トリプルP!~Produce"Poppin'Party"~ 作:Lycka
お久しぶりです。
本当に亀更新ですんません.....。
ちょくちょく書いてはいるんですけどね、いかんせん忙しくて。
今回、長くなりました。
7話、ご覧下さい。
チリリリリリ!!チリリリリリ!
目覚まし時計の音で今まで眠っていた意識が覚醒する。あの日から3日、今日は文化祭当日である。朝、沙綾の家に寄って一緒に行く約束をしている。香澄はクラスの手伝いで先に行くらしい。
「そろそろ準備始めるか.....」
自分に言い聞かせるように小さく呟きベッドから起き上がった。
***
「おはようございま〜す」
沙綾の家に着いてドアを開け、少しだらしなく挨拶を済ませる。そのまま玄関で待ってようと思い腰をかけようとしていたところを千紘さんに見つかる。
「沙綾がご飯まだなの。少し上がっていって」
「了解しました。お邪魔しますね」
靴を脱ぎカバンを玄関に置いてリビングに向かう。そこには純と紗南、沙綾が朝御飯を食べていた。
「ごめん宗君。すぐ終わらせるから」
「いや、急がなくても良いよ」
とは言ったものの、沙綾の朝御飯終了までやる事がない。仕方ないので、大人しくソファに座っておくことにした。まぁ、たった5.6分なんだけどな。
「お待たせ。じゃあ、行こっか」
「おう、忘れもんないか?」
「うん、大丈夫だよ」
「後で純達と遊びに行くからね〜」
リビングから千紘さんの声が聞こえる。純達くるんなら、先に売店の券買っとかなきゃな。
ガタッ
「ん、何これ。宗君知ってる?」
「いんや、全くわからん」
玄関のドアを開けた時に、隙間から手紙が落ちてきたのだ。いつの間にこんなもん挟まれてたんだ?沙綾も不審に思ったのか千紘さんに聞きに行く。
「母さん、これ.....ッ!!」
「.......」
「どうした沙綾....大丈夫ですか千紘さん!!」
さっきまで皿洗いをしていた千紘さんが、片手をつきながら頭を抑えてうなだれていたのである。朝から少し働き過ぎていたのか体調が悪くなったのであろう。
「沙綾、近くの病院に千紘さん連れてくぞ!」
「でも、宗君文化祭は....?」
「そんなこと言ってる場合か!俺も手伝うから早く!」
「う、うん!分かった!」
こうして、俺と沙綾と純達で千紘さんを病院へ連れて行った。
~花咲川学園~
「沙綾ちゃん来ないね....」
「香澄、家行ったんだよね?」
「うん、ちょっとだけ」
確かに私は沙綾の家に行った。しかし、やったことと言えば手紙をドアに挟んだ程度。結局、沙綾に会えずじまいだった。
「パン届いたよ〜。香澄、来て」
「うん、わかった」
バタバタバタ
「助っ人来たよ〜」
『おはようございます!』
沙綾のお父さんがやまぶきベーカリーのパンを持ってきてくれていた。私も手伝おうとしたが、既に運び終わったらしく車の荷物置きには何もない。
「サイン、貰えるかな?」
「あ、はい!」
私は、何故沙綾が学校へ来てないのか気になってしょうがなかったので、沙綾のお父さんに聞いてみることにした。
「あの、沙綾は?」
「今朝、妻がね....」
「ッ!!」
もしかして、沙綾のお母さんに何かあったのだろうか。そんな私の気持ちが顔に出ていたらしく、沙綾のお父さんが続けて話し出す。
「いや、大したことはないんだ。昔から貧血気味でね。それで、娘が病院に連れて行ってるんだ。宗輝君も一緒だよ」
「むーくんも一緒なんですね」
「迷惑かけてすまないね」
「そんな、迷惑だなんて思ってません!」
こんなとき、どうすればいいのかわからない。沙綾とむーくん無しで文化祭するのかと思うと、寂しい気持ちになってしまう。けれど、二人の分も頑張らなくちゃ。
「あの、こっちは大丈夫だって伝えてくれませんか?」
「分かったよ。それと、沙綾と宗輝君からも伝言。文化祭、絶対に成功させるように言ってたよ」
「はい、ありがとうございました!」
まずは、クラスの出し物だ。まだまだやるべきことは沢山残ってる。二人の分も私が頑張るんだ。そう決心して、私は自分のクラスへ戻った。
「みんな!最高の文化祭にしよ!!」
***
「念の為に精密検査もしますが、特に問題はありませんよ」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
