厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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また一ヶ月開いちまったよ…(反省を次に生かせ)
本当に申し訳無い。Gジェネやってる場合じゃなかったね…。
これから数話は、構成的にもあまり感覚を開けずに更新したいので、出来るよう頑張ります。


サブタイの「宇宙」は「そら」と読んで下さい。
まあ、ガンダムシリーズを視聴なされている方は自然とそう読まれると思いますが――読みますよね?

今回の最初は語りみたいな感じで始まります。
ウォズが逢魔降臨暦見ながらアバンで話してる感。
こんな書き方生まれて初めてやりましたね…ちょっと違和感(慣れの問題?)有りますけど、まあたまには良いでしょう。
今後やるかは分かりませんけども。多分やらない。


#34 宇宙を裂く魔剣

 年が明けた、M.U.0050年。

 十国が成立し、永久不可侵条約(改元条約)が締結されてから、半世紀の節目を迎える年。しかしながら、人類にそんなモノを祝う余裕など無い。

 

 モビルアーマー。

 

 殺戮の為に在る天使の存在が、人類の存続を脅かすようになって、およそ八年。そのMAが開発されるきっかけとなった火星独立戦争の開幕から、ちょうど十年。人類は戦禍の中に立たされ、決定的な突破口を見いだせぬまま、戦いは泥沼化していると言わざるを得ない状況に陥っている。

 圧倒的な力を持つMAに対し、人類は「モビルスーツ」を開発し、文字通り悪魔の力を宿すMS――「ガンダム・フレーム」を生み出した。これにより、膠着したまま人類が殺され続ける戦況を打開する光明が、ようやく見え始めた所である。

 ガンダム・フレームは、M.U.0045年の出現以降、猛威を振るい続けて来た「天使長」の称号を冠するMAを撃破した。これによりその有用性を世界に示し、開発者たる組織「ヘイムダル」を中核として、人類はMAへの反撃を開始した。

 

 勝利ばかりではない、敗北も重ねている。

 アメリア合衆国、ロサンゼルスに於ける悲劇――「ロス・ナイトメア」は、その典型と言える。

 しかしその後――ユーラシア連邦、イングランド統合連合国、アラビア王国の三国共同戦線の下で展開された「オデッサ奪還作戦」で、人類は大勝を収めた。

 MAによるイングランド首相暗殺後、ダブリン防衛作戦では、大戦の陰で暗躍する者達の姿が僅かに捉えられた。

 

 と、これまでを軽く振り返った所で――これより四ヶ国目、オセアニア連邦国の領域に於けるヘイムダルの戦いを描くとしよう。

 此度の戦場は宇宙。これまでとはまた違う人類の戦いを、お見せ出来るコトでしょう―――

 

 

   ◇

 

 

 オセアニア連邦国、アルミニウスコロニー群。

 いや――「元」アルミニウスコロニー群、と呼ぶ方が相応しいだろう。

 

 何故ならば、()()()()()()()のだから。

 

 MA登場後、最も甚大な被害が及んだのは、地球と月の周辺に位置するコロニー群である。主にコロニー破壊用のビームランチャーを装備するMA「ザフキエル」によって、コロニー群はその悉くが壊滅させられた。

 元々スペース・コロニーは、地球で増えすぎた人口を宇宙に移民させる為に、宇宙のラグランジュ・ポイントに建造された円筒形の居住地だ。十国成立前から幾つも建造され続けていたが、改元後は火星のテラフォーミングが進んだコトも有り、建造はされなくなっていった。火星独立戦争が勃発してからは、エイハブ・リアクターを主動力源とした新型コロニーが幾つか建造されたが、MA登場後はそれすらも無くなった。コロニー群は地球から孤立し、宇宙と言う大海を頼りなく漂う、哀れな方舟となり果てたのである。

 エイハブ・リアクター発明後の新技術を以て建造されていない旧時代からのコロニー群など、MAにとっては破壊するコトなど造作も無い。そして、そこには多くの人が住んでいる。

 

 ――以上の理由から、火星独立戦争後に建造された新型コロニーを除いた全てのスペース・コロニーは、MA出現から一年と経たぬ間に破壊された。

 

 新型コロニーが未だに残っている理由は、大型のエイハブ・リアクターを主動力源としている為、外壁をナノラミネートアーマーにするコトが可能だった為である。コストは掛かったが、MAが襲って来る前にナノラミネート加工を終えたコロニー群だけは、生き延びるコトが出来たのだ。…とは言え、地球との連絡はM.U.0049年にLCSレーザー通信網「アリアドネ」をヘイムダルが完成させるまで、完全に途絶してしまっていたのだが。

