厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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もう八月の中旬とかウッソだろお前(驚愕)
更新遅くて申し訳無い――と毎回言ってるせいで、そろそろ謝罪から重さが失われて行っている気がする…。
本当に申し訳無いと思ってます、本当です。

それはそうとして、ここ二日ほど熱中症で床に伏しておりました。
あんまなったコト無かったんですけど、熱中症マジで怖いですね…。
眩暈と立ち眩みと吐き気でマトモに立ってられなくなりました、本当にありがとうございます。
前日よく寝たとか、水飲んでたとか関係無いですね。
どんなに健康に気を付けてても、なる時はなりますよ熱中症。マジで皆様もお気をつけ下さい。
炎天下に三十分出たら、どんだけ対策しててもアウトですわ…死ぬかと思った。


とまあ、注意喚起しておきつつ本編へどうぞ。


#18 使命の仮面

 「ガンダム・バエル」のパイロットたるアグニカ・カイエルと、「ガンダム・アガレス」パイロットのスヴァハ・リンレス。

 幼なじみであり、同じチームでもある二人は今――光の差さない、ロサンゼルスの路地裏を駆けていた。

 

「よし、見えた!」

「速いねあの子、なかなか縮まらない…!」

 

 何故そんなコトになったか、その理由はそう難しくない。二人でロスに遊びに来たところ、スリの子供に財布を盗まれた為、全力追跡しているというだけだ。

 例え子供相手だろうと、盗まれたモノを取り返そうとするのはおかしな話ではない。そして、それが金ならばなおのこと。資本主義社会に於いて、金が無ければ何も出来ない。金が無ければ、帰りのバスやらタクシーやらにも乗れないのである。

 

「…この体力で基地まで帰れば良かったんじゃ」

「スヴァハ。ここから基地への連絡通路まで、一体何キロ有ると思ってんだ…?」

 

 そして、二人はスリをして逃走している子供との距離を詰めつつあった。地の利は向こうに有るが、追いかけっこでは足が長く、パイロット訓練で身体を鍛えており、身体も成熟している二人の方に分がある。

 

「チッ…!」

 

 スリの子供は舌打ちし、二人を撒く為に曲がり角を左に曲がろうとしたが。

 

「うわぁっ!」

 

 その先にいた男に激突し、跳ね返されて尻餅を付いた。ちなみに、盗んだ財布は離さなかった。

 それによって、アグニカとスヴァハは子供に追い付くコトが出来たが――子供がぶつかった相手は、どうやらロクな人間ではなさそうだった。こんな路地裏の奥に(たむろ)してる人間の中では、ロクな奴の方が珍しそうではあるが。

 

「オイオイオイオイ、クソガキィ! テメェ、どの面下げてロスの路地裏を仕切るアニキの子分やってるオレ様にぶつかりやがってんだゴラァ!」

 

 スリの子供がぶつかったのは、タンクトップで全身に刺青を入れている、痩せっぽちな青年だった。その後ろには、仲間と思しき男達が三人いる。古来より伝わる典型的な不良グループだが、一人を除いて、どうにも顔色と体格が良くない。

 

(麻薬でもやってるのか? だとしたら、不良の中でもヤバそうな奴らだな…)

「(アグニカ、どうする?)」

 

 アグニカに、スヴァハが耳打ちする。それに、アグニカは声を潜めてヒソヒソと返す。

 

「(正直、俺は財布を取り返せりゃそれで良いんだが――あそこに首を突っ込みたくはないな…。やるなら武器が欲しい。剣とは言わねぇから、せめて鉄パイプとかナイフとか)」

「(随分と過激だね…?)」

「(まあ、しばらくはバレないように、離れて様子を見よう。最悪諦めるが、隙が有れば奪還を狙う。ヤバそうなら逃げる)」

 

 二人は少し離れて、傍観に徹するコトとした。普段の制服を着ている時なら、提げてる銃や短剣を使って多少なり戦えるだろうが、生憎と今は私服だ。武器は何も持っていない、丸腰状態である。

 パイロット訓練で、もしもの時の為の護身術は習っているが、実際にはそれだけで上手く身を守れる訳ではない。一番有効な護身術は「逃亡」なのだ。

 

「…その緑色の髪。テメェ、最近ウワサになってるガキだな?」

 

 不良グループ四人の内、唯一屈強な身体をしている男がスリの子供に近付く。その言葉を聞いて、先ほど子供にぶつかられた男は、怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「こんな奴がですかい、アニキ?」

