厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

19 / 110
関係無いですが、私めの友人が誕生日です。
祝え! 新たな王の誕生を!(ウォズ感)


今回は一旦アグニカ達ヘイムダルから離れ、世界の動向を描きます。
意訳:みんな大好き十国会議
やったぜ!(十国会議は書くの疲れる上、切りどころが難しかったりし、尚且つ読んでる方は割と退屈と言う負の連鎖)
後半は盛り上がる&超重要なので許して下さい。


#13 天使長

 M.U.0043年。

 モビルアーマーの起動から二年近くが経過し、この頃には世界中に配置された通信妨害用MA「シャティエル」によって、有線及びLCSレーザー通信以外の通信手段の一切が無力化されていた。コロニー群、金星、火星との通信手段は一切が消滅。情報共有が不可能となり、それぞれが孤立した状況へと追い込まれた。

 また、マザーMA「ガブリエル」により、MAそのものの数も増加。核戦争に備えてシェルターを完備していた主要都市はともかく、そうでない地域はMAに侵略を受け、住民は悉くが虐殺された。

 これに対し各国は、独自にMAへの対抗戦略を打ち出し、実行に移していた。具体的には、新たなモビルスーツ用インナー・フレームの開発である。

 アメリア合衆国の「アルカナ・フレーム」に続いたのは、中華連盟共和国の「オーガ・フレーム」。(オーガ)の名を冠したMSは、アルカナ・フレームと大差無いほどの生産性を誇りながら性能が向上しており、各国で大量生産された。

 

 M.U.0044年になる頃には、各地でのMS開発は更に活発化した。

 イングランド統合連合国は、汎用性に優れ、コストも抑えられた「ロディ・フレーム」を。アラビア王国は、パイロットの生存性に重点を置いた「ヘキサ・フレーム」を開発した。これらも周辺国に販売され、特にロディ・フレームは圏外圏へも輸出、また生産されるようになった。

 初期であるが故に基本性能が低かったアルカナ・フレーム、オーガ・フレームは、段々このロディ・フレームとヘキサ・フレームに置き換えられて行くようになる。

 

 そんなM.U.0044年も、十月を回った頃。毎年開催が条約によって義務付けられている、各国の首脳が一同に会する「十国会議」が、オセアニア連邦国で開かれる運びとなった。

 MAが跳梁跋扈する現在の世界では、移動には当然リスクが伴う。だが、世界の足並みを揃えてMAに対抗する為に、十国会議の開催は必要だと判断された。

 

 かくして各国の首脳は、MSと艦隊を惜しげもなく動員し、オセアニア連邦国の首都「アデレード」を目指すのだった――

 

 

   ◇

 

 

 M.U.0044年、十月九日。

 オセアニア連邦国の首都「アデレード」に存在する連邦議会の一角に有る大会議室では、十国のトップが顔を並べていた。

 

「危険をかいくぐってまで、このオセアニア連邦国はアデレードの連邦議会へお集まり頂き、誠にありがとうございます。今回の十国会議の進行は、オセアニア連邦国第四十八代総督、ソフィア・ナーゲンが勤めさせて頂きます」

 

 M.U.0042年よりオセアニア連邦国総督を務める、ソフィア・ナーゲンが司会だ。彼女はオセアニア連邦国の歴史上七人目の女性総督で、柔和な笑みを浮かべるおばさまだが、肝が据わった性格である。

 

「うむ。よろしく頼むよ、ソフィア君」

「ああ」

 

 イングランド統合連合国の第七十一代首相チャーリー・デイビスと、サンスクリット連邦共和国の第四十三代大統領アールシュ・パールシーが労う。

 

「挨拶は省こう。今はそんなコトを言っている場合ではない、時間は限られている」

 

 それを、サハラ連邦共和国の第八十三代大統領アブデルカデル・ディアロが遮る。

 

「私もそれには賛成する。今は世界が一体となり、MAに対する策を打ち出して行かねばならない」

 

 アラビア王国の第九代国王ムスタファ・ビン・ナーイフも、ディアロ大統領と同じ考えである。

 