 よって、現在人が住んでいるコロニー群は、火星独立戦争中に建造された新ドルトコロニー群だけである。それ以外のコロニー群は、全てが宇宙の塵となり果てている。その内の一つが此処、アルミニウスコロニー群と言う訳だ。

 

「目標捕捉、距離およそ四千二百。数は二十」

 

 破壊されたコロニーの残骸が浮遊する宙域に、生きた人類の艦船が複数、隊列を組んでいる。艦と同じかそれ以上の外壁だったモノに隠れ、密かに宿敵――MAを観測する。

 元々コロニー群は地球と月の重力均衡点――「ラグランジュ・ポイント」に建造されている為、基本的には残骸になろうとも、その場に留まり続ける。破壊される際の爆発で吹き飛び、ラグランジュ・ポイントを外れた残骸は地球か月、どちらかに引き寄せられる形で動き出すが――大型の残骸は、今なお残っているモノがほとんどである。

 

「だ、そうだが――どうする、ドワーム?」

「どうする、も何も無かろう。我々の仕事は一つ、視界に入ったMAを叩き壊すコトだけだ。

 総員、第一種戦闘配置! オセアニア連邦国軍にも連絡し、連携を取るぞ!」

 

 艦隊の総数は五。それを構成するのは、ヘイムダルが開発、建造した「ラファイエット級汎用戦艦」の二番艦「サロモニス」と、MSを搭載出来るタイプでは最もメジャーとなる「ハーフビーク級宇宙戦艦」である。この艦隊はヘイムダルとオセアニア連邦国軍の合同艦隊となっているが、その内のヘイムダル所属艦はサロモニス一隻のみで、残り四隻はオセアニア連邦国軍に所属するモノだ。

 

「『キャメラス』より『了解』との報有り」

「ふむ」

 

 オセアニア連邦国軍からの返答を確認した、サロモニスの指揮官ドワーム・エリオンは、一度頷いた後に続けて指示を出す。

 

「ダインスレイヴ隊、出撃しフォーメーションAで展開せよ! ガンダム・フレームを含む通常MS部隊は出撃準備完了の後、母艦にて待機!」

「…おや? お前は出ないのか、ドワーム」

「ええ――ダインスレイヴ隊だけで、片付けてしまえるでしょう」

 

 サロモニス艦長、フロレンシオ・レンフィールドの問いに、ドワームは確信を持って答えた。ドワームもガンダム・フレームのパイロットだが、どちらかと言えば艦のブリッジで指揮するコトが多い。

 ダインスレイヴを装備した機体が次々と出撃し、同時に装填を担当する機体も後ろに控える形でフォーメーションを構築して行く。オセアニア軍もヘイムダルの動きに併せて、ダインスレイヴ隊を並べ連ねる。

 

『――隊長、良かったんですか? ヘイムダルに艦隊の指揮権を委ねるなどして』

「そうですよ大佐。ともすれば十国の沽券にかk」

「何度も言わせるな、フィー。沽券云々はお偉方の考えるコトだ、現場の我々が知ったコトではない」

 

 オセアニア連邦国軍の艦艇は四隻、その旗艦たるハーフビーク級宇宙戦艦「キャメラス」のMSデッキに鎮座する「ガンダム・ウヴァル」のコクピットでは、MS部隊隊長のアイトル・ウォーレン大佐がそのように吐き捨てていた。

 彼に進言したのはキャメラスの艦長と、副官であるフィファ・ヴォイット中佐だ。なお、艦長は通信だが、フィファはウヴァルのコクピットを覗き込む形になっている。

 

「…しかし、何とも盤石――いや、マニュアル通りのやり方だな。つまらん。もっとこう、全軍突撃ーくらいは言ってほしいんだが」

「――訂正します。大佐に指揮させるよりよっぽどマシですね」

「オイ、それはどういうコトだ?」

「この突撃バカに好き勝手させずに済むので、わたしの負担が減りますねーという意味です」

「よーし表に出ろフィー」

 

 表に出ろ、と言いつつアイトルがフィファの胸ぐらを掴んだ所で、艦橋(ブリッジ)オペレーターの『展開、完了しました』との声がウヴァルのモニターから響いて来る。アイトルは手を離して、機体の正面モニターに艦正面のライブ映像を表示させ、フィファも一緒にそれを覗き込む。

 

「敵は視認出来てるんでしょうか? この暗礁宙域は障害物も多いですが」

「そもそも視認出来るかは問題じゃない。狙撃手のお前からすれば理解し難いとは思うが、ダインスレイヴは狙撃銃(スナイパーライフル)ほど正確な狙いを必要としないからな。