今、俺と沙綾は医師の人に千紘さんの様子について話を聞いていた。とにかく問題無くて良かった。先生の言葉を聞いて少し安心した様子の沙綾。
「とりあえずは安心ってところだな」
「うん、そうだね.....」
しかし、何かつっかかる部分があるらしく俯いたまま黙ってしまった。
「どうしたんだ沙綾。何か他に気になることでもあるのか?」
「私、また宗君やみんなに迷惑かけちゃってるね....」
幸い、ここには純と紗南は居ない。こんな沙綾、純達には見せられないな。病室を出てすぐの椅子に二人とも腰掛けていて、周りに患者さんも大勢いる。ちょっと場所変えるか....。
「沙綾、ちょっと着いてきて」
「え、ちょっと、宗君!!」
俺は沙綾の手を取り、病院の外へ出た。外はテラスの様になっており、綺麗な花が所狭しと咲いていた。そこにある椅子に二人揃って腰掛ける。
「沙綾、あのな....」
プルルルルルル.プルルルルルル
俺が話し出そうとした時、計ったかの様なタイミングで沙綾の携帯電話の着信音が鳴り響く。しかし、沙綾は自分の携帯が鳴っていることに気付いていない様子だった。
「沙綾、携帯鳴ってる」
「あ、ごめん。ちょっと出るね」
そう言って、沙綾は椅子から立ち上がり少し離れたところで話し始めた。
「もしもし....、か、香澄⁉︎文化祭はどうしたの?」
どうやら、電話相手はウチの幼馴染だったようで。なんでこんな時間に電話かけてきたんだよアイツ。理由は何となく察せるけどな。
「え、おたえ⁉︎りみも!みんなまでどうしたの!」
「沙綾、大丈夫か?」
「う、うん。なんかクラス全員いるらしくて....」
どうせ香澄の案だろう。沙綾を少しでも心配させまいと思ったみんなの行動に感謝しないとな。
「うん、こっちは大丈夫。あははは、なにそれ。え、分かった」
そろそろ終わるか?そう思って、俺は椅子に座って待とうと思っていたが、沙綾が俺に携帯を渡してきた。
「香澄が変わってほしいだってさ」
「ん、ありがと」
俺は沙綾から携帯を渡してもらい、少し離れた場所で話し始める。
「どうしたんだよ急に。何かあったのか」
「ううん、こっちは絶好調。ただ.....」
直接話したのにまだ心配なのか。まぁ、沙綾も沙綾で隠しきれてないところあるからな。
「沙綾のこと、まだ心配か?」
「なんでわかったの⁉︎むーくんエスパー?」
バカ、何年幼馴染やってきたと思ってんだよ。
「こっちは俺がついてる。だから、お前らは文化祭を成功させることに全力を尽くせ。それに、沙綾のことも俺がなんとかする」
「.....本当に大丈夫?」
こうなってきたら無限ループだからなコイツ。
「香澄、昔よく明日香と三人で山とかで遊んでたの覚えてるか?」
「それは覚えてるけど、急にどうしたのむーくん?」
「遊んでた時に、木の上に明日香の帽子が引っかかって取れなくなったの覚えてるか?」
「覚えてるよ!むーくんが登って取ってくれたんだよね!」
あの時マジで怖かったのを俺自身覚えてる.....。まだ小学生だったのに2.3mある木の上に登ったからな。お陰様で、帽子とって明日香に渡して降りるときに怪我したんだよな。
「おう、そのときに怪我しちゃってお前が絆創膏貼ってくれたんだよ」
「そーだっけ?それは覚えてないや」
「その時俺が言ったこと覚えて....ないよな、その様子だと」
「うん!なんて言ったのむーくん?」
そこは覚えておいて欲しかったんだけどな。記憶力悪い方だったかお前。
『俺はお前らの為なら頑張れる。でも、俺にだってできない事があって、お前らにしかできない事がある』
「的な感じの事言ったんだよ」
「あ、思い出したよむーくん。そのあと、怪我の治療は任せた戸山隊員って言ってた」
なにそれ、チョー恥ずかしいんですけど。なんでそこ思い出すんだよ。俺忘れてた部分じゃねーか。
「ま、とにかく俺にしかできないことがあって、お前にしかできないことがあるって話だ」
「あんまり分かんないけど分かった!むーくん、沙綾の事よろしくね!」
そう言って、早々と電話を切ってしまった香澄。自己完結して勝手に終わってもらっても困るんだが。椅子に座って待ってくれていた沙綾の元へ向かう。
