厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》 作:アグニ会幹部
慣れの問題なんですが、これまでのATOKさんがちょっと特殊だったコトも有って、入力ミス連発中。
地球衛星軌道上に存在するサテライトベース「グラズヘイム」。
ヘイムダルを始めとし、現在は各国の宇宙軍が利用している宇宙港にして、艦隊の駐屯地である。
「グラズヘイム」の名を持つ、ヘイムダルの主導で建造された物は全部で三基。この他にも、各国が建造した民間宇宙港の「ユトランド」が二基存在しているが、現在は二基ともが軍に接収され、宇宙艦隊の駐屯基地として使用されている。
その内の一基である「グラズヘイム2」に、ヘイムダルのガンダムチームの一つ、フェンリス・ファリドの率いるチームが集結していた。
「それで、どういうコトだフェンリス。何で俺達が
基地内の食堂、その一画に座してマッシュポテトを豪快に口に入れながら、フェンリスチームの一員であるクリウス・ボードウィンがリーダーたるフェンリスに問う。フェンリスは微笑を浮かべながら、友人の問いに答える。
「勿論、任務の為さ。今回は宇宙での戦闘になる。その為に、お前のキマリスも装備変えしたんだ」
「そんなコトは分かっている! 具体的に、何処で何をさせられるんだ?」
「それは私にも分からんよ。だから、教えてくれる人物と此処で待ち合わせる手筈だ。そのついでに腹ごしらえをしているんじゃないか」
「――教えてくれる人物、ですか?」
チームメンバーの一人、レタ・クィルターの言葉に、フェンリスは頷く。
フェンリスチームに属するガンダム・フレームのパイロットは、フェンリスを含めて五人――「ガンダム・アスモデウス」を駆るフェンリス・ファリドと、「ガンダム・キマリス」を駆るクリウス・ボードウィン。「ガンダム・ベレト」のレタ・クィルターと、「ガンダム・ボルフリ」のグラツィア・アンヴィル、「ガンダム・デカラビア」のクジナ・ウーリーである。
その時、彼ら五人に声をかける人物が一人。
「失礼――ご一緒してよろしいか?」
「ええ、勿論」
ヘイムダルの五人は、男二人と女三人に分かれ、机を挟んで座っている。声を掛けた黒髪の男性は、プレートを机に置いてフェンリスとクリウスの隣に座った。
唐突に乱入して来た男に、グラツィアが素性を問いただす。
「貴方は?」
「ふむ、自己紹介を忘れていたな。
私はイシュメル・ナディラ中将――サンスクリット連邦共和国軍のパイロットだ。モビルスーツ隊の隊長で、『ガンダム・グレモリー』を預かる」
敬礼と共にそう述べた男に対し、ヘイムダルの面々が驚きを露わにした。そして、唯一驚いていないフェンリスに問い詰める。
「じゃあ、任務内容を教えてくれる人物って――」
「ああ。ナディラ中将は、今回の作戦で連合艦隊の指揮官を務められる」
「イシュメル、で構わない。お前達は軍属ではないのだろう? …ところで、自己紹介をしてくれると助かるのだが」
イシュメルの言葉を受け、全員が軽く名を名乗った。紙パックにストローを差し、ミルクで喉を潤しながらそれを聞き届けたイシュメルは、情報端末をフェンリスに渡した上で、説明を開始する。
「今回の目的地は、我がサンスクリットが建造したグレイシャーコロニー群。ラグランジュ1に存在していたが、現在はモビルアーマーの攻撃で崩壊し、暗礁宙域になっている」
「…生存者がいないなら、どうしてそこに?」
「このコロニー群の周辺に配された『アリアドネ』の中継コクーン、その反応が唐突にロストしたと聞いている」
「アリアドネ」――エイハブ・ウェーブの影響下でも惑星間航行を可能にする管制システム及び、その航路の総称である。ヘイムダルが十国の援助を受けて、つい最近構築し終えたモノだ。
