厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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アニメのウマ娘を見始めました。
なんか普通に良きアニメな感じがするぜ。


サブタイの訳は「根回しをする」です。
いよいよヘイムダルによる、世界秩序維持組織足り得る為の基盤を作る為の暗躍が始まります。
……こう書くとメッチャ回りくどいな。


#97 lay the Groundwork

 ヘイムダルは現在、オセアニア連邦国によって庇護されている。

 何故オセアニアがヘイムダルに協力するかと言うと、月での決戦で愛機を失ったオセアニア連邦国軍モビルスーツ部隊の隊長、アイトル・ウォーレンがヘイムダルに回収されていたコトと、もう一つ――オセアニアの機密たる破壊兵器「マサライ・ペレアイホヌア」のコトが関わっている。ヘイムダルはかつて、宇宙に放置されていた本兵器の廃棄に協力したが、それ以前に兵器のデータはモビルアーマーに奪われて「四大天使」ウリエルの兵装に利用された。

 オセアニアの杜撰な管理体制がMAにつけいられたと他国に知られれば、オセアニアが糾弾されるコトは免れない。そしてそれは、兵器の開発を委託されたディヤウス・カイエルが創設したヘイムダルにも飛び火する可能性がある。言わば、オセアニアとヘイムダルは秘密を共有する「共犯関係」なのだ。オセアニアが「四大天使」ガブリエル討伐作戦の直後、指導者アグニカ・カイエルの死亡により組織力を失ったヘイムダルに対し、自国領域内での保護を決定したのにはそういう事情がある。

 また、オセアニアは作戦後、ヘイムダルが担う役割の中でも特に重要なLCSレーザー通信網「アリアドネ」の管理も秘密裏に支援し、代わりに他国より優先的な使用権を得ている。オセアニアは他国よりも、ヘイムダルとの繋がりが深い国と言える。

 

「お久しぶりです、ウォーレン大佐」

 

 そんなオセアニア連邦国領域内、オーストラリア大陸湾岸の都市「トリントン」――そこに隣接する軍の基地に赴任した、渦中の人物の一人であり、かつて「ガンダム・ウヴァル」のパイロットだったアイトル・ウォーレン。

 彼の下に、ドワーム・エリオンが訪れた。

 

「ああ。今は分不相応にも准将に昇進したがな。

 ――貴様がわざわざ俺の下を訪れるとは、一体何の用件だ?」

 

 場所は執務室。机の前に座るアイトルの背後には副官たるフィファ・ヴォイット大佐が控えており、ドワームは机を挟んでアイトルの正面に立つ。

 部屋の明かりは点けられておらず、光源はアイトルの背後の大窓から射し込む太陽光のみ。不気味さすらある光景だが、話の内容もその雰囲気に合致するモノである。

 

「我々には、戦争を終わらせる使命が有ります。アグニカ・カイエルは、かつてミカエル戦の直前、そう世界に宣言した。ガブリエルを討ち果たしてもなお、世界に戦火は広がり続けている――我々はこれから、それらを吹き消して戦争を終わらせるとともに、十国体制に代わる新しい世界体制を構築する」

「―――どうやって?」

簡単(シンプル)な話です。我々のみが戦力を保有する組織となり、戦火と戦いの火種となり得るモノを武力を以てねじ伏せ続ける」

 

 な、と驚きを表すフィファを尻目に、アイトルはドワームの目を見据え、続きを促す。

 

「それを俺たちに言って、どうするつもりだ?」

 

 知らせるだけが目的なら、わざわざ訪ねてくる必要も無い。世界に向けてそう宣言すれば済む。

 ガンダム・フレームのパイロットであるドワーム自らが足を運んできたのは、間違いなく他に目的が存在している。

 

「我々はこれから、オセアニアの総督を説得し、国が持つ全ての戦力を差し出すよう求めます。国内で発生している独立運動や民族運動、その全てを鎮圧するコトを条件にして」

「……確かに、我が軍はそうした運動を抑えきれていない。貴様らがガンダム・フレームを以て鎮圧に協力してくれるなら、それも成し得るだろうが――だからといって、国が軍を手放せる訳が無い」

「はい。故に、ご協力頂きたいのです。我々に同調して頂き、軍が主体となって我々の傘下に加わるよう、動いてもらいたい」

 

 ガブリエル討伐作戦において最前線で戦い、生還したアイトルは、軍内でも支持を得ている。上層部に働きかけ、最悪クーデターでも起こせば、ヘイムダルとともに戦った軍人たちは、その多くがアイトルに賛同するだろう。

 

(随分とメチャクチャな提案だな――いや、ブラッグ司令とて、自国民を蹂躙して武力で抑え付ける政府の方針には疑問を抱いていた。それが国への不信感に繋がるとなれば、司令の協力も仰げるか?)

