けものフレンズR [Resurrection]   作:A.Unno

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第一話「であい その4」

「ふう、きょうも仕事しましたねえ」

「もう日が暮れてきたし、そろそろおしまいですかね」

 

〈わすれものセンター〉には、静けさが戻っていた。依頼が一気に解決して、アルマーもセンちゃんもようやく一息をついている。陽ももう沈みかけていて、あたりは一気に暗くなり始めていた。

 

「ん、この匂いは……?」

 

 アルマーがなにかに気がついたらしく、窓に向かって鼻を近づける。なにか、嗅いだことのある匂いが近づいてきているような――と思った次の瞬間、いきなりふたつのシルエットが姿を現した。

 

「――おーい、いるですかー?」

「まったく、わたしたちに出向かせるとは。とんだ〈たんてい〉たちなのです」

「ああ、〈はかせ〉、それに〈じょしゅ〉」

 

 オオコノハミミズクとワシミミズクのふたりが、窓の外から〈たんてい〉コンビになにやら文句を言っている。センちゃんが窓を開けると、「ふう」「お茶のひとつでも飲みたいのです」と、来てそうそう要求をし始めた。

 

「珍しいね。こんなところまで来るなんて」

「まったくなのです。しんりんちほーからここまではとっても長い道のりだったのです」

「おまえたちの報告がまだなので、わざわざ確認しにきてやったのですよ」

 

 ん、報告? と言葉を反芻したところで、「あー!」とアルマーが立ち上がった。なにか思いだした様子の相棒に、センちゃんも少し慌てはじめる。博士たちはちょっとあきれた様子で、わちゃわちゃしている二人組を見守っている。

 

「え、えっ、なんでしたっけ」

「なんでしたっけではないのです。もしかして忘れていたのですか」

「ほら、あれだよ。残ってるかもしれない黒セルリアンの捜索」

「ああーそういえば!」

「そういえばではないのです。〈しま〉の下半分はおまえたちの持ち場だったはずなのです」

 

「ごめんごめん」アルマーがあやまりながら、ちょっと傷んだ地図を持ってくる。「これに目撃した子の話を書き入れたんだけど、ばらばらだったんだー」

 

「なんだ、終わってたならはやく持ってくればよかったのです」

「しごとは報告するまでなのですよ」

 

 地図には点々とバツが書き記されていて、目撃者の名前と時間が添えられている。以前彼女たちを襲った黒セルリアンについて、博士とセルリアンハンターたちはその後も調査を進めていた。あれと同じものがまだ残っているのは、という不安は、この〈しま〉のフレンズたちに根強い。

 

「……ふむ。勘違いっぽいものばかりなのです」

「はずれなのでしょうか」

 

 はかせたちは地図をしまうと、センちゃんが出してきたじゃぱりまんにぱくついた。もぐもぐ食べていると、いくらか機嫌が直ってくる。

 

「いやあ、ごめんね。今日はちょっといそがしかったから」

「そうなのですか?」

「そうなんですよ。ラッコの探し物をしたり、ヒトの子のお手伝いをしたり――」

「ヒト!? いまヒトと言ったのですか」

「くわしく聞かせるのです!」

 

 じょしゅのミミちゃんが、センちゃんの言葉をさえぎった。「へ?」という顔をしている探偵二人に、博士たちは羽根を広げながら詰め寄る。あまりの剣幕に、思わず探偵コンビはふたりとも丸まってしまった。

 

「ひいい、なになに」

「いったいなんですかー!」

「いいから、話を聞かせるのです」

「どこで見たのですか」

「みなとの近くの森だよー」

「そうですそうですー」

「むむむ」

「いまはどこにいるのです」

「ばいく? に乗ってっちゃったし、わかんないよー」

「そうですそうですー」

「なんと、逃がしてしまったのですか」

「これはまずいのです。一度逃げられると、なかなかつかまえられないのです」

 

 しばし見つめ合った後、はかせとじょしゅはふたりを助け起こした。

 

「仕事なのです」

「もうセルリアンはいいのです。明日からそのヒトの子を連れてくるのです」

「お仕事っ!?」

「やる気出てきましたよ!」

「……乗せやすくて助かるのです」

 

 ぼそっ、というミミちゃんじょしゅの声に、センちゃんがぴくりと反応した。

 

「――なにか言いました?」

「な、なんでもないのです」

「それより、その子がどこから来たのか知りたいのです。この辺の建物、なのですか」

「たぶん、そうだと思うんだけど……」

「詳しいことはわからないんですが、イエイヌさんと一緒にいましたから。あの子のなわばりって、たしかセントラルでも、さばんな寄りの方じゃ」

「だいぶしぼれてきましたね、じょしゅ」

「きくかぎり、あそこではないかと。はかせ」

 

 そう言うと、二羽はふわりと浮かんで、窓に足をかけた。いきなり去ろうとするはかせたちに驚いて、アルマーが「ちょっとまってー」と追いすがる。

 

「つれてくのはいいんだけど、どうするの」

「そうです。ともえさんは、わたしたちの依頼を助けてくれた恩人ですよ」

 

 ちょっと警戒している様子のふたりを見て、はかせたちはちょっと首をかしげた。それから、「ふふふ」「なのです」と不敵に笑う。

 

「われわれの推測が正しければ、その子はきっと〈おたから〉をもっているはずなのです」

「すっごい〈おたから〉なのです。まちがいないのです」

「お、おたから!?」

「どんなおたからですか!?」

 

 目を輝かせるたんていたちに、はかせは「それはいえないのです」ともったいぶったことを言う。

 

「つれてきてからのおたのしみ、なのです」

「おまえたちのはたらきに、きたいしてるのですよ」

 

 それでは――と言い残して、音もなくはかせたちは飛び去っていく。見送ったアルマーとセンちゃんは、ようやく人心地ついてソファーに座った。

 

「おたからかあ……」

「ここでゲットすれば、きっとゆうめいになって依頼も倍増ですよ」

「そうだねえ。がんばろうセンちゃん」

「アルマーさんもですよ!」

 

 ふふふ……と笑いあって、〈じむしょ〉は店じまいになった。

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