「そう言えば、例の『ヘイムダル』はどうなっているのだ? 各国でのMS用インナー・フレームの開発については、我がアメリアを始めとして順調に進んでいるようだが、当のディヤウス・カイエルは何をしている?」

 

 アメリア合衆国第六十四代大統領ジャック・アダムスの問いには、アフリカン共和国の第三十六代大統領ベンディル・マンディラが返す。

 

「現在、既存のMSを遥かに上回るパワーを持つインナー・フレームを開発中と聞き及んでいる。同時に、新たなMS操縦システムも完成を間近にしていると」

「詳細はまだ明かされていないが――確か、基礎訓練は愚か、文字さえ読めずともMSを自在に操れるようになるシステムだと」

 

 マンディラ大統領の言葉に、ユーラシア連邦の第五十七代大統領アルテョム・ドミートリエヴナ・ユーリエフが補足した。

 

「流石にガセ情報ではないか? 長期化が見込まれるMAとの戦いだ、そんなモノが有るなら即刻採用不可避の夢のシステムだぞ? 有り得んよ」

 

 ラテンアメリア連邦共和国の第三十三代大統領ビセンテ・マラドーナが、そう一蹴する。

 

「いや――ヘイムダルは現状、世界最高の技術を保有している組織だ。決して不可能、とは言い切れないのではないか?」

 

 一方、中華連盟共和国の第六十三代国家主席、王緑仙(ワン・リューシエン)は推測を立てた。

 

「私も同感だ。それ故、ヘイムダルへの資金援助はこれ以降も変わらず続けて行き、場合によっては増額も考えねばなるまい」

「マンディラ大統領。確かにヘイムダルは技術革新を起こすかも知れないが、あの組織は十国から完全に独立している。火星に対してもアクションを起こす可能性は有るコトをお忘れなきよう。

 ヘイムダルへの援助よりも、まずは自国のMS隊、及びMS運用部隊を整える為に金を使うべきではないか?」

 

 ユーラシアのアルテョム大統領の言葉は、確かに的を得ている。MAが世界中に散らばった今では、移動にすら危険を伴う。事実、こうして十国会議を開催する為に、開催国であるオセアニア連邦国のソフィア総督以外の九人は、命懸けで此処まで来た。

 

「エイハブ・ウェーブでモビルプレーンが鉄クズになり、制空権は完全に奪われました。制海権も、水中に対応したMAが確認されれば怪しいモノ。

 MS部隊の働き如何では、制陸権すら奪われかねない――MSの量産、配備は火急の案件ですね」

「宇宙の状況も、楽観視出来ないな。コロニー群との通信は途絶したが、観測結果によれば――エイハブ・リアクターを動力源としたここ数年の新造コロニー以外は、全てが破壊されたと聞いている」

 

 改元前から在った、元々老朽化問題が持ち上がっていたコロニーは愚か、改元後に建造されたコロニーまでもが蹂躙された。現状、残っているコロニーはエイハブ・リアクター発明後に建造された、ナノラミネート加工が施されたコロニーだけだと言う。

 

「ナノラミネートアーマーはビーム兵器に対して高い耐久性を持っている、か」

「然り。同じように都市シェルター外壁も、ナノラミネート加工によってビームに対しての絶対的な防御力を獲得したコトは、前回の会議で確認したコトだろう」

 

 既存の太陽光発電による都市への電力供給は、MAが屋外設置された発電装置を破壊し尽くしたコトによって、不可能となった。

 これに対し人類は、動力源をエイハブ・リアクターにすると共に、都市を覆う核シェルターにナノラミネート塗料を塗布。MAのビーム兵器に対して耐性を得て、完全な籠城の姿勢を取ったのである。この措置により、地球人類の大半が住む主要都市をMAに蹂躙される恐れはほぼ無くなった、と言えるだろう。

 

「かと言って、いつまでも都市に閉じこもり、ガタガタ震えている訳には行かん。MAの技術が進んだなら、いつかこの安寧も破壊される時が来る。今の対抗措置は、あくまでも『一時凌ぎ』だ」