約百万キロメートル間隔で配置された、エイハブ・リアクターを搭載した自立型の宇宙灯台「コクーン」からなり、それぞれを連動させる仕組みになっている。惑星間航行を行う艦艇はこの中継コクーンから発生する一定周期のエイハブ・ウェーブを感知し、現在地を把握しながら航海する。LCSレーザー通信の中継地点としても機能する他、隣接するコクーン同士は互いのエイハブ・ウェーブによって自身の座標を常時特定し、軌道がズレても自動で修正する優れモノである。
「アリアドネの中継コクーンが? …確かに妙だ」
「――何故だ? エイハブ・リアクターを積んでいるなら、MAの攻撃対象になってもおかしくないんじゃないのか?」
「中継コクーンは無人運用されている。奴らは人間を狙っているのであって、エイハブ・リアクターを狙っている訳ではない。そもそもエイハブ・リアクターは破壊不可能な代物だからな」
要するに、MAには中継コクーンを狙う理由が無い――と言うより、狙うハズが無いと言える。では何故、このコクーンの反応が消えたのか。
「このまま不可解な現象を放置しておく訳には行かない。だから我々が調査に向かう。
…ついでに、グレイシャーコロニー群の調査もする。公式の調査団も同行し、これについては結果が報道されるコトになっていてな」
「調査、ですか。MAに襲われたなら、間違い無く生存者はゼロ――コロニーの残骸が漂うだけで、調査も何も無いと思いますが?」
フェンリスの質問に、イシュメルは肩を竦ませて答える。それも、又聞きであるかのように。
「国民の納得を得る為には、キッチリ第三者組織が調査した上で事実として公表する必要が有る――らしい。まあ、その辺りは政治家の領分なので私が知ったコトではないがな」
イシュメル曰く、サンスクリット軍の旗艦に乗り込む「公式の調査団」は、軍の調査隊ではなくあくまで民間で編成されたモノだと言う。現場の者からすればド素人を艦に乗せるなどクソ食らえだが、そこは上層部の命令なので、一端の将官でしかないイシュメルには如何ともし難い。
「――サンスクリットは確か、現職の大統領が長年実権を握っていて、事実上の独裁政権を強いているとのコトでしたか」
「まあ、ぶっちゃけてしまえばその通りなんだが…現場の軍人には、あまり関係の無い話だよ」
サンスクリットの大統領アールシュ・パールシーは、軍部に対しては相当の予算を割いている。なので、軍部からすれば大統領が変わったら変わったで困る立場には有るのだが――その辺りは、上層部のお偉方が考えるコトだろう。
「それはともかく、出発は三時間後を予定しているが――出来るか?」
「MSの積み込みは終わっています、問題無く」
「では頼む」
そうこう言う間に、イシュメルはデザートのプリンまでを食べ終えて、席を立った――その時。
「ナディラ中将! イシュメル・ナディラ中将はおられるか!?」
そう言いながら、食堂に髭を生やした
その目的たる人物は「やべっ」と呟いたが、既に髭の男はイシュメルを視界に捉えている。
「艦隊指揮官が、こんな所で何をなさっているのですか!?」
「そう言うな、落ち着けよセグラ。せっかく黙ってれば寡黙なシブメンに見えると言うのに」
「いいえ、これを気にハッキリと言わさせて頂きます! もう良い年ですよ、いつまで学生気分でブラブラと護衛も付けずに出歩いているんですか! 軍の基地内ならまだしも、こんな他国との共同の基地で――おや? そちらの方々は?」
凄まじい速度で説教を繰り出していた髭の男は、ようやっとフェンリス達を認識したらしく、イシュメルに問う。
「今回共同戦線を張る、ヘイムダルのパイロット達だ」
