだ。モブが良い味出してるアニメって個人的に好きなのよね。いやあの兄弟はモブではないんだけども。

 

 

 

 

「オ、オ、オークロードってあのオークロード!?」

 

「どのオークロードのこと言ってるか分かんないですけど」

 

「それよりマリーナさん、あんなの出るって聞いてないですよ」

 

 

 

俺の横で冷静に話を進めようとしている蘭を若干無視しているマリーナさん。蘭達が何とか倒せるって言ってたから、俺はてっきりそこまで強くないんだと思ってたわ。案外蘭達のパーティーって強いのか。

 

 

 

 

「報酬は上乗せしてお願いします」

 

「う、うん!それは勿論!無事に帰って来てくれて良かったよ!」

 

「それとこの子なんですけど......」

 

「まだ何かあるのって狐人族ぅ!?」

 

 

 

『はぁ!?』『はぁぁ!?』『あぁぁん!?』

 

 

 

 

はぐみがビクッとして怖がってるだろやめろよな。狐人族はやはり貴重な存在なのだろうか。実はギルドに入ってからというもの、周りがザワザワとしていたのは知ってたけどこれほどとは。

 

 

 

「そ、その子は何処で?」

 

「遺跡の奥で拾った」

 

「拾った!?遺跡の奥で!?」

 

 

『はぁ!?』『はぁぁ!?』「あぁぁん!?』

 

 

 

「いい加減くどい」

 

 

 

『あ、すみません』

 

 

 

 

 

蘭の一言で静まり返った三人組。何か大きなミスでもしてしまったのだろうか。狐人族とは不干渉だとかそういうのだったらやばい。でもそれだと蘭達が知らないのもおかしいしな。マリーナさんが過剰に反応してるだけだと思いたい。

 

 

 

 

「あー!!」

 

「いきなりどうしたんですか」

 

「そう言えば狐人族捜索の依頼が一件あったのよ!」

 

「それを先に言わんかい」

 

「えーっと......これこれ!」

 

 

 

 

 

マリーナさんが慌てて依頼書の中から一枚抜き出して机へ持ち出す。

 

 

 

"狐人族の少女の捜索依頼"と女の子っぽい丸文字で記されており、内容が狐人族の捜索で少女の特徴が限りなくはぐみに一致するのは気のせいだろうか。しかも依頼書のランクはAとかなり上位のものだ。

 

 

 

 

「ん?ちょっとマリーナさんその依頼書良く見せて下さい」

 

「はい、どうぞ」

 

「んんん?」

 

「何かあるの?」

 

 

 

 

依頼者の欄に"弦巻財閥"という名前があるのは気のせいですね。やっぱりこっちでも弦巻の名は伊達ではないということか。嫌な予感はするが行くしかないか。

 

 

 

 

「じゃあ蘭達とはここで一旦お別れだな」

 

「アンタはどうするの」

 

「はぐみを依頼者の所まで連れて行くよ」

 

「だったら私達も」

 

「今日は世話になりっぱなしだろ。これくらいやらせてくれ」

 

 

 

 

 

立て続けの戦闘でみんな疲れているだろう。モカなんてひまりの膝の上で既にスリープモードだ。それに、俺一人の方がここからは動きやすいだろうしな。

 

 

 

 

「また何かあったら教えてよ」

 

「了解」

 

 

 

 

蘭達は宿屋に戻ると言ってギルドを後にする。残ったのは俺とはぐみとマリーナさん。早いところ連れて行かないと夜遅くなりそうだ。

 

 

 

 

マリーナさんに弦巻財閥の別荘の場所を説明してもらい、蘭達と一緒に行った依頼の報酬金を受け取りギルドを出る。この依頼に関しては全額蘭達に渡る様にマリーナさんと手続きを済ませている。流石に何もしていない俺が報酬金を貰うのは違うだろう。

 

 

 

 

「むーくんむーくん」

 

「おぉ、いきなりなんだはぐみ」

 

「むーくんはどうして冒険者になったの?」

 

「まぁなし崩し的にな」

 

 

 

ここで"実はこの世界の人じゃなくて違う世界から来ました"なんて言えばどんな反応をするのだろう。正直はぐみになら別に言っても構わん気もするが。

 