 

 反抗勢力とはいえ、自国民に銃を向けるコトに反発する軍人は決して少なくない。それらも含めるとすれば、クーデターが成功する公算は大きい。

 ――十国の一つだった大国が、そこまで不安定な状況に陥ってしまっているというコト自体、懸念し危惧すべきコトだが。

 

「我々は、この長きに渡る戦争を終わらせねばなりません。人類同士で相争って多くの命が失われるとなれば――我々は一体、何の為にMAを撃破したのか分からない」

 

 ドワームと目線を向き合わせるアイトル。

 フィファは腰を曲げてアイトルの耳元に顔を近づけ、小さく「どうするのですか?」と不安げに問うて来た。アイトルは息を長く吐き、目を伏せる。

 

「……俺は軍人だ。国を裏切るコトは出来ん。

 だが――戦争はもう懲り懲りってのには同意するし、命令を受けて自国民相手に銃を向けるコトが、果たして本当に国の為なのかと考えるコトは有る」

「ッ、大……准将! それは―――!」

 

 右手を肘から持ち上げて背後の副官を制止し、アイトルは続ける。

 

「ナーゲン総督に話を通すんだろう? まずはそれをやってから出直して来い」

「――分かりました。総督には近日中にでも、コンタクトを取るつもりでしたから」

 

 それでは、と告げ、ドワームは部屋を後にした。アイトルは椅子に深々と身体を預け直し、天井を見上げて再び長く息を吐いた。

 

「―――フィー。秘匿回線でブラッグ司令に繋げ」

「……まさか、彼らに協力を?」

「何のコトだ? ヘイムダルが良からぬコトを企んでいるんだぞ。それを向こうからわざわざ漏らしてくれたのだから、司令との情報共有を行った上で、対応について協議するだけに過ぎん」

 

 命令を受けたフィファは、遂行の為に机に固定された通信機を操作し始める。アイトルは机に頬杖をつき、音になるかならないかというごく僅かな声量で、一言呟いた。

 

「思ったより、長い付き合いになりそうだ」

 

 

   ◇

 

 

 旧アラビア王国地方都市、アブダビ。

 現在は隣国サンスクリット連邦共和国に制圧されており、実効支配が行われている。

 派遣軍の司令官を任されたイシュメル・ナディラ大将は、都市周辺に設営された軍キャンプに立つ愛機「ガンダム・グレモリー」の足下で一人、端末を見ながら思慮に耽っていた。

 

(待機命令が出て一週間、か。本国の状況が収まるまでは動けんだろうな……)

 

 サンスクリットの国内は現在、独立運動や民族運動の活発化により荒れている。もっとも、それはどこの国も同じであり、サンスクリットはアラビアの内乱に付け込んで領域を拡大させている訳なので、自業自得と言えばその通りではあるが。

 派遣軍に今や数少ないガンダム・フレームの一機と、軍の最大戦力であるイシュメル率いるMS部隊を投入した為か、国内の反乱分子を抑えきれていない様子だ。反乱分子はモビルワーカーを持ち出し、軍のMW(モビルワーカー)隊に対抗しているらしい。MSが有ればMWなど容易く制圧出来るが、当のMS隊が国の命令を受けて他国へ派遣されているのでは、そうも行かない。

 

(……今頃、メヘラ参謀長は頭を抱えているのだろうな)

 

 国内の反乱分子を抑えきれていないコトは治安の悪化に繋がり、独裁を敷いてきた現政権の支持率は急落している。テロや反乱の本格化も時間の問題だろう。そして、国にそれを抑える力はもう無い。

 

「今一度、お目にかかりたいと思っていました。

 ――イシュメル・ナディラ中将」

「!」

 

 唐突に声をかけられ、イシュメルは端末の画面を見ていた顔を上げるとともに、懐に手を突っ込んで拳銃を握る。イシュメルの視界の中に、声をかけてきたと思われる人物はいない。いるとすれば背後、だろうか。

