厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》 作:アグニ会幹部
以前のバルバトスルプスレクスに続いて二機目…この流れでバエルも是非! 値段も見ずに即買いするよ私!
タイトルの「光神」は「ヘイムダル」と読んで頂きたく思います。
???「我ら、地球外縁軌道統制統合艦隊!」
???『面壁九年、堅牢堅固!』
M.U.0050年、六月五日。
フィリピン海を航行するナーワル級航空母艦「ヴァナディース」――ヘイムダルのチームが運用するこの艦は、今まさに新たな指令を受け取っていた。
「京都に向かえ?」
『そうだ。それが中連からの要請だ』
そのチームを率いる、白い長髪を持ち腰に赤い鞘の刀を提げる女性――カロム・イシューは艦のブリッジに立ち、ヘイムダル本部「ヴィーンゴールヴ」にいるディヤウス・カイエルに、任務内容を聞き直していた。
『キョウトがどこかは分かるか?』
「ええ、日本の古都でしょう? しかし、あそこは前世紀の大戦で壊滅的な被害を受け、現在は人の住まぬ地になってしまっていると」
『流石に詳しいな。――だが、キョウトの近くに有るオオサカ・コウベはシェルター化され、そこには中連の基地も存在している。最近、その周辺で小競り合いが幾度か発生しているらしくてな』
それで、中連――中華連盟共和国は、ヘイムダルに支援要請をして来たという訳だ。フン、とカロムを鼻を鳴らして。
「またあの不埒者ども――『フヴェズルング』が関わっているのですか?」
『いや、私見だがその可能性は低い。フヴェズルングの煽動は、現状イングランド、サハラ、アフリカンの三国に対してのみ行われているテロ行為だ。中連への攻撃はされていない』
とは言え、未だヘイムダルは(攻撃対象にされている三国は)フヴェズルングの真意を図れずにいる為、その可能性を視野に入れておく必要は有るだろう。
半月ほど前、三国の調査団により行われたフヴェズルングの本社へのガサ入れも、結局は徒労に終わったので、フヴェズルングへの捜査は予想以上に難航しそうだ。
『近頃は、内側がきな臭くなってきている国も少なくない。間違ってもクーデターなどに利用されないよう、注意して行動してくれ』
「分かっています。私達が討つべきは、あくまでもモビルアーマー…本来、人間ではないのですから」
『…それで良い。では任せたぞ』
ディヤウスはそう言い残し、通信を切った。
「艦長! 進路を日本に向けなさい!」
「ええ、了解していますよ」
艦長への命令を終え、軽く息を吐いたカロムは、その後ろに整列して控えていたチームのパイロット達――計十名に号令をかける。
「聞いての通りよ。例え何が起きようとも、私達が相対すべきは天使のみ――ただ、MAの殲滅のみに目を向けなさい。
我ら、
『
「――完璧ね。さあ、捻り潰してあげるわ!!」
◇
それからカロムのチームが乗る艦はフィリピン海から北上し、大阪湾へと進入。シェルター化された大都市圏「大阪・神戸」へと辿り着いた。
「順調そのものでしたね」
「ええ、MAのモの字も有りませんでしたわ。活動が活発化しているなら、一度くらいはエンカウントしてもおかしくありませんのに――中連は何故、キョウトに私達を行かせようとしてるのかしら?」
「私に聞かれても困るわ、ナトリア」
カロムが座すブリッジに設置された司令席の後ろには、現在瓜二つな二人の女性が立っている。
「ガンダム・フェニクス」のパイロット、ナトリア・デヴリンと「ガンダム・ハルファス」のエドゥアルダ・デヴリン――それぞれ片方の髪を縦ロールにしている双子の姉妹であり、戦場では抜群のコンビネーションを見せてくれる。
「キョウト、と言うと貴女の管轄になりますね」
「そうなるのかしらね」
エドゥアルダの言葉に、カロムはとぼけたように答える。カロムは日本かぶれであり、その象徴として腰の刀が有るようなモノなのだ。
「…カロム、貴女は何故日本かぶれの面白女に成り下がったのかしら?」
「成り下がってないわよ、成り上がったと言いなさい! 世は下克上の時代なんだから!」
「ちょ、縦ロールを引っ張らないで下さいまし!」
ナトリアの余計な一言を添えた問いに、カロムはナトリアの縦ロールを引っ張って対抗する。なお、右側を縦ロールにしたのがナトリアで、左側がエドゥアルダである。