 

 

「でも今日は助けてくれてありがと!」

 

「どういたしまして。蘭達が居なきゃヤバかったけどな」

 

「でもむーくんも凄かったよ!」

 

「上手くいくかは賭けだったけどな」

 

 

 

上手くいったとしても倒し切れるかとか色々と問題はあったが、まぁ結果オーライということにしておこう。

 

 

 

「それで、はぐみは弦巻財閥とはどういう関係なんだ?」

 

「こころんとは友達なの!」

 

「知ってるぞ」

 

「えー!何でむーくんこころんの事知ってるの!?」

 

「ごめん嘘」

 

 

 

少し頬を膨らませてぷくーっと怒るはぐみ。浴衣や着物っぽい和のテイストを取り入れて尚且つ狐の耳や尻尾が付いているせいなのか、今のはぐみはどちゃくそ可愛いのだ。これだけでご飯三杯はいけるね。

 

 

 

「他にも財閥の中で友達はいるのか?」

 

「うん!使用人だけど仲良くしてくれるみーくんでしょ?カッコいい薫くんにミッシェルに─」

 

「もういいぞ何となく分かったから」

 

 

 

 

こちらの世界のミッシェルはどんな姿なのか少し、ほんの少しだけ気になるが会ってからのお楽しみにしておこう。もしかしなくともハロハピメンツ大集合だろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

~弦巻家屋敷~

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

「......」

 

 

 

 

弦巻財閥の別荘と思われる豪邸に着き、早速ノックしてみたが返ってくる様子も無くどうしようか悩んでる最中。

 

 

 

「誰も居ないのか?」

 

「そんな事無いと思うよ!取り敢えず中に入ってみようよ!」

 

「いや、その為にノックしてるんだが......」

 

「大丈夫!こころんだったら許してくれるよ!」

 

「許すも何もどーやって中に入るんだ?」

 

 

 

 

周りは高い壁に囲まれており、有刺鉄線や赤外線センサー等防犯対策はバッチリの様子。見たところこの扉ぐらいしか出入りする場所は無さそう。

 

 

 

「むーくん目瞑ってて!」

 

「お、おう」

 

 

 

 

はぐみに言われた通りに目を瞑り、はぐみに委ねる。すると手をギュッと握るはぐみ。その瞬間に少し変な違和感を感じたのだがすぐに元通りになった。

 

 

 

「はい!もう大丈夫だよ!」

 

「......これがお得意の妖力ってやつか」

 

「んー、はぐみにもよく分かんない!」

 

「まぁ詳しい事は追々調べるさ」

 

 

 

正直魔法とかよりも凄い何かに遭遇した気がする。瞬間移動とかワープとか、そういった高次元な何かだろう。きっと神様の力だ。それ故の狐人族なのだろう。確かに人身売買という話も頷ける。かと言って肯定する訳ではないが。

 

 

 

それから某ドームが一つ建設出来るほどの敷地を歩き、はぐみもよく分からないというこころの部屋へと向かう。しかしながら、中々見つからずに時は経ち外は暗くなり始めていた。

 

 

 

 

「所々にミッシェル像はあるんだが......というかどんだけ広いんだよこの別荘」

 

「みんな本当に居ないのかな?」

 

「......ぇ......ぇぇぇ」

 

「ん?」

 

 

 

 

何体目か分からないミッシェル像を通り過ぎて少し歩いた十字路。聞こえづらいが声の様なものが聞こえてくるのを感じる。はぐみは未だにキョロキョロ周りを見渡していて気付いてない様子。

 

 

 

「......ふ......ぇぇぇ.....」

 

「声?」

 

「むーくん?」

 

 

 

 

その声は段々と、尚且つ確実にこちらに向かって近づいて来ていた。

 

 

 

 

 

そして、その正体と相見えるのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

「......ふぇ......ふぇぇぇぇ!!」

 

「ぎょえぇぇぇ!?」

 

 

 

 

 

ぼんやりと浮かぶ半透明な浮遊体。白い綺麗な着物に身を包み、泣きながらこちらへ向かってきたのはハロハピのドラム担当松原花音先輩であった。

 

 

 

 