「結局、ヘイムダルの主張通りMAを殲滅するコトが、人類の更なる繁栄には必要と言うコトか…」

「これまで、数億もの人々がMAに殺された。奴らと我々に、共存の道はまず有り得ない。

 やはりその為には、十国がそれぞれMS部隊を増強し、連携して事に当たらねばならんだろう」

 

 何はともあれ、戦力を強化せねば話にならない。月面都市「ヴェルンヘル」――今や「天使の花園(ヘブンズフィア)」と呼ばれるようになった場所で、原初かつ「四大天使」にしてマザーMAたる機体「ガブリエル」は、コンスタントに新たなMAを生み出し続けている。人類(こちら)としても、増産し続けなければ対抗出来ない。

 

「ならば、他国へのMS、艦艇の販売額を下げてもらいたいモノだな。生産はほぼほぼ自動なのだ、削減出来るだろう? 最低でも材料費くらいにしてもらわねば、割に合わん。

 我が国はアメリアやイングランドのように、国費に余裕のある状況ではなくてな」

「ハッ」

 

 ラテンアメリアのマラドーナ大統領の言葉を、アメリアのアダムス大統領は、一笑に付した。

 

「国費に余裕が無いのは、何割かがキミの一派の懐へ消えているからだろう? MAが散布するエイハブ・ウェーブによって情報共有(リーク)が困難になっているとは言え、我がアメリアは唯一、ラテンアメリアと地続きになっている国だ。貴様の良くない噂は、かねがね耳にしているぞ?

 それに貴様は、生産工場の維持費や運搬の手間を考えぬのか?」

「―――スパイでも潜り込ませているのか、アダムス大統領。我が国の利権に関わるコトだ、場合によっては制裁もするぞ?」

 

 火花を散らす二者に対し、一人が手を叩いてそれを制止する。

 

「そんなコトは、この十国会議で語るべきコトではない。MAの脅威が大きくなりつつある今、来年もこのように会議を開催出来るとは限らん。

 ひとまず、この地球上からのMAの排除は最優先事項だ。十国会議を開くにも命を懸けねばならぬ状況は、一刻も早く打開せねばならぬからな。

 火星、金星などの圏外圏については――」

 

 

   ◇

 

 

 十日間に渡る十国会議は、滞り無く終了した。

 次回以降の開催についてはひとまず保留となった(開催国はサハラ連邦共和国と確定している)が、十国は今後も共闘し、MA殲滅を目的とするコトで一致した形となる。

 

 十国会議終了後、MSを運用出来るマンリー級強襲揚陸艦十三隻で構成されたサハラ連邦共和国の艦隊は、インド洋を横断していた。オセアニア連邦国を出立し、本国への帰途についた所である。

 また、衛星軌道上には宇宙艦隊も展開しており、飛行型MAの警戒に当たっている。

 

「ディアロ大統領。会議は如何でしたか?」

「意味は有ったし、収穫も有った。だが――いざこの戦争が終わってからの世界体制は、他ならぬこの戦争の結末…決着に委ねられる。

 その時、一体誰が世界を先導して行くのか――対立の火種が残る結果ではあったな」

 

 サハラ連邦共和国大統領アブデルカデル・ディアロが乗る艦隊旗艦「コルホーン」のブリッジで、艦隊を指揮する司令官の問いに、ディアロ大統領は素直に感想を述べた。

 

「もう戦後のコトを考えているんですか? これからMAに、人類が敗北する可能性も…」

「有るな。だが、それが政治と言うモノだ。課題に取り組んでいる間から、その課題を片付けた後のコトを考える。そうしなければ、やっていられん」

 

 現場指揮官であるキミには、実感が湧かないだろうがね――と、ディアロ大統領がそう続けようとした時。

 

「『タルボット』ブリッジが、エイハブ・ウェーブを探知! 対象は高速移動中、こちらに向かっている可能性が有るとのコト!」

 