「何と! …これは失礼致しました。
私はサンスクリット連邦共和国軍MS部隊副隊長、セグラ・ジジン大佐です。ヴァルキュリア・フレーム三番機『オルトリンデ』を預かっております」
敬礼して名乗った髭の男――セグラ・ジジン大佐に、フェンリス達は軽く頭を下げた。「此度はよろしくお願い致します」と丁寧に述べた後、セグラはイシュメルに向き直ってその腕を掴んだ。
「さあ行きますよイシュメル様! 出発に際しての仕事が新たに舞い込みましたので!」
「オイちょ、待てセグラ! 待っ、待てー!」
「待ちません」
「待てってんだよ! …ヘイムダル、出発時間はさっき言った通りだからよろしく頼む!」
かくして、イシュメル・ナディラ中将は腹心の部下であるハズのセグラ・ジジン大佐に引きずられ、食堂を後にした。
「…何だったのよ、アレは」
「――分からねぇ」
残されたヘイムダルのフェンリスチーム一同は、しばらく唖然としたまま、イシュメルが消えて行った食堂の入口を眺めるのだった。
◇
打ち合わせを兼ねたお食事タイムが終わり、ヘイムダルのフェンリスチーム一同は、今回の作戦で母艦となるハーフビーク級宇宙戦艦「ヴォルフウールヴ」に乗り込んでいた。
ガンダム・フレームや物資の積み込みも完了し、サンスクリット軍も交えた必要な協議、確認も終了し、後は出発時間を待つだけである。
「…………」
出発時間まで余裕が有り、しばらく暇になったチームリーダーのフェンリス・ファリドは、艦内の展望室で足下の地球を適当に眺めながら、暇を潰していた。――正確には、少し考え詰めていた。
「綺麗ですよね、地球って」
「――レタか。いきなりどうした?」
そんなフェンリスの背中に、少女が声をかけた。フェンリスチームの一員であり、「ガンダム・ベレト」のパイロット――レタ・クィルターが。
「多分、フェンリスと同じですよ。出発時間までの暇を潰しに来ました」
開け放たれた展望室に入って来たレタは、部屋の奥に進んでフェンリスの隣に立ち、同じように地球を眺める。彼女の右側だけが白く変色した紫髪を見下ろして、フェンリスは目を細めた。
度重なるガンダム・フレームの「覚醒」で、レタは身体の右半分が真っ白に変色していた。脱色、と言えるかも知れない。その部分は常に同じ色で、赤い光や青い光などを当てても白いままで、影などが出来るコトも無い。機体と阿頼耶識で繋がった時だけは元通りの色になるが、そうでない時は真っ白。
ヘイムダル本部「ヴィーンゴールヴ」にいる、世界最高峰の医師ダスラ・アシュヴィンですら、何故そうなっているか分からないと匙を投げた不可解な現象――それは「贄」として、レタが悪魔に身体を捧げた証なのだ。
「…そんなに見つめないで下さい」
「あ、ああ。――すまない」
「? 何がですか?」
「いつも、キミにばかり『覚醒』を任せている。――私など、一度もやったコトが無い。キミが聞くという『悪魔の声』も、私には聞けない」
阿頼耶識で機体と繋がった時、レタには「悪魔の声」と言うモノが聞こえるらしい。会話すら出来ると言うのだ。阿頼耶識システムの開発者であるマヴァット・リンレスは、この現象について「悪ー魔との親和ー性が高いーコトのー証だろーう!」と述べ立てているとのコトだが。
一方、フェンリスにそんな経験は無い。「覚醒」をしたコトすら一度も無い。やろうと思ったコトは有るが、未だに出来ずにいる。
「私が勝手にやっているコトですから、貴方が気に病む必要は無いですよ。貴方が私に『やれ』と言ったコトなんて無いんですから」
「だが…」
「リーダーはリーダーらしく、ドーンと構えていて下さい。真っ先にフェンリスが『覚醒』して敵の中に突っ込んで行ったら、誰が指揮を取るんですか?