ひとしきり引っ張ったところで、カロムはナトリアの縦ロールを解放し、正面を見据えて答えた。
「――弟が、好きだったのよ。昔は少し長い休みが有れば、家族で日本に出かけていた。台湾に住んでいたからそう遠くも無かったし、同じ国の中ならパスポートもビザも要らなかったから。
住んでいた村がMAに襲われて、いなくなってしまったけど」
カロムが生き残ったのは、MAが村を襲った時、シェルター都市「台北」に有る学校に行っていたからだ。孤児となって身寄りを失い、カロム一人では学費も払えなかったので、学校もやめざるを得なくなった。途方に暮れていた所で、カロムはヘイムダルに保護されたのである。
「…酷いコトを聞いてしまいましたわ」
質問したナトリアは、後悔したように謝ったが、カロムは「気にする必要は無いわよ」と軽く言ってのけた。ヘイムダルにいる時点で、皆が何かしらの事情を抱えているのだ。
それと同時に、艦内に警報が鳴り響いた。
「何事かしら!?」
「レーダーに感アリ――京都方面に、エイハブ・ウェーブを観測! 固有周波数、データベースに該当無し! 敵機です!」
「ッ…総員、第一種戦闘配置! モビルスーツ隊は順次出撃なさい!」
ナトリアとエドゥアルダと共に、カロムはブリッジを後にし、MSデッキへと急ぐ。
初動から三分と経たぬ間に、カロムは愛機である「ガンダム・パイモン」のコクピットに座った。阿頼耶識を接続し、網膜投影を開始。他のMSと共に出撃したパイモンが、日本の大地を踏みしめる。
「全機、整列!」
パイモンは足を肩幅に開き、唯一の武装たる特殊超硬合金製の太刀「クサナギノツルギ」を地面に突き立て、両手を柄の上に添えた。同じように、カロムの率いる十機のMS部隊が一列に並び、構える。
「我ら、
『
カロムの号令に、部隊のパイロット達が完璧に揃った掛け声で応えた。
この流れはカロムが好きでやっているのだが、付き合わされるパイロット達からも「気合いが入る」と好評だったりする。いつも通り、しかしてカロムのチーム特有の文化だ。
「良いわ、今日も絶好調ね!」
この号令だけでなく、カロム・イシューのチームは他のチームとは違った点が多い、特殊なチームと言える。
他のチームは全機がガンダム・フレームのMSで構成されているが、カロムのチームはそうではない。カロムが乗る「ガンダム・パイモン」、ナトリアの「ガンダム・フェニクス」、エドゥアルダの「ガンダム・ハルファス」とガンダム・フレームは三機のみであり、後はヴァルキュリア・フレームの「ブリュンヒルデ」と「ヴァルトラウテ」、残りの四機は全てオーガ・フレームのMS「トロール」で編成されている。
また、連携を重視し、常に陣形を組んでの集団戦を展開する。連携こそすれ、基本的に決まった陣形を組まない他のチームとは、戦い方自体も大きく異なっているのだ。
しかしながら、カロムチームは見事な連携プレーで多くのMAを最小限の損害で叩き、各地を転戦している。カロムの指揮力も相まって、数あるヘイムダルのガンダムチームの中でも、高い戦果を上げているチームなのである。
「敵群、残り一分二十秒ほどでこちらを射程圏内に捉えると思われます。数はおよそ十」
部下の一人から報告を受けたカロムは笑みを浮かべ、パイモンが地面に突き立てた刀を右腕で引き抜かせ、切っ先を前方に向けて言う。
「機械仕掛けの無法者どもに、鉄の裁きを下す!」
『鉄剣制裁!』
これに合わせ、それぞれが得物を地面に突き立てていたMS隊も、パイモンと同じように動く。
そして報告通り、敵MA群がカロムチームの視界に入った。子機プルーマを放出し、立ち並ぶカロム達目掛けて先行させて来る。
「蜂矢の陣――吶喊!」
『一点突破!』
全機が主武装を前方へ向け、一斉にスラスターを全開。パイモンを中心として、「∧」となるような陣形を取り、プルーマとMAの群に向けて一斉に突撃をかけた。
この陣形でプルーマを一気に蹴散らし、先頭のガンダム・フレーム三機が本体の懐に飛び込み、仕留める。場合によっては、同等の性能を持つヴァルキュリア・フレーム二機が支援――というのが、カロムチームの戦闘スタイルであり、基本的にこれだけで大半のMAは片付けてしまえるのだ。
「いつも通り、道を切り開くぞ!」
「ここが誰の空か、奴らに思い知らせてやる!」