 しかし、周囲を警戒すると同時に――イシュメルには一つ、引っかかったコトが有った。それは、相手がイシュメルのコトを、()()と呼んだコトだ。ガブリエル戦の功績を讃えられ、大将に昇進したコトを、この相手は知らないのである。

 

「何者だ」

「アスモデウス――と言えば、お分かりになられるでしょうか」

「……ヘイムダルの、か」

「ええ。旧グレイシャー暗礁宙域と、ガブリエル戦の際には世話になりました」

 

 相手の素性が分かったところで、イシュメルはある程度警戒を緩めた。しかし、まだ拳銃からは手を放さず、姿を見せない「ガンダム・アスモデウス」のパイロット、フェンリス・ファリドに尋ねる。

 

「今更、私に何の用だ。ヘイムダルは使命を果たし終えているハズだろう」

「いいえ。我々はまだ、その任を全うしてはいません。アグニカの宣言は、戦争の終結を謳った――されど、世界には未だ、戦乱が巻き起こっている。

 我々は戦争を終結させ、平和と言う名の秩序を維持していく為に、十国に代わる新たなる戦後体制を形成する必要が有ると考えております。その為に、力をお貸し頂きたい」

 

 十国体制の今後の維持は困難、という点には、イシュメルも同意する。一国が倒れ、他国も経済状況の悪化、独立運動や民族運動の活発化による内乱を抱え、最早改元時の頃のような力は無い。

 

「戦後体制において、戦力を保持する者は我々のみで良い。我々は世界の警察となり、世界体制を脅かす者たちを粛清する。その実現の為に、各国には全ての戦力を、我々に差し出して頂かねばならない。

 ナディラ中将においては、サンスクリットがそうなるよう、内側から働きかけてほしいのです」

「―――!!」

「我々は近く、世界に向けて我々の意思を発信する用意が有ります。逆らうならば、その全てを武力で叩き潰す――そうするだけの力も、我々は既に有している。ガンダム・フレームという名の、絶対的な力を」

 

 イシュメルは驚愕すると同時に震撼し、思わず息を呑んだ。確かに、フェンリス達が保有するガンダム・フレームの力が有れば、実現は可能である。

 これはお願い、などというモノではなく――脅迫に近いモノだ。イシュメルが首を横に振ったなら、彼らは言葉通り武力を以て、サンスクリットという国を叩き潰して従属させるのだろう。

 

「――この世界を、支配しようと言うのか?」

「いいえ。我々は戦後体制において、どの勢力からも独立した組織となる。戦争をする力を奪い取り、抱え込む。秩序を乱す者にのみ、その武力を振るうコトで、世界の安寧を維持する役割を担う。

 アグニカ・カイエルと、その魂が宿るMS『ガンダム・バエル』の名の下に、平和を実現させる。平和の為に死んで行った者たちの意志と犠牲を無碍にしない為に、この長ったらしい戦いを終わらせる。それが、我々の成すべき使命です」

 

 それでは、と言い残し、フェンリスは去った。

 イシュメルは息を吐きつつ、懐の拳銃から手を放すと、漆黒の愛機が持つ片刃の折れたバトルアンカーに視線をやる。

 

(―――戦争を終わらせる為に、か)

 

 多くの部下を死なせて来た。MAがいなくなってもなお、戦いは終わらず、多くのモノが奪われた。奪いもして来た。

 奪い奪われる、憎しみと哀しみの連鎖――それを断ち切る為には、自国の未来の為にはどうするべきか。イシュメルは考えながら、自然と手元の端末の画面を叩いていた。

 

 

   ◇

 

 

 中華連盟共和国――多くの民族を抱えるこの国でも、やはり国内での民族運動や独立運動が活発になっていた。

 ガブリエル討伐作戦において、中連は旗艦を撃沈させられ、軍の実質的なトップだった潘浩然(パン・ハオラン)参謀総長を始めとする高官の多くが戦死した。それにより軍の指揮系統が混乱し、戦力自体もガブリエル戦で消耗していた為、即応性と抑止力が失われたコトにより、軍は国内の混乱を鎮圧出来ずにいる。

 

「中将、ヘイムダルからのQCCS通信が入っております」

「……ヘイムダル、だと?」

 

 そんな中、中連国内の地方都市「マカオ」近郊の基地で反乱分子鎮圧の指揮を執っていた、中連軍所属にして「ガンダム・フォルネウス」のパイロットとMS機甲師団団長を務める李子轩(リ・ズーシュエン)中将の下に、秘匿通信が届いた。