 ――しかし、有効に使うのが難しい環境であるコトは事実だ。ヘイムダルのお手並み拝見と行こう」

 

 一方、つまらんと酷評されているとは知らないヘイムダル所属艦「サロモニス」のブリッジに立つドワーム・エリオンは、目を細めて正面から見える景色を観察する。その目には、艦の前方に展開したダインスレイヴ隊が映っているコトだろう。

 展開したダインスレイヴ隊は、ヘイムダルとオセアニア軍を合わせて三十機ほど。大体3×10で、一面にズラリと並んでいるが――目標となる二十機のMAとの間には、少なからずコロニーの残骸が漂っている。直線攻撃となるダインスレイヴを使い辛い状況であるコトは、アイトルの言った通りだ。

 

「ダインスレイヴ隊、敵機の視認による照準が出来ていない模様です」

「構わん。――エイハブ・ウェーブが散布されているポイントは分かるな? そこを狙えば良い」

 

 その指示を受け、ダインスレイヴ隊は照準を定めた。魔剣の名を冠する弩弓に鉄針が装填され、全機が発射準備を整えた。

 

「全艦、周辺警戒を怠るなよ。――放て!」

 

 ドワームの一言で、ダインスレイヴ隊が一斉に火を噴く。オレンジ色の火線が次々と伸び、暗礁宙域を裂いて目標へと一直線に飛来する。道を阻むコロニーの残骸を粉砕し貫いて、ダインスレイヴはただ突き進む。

 艦隊に向かって接近を始めようとしていた、目標とされたMA群が、ダインスレイヴに襲われる。比較的初期に開発、建造されたMA群は、第一射となるダインスレイヴを受けて半数となる十機が損傷を負い、その内の八機が粉砕させられた。

 

「第一射、直撃! 八機撃破、二機中破!」

「第二射用意、ダインスレイヴ装填! 目標そのまま!」

「敵機、一斉に接近を開始!」

「――高熱源体、急速に近付く! ビームです、ビーム来ます!」

 

 オペレーターが叫んだ直後、正面からビームが飛んで来る。どうやら射程距離外から当てずっぽうで撃たれたらしく、ダインスレイヴ隊には当たらず、近くのデブリを打ち砕いた。

 

「ダインスレイヴ隊、装填終了!」

「一斉発射!」

 

 ダインスレイヴ隊が、全て同時に第二射を放つ。三十もの高速弾が同時に飛来しては、さしものMAも回避が難しい。この第二射で五機を撃破し、残る七機も多かれ少なかれ損傷を負わされた。

 

「後一射だな――次弾装填急げ!」

「敵機、なおも接近! 距離二千!」

 

 MAは、基本的に損害を厭わない。接敵したが最後、全機を打ち倒すまで戦いは終わらない。それは無人の戦闘機械であるが故の習性だ。

 しかし――下級の「天使」が持つ戦闘アルゴリズムは、決して複雑なモノではない。指揮者たる「天使長」などがいればまた動きも変わってくるが、そうでない場合は基本的に素直な行動を取る。ダインスレイヴの射線上であるにも関わらず、待避もせず突撃して来る程度には。

 

「全機、装填終わり次第発射せよ!」

 

 今度は装填が終わった者から、多少のタイミングのズレを生じさせながらも、ダインスレイヴが発射されていく。二度に渡る射撃でクリーンになった宙域を斬り裂きながら、魔剣は天使へと迫る。

 そうして――二十機全てが、ダインスレイヴによって撃滅させられた。

 

「全機、機能停止を確認!」

「――こんなモノか。全艦、第二種警戒配置に移行せよ」

 

 オペレーターの報告を受け、ドワームは軽く息を吐いた後、ダインスレイヴ隊に撤収を命じた。同時に、MAが殲滅される様を見守っていたオセアニア軍のアイトルも、鼻で笑うように息を吐く。

 

「フン――三度で二十機殲滅か。及第点だな」

「…上々では? 結局、敵の有効射程距離に入る前に殲滅出来たのですから。大佐は、ヘイムダルの指揮を気に入っていないのですか?」

「別に文句は無い。ただ、俺の趣味に合わんというだけだ」

 

 フィファの質問に、アイトルは吐き捨てるように言う。文句は無いと言いつつも、納得はしていないようだ。

 

「そうですか? 大佐よりよほど理性的で、わたしは良いと思いますが」

「お前さっきから何だ、上官に向かって」

『いやあ、こればかりはフィファさんに同意です』

『全くですよ。大佐に作戦立てさせてちゃ、命が幾つ有っても足りゃしませんからね』

 