「ごめん沙綾。香澄が電話切っちまった」
「ううん、話できたから大丈夫」
果たしてそうだろうか。本当の意味で、香澄達と話すことができていただろうか。その証拠に、まだ沙綾の顔は元気とは言えなかった。そんな沙綾を見ていると、こっちまで辛くなってくる。
「沙綾、やっぱり文化祭ライブ出たいんだろ?」
「ッ!!なんで、そう思うの?」
「さっきみんなと電話してるとき、いつもの沙綾みたいに笑顔だったからだ」
沙綾は自分でも気づいていない様子だった。
「でも、やっぱり無理だよ。こうやって、また迷惑かけて無理させちゃって。私、なにも変わってないね」
「だったら、今変わればいいじゃんか」
「今、変わる?」
沙綾は分からない、という風な顔だった。
「そーだよ。今この瞬間から変わればいい。ていうより、俺からしたらもう沙綾は変わってきてる」
「変わってないよ。今こうして、宗君に迷惑かけてる」
「俺は迷惑だなんて思ってない。香澄達もそんなこと思ってない」
「バンドなんかしてたら、家の手伝いできなくなる」
「俺が今より頑張れば大丈夫だ」
「......」
沙綾が黙って俯いてしまった。そして、沙綾の頰には一筋の涙。訴えかけるような声で話し出す。
「宗君は、それで楽しいの?自分が、損してる、だけじゃないの?」ポロポロ
「俺は楽しいさ。現に今まで手伝いして、バンド練習に付き合って楽しくなかったことなんて一度も無いさ。口には出さねーけどな」
「なんで、そう思えるの?私には、もう無理だよ....」ポロポロ
「なんでって言われてもな。みんなの幸せが、俺の幸せなのかもな。大袈裟だけど、そう思ってる。沙綾の笑顔みてたら、こっちまで笑顔になってくるんだよ。沙綾は、香澄達と一緒にいて楽しいだろ?」
「それはそうだけど....」
どうしても踏ん切りがつかない様子の沙綾。今の沙綾が、どことなく落ち込んでる香澄と重なって見えてしまう。少し触れれば簡単に崩れそうで、風が吹けば簡単に飛んで行ってしまいそうな。
そんな沙綾に近付いて、抱きしめる。
「え、宗君。どうしたの?」
「俺みんなが笑って過ごしてるところ側で見てるのが、最近の一番幸せな事だったんだよ。香澄とおたえが変なこと言って、有咲がそれにツッコミいれて、りみりんと沙綾がそれみて笑って。そんな何ともない日常が俺にとって大切だったんだよ」
「......」
沙綾は黙って話を聞いてくれている。
「沙綾の分、俺が頑張るからさ。家の手伝いとか純達の面倒とかちゃんと見るし。千紘さんにも無理させない。俺にできることは全部やる。困ったら俺を頼ってくれ。そのかわり、俺が困ったら沙綾に頼るからその時はよろしくな」
「....うん」ポロポロ
沙綾につられて俺も泣きそうになってしまう。そんなところは何としてでも見せないようにしないと。
「だから、沙綾のしたいことしてくれ。もっと甘えていいんだ、もっと我儘になってもいいんだよ。迷惑かけたくないんなら、俺を頼ってくれ。俺がずっと側で支えるから」
「本当に...いいのかな?」ポロポロ
「そんなに俺が頼りないか?」ナデナデ
その言葉を皮切りに、沙綾は俺に抱きついてきて周りを気にせず泣き出してしまった。幸い、周りには人が居なかった。そんな沙綾の頭を撫でながら、抱きしめていた。朝からパンの支度をしていたからか、抱きしめた時に、甘く鼻腔をくすぐるような匂いがしてくる。
「大丈夫か、沙綾」ナデナデ
「うん、大丈夫。それに、もういいよ」///
「よし、なら早く準備して行かなきゃ間に合わないな」
「うん、ありがとね宗君」
そう言う沙綾の顔は、今日の天気と同じような晴れやかな顔だった。
「俺は、千紘さんの様子見てから行くから。先に行っててくれ」
「.....宗輝。こっち向いて」
俺は病院に帰ろうと思い歩いていたが、沙綾に突然名前で呼ばれ反射的に振り向く。
その瞬間、俺と沙綾の距離が零になる。
「さ、沙綾!」///
「これは、私を救ってくれたお礼。ちょっと少なかったかな?」ニヤッ
先程まで、自分の腕の中で泣きじゃくっていた女の子とは思えない、悪戯が好きな女の子の顔をしている沙綾。普段とのギャップにやられて俺の顔は真っ赤だ。控えめに言って、超可愛い。