隊を構成する六機のMS「トロール」は、アメリア合衆国の「アルカナ・フレーム」に続く形で中華連盟共和国が開発した、初期型のMS用インナー・フレーム「オーガ・フレーム」を採用した「YFK-01S 小鬼」を、ヘイムダルが改良した機体である。
武装は長剣「トロールソード」とマシンガンのみとシンプルに纏められているが、そのパイロット達の練度と士気は極めて高いと言えよう。
「目標接近! 接触まで後八秒!」
カロムチームの正面から迫るMAは十二機、その前を子機「プルーマ」が疾走している。
個々が持つ攻撃力は大したモノではないが、何よりも脅威となるのは、やはりその圧倒的な数だ。プルーマの生産能力を持つ機体と持たない機体が有るが、平均でMA一機につき二十機は随伴する。ナノラミネートアーマーを持っておらず、火力も低く、単純な動きしかしないとは言え、プルーマの軍団にたった一機で突っ込むのは流石に危険だ。
しかし、この「蜂矢の陣」ならば、難なく突破するコトが可能となる。
「接敵します!」
「フフ、恐るるに足らないわ!」
津波の如く襲い掛かって来るプルーマの群れに、全機が全速力で突っ込んだ。大した防御力を持たないプルーマは、その怒涛の前に呆気なく瓦解した。
「どけ!」
チームを構成するヴァルキュリア・フレームの一機「ブリュンヒルデ」が、大剣「ヴァルキュリア・ノートゥング」を振るう。一番機たるこの機体は、腰背部に接続したスラスターウイングユニット「ヴァルキュリア・グラーネ」が特徴であり、これによって大気圏内での飛行をすら実現する高性能機だ。
フレーム自体が軽い為、扱いが難しい本機を操るのは、シグルズ・ヴァーヴィン。イングランド統合連合国のエースパイロットだった男である。
「そこ、甘いな!」
もう一機のヴァルキュリア・フレームは、四番機の「ヴァルトラウテ」。長距離射撃が可能な「ヴァルキュリア・レールガン」と近接用の「ヴァルキュリア・アックス」を持ち、重装甲化して防御力を高めた機体である。
パイロットはヴァルミウス・ローケイズ――優れた判断力による適切なサポートを欠かさない男だ。
「行きますわよ、エド!」
「はい、姉さん!」
MA本体を射程圏内に捉えた「ガンダム・フェニクス」と「ガンダム・ハルファス」が、ピッタリ同時に飛び上がり、敵を上から見下ろす。
ナトリア・デヴリンの「ガンダム・フェニクス」は、変形機構を持つ数少ない機体の一つであり、戦闘機形態への変形を可能としている。それに伴って各所に設置されているバーニアと、背部のウイングバインダーにより、MS形態に於いても高い機動性を発揮せしめるのだ。
武装は斬撃も放てる細身の馬上槍「フェニクス・ランサー」と、刃を振動させて攻撃力を高める「フェニクス・アーマー」、飛行形態でも発射可能な両肩のレールガンを持つ。
一方、エドゥアルダ・デヴリンの「ガンダム・ハルファス」は、変形こそ出来ないものの背部にフェニクスと同型のウイングスラスターを装備すると共に、重装甲化されている。変形機構との兼ね合いで防御力が低下したフェニクスと同時運用を想定してのモノで、盾役としての役割を持つ機体である。
武装は銃身下部に「ハルファス・ブレード」を装備可能なライフルと、四本ものテイルブレードをバックパックに接続しており、フェニクスが近距離戦重視の機体であるのに対し、こちらは中距離戦を視野に入れた構成となっている。
「テイルブレード、射出…!」
「蹴散らして差し上げますわ!」
ハルファスが四本のテイルブレードを射出し、高速で駆動させる。フェニクスは右腕に槍を構え、左腕のアーマーを展開させ、敵群に向かって落下。相対するMAの装甲が次々と剥がされ、粉砕されていく。
そして、誰よりも快進撃を続ける者が一人。
「この程度の軍勢で、私達を止められるものか!」
カロム・イシューの駆る「ガンダム・パイモン」――「クサナギノツルギ」と呼ばれる太刀以外の武装を持たず、ただそれだけで数多の天使を斬り捨てて来た機体。
赤と白、武者鎧のような装甲を纏った悪魔が、面白いほどに敵をズバズバと斬り裂く。特殊超硬合金で錬成された太刀は、内部フレームごとMAを両断可能なほどの、恐るべき切れ味を誇っているのだ。
「これで!」
接敵から最後の一機を沈めるまで、五分足らず。
完成された陣形で抜群の連携を見せるカロムチームの強さは、他のチームと比べても特筆すべき点が有るモノだと言える。