 オペレーターの報告で、ブリッジの空気は一気に張り詰めた。艦隊指揮官が、即座に指揮を出す。

 

「総員、第一種警戒配備! MS隊をスタンバらせておけ! 大統領は、艦の中央へお逃げ下さい!」

 

 士官の一人がディアロ大統領をブリッジから追い出すと共に、艦隊全体にアラートが鳴り響く。

 

「エイハブ・ウェーブ、更に増大! 七時の方角、最低十五機です!」

「第一種戦闘配備に切り替えろ! MS隊は出撃、警戒に当たれ! 場合によっては迎撃せよ!」

「MS出ろ、MS隊発進せよ!」

「全砲門、装填し開け! 味方に当てるなよ!」

「全艦、気を引き締めろ! 我が艦隊が現在、アブデルカデル・ディアロ大統領を護送しているコトを忘れるな!」

「敵MA、急速接近中! 水中を移動していると思われます!」

 

 司令官は、思わず舌打ちをする。可能性として考慮はしていたが、これまで水中移動型MAは確認されていなかった。

 しかし――地球上の七割を占める海洋に、MAが進出しない道理など有るハズが無い。むしろ積極的に進出するべきだ。しなければならない、とも言い切れる。

 

「魚雷で対応しろ! 空中からもMAが来るとも限らん、全方位索敵怠るな!」

 

 各艦の両側面に配置されたハッチが開き、次々とMS隊が出撃する。脚部に設置されたエイハブ・スラスターを利用し、ホバークラフトを行って海上を滑るように移動。敵影を探す。

 

「敵は何処だ!?」

「エイハブ・ウェーブの反応はかなり近い。旗艦に攻撃は届かせるなよ!」

 

 出撃したMSはロディ・フレームの「UGY-R38 スピナ・ロディ」「UGY-R45 ガルム・ロディ」、ヘキサ・フレームの「IPP-0032 ジルダ」の三種。どれもバランス良く纏められた、平均的な量産機である。

 この大統領護衛艦隊が有するMSの総数は百機を上回っており、実にサハラ連邦共和国が有するMSの五分の一近くにもなる。

 

「アデン湾に到達すれば、本国からの陸上部隊も合流出来る! それまで我々は、旗艦『コルホーン』を守り抜かねばならない!」

「エイハブ・ウェーブ反応、更に増大! 接触まで三百秒!」

「魚雷、射程に入りました!」

「撃てッ!」

 

 艦艇底部の発射管から、接近する敵に向かって、一斉に魚雷が放たれた。標的は水中を移動するMA群、その中でも速度が優れている機体。

 如何にナノラミネートアーマーで造られた艦艇とは言え、底部に近接攻撃でも仕掛けられれば、たまったモノではない。まずは水中の敵を潰さねばならない。

 

 発射から数十秒後、彼方の海で水飛沫が上がる。魚雷が敵MAと接触し、起爆した証だ。

 

「命中!」

「次弾装填!」

「空中より、MA接近!」

「対空射撃だ、撃ち方始め!」

「攻撃、来ます!」

 

 艦隊の上空から、ミサイルや焼夷弾、ビームに至るまでが降り注ぐ。対空砲によって落とされる物も多いが、それをすり抜けた物達が艦体に直撃し、海に落ちて水柱を発生させる。

 

「『マッキーン』、右舷に被弾!」

「『ウォーターズ』より損害報告!」

「司令、『シュレイ』が損傷甚大です!」

「MS隊、降下してくるMAとの交戦に突入!」

「海中移動中のMA部隊、『ストリンガム』と接触します! MS隊が迎撃を開始しました!」

 

 今日の天気はミサイル及び焼夷弾、またはビーム――なんて予報は無かったハズ、などと思う暇すら無い。ほんの数十分前まで静かだった海域は、一気に混沌を極めている。

 

 彼らは知る由も無いが、この時襲撃して来たMAはサキエル、ガギエル、ラグエル、ラメエル、マルティエルの五種類。数としては五十機近い。

 サキエルは水中での近接攻撃を得意とする、機動力の高い機体。ガギエルは魚雷などを備えた機体で、ラグエルはビーム砲を三百六十度に装備した亀に似た機体。ラメエルとマルティエルは、拡散ビーム砲を持った機体である。