それに――」
レタは一拍置いて、フェンリスの碧眼を見上げながら、意気揚々とこう言った。
「――嫁ぎ先は決まってますからね!」
「…アレは本当に本気だったのか」
「む、酷いですよフェンリス! 私は恋に恋する乙女ですから!」
「自分でそれを言うのか…」
「ふふん、たまにはキスくらいしてくれても良いんですよ! 許します!」
以前、オデッサ奪還作戦後に言われたコトを思い返しながら、フェンリスはレタの言葉を受けて意味有りげに「成る程」と呟き――腰を曲げ、同じ高さでレタと目を合わせた。顎に右手をかけ、軽く上向かせる。その距離、僅かに十センチ。
いきなり距離を詰められたレタは、たちまち茹で蛸のように顔を赤くし、驚きで目を見開いた。
「(おおお! 急接近、これは良い流れね!)」
「(ち、近すぎませんの!? というか、フェンリスってロリコンだったのかしら!?)」
「(Oh、我が友への風評被害が。落ち着けグラツィア、レタは十六歳だ。ギリギリセーフだ多分)」
その二人の様子を部屋の外から見守る影が三つ。チームメンバーのクジナ・ウーリー、グラツィア・アンヴィル、クリウス・ボードウィンだ。この三人は、最近何か良い感じになっている二人が気になって気になって、観察している。常日頃。
一方、急接近されたレタはそんな三人の存在に気付いていない。
「ふぇっ!? え、ええと…あの、その――初めてなので、優しく…」
「――ところでレタ。入口の方を見ると良い」
「…って、ええ? 入口?」
レタが部屋の入口に目をやると――何かがはみ出ているのが見えた。青い布のようで、服の端だと思われるが。
「――誰か、いるんですか?」
「「「(ギクゥッ!)」」」
「ああ。肩掛けが見えているぞクリウス。それとグラツィア、クジナ」
レタは気付いていなかったが、フェンリスは気付いていた。バレてしまった三人の内、グラツィアとクジナが、二人がかりでクリウスが肩に掛けている青い布を後ろから引っ張り始めた。
「ちょ、苦しい! グラツィア、何するんだ!?」
「これね! これのせいね
「お、俺に言うなよ! 支給された服がこれだったんだから仕方無いだろ! それを言うなら、フェンリスも色違いの奴を掛けてるし、アグニカとかもっと長いだろ!?」
「この、佐官気取ってんじゃないわよ! 鬱陶しくないのこの布! 名前知らないけどダサいわ!」
「オイちょっと待てクジナ、直球ディスりはやめてくれ! 心が傷つくから! 俺こう見えてもナイーブだし、というかこの布ちょっと格好良くない?」
「その髪型とあの戦い方でナイーブだとか言うな!
…そう言えば貴方、
「いや、お前の機体は盾ばっかり持ってるから必然的にそうなってるだけなんじゃ」
「言い訳無用、みっともないわ! あの時はちょっと格好良いかもとか思ったのに、
「何か前々から思ってたけど、お前達って俺への扱い酷くない? 盗っ人なんて失敬な、せめて怪盗と呼んでくれ。俺はお前の心を盗んでやるんだ」
「あら? もしかしてここにもフラグ立ってる? つくづくアタシをニヤつかせてくれるわね」
賑やかな三人を見て、レタは微笑みを零した。フェンリスは時計を一瞥し、手を叩いて取っ組み合いを制止する。
「お前達、そろそろ時間だ。持ち場に戻るぞ」
「何、もうそんな時間か? …グラツィア、俺のペリースを返してくれ」
「よく見たら汚れてるから、返す前に洗ってあげますわ。今日明日は無しで我慢しなさい」
「て言うか、そんな名前だったのねその布」
かくして、ゾロゾロと三人は部屋に背を向け、それぞれの持ち場へと戻って行く。レタもそれに続いて、部屋を出ようとした――時、フェンリスに呼び止められた。
「レタ」
「何です――」
か、と問おうとした声は、そこで止まった。
フェンリスがレタの髪をかき上げ、その額に口付けたコトによって。
「――許してくれ」
触れたのは一瞬。体勢を低くしていたフェンリスは一転して背中を伸ばし、その一言を言い残して展望室を後にした。
唯一残されたレタは、何も言うコトが出来なかった。自分の額に右手を当てたまま、しばらくそこに立ち尽くすのだった。
◇
「グラズヘイム2」を出発してから、数日。
ヘイムダルとサンスクリット軍の連合艦隊は、MAの襲撃を受けるコト無く、平和にラグランジュ1――元グレイシャーコロニー群、現グレイシャー暗礁宙域へと到着していた。