「あー!かのちゃん先輩みっーけ!」

 

「はぐみちゃーん!」

 

「はぁ......驚かせないで下さいよ全く」

 

「ご、ごめんね?そんなつもりは無かったんだけど......」

 

 

 

分かりやすく落ち込む花音先輩。俺の方も少しキツイ言い方をしてしまった。驚いたからと言って言い過ぎだろう。

 

 

 

「というか......幽霊?」

 

「それだと半分正解かな」

 

「半分?」

 

「かのちゃん先輩は凄いんだよ!」

 

 

 

 

はぐみの抽象的な説明を花音先輩が分かりやすく丁寧に解説してくれる。

 

 

 

 

簡単に言ってしまえば、この世界の花音先輩は特異体質を生まれながらに持っているらしく、普段は俺や蘭達と何も変わらない人間らしい。しかし、こうして夜になると半実体化の様な状態になってしまい、所謂幽霊的な存在へと変化するのだそう。それで屋敷の中を彷徨っていたところに俺達が居たので助けを求めて来たらしい。

 

 

 

「何か面倒くさいですねそれ」

 

「もう慣れたから大丈夫だよ」

 

「今の状態だと触れられないんですか?」

 

「自分からも相手からも干渉は出来ないっぽいね」

 

「どれどれ」ナデナデ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......」ナデナデナデ

 

「.......」///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んんん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......」ナデナデナデナデナデ

 

「......」///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれれ〜、おっかしいぞぉ〜?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花音先輩嘘つきました?」

 

「嘘ついてないもん!」///

 

「むーくんはかのちゃん先輩ナデナデ出来るんだね!」

 

 

 

 

 

やはりこれは俺の方に問題があるのだろう。今の半実体化している花音先輩は、この世界から少し逸脱した存在とも言える。俺も俺でこの世界の人間では無い。そう言った点から鑑みて、今の花音先輩と俺は案外近しい存在なのかもしれない。だから触れたり出来るのだろうという推測を立ててみるが......やっぱりよく分からん。

 

 

 

 

「花音先輩は決して一人じゃないですから」ナデナデ

 

「......うん」

 

「むーくん先に進もうよ」

 

「悪い悪い、花音先輩こころの部屋が何処か......って分かるわけないか」

 

「ッ!!」ポコポコ

 

 

 

冗談交じりの会話がゆっくり出来るのは、やはり楽しいものだ。恥ずかしいのか花音先輩が両手でポカポカ殴りかかってくるが、威力に関しては雀の涙程度で可愛らしい。半実体化のせいか少し白みがかっているので、余計に顔が赤くなっているのが分かる。花音先輩可愛い。

 

 

 

 

 

それから三人で試行錯誤しながらこころの部屋を探して行った。主に俺一人が考えてた気もするが。はぐみの直感を信じるわけにもいかず、かと言って花音先輩の迷子癖はこちらでも健在。今度は俺が引っ張っていかないとダメなパターンだな。

 

 

 

 

「むーくんあの奥の部屋が怪しいと思う!」

 

「それもう5回目なんだけど」

 

「でも、ちょっと見覚えあるよ」

 

「花音先輩のそれも5回目です」

 

 

 

 

しかしながら、今回は二人が正解っぽくミッシェル像が端に二つ建てられており、他の部屋とは違う雰囲気を感じる。

 

 

 

 

「開けるぞ」

 

『うん』

 

 

 

 

 

古めかしく音を立てながら少しずつ扉を開いていく。部屋の中は真っ暗で灯りの一つも無く、少しの間手探りで進んでいくしかない。光とかの魔法があれば良かったんだけどな。

 

 

 

 

「えーっと......二人共大丈夫か?」

 

『......』

 

「ん?はぐみ?花音先輩?」

 

 

 

 

さっきまで居たはずの二人が居なくなっている。いや、正確には周りの状況が把握出来ていないので居ないのかどうかすら分からない。だがしかし、緊急事態なのに間違いはないだろう。

 

 

 

 

「またお決まりの展開か......とにかく周りの状況確認するのにも灯りが必要、なん、だけど......」ムニュ

 

 

 

 

