厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》 作:アグニ会幹部
やったぜ!(歓喜)
Gレコ劇場版の公開日、ちょうどナラティブ公開から一年経つくらいなんですね。
まだ時間有りそうですけど、気付いたら前日とかになってるんだろうなぁ…。
閃ハサ一章は一月か二月くらいなのかな? と。
――ウルズハントはいつ配信されますかね?
―interlude―
アメリア合衆国首都、ニューヤーク。
その中心地マンハッタン島を丸々覆い尽くす巨大核シェルターは、人類をモビルアーマーの脅威から護る為に必要不可欠なモノだが――
「その為に、人類に恵みを齎して来た太陽の光が阻まれているとは、何とも困ったコトだな」
ビル群がそびえ立つシェルターの中でも更に中心となる場所には、歴代大統領が住処として来た、重要文化財とも言える白亜の宮殿――ホワイトハウスが鎮座している。
その窓から偽りの空を見上げながら、アメリア合衆国第六十五代現職大統領ローガン・フローレスは誰に聞かせるでもなく呟き、政治家となって以降急速に白くなった髪を撫でた。
「失礼致します、フローレス大統領」
執務室の扉がノックされ、軍の伝令役が入室して来る。大統領は軍の最高司令官でもあるので、大規模な作戦が行われる場合、緊急の用件などは軍士官が直接ホワイトハウスに訪れるコトが有るのだ。
「何か?」
「三十分ほど前、キャリフォルニア・ベース周辺にて、MAとの戦闘が開始されました。ロサンゼルス内外から攻撃を仕掛けて来たMAに対し、MS第一部隊司令官パール・マコーマック少将の指揮の下、ヘイムダルの部隊と合同でロサンゼルス防衛線を展開しています」
「ふむ――ロサンゼルスの内側から、とはどういうコトかね?」
MAが都市に侵入したなら大事だ。だとしても、内側からの攻撃など有って然るべきモノではない。
ローガンの問いに対し、士官は言い辛そうに重苦しく口を開いた。
「先日のラスベガスの戦闘の折、生存者をロサンゼルス内に保護致しておりました。その生存者達は、どうやら…体内に、時限爆弾を埋め込まれていた模様でして…」
「――それが爆発した、と」
士官は無言で頷いた。
そして、ローガンは気付かれぬよう舌打ちする。
(報告を聞く限り、あのラスベガス陥落はあまりにも不可解な案件だった。頑強な核シェルターの破壊に、MAの特性上いるハズの無い生存者――だが、これで生存者がいた理由は分かった。奴らは内部からも
未然に防ぐコトは不可能だった。
帰るべき家を失い、難民となった国民を捨て置く訳には行かないので、必ずどこか、シェルターの有る安全な都市へ保護せざるを得ない。どうやったかは定かでないが、爆発物検知器やスキャンに引っかからなかった以上、現状として人間爆弾の発見は出来ないと結論付けるしか無いだろう。
また――こうした「前例」が出来たのはマズい。
発見不可能の爆弾を体内に持つ人間が存在する、と言う事実は、人に隣にいる人間を疑わせるには充分過ぎる。
(―――
初めからシェルター都市に住んでいた人間は、人間爆弾の候補から除外出来る。だが――一瞬でもシェルターの外にいたコトの有る人間には、人間爆弾になっている可能性が考えられるのではないか? シェルター外から避難して来た人間は勿論、シェルター外で戦う軍人は? ヘイムダルの人間達は?