 怪訝に思いつつ、子轩(ズーシュエン)が部下に回線を開くよう言うと、彼の執務机に置かれた端末の画面が点き、人の顔が映し出された。

 

『ガブリエル戦以来かしら、李少将』

「――カロム・イシュー。何故、貴女が私に」

 

 通信先にいたのは、腰に赤鞘の日本刀を提げる白髪の女性――ヘイムダルは「ガンダム・パイモン」のパイロット、カロム・イシューである。

 子轩(ズーシュエン)は部下にハンドサインで退室を命じ、自室の扉が閉められたコトを確認してから、カロムに問いを投げる。

 

「それで、何の用件ですか?」

『貴方に、私たちへの協力を仰ぎに来たわ』

「――協力、とは一体何への?」

『終わらない戦争を終わらせ、新しい戦後体制を構築する為に、貴方の協力を得たいのよ』

 

 戦争を? と子轩(ズーシュエン)が問い直し、カロムが頷く。しばし思案した後、子轩(ズーシュエン)はカロムに「新しい戦後体制」について問いかけ、回答を得た。

 

「―――貴方達だけが武装組織となり、秩序を乱す者を武力を以て制圧する、と。その為には、各国の有する戦力を吸収して勢力を拡大し、各国に要求を受け入れさせる必要がある。

 つまり、私に中連軍がヘイムダルの軍門に下るよう、内部から働きかけてほしいと言うコトですか」

『ええ。その代わり、私たちは貴方達の国内の鎮圧に力を貸す。私たちと手を組み、武力を振りかざして働きかければ、余計な血を流すコトも無いでしょう』

 

 ふむ、と子轩(ズーシュエン)は一考し――レンズ越しにカロムの目を見据え、返答した。

 

 

()()

 

 

 と。

 

『……何故? 悪い話ではないハズよ』

「確かに、平和を実現して維持する為には、決して悪い案ではない。私に協力を求めるのも、実に理にかなっている。死んで行った者たちの為にも、平和を望むのは当然、私も同じ想いだ」

 

 なら、とカロムは身体を乗り出して食い下がる。

 しかし、子轩(ズーシュエン)は確固たる意志を持って、こう告げた。

 

「それでも、私は私の国を裏切るコトは無い。

 私の部下たちは皆、この国の軍人として戦い、死んで行った。MAを討ち滅ぼすコトがこの国の、この国に住む大切な者たちのより良い未来に繋がると信じて戦って、散って行ったのだ。

 私の任務(しごと)は、この国がこの国のままで在る為に、命を懸けて国を脅かす者たちと戦うコトだ。それは機械であろうと人間であろうと、変わるコトなど決して有り得ない。私は最後の最後まで、この国の軍人として戦う。世界平和の為とは言え、国に銃を向けるコトなど出来ない」

 

 カロムは数瞬の沈黙の後、背もたれに身体を預け直してから、目を細めて子轩(ズーシュエン)に淡々とこう告げた。

 

『――抗うと言うのなら、戦うコトになるわ。私たちはアグニカの望んだ平和を実現する為、世界秩序の構築の為に、如何なる手段をも辞さない覚悟をした。貴方たちの国が武力を放棄せず、自ら持ち続けると言うのなら、私たちは貴方たちの国を叩き潰さなければならないのよ』

 

 対する子轩(ズーシュエン)も、気後れせずカロムの言葉を受け止めて、なおも断言してみせる。

 

「私の答えは変わらない。他の者たちもそうだ。中連軍の軍人は入隊のその日、政府に従い、この国を守る為に銃を取るコトを誓う。これまでに死んで行ったあまりにも多くの者たちも、その誓いを受け、同意して軍人となった。この国がこの国として在り続ける為にのみ、中連の軍人(わたしたち)は戦う。国に反旗を翻して、ヘイムダルの制服に袖を通すコトは無い。

 叩き潰せるモノなら、叩き潰してみるといい。私たちはそう容易く屈しはしない。この国は――この国こそが、世界の中心に華開く国なのだから」

 

 カロムが顎を引くと、子轩(ズーシュエン)は目を伏せるとともに微笑を浮かべ、緊張を解いた。

 

「だが――いずれ敵対するであろう身とはいえ、君には京都での戦いで世話になった。ガブリエル戦でも共闘した以上、この場での話に限っては、聞かなかったコトにしよう。

 幸い、この部屋には今、私しかいない。話の内容を知るのは、私と貴女だけですからね」

『―――感謝するわ、李少将』

 