「ああ。緑髪のガキなんてそうそういねぇだろうしな。コイツには、ウチの兄弟達も何人かやられていやがる。――ちょうど良い、お礼参りの機会じゃねぇかよ」

 

 指をコキコキと鳴らす、アニキと呼ばれているリーダーらしき屈強な男。対して、スリをした緑の髪を持つ子供は、財布をポケットにしまって腰の後ろからサバイバルナイフを取り出した。

 

「(オイオイ、得物持ってんのかよアブねーな)」

「(ねぇ、これちょっとヤバくない? 見たら殺されたりする奴じゃない?)」

「(確かに――これはそろそろお暇s)」

「オイそこのリア充ども」

「「はいぃ!?」」

 

 アグニカとスヴァハ、お暇に失敗する。どうやら、アニキには完全に最初からバレていたらしい。

 

「な、こんな路地裏にリア充がいやがる!?」

「有り得ねぇ、都市伝説じゃなかったのかよ!?」

「リア充だって!? 殺しましょうぜアニキ! いや殺すべきだ! 殺させて下せぇ!!」

「落ち着け非リアども。ったく、リア充とは言え何の罪も無ぇカタギを殺るわきゃねぇだろうが。

 テメェら、何でこんなとこに迷い込んだのか知らねぇが、さっさと失せな。口封じで黙らせなきゃならなくなる前にな」

 

 アニキ、思ったより道義をわきまえている。いくら路地裏の不良とは言え、リーダーになるにはそれなりのカリスマが要るのかも知れない。

 なお、そう言われてるアグニカ達は「殺るってこの人達ガチでヤバいじゃん」と、心の中で震え上がっている訳だが。

 

「アニキ。コイツら、そこのガキにスられたんじゃねぇですかね?」

「あ? 成る程、それで此処まで追って来たって訳か? …このガキの逃げ足は相当なハズだがな。追ってきたコイツらはバケモンかよ?」

「オレ達もコイツにゃ逃げられてますs」

 

 不良の台詞は、そこで途切れた。何故か――

 

 

 緑髪の少年にナイフで斬りつけられ、首を斬られたからだ。

 

 

「げぎゃあああああああああああ!!!」

 

 鮮血が走った。不良はそのまま倒れ伏し、断末魔も途切れる。――死んだ。

 

「なっ、テメェ…!」

「――一撃か…惨いが恐ろしいな」

「アグニカ、見えないってば! 後、近い…!」

 

 スヴァハの視界を塞ぎながら、アグニカはその緑髪の少年の一撃に戦慄する。モビルスーツでは剣を用いた近接戦をするアグニカから見ても、その一撃の正確さとスピードはかなりのモノだった。

 

「テメェ…!」

「フザケてんじゃねぇ!」

 

 激昂した不良二人が、緑髪の少年に襲い掛かる。しかし少年は、その小さな身体を使って不良たちの懐に飛び込み、片方の胴体にナイフで斬りつけた。

 

「うあああああ! 血が、血がああああああ!!」

「な、何なんだよテメェ…ぐああああああ!!」

 

 致命傷ではないものの、斜めに胸を斬られた男が絶叫する。もう一人はそれを目の当たりにして怯んだ隙を突かれ、ナイフを横腹に刺されて同じように絶叫した。

 

「…アグニカ。あの子――」

「――ああ。戦闘センスが高いな…」

 

 アグニカと、ようやく解放されたスヴァハが見ているのは、のたうち回る男達ではなく――ナイフ一本でヤバい不良どもと戦っている少年だった。しかし、どう考えても明らかにやり過ぎである。

 その時。

 

「調子こいてんじゃねぇ」

「ぐッ!」

 

 少年は顔を思い切り殴りつけられ、その矮躯がアグニカとスヴァハの方へと飛ばされた。見ると、屈強なリーダー格の男が鉄パイプを持ち出して来ていた。原始的だが、ナイフよりもリーチが長い分、近接戦では有利だ。

 緑髪の少年が地面に倒れ込み、ナイフがその手を離れる。同時に、少年のポケットにしまわれていたアグニカの財布も放り出された。

 

「よくもまあ、オレのかわいい子分を殺ってくれたモンだなァ。ええ? どうした、起きろクソガキ」

「…待て」

「――あぁ?」

 

 鉄パイプを振りながら少年に近付く男を制止したのは――少年の被害者であるハズの、アグニカだった。止められた男は「テメェ正気か?」とでも言いたそうにしている。

 