 

 そして、この戦場にはもう二種、MAが現れた。

 

「…!? 『ディカーソン』撃沈!」

「何――!?」

「『デント』撃沈! 左翼艦隊が破られます!」

「大型のMAです! MS三個小隊が、交戦に入りました!」

 

 艦隊旗艦「コルホーン」のブリッジが、戦艦二隻の同時撃沈に阿鼻叫喚とする中で、二十機弱のMSが、一斉にたった二機のMAへと襲いかかる。しかし、それらは――頭部後方に装備されたワイヤーブレードを、機動させた。

 それだけでざっと十機ほどが粉砕させられ、残りはプルーマの群に押し込まれ、MA「サキエル」などによって海中へと沈んで行った。

 

「――MS三個小隊が、壊滅しました…!?」

「…バカな、そんなハズは――!」

 

 疑問符を付けて、オペレーターが司令官へ報告する。当のオペレーター自体が、その状況を飲み込めていなかったのである。

 

 壊滅した。

 MAに対抗すべく造られたMS、その三個小隊が。

 たかだか二機のMAに、粉砕させられたのだ。

 

 其は、「天使長」と称されるMA。

 これまで表に現れていたMA――「天使」とは、一線を画す機体。「四大天使」たるガブリエルの力、その一端を体現する「天使」の「長」。

 

 

 即ち、「天使長」ザドキエルと、「天使長」ハシュマルである。

 

 

「敵MA、接近して来ます…!」

「迎撃しつつ、即座に後退しろ! 大統領が乗っているんだぞ、大統領が! 撃沈など有っては――」

「ダメです、間に合いm」

 

 あまりにも無慈悲な、天使長(ザドキエル)の一閃。

 そのワイヤーブレードが、サハラ連邦共和国艦隊旗艦たるマンリー級強襲揚陸艦「コルホーン」のブリッジを、ただの一撃で消し飛ばしたのだ。

 

「な…!?」

「そんな、旗艦(コルホーン)が!?」

 

 天使長(ハシュマル)の攻撃は続く。

 三十五メートルにも及ぶ機体をおよそ百メートルも飛び上がらせ、ハシュマルはブリッジが消滅したコルホーンにその巨体を叩き付けた。その衝撃は浮力を屈服させ、艦を大きく沈ませる。

 腕部の爪が二連装主砲を潰して爆発させたコトによって、艦は更に揺らぐ。腕部に内蔵された運動エネルギー弾を撃ち出し、艦に大穴を開ける。また爆発が置き、エネルギー弾はただでさえグシャグシャだった艦橋を崩落させた。

 

「な、何が起こっ―――」

 

 艦の中心部にある食堂に避難しており、辛うじて天井の崩落から逃れたアブデルカデル・ディアロ大統領が、ふと頭を上げると。

 

「―――て…………」

 

 あまりにも禍々しく凶悪な存在が、そこには在った。

 ハシュマルはディアロ大統領と言う人間の存在を認識するや否や、頭部のセンサーを光らせ、ビーム砲をゆっくりと露わにしていく。

 

「やらせるな、奴を止m――ぐあっ!」

 

 果敢にハシュマルに飛びかかった機体が、ワイヤーブレードに一蹴される。ハシュマルは、その機体の方を見てすらいない。

 その間にも、露わになったビーム砲の砲口が赤い光を放ち始める。光と熱のエネルギーが一点集束して、今なお撃ち放たれようとしている。そしてそれがディアロ大統領を狙っているコトは、最早語るまでもないだろう。

 

「あ…あ、」

 

 その威容の前に、ディアロ大統領は言葉を忘れていた。腰はすっかり抜け、糞尿を始めとするありとあらゆる体液が垂れ流しにされている。

 そこに、一国の代表たる男の威厳は微塵も無い。人間としての最低限の尊厳すら、ディアロは失っていた。

 