『海中、沖合に新たなエイハブ・ウェーブを観測! こちらも固有周波数登録無し、敵です!』
しかし、敵は海からも襲って来たようだ。海中の敵に対しては陣形が使えない為、少々厄介になる。
「カロム、すぐに戻って――」
「慌てる必要は無いわ」
カロムがそう呟いたと同時に、海上に待機していたナーワル級航空母艦「ヴァナディース」の沖合で水しぶきが上がった。白い水柱が連続して発生すると共に、海中のMAが次々と撃墜されていく。
「そろそろ、中連軍との合流時刻よ」
カロムチームの到着と同時に、大阪・神戸基地に派遣される手筈になっていた、中華連盟共和国軍。その艦隊が、MA群への攻撃を開始したのだ。
カロム達が母艦の下へ戻る頃には、敵群は既に中連のガンダム・フレームを擁する部隊によって殲滅されていた。
『協力頂き、感謝する。私は中華連盟共和国軍MS機甲師団の
中連軍の艦隊は、ナーワル級航空母艦一隻と、マンリー級強襲揚陸艦四隻で構成されている。
その旗艦たるナーワル級航空母艦「
『まずは我が軍の基地に入港を。詳細な話はそれから、と言うコトでお願いしたい』
カロムのMS部隊は母艦に収容され、艦隊と共に大阪・神戸に隣接する中連軍の基地に入港した。
第四十三話「
ちょっと短めですが、今回はここまで。
イシュー家の華々しき戦歴と美しい戦いぶりをご紹介出来て満足です。
中華連盟共和国軍、略して中連軍の皆様の紹介は次回以降やって行きます。
これに伴いまして、最後に出した「ガンダム・フォルネウス」とパイロットの
《新規機体》
ASW-G-37 ガンダム・フェニクス
・ヘイムダル、ナトリア・デヴリンの機体。
・「フェニックスガンダム」やユニコーンガンダム三号機「フェネクス」を思い浮かべた人がいると思う。左腕の「フェニクス・アーマー」はバンシィの「アームドアーマーVN」を想像すればオッケー。
ASW-G-38 ガンダム・ハルファス
・ヘイムダル、エドゥアルダ・デヴリンの機体。
・「ハルファスガンダム」を思い浮かべた人g(ry
フェニクスの盾役担当。四本のテイルブレードを持ち、割と殺意が高い。
V01-0206 ブリュンヒルデ
・ヘイムダル、シグルズ・ヴァーヴィンの機体。
・武装は大剣が一本のみで飛行能力が売りと、アグニカポイントは高め。ヴァルキュリア・フレームの中でかなり武装名が凝っているが、単純に元ネタとなる伝承(物語)の量の問題である。
V04-0210 ヴァルトラウテ
・ヘイムダル、ヴァルミウス・ローケイズの機体。
・武装はレールガンと斧。このレールガンのデータが後のレギンレイズに生かされてたら良いなー、と勝手に思っている。
YFK-01SH トロール
・ヘイムダルのカロムチームで運用されている、オーガ・フレームの機体。
・「YFK-01S 小鬼」という中連の開発した機体の改造機なのだが、そもそもそいつが本編に出てないので解説し辛かったという…出す順番を考えるべきでしたねこれは。
《新規キャラクター》
ナトリア・デヴリン
・ヘイムダル、カロムチームのパイロット。
・右側縦ロールの人。口調は「Fate」シリーズに出て来る縦ロールの人、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト嬢をちょっと意識しています。
・一回「デブリン」ってミスタイプして、「デブじゃねぇから!」と一人ツッコミした。すみません。
エドゥアルダ・デヴリン
・ヘイムダル、カロムチームのパイロット。
・左側縦ロールの人。口調は「とある科学の
・ナトリアとは双子の姉妹で、こっちが妹。
シグルズ・ヴァーヴィン
・ヘイムダル、カロムチームのパイロット。
・元イングランドの軍人。「ブリュンヒルデ」に乗るパイロットの名前としては、これ以上無いネーミングだと自負しております。
ヴァルミウス・ローケイズ
・ヘイムダル、カロムチームのパイロット。
・こっちは別に名前に拘りは無い(オイ) 今回は書いてる途中、ヴァナディースだのヴァルキュリアだのヴァーヴィンだのヴァルトラウテだのヴァルミウスだの、ヴァが多すぎて予測変換がカオスと化していた。
《今回のまとめ》
・我ら、
・南征北伐、鉤心闘角!
・右から二番目、遅れてる!
次回「中華連盟共和国」