「…宇宙はMAの勢力圏じゃなかったのか?」
「アリアドネに沿って進んでいたからな。しかし、暗礁宙域では視界が制限される。来るとすれば此処だぞ」
ハーフビーク級宇宙戦艦「ヴォルフウールヴ」のブリッジで、フェンリスとクリウスはそう話す。現在はサンスクリットの民間調査団が、モビルワーカーを用いての調査活動を行っているので、ヘイムダルは第二種警戒配備のまま待機している状態だ。
今回の連合艦隊はハーフビーク級宇宙戦艦四隻、バラクーダ級強襲装甲艦二隻の計六隻で構成されている。ヘイムダルの戦艦は一隻、残りは全てサンスクリット軍の艦艇である。
「しかし、民間の調査団とは――大国も大変だな」
「大統領も人気取りに必死なのさ。特にサンスクリットのような一党独裁の国では、長年居座っていると言うだけで、ある程度の反発が起こるモノだ」
「成る程な。よく分からんが」
「…クリウス。如何にヘイムダルが中立の国際組織で、内政不干渉が絶対とは言え、その理解度ではまずいだろう。少しは勉強した方が良い」
「そうか、気をつける」
フェンリスが軽くクリウスに忠言した時、サンスクリット軍から調査終了との報が入った。これでようやく、今回の本題に乗り出せる。
民間調査団のMWが収容され、艦隊はアリアドネの中継コクーンが有ったハズのポイントへと移動を開始した。
「やれやれ、やっとか」
「ああ。該当コクーンのエイハブ・ウェーブは拾えているか?」
「固有周波数と一致するウェーブを拾っています。ポイントから十キロほどズレていますが」
オペレーターの報告を受けて、フェンリスとクリウスが唸る。自動で自身の座標を修正するハズのコクーンが、十キロもズレている――何かが起こったのは間違い無さそうだ。
「ひとまず、コクーンのリアクターを見つけねばなるまい。そこへ向かってくれ」
「…普通なら有り得ない軌道のズレ方だな。ただの故障ならまだ良いんだが」
「さて、それは調べねば分からんさ。ただの故障だとしても、その原因を特定して然るべき対策を打たなければなるまい。放っておけば、他のコクーンでも同じようなコトが起こりかねんからな」
それから十数分、暗礁宙域の中を航海し、艦隊は遂にそのエイハブ・ウェーブの発信源たる物体を有視界距離にまで捉えた。
「映像撮れました、正面に出します」
「頼む」
フェンリスが言うと、実際の映像がブリッジ正面のモニターに映し出された――のだが。
「――これは!?」
「何だと…!?」
そのコクーンは、
内部のエイハブ・リアクターが剥き出しになり、その周囲にはコクーンを構成していた部品が破片となって集まっている。破壊された後、散らばった破片がリアクターから発生する重力に引き寄せられ、その光景を作り出したようだ。
「デブリと衝突して壊れた――という訳でもなさそうだな…」
「そうだろうな。ここまで原型が無くなっているなど、ただ事ではない。少なくとも、ただの事故や故障ではないようだ」
クリウスとフェンリスは、一目見てそう推測を立てた。詳細な調査をし、壊れたのか壊されたのか、原因を究明せねばならない。
「とにかく、出来うる限りの調査をしよう。ギリギリまで艦を近付けてくれ」
周囲に浮いている残骸にぶつからないよう、艦隊は慎重に相対距離を詰めて行く。――が。
「十二時の方角、エイハブ・ウェーブ観測! 固有周波数…該当無し! MAです!」
「何!?」
「こんな時に…!?」
「高エネルギー体、接近!」
艦隊がMAを観測すると同時、遠距離ビームが崩壊したコクーンの向こう側から飛来した。サンスクリット軍の艦の一隻、バラクーダ級強襲装甲艦「バルトリハリ」に直撃したビームは、ナノラミネートアーマーによって拡散させられ、周囲のデブリを撃ち砕いて行く。
「『バルトリハリ』に直撃!」
「クソ、酷いタイミングだな!」
「ブリッジ遮蔽、第一種戦闘配置! 全MS、出撃させろ! ――艦は任せた、私も出る」
「御武運を」
ブリッジを去ったフェンリスとクリウスは、一分もかけずにパイロットスーツに着替え、MSデッキに有る愛機の下へ辿り着いた。
阿頼耶識を接続し、システムを起動させる。
「全く、何でこうも邪魔してくるんだアイツら!」
「奴らはそういう風にプログラムされている。嘆いた所で仕方が有るまい。
…フェンリス・ファリド、ガンダム・アスモデウス――出るぞ」