 アイトルが率いるMS部隊の面々も、フィファの意見にほぼ同意している。わざわざ通信を開けて言って来ている始末だ。 

 

「ここぞとばかりに好き勝手言いやがって…よーし分かった、次の戦闘でお前ら真っ先に前に出ろ」

『大佐が出るなら出ますけどねえ』

『オイ馬鹿やめろ、そんなコト言ったらこの人ホントに前に出ちまうぜ』

『おっといけねえ』

「バカ言うんじゃねぇ、俺が出るからお前らも付いて来るのが筋ってモンだろうが」

『『『ヘイ喜んで』』』

 

 笑いながら言うアイトルに、部下も満更でもなく返答する。何だかんだと言いつつ、突撃バカのアイトルの部下は、それに付き合わされてなお、これまで生き残っている精鋭だ。今回はダインスレイヴ隊だけで片付いてしまった為に出番が無かったが、いざ出撃すれば、真っ先に敵へと突撃するのである。

 

「――今回の任務は、何が有るか分からない任務でもある。気は抜くなよ。艦長も分かっているな?」

『勿論。エイハブ・ウェーブ反応には常に目を光らせ、目視による観測も怠らせません』

「よし。ひとまずダインスレイヴ隊を回収し次第、ヘイムダルの命令通りに艦を発進させてくれ。

 ――特に隠密型にとっては、この暗礁宙域は絶好の狩場になるからな。隠密型専用の観測も常にしておけ」

 

 現在確認されている隠密型MA「アザゼル」は、ユーラシア連邦軍からの情報提供により、捕捉が可能になっている。それ以降は全く見かけなくなったものの、宇宙はまだ人類にとってアウェーの場所と言えるコトも有り、警戒しておくに越したコトは無いだろう。

 

「艦長。周辺警戒は常にさせておいてくれ。隠密型――『アザゼル』への警戒も同時にな」

「ああ、了解しているとも」

 

 そして、アイトルが艦長に命令したそれは、ドワーム・エリオンも同じように理解し、実行させているコトでもあった。暗礁宙域は視界が悪く、特に隠密型はエイハブ・ウェーブと目視の観測をしていても、見逃す可能性が有る。

 

「――この宙域に長く留まるのは気持ち悪い。さっさと目的を達成して、帰路に付きたいモノだ」

 

 戦闘終了から二十分の後、艦隊は再び発進した。




第三十四話「宇宙(そら)を裂く魔剣」をご覧頂きまして、ありがとうございました。

久々、しかもMSが登場してから初めての宇宙戦描写となりましたが、如何でしたでしょうか。
宇宙戦は基本的にダインスレイヴによる飽和射撃。
今回はラスタル様の先祖初登場ともあって、原作も思わせる感じになったかなと思います。

さて、何故彼らは生き残りもいない、危険しか無い暗礁宙域にわざわざやって来たのか?
それはまた次回、というコトでお願いします。

今回名前が出た「ガンダム・ウヴァル」はこれから先、戦闘した際に紹介する予定。
お知りの方もいるかと思いますが、外伝の「月鋼」で出た機体です。その時の装備は厄祭戦時のモノじゃないらしいので、ほぼオリジナル機体みたいなモンですけどね。


《新規キャラクター》
ドワーム・エリオン
・ヘイムダル、ドワームチームのリーダー。
・セブンスターズ第四席「エリオン家」の初代当主で、ラスタル様の先祖となる御方。

フロレンシオ・レンフィールド
・ヘイムダル所属艦「サロモニス」艦長。
・落ち着き有る有能な人。名前が長めですね(感想)

アイトル・ウォーレン
・オセアニア連邦国軍の大佐で、MS部隊隊長。
・「ガンダム・ウヴァル」のパイロット。月鋼に登場するギャラルホルンの名家「ウォーレン家」の初代当主でもある。

フィファ・ヴォイット
・オセアニア連邦国軍の中佐で、MS部隊の副官。
・突撃バカたるアイトルの手綱を引く人。アイトルからは「フィー」と呼ばれている。


《新規艦船》
サロモニス
・「ラファイエット級汎用戦艦」の二番艦。
・この世に二隻しかないラファイエット級の内の一隻。トリコロールカラーで割と派手。

ハーフビーク級宇宙戦艦
・四百メートル程度のオーソドックスな宇宙戦艦。
・多分みんなが原作で最も見慣れた戦艦の一つ。イサリビの次くらいに見慣れてるのではなかろうか。


《今回のまとめ》
・ラスタル様のご先祖、初代エリオン公登場
・ダインスレイヴ、マジ制圧射撃向き
・暗礁宙域に来た理由、目的とは?




次回「オセアニア連邦国」
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