なに、魔剣を創る力だって!? 作:髪滅具《脱色剤》の担い手
手の中で柄を90度回転させた剣を、目を瞠ってそれを凝視するお姉さんたちに向ける。安心せぇ、峰打ちじゃ。
「なんなの、その剣は・・・!?」
警戒した様子で魔力を集中させ始めた二人。だが残念ながら、ノートゥングに対して『警戒』という行為は無意味だ。彼女にはアルギュロスのような遠距離攻撃も、ルナのような特殊能力もない。切れ味だって、『触れれば斬れる』といった程度のかわいいもの。触れる前から斬ったことになっていたり、光まで切ってて黒い線が見えたりはしない。
「聖剣の類でしょうか・・・?」
・・・ふむ。初見の推理としては悪くない。ただ、見る者全てに根源的で直接的な恐怖を植え付ける”暴虐の魔剣”を前に『聖剣』を挙げるか。さてはカルマ値マイナスだなオメー。悪魔か? 魔人か? アンデッドか?
「さっき『魔剣使い』って名乗ったはずだけど・・・まぁいいや。なんで攻撃してくるのか、最期にそれを教えてくれないかな?」
「何を今更。私の領地を荒らしておいて、その上領民を半殺しにして、まだ白を切るの?」
領地を荒らした覚えも領民を半殺しにした覚えもねぇよ。つか誰だよ。・・・いやさっき名乗ろうとしたところを思いっきり不意討ってたわ。ごめんね!
「まぁ落ち着こう、こちらに敵対の意思はない。」
自分で言ってて面白くなってきた。
とはいえ、明らかにそっちを鏖殺可能な武器を持ってるのに即座に実行しない辺りから友好的なオーラを感じ取ってほしいです、はい。
「天界勢力の尖兵? 休戦を破るつもり!?」
「は?」
誰が天界の尖兵じゃボケぶっ殺すぞ。 そんな感じの意図を込めて威圧────もとい、魔力を放つ。いや武人じゃないんで、殺気とか放てないんで。
魔界の住人に天界の尖兵呼ばわりはマジであかんて。普段は温厚な世界図書館のメイドもこれには半ギレで所持魔剣の半数をLP半損させてくるレベル。というか、四大天使のうち三人をぶち殺して神の喉に刃を突き立てたこの僕を、天界の尖兵て。草生えますよ。
「オーケィ。戦争をお望みか。」
ダインスレイフも抜こうかと思案する。ラグナロクの始まりじゃ・・・最終戦争じゃ・・・。
『マスター、目的を忘れてるよ?』
そうだった。『魔剣創造』を見つける必要がある以上、世界を滅ぼすわけにはいかん。
『ここは穏便に、この二人を殺して終わりにしよ?』
「そうだね。・・・あぁ、お姉さんたち、『
魔術の心得はあるようだし、一応聞いてこう。そんな感じで聞いただけなのだが、仮面じみた微笑を被っている黒髪の爆乳おねーさんはともかく、赤髪の方が微かに眉根を寄せたのが見てとれた。
「・・・いえ、存じ上げませんわ。」
「はぐらかすにしても、もう少しマシな話題を出したらどうかしら?」
「・・・さいで。」
戦闘は不可避、か。
盾にでも使おうかとさっきの少年の死体を目で探し────舌打ちを漏らす。
「三人目か。全く気付かなかった。」
忽然と消えた死体と、地面にべったりと残る血痕。死体の回収くらいなら、気配を漏らさずにできる奴が敵にいるってことだ。攻撃されて気づけないほど愚鈍ではないつもりだが、警戒が足りなかった。というか。
「遊び過ぎたね、ライブラ。」
『わ、私のせいですか!?』
相手がアサシンを使ってくるなら、こちらも不殺を掲げる必要はない。まぁそんな信念掲げたことないけど。むしろ見敵必殺が信条まである。
「・・・名乗りなさい、魔剣使い。」
「名乗るほどの者では・・・ま、待って待って、オーケィ、名乗るよ。僕は────クリスナ。姓は持ってない。」
戦えばまず勝てる。・・・正直言って戦いにならない自信がある。一方的な虐殺も、手加減モリモリの蹂躙も、おちょくり100%のお稽古も、なんだってできる。そのくらい戦力差は開いている。・・・だけど、明らかに『魔剣創造』の事を知っている風な現地民だ。ボコボコにしてから拷問するより、友好的に接して情報をもらう方が賢い・・・はず。
だから名乗った。 え? 勿論偽名ですが? ジークフリートと迷ったが、知り合いに似たような名前の奴がいたのでこっちにした。
「・・・そう。あくまで、正体を明かす気はないのね。」
アハハハ・・・バレテーラ。
おかしいなぁ・・・魔界の伝承から取った名前だから、人間には露見しないと思ったんだけど。
「やだな、本名だよ。とにかく落ち着こう、手を下ろして、そう、魔法をキャンセルするんだ・・・そう・・・ゆっくりと・・・」
駄目みたいですね(諦観)
両掌を下に向けて「落ち着け」と示してみるが、お姉さんズの魔力は高まっていくばかり。・・・ボコボコにしてからアスカロンなり龍の髭なりに拷問させて吐かせるか?