確証は無い。そもそも人間爆弾を製造するMA自体が未確認だし、そうである以上、いつからその種類のMAが在ったか知る者はいない。楽観視するならば、そのMAはごく最近に開発、建造され、戦線投入されたのかも知れない。
しかし、事態は常に最悪の場合を想定して検討するモノだ。
もしMA出現当初、シェルターの無い人間の居住地が余さず蹂躙され、都市に大量の難民が押し寄せていた時から
(――マズいな。これはマズい、非常にマズいぞ)
このコトが世に知れ渡れば、皆が例外無く疑心暗鬼に陥るだろう。どこの爆弾を抱えていて、いつ爆発するか分からない。それは近しい人かも知れないし、もしかしたら自分自身なのかも知れない。全ての人間――自分さえ疑いに掛けねばならなくなる。
密閉された一つのシェルターに、最低でも何百万もの人々が住んでいるのだ。このせいで暴動でも起きようモノなら、人々の不安は一気に伝播する。安全安心の為に外から移り住んで来た人を皆殺しにしよう、なんて狂ったコトを考える輩が現れ、それが実行されてしまう可能性だって大いに有る。
そうなれば――人類に安寧の場所など、どこにも無くなる。
ただでさえMAによる虐殺が起こっていると言うのに、内側で互いに疑い合って人間同士で殺し合いなど始めてしまったら、本当に人類は絶滅する。自殺と他殺のオンパレードだ。
(これは国内だけでなく、国外とも協議する必要性が有るな…十国で足並みを揃え、毅然とした対応策を早急に打ち出さねばなるまい)
世界規模の情報統制が必要になる。自国内で情報統制をした所で、他国から情報が流れ込んだりしたら意味が無い。幸い…と言うべきではないが、人間爆弾が作動した都市はロサンゼルスだけだ。情報統制、事実隠蔽など今の内なら幾らでも出来る。
(以前のディアロ大統領死亡事件で、十国会議の開催は絶望的。顔を突き合わせて話し合うのが手っ取り早く確実な方法なのだが、こればかりは致し方無い)
万が一の時の為に、他の九国の首脳と通信会談出来る回線は整えられている。仕組み自体は火星独立軍の宣戦布告前から存在していたが、未だに一度たりとも使われたコトは無い。
「人間爆弾については、第一級国家機密とする。
「は」
「また、戦闘中のロサンゼルス防衛部隊には『人間爆弾製造型』の出来得る限り無傷での鹵獲と、ロサンゼルスの死守を命令しろ。それから、各国への秘匿回線チャンネルを開いてくれ」
「は!」
失礼致します、と言い残し、士官は駆け足で退室した。
ローガンは一息吐いて執務室の椅子に腰掛け、机の上の通信機のパネルを叩き、秘匿回線を開く。しばらく待つかと思ったものの部下の仕事はかなり速く、ものの数分でチャンネルは開かれた。
通信先は九つの国、その首脳達である。最も、時差が有る為、即応したのは四つの国だけだったが。
「ご無沙汰しております。我が国にて火急的速やかにお伝えせねばならぬ案件が発生致しました為、ご連絡させて頂きました。ご多忙とお察ししますが、時間を下されば幸いです」
『この回線が使われる時が来ようとはな――正直、すっかり忘れていたよ』
『…フローレス君。一体、何が有った? 十国で議論すべきと判断するほどのコトとはなんだ?』
「はい。それは全員が揃い次第、お話させて頂きたく思います。早く揃えば良いのですが…」
『何、寝ていたとしてもすぐに飛び起きるだろう』
アフリカン共和国のベンディル・マンディラ大統領が言った通り、アメリアから見てほぼ地球の裏側となる中華連盟共和国やオセアニア連邦国も、通信開始から五分と経たず通信に応じた。――睡眠中だったようで、完全に寝起き状態だが。特にオセアニアのソフィア・ナーゲン総督など、長い髪の毛が爆発している。
しかし首脳勢は紳士揃いであり、今は一刻を争う事態に直面している身。それを茶化す者はいない。全員が揃った途端、間髪入れずにローガンは話し出した。
「今回お呼び立て致しましたのは、MAによる新手の攻撃――『人間爆弾』についてのコトです」
その一言は、地球の裏側にいる寝ぼけた方々の目を一瞬にして見開かせ、全員に冷や汗を流させるには充分だった――
―interlude out―
開戦から二時間が経とうとしていた。
MAとプルーマの群に途切れる様子は無く、蒼き空を駆け巡る鉄風雷火に限りは見られない。
地獄の最前線のただ中で、ガンダム・サブナックを駆るアメリア合衆国第一MS実働部隊隊長のサイラス・セクストン大佐は、自ら殲滅砲撃を行いながら部隊を指揮していた。
「第四大隊、エリアD54まで後退し補給せよ! 第七大隊はカバーに回れ! コルケット大尉は突出している八本脚と、その後ろのプルーマ生産型を仕留めろ! 五分以内だ!」