「アグニカ!?」

「…スヴァハ。この子供なら、使いこなせるかも知れない。グラシャラボラスかアンドラスを――ガンダム・フレームを」

「――! でも、それって…!」

「モビルアーマーを倒すのが俺達の目的だ。戦力は多い方が良い。――酷いコトだと、分かってはいるがな。手段を選んでもいられないだろ」

 

 しゃがんで、地面に放り出された自分の財布を拾いながら、アグニカはスヴァハに諭す。

 納得するかどうかは別としても、スヴァハにもそれは分かっている。ガンダム・フレームは七十二機しか存在しない、貴重にして強大な戦力だ。今後の戦いのコトを考えても、いつまでも遊ばせておく訳には行かない。

 

「…何、で――助けるの…?」

 

 地面に倒れたまま、緑髪の少年はアグニカにそう問う。対するアグニカは、厳しい表情のままこう返した。

 

「――お前が利用出来そうだからだ。助けたいから助ける訳じゃない。俺は正義の味方(ヒーロー)じゃねぇからな。

 スヴァハ、その子を頼む」

「…うん」

 

 アグニカは少年が持っていたナイフを拾って立ち上がり、鉄パイプの男に相対する。

 

「何なんだテメェ。何だか知らねぇが、映画の主人公にでもなったつもりか? 見逃してやろうと思ってたが、首を突っ込むってんなら容赦しねぇぞ」

「映画の主人公か…アレは認めたくないな。――とにかく、この子には用が出来た。手を出すなら、不本意ながら痛い目に遭ってもらう」

「ケッ。カタギが調子ブッこいてんじゃねぇ!」

 

 鉄パイプを振り上げ、男がアグニカに向かって駆け出した。そして、勢い良くそれを振り下ろす。

 しかし、アグニカは右に身体をズラし、アッサリとそれを回避した。

 

「んだとゴラァ!」

 

 再び男が鉄パイプを振り上げ、上段からアグニカの頭を打ち砕くべく振り下ろしてくる。

 対するアグニカは右手に持ったナイフの腹で鉄パイプを受け流しつつ、駆け出してパイプの側面に刃を滑らせ――男の人差し指から小指、その四本を切断した。

 

「…ッ、うあああああああ!!」

 

 男の指から血が吹き出し、その手から鉄パイプが零れ落ちた。もう片方の手で傷口を押さえ、腰を抜かして地面に倒れ込んだ男を見下ろしながら、アグニカはナイフを突きつける。

 

「悪いが、此処は大人しく退いてくれ。退かないと言うなら、次は頸動脈を斬る。

 俺たちは人殺しの天使(モビルアーマー)と戦ってる身でな。この子の戦闘センスなら、目覚めていない悪魔(ガンダム)を操れるかも知れないんだ」

「――あ、あぁ…」

 

 男は地面を這いずるように後退し、生きている子分二人を連れ、速やかにその場から立ち去って行った。

 

「ふぅ…全く」

 

 ため息を吐き、アグニカは持っていたナイフを投げ捨てた。それから、しゃがんで少年の様子を見ているスヴァハに歩み寄る。

 

「スヴァハ、その子は大丈夫か?」

「うん…さっきので怪我しちゃってるけど、命に別状は無さそうだよ」

「――僕を、どうする気なんだ」

 

 血の絡んだ痰を吐き捨てながら、緑髪の少年は俯いたまま二人に問いかけた。

 それは当然の疑問だ。彼からすれば、アグニカとスヴァハは財布をスりやがった初対面の子供を助けた、不思議な二人組。しかも「利用出来そう」とか「悪魔(ガンダム)を操れる」とか、訳の分からないコトをのたまっている。

 

「俺達と一緒に戦ってもらいたい。

 人類を滅ぼさんとしている機械仕掛けの天使――モビルアーマーと」

「…! モビル、アーマー…!? アイツらと、戦う!? そんなの、勝てる訳が――」

「勝てる。いや、勝たなきゃならない。その為に、俺達は戦っている。そして、その為の兵器も戦力も揃いつつある。

 ヘイムダルに加わってくれないか? これを聞く為に、俺達はお前を助けたんだ」

 

 緑髪の少年は、何言ってんだコイツ、と思っていそうな視線をアグニカに向ける。だがそれで、アグニカがウソを吐いている訳ではないコトを悟ったようだ。

 

「――何で、僕なんだ?」

「さっきの不良どもとの戦いから、お前が並々ならないセンスを持つコトを察した。今、俺達のチームには余剰のガンダム・フレームが二機有る。お前ならどちらかの機体に適応し、その能力を十二分に発揮出来るパイロットになれるかも知れない、と思ったんだ」

