なに、魔剣を創る力だって!?   作:髪滅具《脱色剤》の担い手

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 『情報屋』から()()の話を聞いたのは、36時間前。人間界にいる”面白い奴”の話題になったのが切っ掛けだった。

 僕は『霊獣王レギオン』の名を挙げたが、彼はもっと興味深いモノを教えてくれた。

 

 「知ってるかい、『魔剣創造(ソードバース)』の担い手を。」

 「ソードバース? ・・・いや、なんだい、それは。」

 「自称悪魔の奴らや人間の持ってる神器の一つさ。神器については、知ってるよな?」

 

 彼の確認には首肯で答えた。

 いいから早く内容を教えろ、素晴らしい能力じゃないか。名前的には。

 

 「名前だけでも分かるだろ? 魔剣を作り出す能力・・・だと、思う。」

 「思う? ・・・魔界随一の情報屋らしくない、曖昧な言葉だな?」

 

 彼は自称悪魔に関わるのを嫌っていた。

 魔界においても、悪魔には謎が多い。だが、忌み嫌われているというよりは、よく分からない神秘的な存在として、或いは不確定な上位者として扱われている。

 自称悪魔は、それとは全く異なる、いわば「悪魔と名乗る生物」である。

 

 「あぁ・・・そこで依頼なんだが、アンタにこの『魔剣創造』を調べてきてほしい。可能なら、その奪取も。」

 「依頼、依頼ねぇ? ・・・報酬は?」

 「オレが欲しいのは『魔剣創造』の情報だ。奪った現物でどうだ? 金には興味がないだろう?」

 「そうだな。・・・今まで通り、新魔剣の情報が手に入ったら真っ先に僕に流してくれ。この待遇の継続と『魔剣創造』の現物、これで手を打とう。」

 「実質タダだぜ、魔王陛下。」

 

 へらっと笑った情報屋が、その場で地面に潜るように姿を消した。

 僕の立場でそう易々と人間界に行ける訳もないが、幸い魔界の情勢は安定しているし、統治領の治安維持は完璧だ。

 

 「さて、行くか。」

 

 魔剣を作り出す力。それが本当に実在するのなら、素晴らしい。是非ともわが手中に収めたいものだ。

 

 強欲であれ。そして欲望には忠実であれ。道を阻むものは、力尽くで排除しろ。

 

 魔王の先輩に説かれた、魔王としての心構えである。

 

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

 

 境界を切り裂き、僕は人間界に足を踏み入れた。

 鎌の一振りで出来る至極簡単なコトだが、一応、世界の禁忌とやらに抵触するらしく、これをやると他の魔王にめちゃめちゃ怒られる。が、人間界(こちら)にいる限り彼らも手出し口出しは出来ない。へっへー雑魚め。悔しかったら世界超えてみろってんだ。

 

 きょろきょろと辺りを見回して現状を確認する。

 公園のようなところらしく、滑り台やブランコが目に入った。普通の公園と違うのは、泥人形やキノイタがないことだ。それに遮断用の結界が薄すぎる。これでは子供がBランクの魔剣を振り回しただけで周囲に被害が出てしまう。もしかすると、既に廃棄された公園なのだろうか。確かに億越えのダメージをも算出できる超級の的である泥人形や、世界を壊す攻撃をも受け止めるキノイタは重要な資源だ。誰も使わない公園から撤去されるのも当然と言える。

 

 「なっ、人ですって!? 一体どうやって・・・!!」

 

 それはさておき、とにかく神器を探そう。世界は広い。探せば廃公園の100や200、珍しくもないものだろう。それより神器だ。魔剣だ。

 

 僕は魔剣使い秘奥108手が1番、魔力感知を発動させた。

 ・・・反応なし。だが考えてみれば、『魔剣創造』という名前だけあって、ブキダスさんのような機械なのかもしれない。いや、その説が有力だ。魔剣レベルの魔力を探す魔力感知ではどう考えても網目が大きすぎる。

 そもそも魔力を発しているかすら怪しい。

 

 「ま、まぁいいわ。先にお前から死になさい────!!」

 

 だがそうなると、探す手段が相当限られる。神器というからには神性を帯びているだろうから、神様絶対殺すウーマンであるロンギヌスやばよのを出しておけば見つけやすいだろう。

 

 「な、なんで、私の槍が・・・!?」

 

 ・・・ところでアルギュロスさんや、なんでさっきから顕現してるの?

 

 『あなたを守るためよ。もう一つ視る次元を下げたら分かるわ。』

 

 言われるままにすると、魔力の流れや自分が保有する魔剣たちとの絆といった高次に位置するものが視界から消え、三次元に属するものが視界に映る。

 

 「・・・?」

 

 すると、なんということでしょう。必死の形相で僕に槍を投げつける女性の姿が!!

 ・・・が、悉く水銀の盾に防がれていて、切っ先が僕に届いたものは一本もない。保険のつもりなのか体を覆う水銀の鎧は、流石に大げさではなかろうか。

 

 『確かに、当たってもあなたは死なない。あの程度の魔力では、傷もつかないでしょうね。』

 

 うん。多分。

 というかあの女の人、羽生えてるね。

 

 『・・・天使?』

 

 いやいや、そんなワケないでしょ。あの潔癖狂信集団が地に足付けて槍投げるとか有り得ない。よしんばやるとしても、裁きの炎で地上を浄化してからだ。そもそもなんで天使が僕に喧嘩を売ってくるんだ。神を殺されたいってわけでもなかろうに。

 

 ま、それはいいでしょ。アルギュロス、あの槍じゃ君が出るのはコスパが悪すぎる。戻っていいよ。

 

 『・・・だめ。』

 「ダメ!? ・・・どうして?」

 

 僕の魔剣が、僕に逆らうとは珍し・・・くはないな。非常に不本意ながら。

 けどアルギュロスが逆らうのは珍しいね。なんで?

 

 『アレはあなたに害意を向けた。・・・あなたに害成すものなら、私が殲滅する。』

 

 さいで。いいよ、好きにすれば。

 

 『ありがとう、マスター。あなたにもしものことがあれば、あの子が悲しむもの。・・・もちろん、私もだけれど。』

 

 水銀で織られた大剣が、槍が、斧が、長剣が。一斉にその先端を女性へと向け────空気を切り裂いて射出された。

 

 総四つの致命傷が

 

 「やめろおぉぉぉッ!!」

 

 間に割り込んだ少年に齎された。

 

 




 次回は某少年視点で同じ時間を見る予定です。
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