 カロムは温情に対する礼の言葉を述べつつ、軽く一礼した。子轩(ズーシュエン)も姿勢を整えながら、微笑を浮かべたまま言う。

 

「しかし、これまた無茶な相談でしたね。加えて、あまりにも不器用で強引な手段だ。その手を人の血で汚すコトをすら躊躇わないとは。

 それは貴女がたが――いえ、我々が必死に破壊して来たMAと、同じ行いではありませんか?」

『……それを分かっての選択(コト)よ。私たちは目的の為に、手段を選ぶつもりは無い。数多の命を奪い、人殺しの汚名を被るコトになるとしても――私はアグニカの望んだ未来を実現させると、そう決めているわ』

 

 子轩(ズーシュエン)の質問にそう断言したカロムだったが、ふっと視線を外し、哀しげに呟いた。

 

 

『そうしないと――私たちは何の為に仲間を、あらゆるモノを犠牲にしてまで戦ったのか、分からなくなるじゃない』

 

 

 そして、カロムは通信を切った。彼女の信念――いや、慟哭とも言えるであろう言葉を聞き届けて、子轩(ズーシュエン)はため息を吐く。

 

「―――アグニカ・カイエルが望んだ未来の為に、か」

 

 子轩(ズーシュエン)の脳裏に、ガブリエル討伐作戦の時の光景が思い浮かぶ。黄金の剣を掲げる、純白の悪魔の背と――ヘイムダルの指導者たる男、アグニカ・カイエルの言葉が。

 彼は「此処を人類最後の戦場にする」と叫び、戦争を終わらせようとあの場の者たちを鼓舞した。それは演説の為の詭弁などでは断じてなく、彼が本心から放った言葉であったコトに間違いは無い。そうでなければ――彼女が、カロム・イシューが、彼の言葉を自らの使命として背負い込むコトもなかっただろう。そして、それはヘイムダルの他の者達も同じに違いない。

 

「お前たちが背負っているのは、英雄の望みなどではない――呪いだよ」

 

 

   ◇

 

 

 一ヶ月以上にも及ぶ、手分けしての各地への根回しを経て、ドワーム・エリオンは組織を代表し、オセアニア連邦国の首都「アデレード」の連邦議会を訪れていた。

 豪奢な軍服を翻し、ソフィア・ナーゲン総督を始めとする議員の集う議場へと、ドワームは足を踏み入れる。

 

「失礼!」

 

 扉を開け放ち、悠々とドワームは議場へと侵入する。議論中だった議員達の目線は一斉にドワームへと向き、突然の乱入者に議員達は叫ぶ。

 

「貴様、何者だ!?」

「本会議中だぞ、退室せよ!」

「どうやってここに来た!? 外は警護され――」

「静粛に!」

 

 議員達を制止したのは、オセアニアの行政府のトップたる女性、ソフィア・ナーゲン総督だ。穏和な彼女が珍しく声を張り上げたからか、その場の議員達はたちまち押し黙り、議場には静寂が訪れた。

 静寂の中、ナーゲン総督は発言場に立ったドワームを見て、口を開く。

 

「貴方、ヘイムダルね」

「お察しの通りです。セブンスターズ第四席、ドワーム・エリオンと申します。突然で申し訳有りませんが、この場での発言の許可を頂きたい」

「議会に勝手に侵入して、そんな勝手が許されるとでも―――!」

「構いません」

 

 議員の言葉をよそに、ナーゲン総督はドワームに発言を許可した。ドワームが礼を言うと、ナーゲン総督は早速本題を切り出した。

 

「それで――我が国に、何を望むのですか?」

 

 質問を受けて、対するドワームもダイレクトに、自らの要求を口にした。

 

「新たな世界秩序の構築の為に、貴国の有する武力の全てを差し出して頂きたく」




Episode.97「lay the Groundwork」をご覧頂き、ありがとうございました。

前回敢えて明かさずに引いたのに、ヘイムダルの新たなる組織名が明かされていないじゃないか……どうなってんだ(オイ)
すみません、次回に必ず明かされますので……。


《今回のまとめ》
・旧知の軍関係者に働きかけ始める
・協力する者もいれば拒否する者もいる
・遂にオセアニアのトップと相対




次回「Gjallarhorn
今夜更新します。
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