「あ―――?」

 

 直後。

 ハシュマルが放った頭部ビーム砲の光に呑み込まれ、ディアロは塵一つたりとも残さず消滅した。

 

 そしてそれは、今にも沈もうとしていた艦への最後のトドメとしては、充分過ぎる攻撃だった。ディアロが消し飛んだすぐ後に、艦は大爆発を起こし、永遠の海へと散って行ったのである。

 

「チクショォォォォォッ!!!」

「許さねぇ…許さねぇぞ、MAァァァッ!!!」

「うあああああああああああああ!!!」

 

 旗艦「コルホーン」の撃沈。それは、護衛すべきアブデルカデル・ディアロ大統領と、指揮すべき艦隊司令官の死を意味した。

 艦隊は秩序を失い、多くのパイロットが「天使長」たる二機のMAに対して無謀な特攻を行い――その悉くが、戦死するに至った。残存した艦も、MAの集中攻撃に晒され、全てが撃沈させられた。

 

 

 十国が内の一国、サハラ連邦共和国の大統領、アブデルカデル・ディアロの死。

 十三隻にも及ぶ主力艦隊と、総勢百四機ものMS部隊の全滅は、全世界に大きな衝撃をもたらした。

 

 この事件により、M.U.0044年以降の十国会議の開催は、無期限延期が決定。MAと言う存在が如何に巨大で危険な脅威であり、その力がどれほど強大であるか――この一件は、それを世界に改めて示すには充分過ぎるほどだった。

 そして、人類は望むようになる。

 

 「天使長」すら下し得る、絶対の力を。

 この絶望に満ちた世界をひっくり返し得る、英雄を――




第十三話「天使長」をご覧頂き、ありがとうございました。
いやー―― こ れ は ヤ バ い 。
サブタイからして「ただの会議回ではない」と察されたと思いますが、我ながらここまでのコトになるとは思ってませんでした…。
やべぇな、天使長。ザドキエルとハシュマル強い。


《オリジナル設定》
天使長
・MAの「位階」(強さによるランク)の一つ。
・通常のMA(「天使」)よりも強力な武装を持ち、機動力が高い。


《新規キャラクター》
ソフィア・ナーゲン
・オセアニア連邦国の第四十八代総督。
・歴史上七人目の女性総督である。

アルテョム・ドミートリエヴナ・ロマーノフ
・ユーラシア連邦の第五十七代大統領。


《新規機体》
UGY-R38 スピナ・ロディ
・ロディ・フレームのMS。
・原作にも登場。ウルズハントにも出るらしい。

UGY-R45 ガルム・ロディ
・ロディ・フレームのMS。
・原作にも登場。原作では、主に「夜明けの地平線団」が運用していた。

IPP-0032 ジルダ
・ヘキサ・フレームのMS。
・原作にも登場。傭兵部隊で運用されていた。

シャティエル
・エイハブ・ウェーブを広域散布する、通信妨害用MA。

サキエル
・格闘戦にも対応する、水中用MA。

ガギエル
・弾薬を積みまくった、水中用MA。

ラグエル
・亀に似た、全方位にビーム砲を付けた水陸両用MA。

ラメエル
・三枚の翼に拡散ビーム砲を搭載したMA。

マルティエル
・四枚の翼に拡散ビーム砲を搭載したMA。

ザドキエル
・「天使長」と呼ばれる、一ランク上のMA。

ハシュマル
・「天使長」と呼ばれる、一ランク上のMA。
・原作にも登場。その際は、ガンダム・バルバトスルプスによって撃破されている。


《新規艦船》
マンリー級強襲揚陸艦
・海上戦と上陸作戦に対応した、MS母艦。
・艦級、名前はオリジナル設定。原作では地球外縁軌道統制統合艦隊が運用していた。


《今回のまとめ》
・基本方針が一致してる聡明な十国首脳の(おほん)方々
・「天使長」はバカ強い
・十国会議、次回開催時期は不明に(しばらくやらない)




次回「ガンダム・フレーム」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。