部屋の電気のスイッチとは思えないほど柔らかく、それでいてとても心地の良い感触アリ。お金持ちの屋敷というのは、事細かな部分まで拘るのが常識というものなのか。

 

 

 

「あれ?......俺どっちから来たっけ......」バタ

 

いきなりだなんて......おませさんね

 

「ここ......ろ......?」

 

おやすみなさい

 

 

 

 

 

 

訳も分からないまま、俺の意識はここで途絶えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

『......宗輝』

 

『......あれ、俺確かこころんちに居たはずじゃ』

 

 

 

 

 

誰かの声に呼ばれて眠っていた意識は覚醒する。どれほどの時間眠っていたのだろうか。その前にこれは何なのだろうか。俺を呼ぶ声は一体誰なのだろうか。そんな疑問ばかり浮かぶ俺を他所に事態は進行していく。

 

 

 

『ほら、宗輝こっち』

 

『うおっ......ちょ、待てって』

 

『もう待ち切れないんだよ』ムニュ

 

『って有咲!?お前なんちゅー格好してんだよ!というかやわらけぇ!』

 

 

 

 

いきなり胸に手を押し付けられて、半ば強制的に豊満なまでの果実に触れる事に。今の有咲の格好はとてもじゃないが直視出来ない状態だ。所謂下着姿というもので、何故いきなりこんな状況に陥ってしまっているのかパニックだ。

 

 

 

『待て有咲!いきなりどうしたんだよ!?』

 

『お前が欲しくなったんだ』

 

『はぁ!?』

 

 

 

 

先程からの有咲の様子といい、俺の感じている違和感は何なのだろうか。というか何故こっちの有咲が俺の事を知ってるんだ。そもそもの話それ自体がおかしい。そうじゃなくとも有咲は決してそんな事は言わない。

 

 

 

『もしかして......試してみるしかないか』

 

『ちょ、何するつもりなんだお前』

 

『すまんな有咲』

 

 

 

 

少し覚悟を決めて、有咲の手を振り解き右手を大きく振りかぶる。

 

 

 

 

 

『俺の知ってる有咲は、絶対にこんな事しないんだよ!』

 

 

 

 

 

右手で自分の頬を思いっきり叩いて目を覚ます。刹那の出来事だったが、周りを見渡してみると宿屋の中だということが把握出来る。やはり夢のようなものの中に強制的に連れていかれたのだろうか。

 

 

 

「それにしてもいってぇな......」スリスリ

 

「......なんで

 

「ん?」

 

 

 

 

自分の足元付近の掛け布団が妙に膨らんでいる。何となく正体は察しているが念の為確認だ。もしかすると誰かさんが俺にプレゼントでお菓子なんてものをくれたりしてるかもしれない。この世界にきてからそんな仲の良い人が出来た覚えがないが。

 

 

 

 

「あの〜......有咲さん?」

 

「自力で抜け出せるとか聞いてない!」

 

「うおっ!?」

 

 

 

案の定有咲だったのだが、何故か先程の夢の中での格好より酷くなっている気がする。下着っぽいのは変わらないのだが、何というか妙に大人っぽいというか。それに翼とか尻尾も生えてるし確実に人間じゃないよね?

 

 

 

「その前に質問いいか?」

 

「なんだよ」

 

「その格好は何?」

 

「サキュバス」

 

「ほぇ?サ、サキュバスとな?」

 

 

 

 

サキュバスとは。アニメや漫画で良く見る非現実的な存在だと思っていたが、まさか自分の知り合いがサキュバスだったとは。というかサキュバスってあれだよね。夢の中に出てきてえっちぃことするやつだよね。それが今の有咲?大変けしからんでござる。

 

 

 

 

「何で俺の夢の中に?」

 

「命令だからな」

 

「因みにどんな?」

 

 

 

 

まぁサキュバスがやる事なんて一つしかないんだけどね。

 

 

 

 

 

「お前の力を奪いにきたんだよ!」

 

「はぁ......また面倒くさい事になりそうな予感がする」

 

 

 

 

 

 

 

~To Be Continued~

 

 

 

 

 

 

 





まだ特別編が続きそうです......。

本編の続き開始出来る様に頑張ります^ ^
└感想評価頂けるとモチベupしますので是非m(__)m

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