「了解! 第三中隊、援護しなさい!」
サイラス直属の部下にして、第一MS実働部隊の斬り込み隊長たるガンダム・ボティスのパイロット、マリベル・コルケット大尉が前へ出る。背中と腰背部に装備されたテイルブレードを展開し、同時にボティス・ブレードを腰側面から引き抜いて、プルーマの群へと吶喊を掛けた。
「ガンダム・ボティス」は、近接戦を想定した装備を特徴とする機動性の高い機体である。手持ちの近接武装である「ボティス・ブレード」は刀身差し替え式を採用しており、これにより継戦能力に優れる。予備の刃は両腰側面のブレードホルダーに格納されており、速やかな刀身交換を実現する。また、背中と腰背部に装備された「有線式テイルブレード」は、直感的な三次元機動を可能とし、これこそボティスが高い格闘近接能力を獲得した一番の要因と言えるだろう。
そして、これら全てをマリベル・コルケット大尉の技量と合わせれば――あらゆるモノを寄せ付けず圧倒する、
「どけどけどけどけどけェッ!」
「マリベルの部隊が敵右翼を押し込んでいます」
「見れば分かる――パール! 粒子砲、大尉の前方だ!」
『放てッ!』
基地に備えられたビーム砲が一斉発射され、ボティスの前方に群がるプルーマの群を一緒くたに吹き飛ばす。一瞬開かれた道を逃さず、ボティスは最大出力で突撃し、奥にいた二機のMAを空へと舞い上げさせた。
舞い上がったのは八本脚を持つ陸戦型MA「スイエル」と、プルーマ生産型MA「アルミサエル」。ボティスはこの二機へ向けてボティス・ブレードの刀身を立て続けに飛ばし、これを破壊した。
「
「俺達も負けてらんねぇな…!」
アメリア軍ガンダム部隊の反対側たる右翼では、ヘイムダルのガンダムが二機、奮戦していた。
一機はアマディス・クアークの操る「ガンダム・フォカロル」。
水中戦を可能とした機体であり、全身に張り巡らされた水中装備「ネプチューン」が重厚感を感じさせる。主武装は
装備変更無しでの水中戦と陸上戦を展開するコトが可能であり、どちらの環境に於いても高い戦闘能力を安定して発揮出来る機体に仕上がっている。
もう一機は、ソロモン・カルネシエルが操る「ガンダム・オセ」。
一番の特徴は「四脚獣形態」への変形機構だ。これにより動物的な高い敏捷性を獲得する他、背中に違う機体などを載せて運搬するコトを可能としている。武装は反った双剣「フレイヤ」で、未使用時と変形時は背部スラスターウィングユニットに接続されている。刃には特殊超硬合金も使用されており、攻撃力は高い。また、両手両足に「ネイルクロー」と呼ばれる攻撃用の爪を持ち、変形時であろうとなかろうと、高い近接戦闘能力を獲得している。
装甲は黄金に染め上げられ、パイロットであるソロモンの意向によってガンダム・バエルと外見は酷似させられてこそいるが、その実バエルとは全く異なる性質を持っている機体である。
「ソロモン、アレで行くぞ!」
「――良いだろう」
フォカロルが前方へと突き出した両腕からティザーアンカーを射出し、プルーマを一機ずつ捕縛。そのまま両腕を横へ振り、幾つかのプルーマを巻き添えに投げ飛ばし、捕らわれたプルーマは電撃を流されて爆散。その隙に四脚獣形態へと変形したオセが敵群へと入り込み、跳躍して一気にプルーマの大群を飛び越え、奥に潜む拡散ビーム砲を搭載したMA「マルティエル」を捉える。
拡散ビーム砲に狙いを付けられたコトに構わず、オセは空中で人型に戻り、背中から両手で双剣フレイヤを抜刀。スラスターウィングを全開にしてマルティエルに一閃し、これを斬り伏せた。
しかし、これだけでは終わらない。
「そらッ!」
「よっ!」
オセがマルティエルの陰でプルーマを生産していたアルミサエルを一撃で破壊したのと、フォカロルが長槍トライデントで以てプルーマの残骸を空中へと投げ飛ばしたのは、全くの同時であった。
二機は背中を互いに預けながら、敵群の更に奥深くへと斬り込んで行き、次々とMAを叩きのめして行く。そしてそれに、右翼に展開していたアメリア軍のMS部隊が続いた。
空中では、ヘイムダルのアグニカ・カイエルが乗る「ガンダム・バエル」と、同じくヘイムダルのスヴァハ・リンレスが駆る「ガンダム・アガレス」が飛行爆撃型MAとの戦闘を繰り広げていた。
この地球に於いて絶対的な制空権を有するMAであるが、それはエイハブ・ウェーブによる航空機の無力化による産物だ。大気圏内であろうとも飛行出来るガンダム・フレームが台頭してからは、飛行型MAの優勢にも陰りが見られるのも実状である。
その実状通り、空中では次々とMAが撃破されていた。