「んな!馬鹿言ってないで、早く行ってこい!」///
「はーい、行ってきます!」
そう言って、準備をする為に沙綾は行ってしまった。最後の最後でやられちまったな。まぁ、あの様子なら大丈夫そうだな。
安心しきっているところに、後ろから声をかけられる。
「あの子も宗輝君には、あんな顔するのね」ウフフ
「千紘さん⁉︎見てたんですか....。それより、お体の方は?」
「もう大丈夫。とりあえず、今日は安静にしておくわ」
本人の口から大丈夫宣言がでたので一安心。病院にいるなら無理もしないだろう。純や紗南達もいるしな。
「早く行かないと間に合わないわよ?」
「ありがとうございます。あと、お願いを一つ聞いてもらってもいいですか?」
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結果、文化祭は大成功。クラスの出し物は繁盛、香澄達の文化祭ライブも沙綾を加えた5人で無事終えることができた。俺はギリギリ間に合ったので、体育館の後ろの方で眺めていた。5人ともが楽しそうにライブしているのを見て、少し涙が出てしまったのは内緒の話。
そして、今は有咲の家の蔵でみんな集まっている。
「みんなお疲れ様〜!」
「本当に、あの時はどうなることかと思ったぞ」
「そんなこと言って、有咲あんまり心配してなかったでしょ」
「んな!そんなわけあるか!」
テーブルにお菓子とジュースを各々広げ、文化祭成功のお祝いをしていた。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、時計の針は既に21時を指していた。あまり遅くなるといけないので俺が立ち上がり手を叩いて注目を集める。
「よし、じゃあこの辺にして今日は解散な」パチパチ
「帰りが遅くなるといけないもんね」
流石りみりん、そこんとこわかってくれて助かる。それぞれが帰る支度をして、蔵の出口に集合する。
「本当に今日はお疲れ様。みんなゆっくり休んでな」
『おつかれさま〜』
「.......写真撮りたいな」
みんなの声にかき消されてよく聞こえなかったが、有咲が何か言った気がする。
「有咲、何か言ったか?」
「記念に、みんなで写真とか.....撮りたいなって思ったり」///
「よし、撮ろう。今すぐ撮ろう」ガシッ
「ふえっ!いきなり肩掴むなぁ!」///
ただでさえ美少女の有咲に、顔を赤くしながら服の袖を引っ張られながら頼まれて断る男子がいるだろうか。いや、居ない。そんなことは断じて許さん。
「じゃあ取るよ〜。はい、チーズ!」パシャ
撮影は、慣れている沙綾に任せることにした。もちろん、内カメラで自撮りだ。少し窮屈な態勢にならないと全員映らない為、みんなが体を寄せ合っている。必然的に、密着するので女の子特有の柔らかい感触や甘い香りが俺を誘惑してくる。そんな状態でいつまでも俺が理性を保つことは難しい為、2.3枚撮って終わりにした。なんで、女の子ってあんなにいい匂いすんの?
「よし、じゃあ今度こそお疲れ様だ」
『じゃあね〜』
そして、その帰り道。
「今日の文化祭楽しかったな〜」
「それはようごさんした」
俺は香澄と一緒に帰っている。今日はコイツの家に泊まるからだ。別に泊まるからと言って変な事は一切起きない。今まで起きたこともないからな。
「ありがとね、むーくん。お陰で助かったよ」
「俺はなんもしてねーよ。文化祭が成功したのはお前ら自身の力だ」
「ふふっ、むーくんは昔と変わらないね」
お前もな、と心の中でツッコミを入れる。諸行無常、常に変化していく中で変わらず有り続けるものもあると俺は思ってる。それは人それぞれで、人となりであったり友情だったり、はたまた愛だったりもするかもしれない。
そんな中、俺は変わらず有り続けようと思う。コイツらを支える存在として。
「香澄、これからもよろしくな」
「うん!こちらこそよろしく、むーくん!」
しかし、この時俺はまだ知らない。
これから始まる、ガールズバンド時代へ自分も巻き込まれていってしまうことを。
これでやっと他のバンドの子達を出すことができます。
また亀更新になるかもしれませんが、それでも良ければ読んでやってください。
誤字脱字もあるかもしれません.....。