なに、魔剣を創る力だって!? 作:髪滅具《脱色剤》の担い手
という訳で追いついたら後は普通に続き書きます。たぶんあと一話で追い付く。
・・・これはいいから他の続きを書けとそろそろ言われそうで戦々恐々としています。やめてね。
少年が伸ばした右腕から、リアス・グレモリーとその
「あぁ、とても綺麗だ。だから君が好きだよ、ノートゥング。」
うっとりと。恋人に囁く睦言のように呟き、少年は剣に甘い笑顔を向けた。
「なんなの、その剣は・・・?」
リアスは知らず独白する。
背筋を駆け上がる恐怖と嫌悪感────
逃げろ。そう叫ぶ脳に抗って、目はしっかりと『敵』を見据える。
逃げろ。そう叫ぶ足に抗って、腕に魔力を集める。
まだ戦える。あの程度のプレッシャーで屈するほど、
そう心中で叫び、歯を食いしばり、戦意を高めて。
「聖剣の類、でしょうか・・・?」
その思考の空隙に、同じく穴だらけの推理が流れ込む。
(悪魔に特攻をもつ聖剣・・・そう、それでこんなに・・・)
「さっき『魔剣使い』って名乗ったはずだけど・・・まぁいいか。どうして攻撃してくるのか、最期にそれを教えてくれないかな?」
最期。それが自分たちのそれを指していると、悪魔たちは感じ取っていた。魔剣だか聖剣だか知らないが、あれだけのプレッシャーだ。死ねるだろう。確実に。
けれど。
「何を今更。私の領地を荒らして、領民を半殺しにしておいて、白を切るの!?」
それは、膝を屈する理由にはならない。領主の責務を放棄する理由にはならない。
リアスが叫ぶと、少年は微かに苦笑した。神経を逆なでされたリアスが青筋を浮かべかけるが、その前に少年が諸手を挙げる。
「まぁ落ち着こう。こちらに敵対の意思はない。」
笑いをこらえているのか、少年の口元はヒクついている。完全に油断しているし、今なら、と思わないわけでもない。だが、手にした大剣の脅威は今も残っている。というか、そんなヤバげなものを持ったまま「敵意はない」と言われても信じられない。
隙を窺いつつ、正体不明の相手を観察していたリアスは、ふと天啓────悪魔でもそう言うのかは知らないが────を得た。
悪魔に特攻の入りそうな武器。神威を纏った白銀の大剣という特徴に合致する聖剣は知らないが、7本あるというエクスカリバー辺りだろうか。そんなものを振り回せる相手など、一陣営しか知らない。
「天界の尖兵?」
・・・だが、天使・悪魔・堕天使の三陣営は今のところ休戦状態だ。先の大戦の傷は、今もなお癒え切ってはいないのだから。
「休戦を、破るつもり・・・!?」
リアスがそう呟いた瞬間、少年の殺気が膨れ上がる。・・・いや、リアスたちが感じ取った殺気は、少年一人分ではなかった。100や200では利かない、群衆を相手取っているような圧力。無数の威圧が少年の内側から漏れ出し、空気を震わせている。
駄目だ。
絶対に、「それ」を顕出させてはならない。
「それ」の正体に見当もつかないまま、リアスたちは無数の気配のうちの一つ、最も顕著なものを恐れていた。
「オーケィ。戦争をお望みか。」
少年が前髪を掻き上げながら、頬を強張らせて言う。
高まりゆく魔力が空気を震わせ、砂を巻き上げ、雲を裂く。リアスが一歩下がり、朱乃が咄嗟に魔法を展開した時だった。
ふと、少年の纏う殺気が霧散する。へらっとした笑顔を張り付けて、彼は穏やかに声を上げた。
「そうだね。・・・あぁ、お姉さんたち、『魔剣創造』という言葉か、或いは装置について心当たりは?」
咄嗟に顔をこわばらせたリアスを、誰が責められようか。正体不明・戦力不明、その上明らかに強者の、胡散臭い少年が、何の前触れもなく自分の配下に触れたのだから。
意表を突いて隙を作る。そういう戦法なら、大成功だ。
だが、そんなものは所詮小手先の────弱者の技術だ。見るだけで恐怖を植え付けてくるような『魔剣』を持っているような相手が、そんなことをする理由は一つだけ。
本当に、それが知りたいのだろう。
「いえ、存じ上げませんわ。」
「はぐらかすにしても、もう少しマシな話題を出したらどうかしら?」
「・・・さいで。」
だが、リアスは彼の────神器『魔剣創造』を所有する木場祐斗の主だ。
わが身可愛さに配下を売るほど、彼女は小物ではない。
少なくとも志は。
「・・・三人目か。気付かなかった。遊び過ぎたね、ライブラ。」
かなり前に子猫が回収した、後輩の死体があった場所を見て困惑する少年。
少しだけペースの乱れたその空隙に、リアスは滑り込む。
「名乗りなさい、魔剣使い。」
恐れるな。それは伝わる。
震えるな。それは伝わる。
逃げれば背中を切られるだろう。向かえば腹を裂かれるだろう。傅けば首を落とされるだろう。ついでにプライドもへし折られる。
御免だ、どれも。
剣を交える必要はない。
剣を交えれば、どちらかは必ず死ぬだろう。この場合の「どちらか」とは、リアス本人か、或いは朱乃か、だ。
この場は下がる。
そして、伝えるのだ。このエリアにいる同胞に、友人たるソーナ・シトリーに。そして兄に。魔王サーゼクス・ルシファーに。
「名乗るほどの者では・・・ま、待って待って、オーケィ、名乗るよ。僕は────クリスナ。姓は持ってない。」
また『魔界伝承』の引用だった。情報を明かす気はないということか。
強者なら強者らしく、弱者が掬いやすいように足を揚げておけというのに。
「そう。あくまで名乗る気はないのね。」
魔力を掌に集めて、狙いをつける。先ほどの水銀の盾は見当たらない。
当てれば消せる。問題は、当たるかどうか。
「やだな、本名だよ。とにかく落ち着こう、手を下ろして、そう、魔法をキャンセルするんだ・・・そう・・・ゆっくりと・・・」
どう見てもポーズの静止は無視して、出来る限り魔力を込めていく。一撃外せば、おそらくもう次はない。
狙うは、少年が気を抜いた一瞬。溜息でも、まばたきでもいい。とにかく、何かしら────
「雷よ!!」
溜息。
肺から息を吐ききったその瞬間に、朱乃が仕掛けた。
大気を焼きながら疾走する雷撃は、回避も防御も不能。万一に備えてリアスも魔力を開放しておくが、朱乃の一撃で十分だろう。
そう思わせる攻撃だった。
だが、その矛先は届かない。
袈裟斬りに雷撃を。逆袈裟に滅びの魔力を切り裂いて、少年は苦笑した。
まるで、じゃれつく子供に向けるように。