「後何機だ!?」
「五機くらい!」
飛行型MAの「サリエル」と「ザフィエル」は、初期型であるコトを差し引いても特に装甲が脆弱な機体だ。高高度で高速飛行しながら攻撃を行う為、直接攻撃を受けるコトを想定していない。そんな機体とガンダム・フレームの機体が戦えば、当然ながらガンダムの独壇場となる。
「後一機か…!」
先ほどまで五機残っていた飛行型MAは、既に一機になってしまっていた。
地上での苦戦ぶりがウソのようだが、ガンダム・フレームであろうと、大気圏内での飛行にはかなり多くの推進剤を必要とする。推進剤が尽きる前にケリを付けねばならないので、実際のところ、余裕はそう無い。
「これで!」
アガレスがライフルを残った一機に向ける。
高高度で吹き荒れる風の中、その影響を受ける実弾をこれまで一発も外していないのは、パイロットたるスヴァハの射撃技術の成せる技だ。
「―――ッ!!」
スヴァハが引き金を引こうとした時、バエルに乗るアグニカは得体の知れない悪寒を覚え――無意識の内に操縦桿を押し込んだ。
対応してバエルが動き、アガレスを思い切り蹴り飛ばす。
「ちょっと、アグn」
スヴァハは、その直後―――
◇
人類の攻勢は、観測したオペレーターによってキャリフォルニア・ベース指令室で指揮を執るアメリア合衆国軍第一MS部隊指揮官、パール・マコーマック少将に伝えられる。
「左翼、右翼共に前進を開始!」
「空の敵はどうなっているか?」
「現在、ヘイムダルのガンダム二機が交戦中です」
よし、とパールは判断し頷いた。
防衛だけでなく、攻勢に出れている。空中からちょっかいを掛けてくるMAも、排除の目処が立っている。制空権を得られたなら、人類側としても空からの攻撃を地上のMAへかけるコトが出来ると言うモノだ。
「レキシントン級空母、出撃準備。ヘイムダルのラファイエット級には、その援護に当たるように伝えろ」
「は!」
作戦は順調に進んでいる。だが、パールにはどうも引っ掛かる所が有った。
(投入されたMAは、どうにも対人機が多いように思われるな――このキャリフォルニア・ベースに直接
近頃は各方面部隊より、MS戦を想定したと思しき新たなMAの報告が上がって来ている。しかし、敵群にはそう言った対MSの機体が少ないように思える。
その時、オペレーターの一人が突如叫んだ。
「指揮官殿! 衛星軌道上に、強大なエイハブ・ウェーブ反応!」
「何だと? …第七宇宙艦隊は何をしている!?」
「―――ダメです、通信途絶! LCS回線も繋がりません!」
嫌な予感がした。
「衛星軌道上のエイハブ・ウェーブ反応」と「衛星軌道上に展開させていた第七宇宙艦隊との通信途絶」を論理的に考証するより前に、単純だがパールは「嫌だ」と感じたのである。
「照合する機体は?」
「データ上に該当無し! …ッ、
「着弾まで――二秒!! 速度計測不能!!!」
「――総員、衝撃に備えろ!!!」
パールがその台詞を叫び終わるより早く――基地を強力な衝撃波が襲い、モニターの全てがノイズに包まれた。
◇
―――天杖は放たれた。
其は
今回の作戦だけではなく、これからもそうだ。
天の杖による一撃は、人類が展開せしめるあらゆる防御、防壁、防衛の悉くを打ち砕く。
ダインスレイヴ。
人類がMAと戦う為に生み出した、禁忌の魔剣。
高硬度レアアロイで練成された針のような専用弾頭を、専用の射出機で超高速回転射出する――シンプルであるが破壊力が高い上に生産性に優れ、多量のMSによって一度に運用するコトで、MAを打倒する破壊兵器。
それを、MAは宇宙から投射したのである。
圧倒的速度を以て射出された弾頭は更に加速して地上へと到達し、爆心地に巨大なクレーターを形成させ、爆煙と衝撃波を撒き散らした。
そしてこの攻撃により、都市を守るシェルターは―――
―――
第二十話「放たれし天杖」をご覧頂き、ありがとうございました。
いよいよアメリア編も佳境。
次回は10,000字を超えそうな予感が…。
いやー…MAどもがやってくれやがりました。
素晴らしい! 世界は破滅に満ちている!(モリアーティ教授並感)
そしてこれが、今回の戦いに於ける奴らの切り札。
どうでも良いですが、ロサンゼルスの略称として「ロス」を使うのは日本人だけらしいです(現地ではLAって言わないと通じないとか)…どうでも良いですけど、もしアメリカに行かれる方はお気を付け下さい。
《新規キャラクター》
ローガン・フローレス
・アメリア合衆国第六十五代大統領。
《今回のまとめ》
・奮戦する人類
・アグニカピンチ…!?
・ロサンゼルスの都市シェルター、破られる
次回「ロス・ナイトメア」