「雷よ!」
僕が諦観を溜息にして吐き出した瞬間、黒髪の方のお姉さんが動いた。
右手で照準された稲妻が、僕の眉間を目掛けて飛翔する。その速度は文字通り迅雷。回避も防御も不能。・・・ではあるが、流石にノートゥングも出てきたばかりで即交代はかわいそうだし、防いでおこう。
逆袈裟に雷撃を切り払うと、その隙を突くように赤い魔力が飛んでくる。触れれば消滅する、脅威度の高い魔力────だと思うのだが、ノートゥング的にはどう?
『・・・アレで消えるのはー、ランクC魔剣くらいじゃないかなー?』
「さいで。・・・え? Cランク?」
ちょっと過大評価が過ぎたか。じゃあ普通に斬っていいな。
逆袈裟に振り上げていた剣を返し、そのまま振り下ろして赤い魔力を吹き散らす。衝撃で硬直したらしい二人は、13回は殺せるくらいに隙だらけだった。が、それを阻もうとする者が居る。
「君が例のアサシンちゃんかい!?」
「何のことでしょうか?」
踏み込もうとした足に鋭いローキックが打ち込まれる。跳躍して回避するが、暗殺者ちゃん(仮)は小柄な少女だった。小回りの利く相手に大げさな回避という下策。ちょっと舐めすぎたと反省しつつ、足を揃えて繰り出されたドロップキックをノートゥングで受けた。
強烈な衝撃が腕を震わせる。何度か地面を蹴って勢いを殺しつつ、8メートルほど吹き飛んで止まった。
「近接格闘かぁ・・・大剣は向いてないんだけど、まだ被弾してないし。」
暗殺者ちゃん(仮)は、無手だった。手にはプロテクターを付けているが、スカウトっぽくはない。完全な保護用・・・競技にだって使えそうな感じだ。
「部長、木場君から連絡が。例の男の子が意識を取り戻したと。」
「・・・そう。朱乃、一旦引くわよ。子猫。」
「・・・はい、部長。」
ホラホラ掛かって来いよ3対1だぞォ? おぉん?
そんな感じのなるべく不遜な顔で中指を立てて挑発していたが、どうやらレディースはお帰りになるらしい。紳士として送り届けたい所存ではあるが、とにかく情報を吐かせるのが先だ。足の二本くらいは全員置いてけ。あと情報もな。最悪首から上だけあれば魔典ちゃんたちが何とかしてくれる。
「・・・次にまた私の領内で暴れたら、容赦しないわ。」
・・・おぉ、領主っぽいセリフだ。僕も魔王時代にそういうカッコイイこと言っときゃ良かった。やっぱ見敵必殺はやりすぎだったよな、うん。・・・せやろか? あれはあれで・・・まぁいい。
「じゃあ、なんかあったらなんかして呼びますね!」
どっからどこが領地なのかは知らんが。都市一個くらいならイデア一発で十分どころか余波で大陸一個滅びかねないくらいだし。まぁ大丈夫っしょ。