「…本当に、勝てるのか?」

「ああ。ガンダム・フレームは、ヘイムダルはMAに勝つ為に造られた。実際、『天使長』とか言う一ランク上の化け物にも対抗した」

 

 アグニカは隠すコト無く、少年の質問に答える。そこまで答えられた時、少年は俯いた。そこで、少年の肩に右手を添えていたスヴァハが、答えは何となく分かりつつもこう聞いた。

 

「キミ、家族とかは…?」

「――いない。母さんは、アイツらに殺された。二年前、僕の暮らしていた村が破壊された時に」

 

 それから、彼は孤児となってこのロサンゼルスへと移住させられた。最初は孤児院に入れられたが、馴染むコトが出来ずに暴力事件を起こして脱走。それ以来、スリや窃盗を働きながら路地裏で生きてきたらしい。

 ナイフ術は全て独学。路地裏には不良やヤクザなどのナワバリが存在していた為、その中で生きる為に必要だったと言う。明日も分からない生活だ。

 

「僕が戦って、僕みたいな人を少しでも減らせるなら――そうしたい」

「……俺はアグニカ・カイエル。で、そっちがスヴァハ・リンレス。お前は―――?」

 

 名を名乗って、アグニカは右手を差し出した。緑髪の少年は頷き、同じように己が名を口にし――

 

 

「僕は…僕は、トビー。トビー・メイ」

 

 

 伸ばされたアグニカの手を、確かに掴んだ。

 

 

   ◇

 

 

 トビーと名乗った緑髪の少年を連れて、アグニカとスヴァハはキャリフォルニア・ベースに入港している母艦「ゲーティア」へと帰還した。鉄パイプで顔を殴られたコトも有るので、一応トビーを医務室に預け、二人はそれぞれの部屋へと戻った。

 だが、スヴァハは何故かアグニカのコトが気にかかり、自分の部屋を出てアグニカの部屋に向かう。そして、そのドアの前に立った。ドアには鍵が掛けられているので、近づいても開くコトは無い。

 

「――アグニカ」

「…スヴァハか? どうした?」

「あの子を、これからどうするつもりなの?」

 

 ドア越しに、スヴァハはアグニカにそう聞いた。意図せず語気が強くなったコトを、スヴァハは言ってから気付いたのだが。

 

「…どうって、お前にも分かってるだろう。どっちかの悪魔(ガンダム)に適合したら、阿頼耶識の手術をさせて、そのパイロットとしてMAと戦ってもらう。俺達はその為に、アイツを助けたんだ」

「――あの子、まだ子供なんだよ? パイロットの訓練だって…」

「阿頼耶識はその手間を省く為に有る」

 

 毅然として、アグニカはそう答える。しかし、スヴァハはその口調の中に、僅かな揺らぎが有るコトを感じ取っていた。

 

「…アグニカ」

「スヴァハ。もう寝ないと、明日に差し障るぞ。大人しく――」

()()()?」

 

 アグニカがほんの少し、息を呑んだ。何もかもお見通しのスヴァハに対し、返す言葉をアグニカは知らない。

 それからしばらく、沈黙が二人の間に流れた。

 

「――ごめんね、変なコト言って。それじゃ」

 

 沈黙に耐えられなくなったか、スヴァハはそれだけ言い残してアグニカの部屋の前から離れた。閉ざされたドアの内側、光無く暗闇に支配された部屋の中では――

 

「…クソッ」

 

 歯を強く食いしばったアグニカが、誰に言うでもなくそう呟いていた。




第十八話「使命の仮面」をご覧頂き、ありがとうございます。

戦闘回でしたね!(議論の余地有り)
相手は路地裏の不良。ありがとう噛ませ×3。

新たな仲間を得たアグニカチーム。
しかし、アグニカは使命の為に仮面を被り、スヴァハはそれを察しながらも一歩を踏み込めない。
互いに理解し合いながらのすれ違い、と言えるかと思います。
(サブタイの意味を後書きで明かすスタイル)

もうちょっと先まで書く予定だったんですが、区切りが良くなったので切りました。
次回からは議論の余地無しの戦闘回です。


《新規キャラクター》
トビー・メイ
・アグニカとスヴァハに拾われた緑髪の少年。
・後に「ガンダム・アンドラス」のパイロットとなる。


《今回のまとめ》
・生身でも強いアグニカとトビーくん
・仲間が一人 加わった!
・すれ違うアグスヴァ




次回「天使侵攻」
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