「クリウス・ボードウィン、ガンダム・キマリス――出撃する!」
元からMSデッキで待機していた為、既に出撃し終えている他のパイロット達に続き、フェンリスとクリウスも出撃した。
一方、サンスクリット軍の旗艦「カーリダーサ」では、MS隊隊長のイシュメル・ナディラ中将が、出撃準備を終えて愛機のコクピットに座っていた。
「ッ――やはり来たか、MAめ…!」
「イシュメル様、お先に失礼致します。
…セグラ・ジジン、オルトリンデ――行くぞ!」
MS隊副隊長のセグラ・ジジン大佐が操るヴァルキュリア・フレーム三番機「オルトリンデ」が、先んじてカタパルトから射出された。
続いて、イシュメルの機体が艦底部のカタパルトに移動し、固定される。
「MS隊、出遅れるなよ。
――ガンダム・グレモリー、参る!」
カタパルトがレールを滑り、死神を解き放つ。
イシュメル・ナディラが駆りし「ガンダム・グレモリー」は、黒き宇宙へとその暗駆を隠した。
第四十五話「サンスクリット連邦共和国」をご覧頂き、ありがとうございました。
次回からが本格的な戦闘です。割と最後の一文が気に入ってたりする。
それにしても、フェンリスの口調はマッキー、クリウスの口調はガリガリ(初期)にしてるからか、何だかとっても書きやすい。二人の会話は特に。
脳内再生も余裕で出来る。声優さんは偉大。
一応、フェンリスチームの女の子二人(レタちゃんとグラツィアちゃん)は割と重要めなキャラです。
別に何も考えずに会話シーンとかぶち込んでる訳じゃないのよ(そりゃそうだ)
サンスクリット属のMSとキャラは、外伝の「月鋼」に出て来る方々と深く関わっているので、もう今回で紹介しておきます。
次回にいっぱい詰め込むのもアレですしね。
《新規機体》
ASW-G-56 ガンダム・グレモリー
・サンスクリット、イシュメル・ナディラの機体。
・「月鋼」に登場。ギャラルホルンの名家「ナディラ家」の次期当主デイラ・ナディラが運用する。
・「ナノラミネートコート」を採用しており、ダインスレイヴ級の火力が有ってようやく装甲をブチ抜けるかってくらい硬い。三百年後には錨型武器「バトルアンカー」の片刃が折れているが、今の所は折れていない。折らなきゃ(使命感)
V03-0907 オルトリンデ
・サンスクリット、セグラ・ジジンの機体。
・「月鋼」に登場。「ナディラ家」に仕える「ジジン家」当主で、内部統制部隊「オレルス」の隊長を務めるジジル・ジジンが運用する。
・ダインスレイヴを用いた一撃離脱戦法を得意としているが、三百年後には射出器が「ヴァルキュリア・ダブルブレード」に改装されている。今作ではこれに射出器を増設して、ダインスレイヴを運用するという設定になった。
《新規キャラクター》
イシュメル・ナディラ
・サンスクリットの軍人で、階級は中将。
・後のギャラルホルンの名家「ナディラ家」の初代当主にして、デイラ・ナディラの先祖でもある。
セグラ・ジジン
・サンスクリットの軍人で、階級は大佐。
・「月鋼」に登場するギャラルホルン内部統制部隊「オレルス」隊長、ジジル・ジジンの先祖。
《新規艦船》
バラクーダ級強襲装甲艦
・三百メートル級の強襲装甲艦。
・原作にて登場する「イサリビ」や「ホタルビ」、「ハンマーヘッド」を始め、ブルワーズ艦やオルクス商会、夜明けの地平線団の艦などがこの艦級にあたる。
・公式設定では「強襲装甲艦」「汎用戦艦」などと呼ばれており、艦級名が不明だったので、勝手に名付けた。何で艦級名を設定してないんですかね?
《新規設定》
グラズヘイム
・地球軌道上に存在するサテライトベース。
・「グラズヘイム1」「グラズヘイム2」「グラズヘイム3」の三基が建造されており、宇宙艦隊基地として、現在は十国とヘイムダルが共同で運用。
・戦後はギャラルホルンが管理、運用している。
ユトランド
・地球軌道上に存在する民間宇宙港。
・二基が存在しているが、現在は十国の軍が接収、宇宙艦隊の駐屯基地として運用されている。
・戦後は民間に変換されている。
グレイシャーコロニー群
・ラグランジュ1に存在していたが、例に漏れずMAに蹂躙され、現在は暗礁宙域と化している。
《今回のまとめ》
・国のお偉いさんも大変だよね
・爆発しろロリコンめ(多分ギリギリセーフ)
・ナディラ家、ジジン家の先祖登場
次回「激戦の果てに」