厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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マキオンの先行体験会が始まりました。
バエル楽しいです。アグニカ運送とアグニカエレベーターの快感がヤバい。ハマってしまいそう。


#48 マリオネット

 翌日。ヘイムダル、アグニカ・カイエルのチームが運用するラファイエット級汎用戦艦「ゲーティア」は、アフリカン共和国軍の艦隊と共に、キリマンジャロ・ベースを出立した。

 目的地はキリマンジャロ山の南、インド洋上に位置するザンジバル島である。

 

「ザンジバル島は、本土に程近いにも関わらず、モビルアーマーの一大拠点となっている。本艦はここを叩いてからそのまま南下し、ヨハネスブルグに向かう」

 

 艦のブリッジで、アグニカが作戦の詳細についてチームメンバーに軽く説明した。それを聞いて、アマディス・クアークが手を挙げて質問する。

 

「何でヨハネスブルグに?」

「それは俺も知らん。アフリカンからの要請だ」

「…行けば分かるだろ」

「大駕の言う通り、まずはザンジバル島の奪還作戦に集中すべきだろう。

 アグニカ、我々のやるべきコトは、ここに突っ込んで殲滅するだけか?」

 

 ソロモン・カルネシエルの問いに、アグニカは頷きつつも、こう続けた。

 

「モビルスーツ隊が突入するより前に、キリマンジャロ・ベースからの長距離射撃が行われる手筈だ。山頂のビーム砲台の一基を使ってな」

「キリマンジャロ・ベースの、って…この距離で届くんですか!?」

 

 アフリカン共和国軍最大拠点「キリマンジャロ・ベース」の山頂には、五基のビーム砲台が円形に配置されている。今回使われるのはその内の一基、通称「ンガイエ」である。

 

「ギリギリだが、届くには届くらしい。かなり拡散するから、ナノラミネートアーマーへの有効打は期待出来ないが、プルーマの掃除にはなるだろ」

 

 トビー・メイの驚きは尤もだ。いくら大型のエイハブ・リアクターと直結したビーム砲とは言え、大気圏内で三百キロメートル離れた地点に届くなど、並みの出力ではない。

 

「ビーム砲による狙撃は、艦隊が百キロまで近付いてからだ。時間にして二時間後、それまでに出撃準備を整えて待機しておくように。

 ディリゲントさん、ゲーティアは『クラウ・ソラス』と『カラドボルグ』の発射態勢を」

「ほう――分かった」

「今回は速攻になる。ビーム砲の砲撃に続いて行われるアフリカンの艦隊による艦砲射撃と同時に、ゲーティアからも二発撃ち込み、敵が陣形を立て直す前にMS隊が突入。一気にケリを付ける算段だ」

 

 アフリカン軍の艦隊は、海上艦隊と地上艦隊に分けられる。海上艦隊はナーワル級航空母艦二隻、マンリー級強襲揚陸艦五隻からなり、地上艦隊はマッケレル級地上戦艦三隻で構成されている。

 

「敵は基地か何か造ってるのか?」

「いや。観測する限り、外見的にはただの自然豊かな島らしい。敵は森に姿を隠しているか、何か築いているとしても地下だろうな」

「――つまり、森を焼き払って炙り出す?」

「そうなるな」

 

 作戦時間は二時間以内が理想だ、とアフリカン共和国軍のMS部隊隊長アーヴィング・リーコック中佐は説明した。

 

「まあ――俺達がやるコトはいつもと変わらない。準備にかかろう」

 

 

   ◇

 

 

 二時間後、艦隊が目的地から約百キロ北の地点に到達した頃――キリマンジャロ・ベースが動いた。

 

「艦隊、予定通りカレンジ島を通過した模様」

「よし――『ンガイエ』起動!」

 

 五千メートル越えのキリマンジャロ山の頂上、氷河に覆われたカルデラの中から、一基の大型ビーム砲台が姿を現す。

 大型のエイハブ・リアクターが砲口の反対側に接続されており、旧時代の映写機のような形状をしている、五基在るビーム砲台の内の一基だ。

 

「エネルギーチャージ、百パーセント。出力、最大で固定」

「照準、目標地点『ザンジバル島』」

「送電スタート。粒子圧縮開始、冷却システム正常――オールグリーンです」

「発射シークエンス開始、カウントダウン始め!」

「カウントダウン、開始します。発射まで後五十、四十九、四十八、四十七――」

 

 キリマンジャロ・ベースの建造とビーム砲台の設置からしばらく経つが、三百キロ以上先を目標とするのは今回が初めてだ。大気圏内である以上、ビームは減衰するので、有効射程圏外になるザンジバル島に対し、どれくらいの効力を発するかは不明としか言えない。

 それでも、開戦の号砲には相応しいと、今回の作戦に採用された次第である。

 

「――五、四、三、二、一…」

「『ンガイエ』掃射、開始します!」

 

 砲口から、赤き炎が吐き出される。本来ならばコロニーの動力にされるサイズのエイハブ・リアクター一基の出力を全て集中させた、まさしく神の山より放たれるに相応しい猛火、破壊の奔流である。

 触れた氷河を一瞬で蒸発させ、山を覆う雲を引き裂いて、拡散し減衰しながらも、目標地点であるザンジバル島へと突き刺さった。

 

「全艦、全砲門開け! ――撃ち方始めッ!」

 

 遠距離射撃による爆発に島が覆われた直後、間髪入れず、アフリカン軍艦隊が艦砲射撃を開始する。二連装主砲が、ミサイルランチャーが放たれ、弾薬が島へと殺到。島を覆う森を焼き払い、潜んでいたMAを吹き飛ばして行く。

 

「『クラウ・ソラス』照射用意!」

「エネルギー充填完了、いつでも行けます!」

「撃てッ!」

 

 ゲーティアは、左舷に装備された大出力ビーム砲「クラウ・ソラス」を放つ。

 光剣の名を持つ兵器から、直撃すればナノラミネートアーマーすら溶解させるほどに高濃度圧縮された光線が解き放たれ、アフリカン軍艦隊の艦砲射撃と共に、島の森を一挙に焼き払って行く。

 ただ、ゲーティアにはもう一基、虎の子の兵器が備わっている。

 

「続けて『カラドボルグ』準備!」

「射出器、レール展開! 送電開始!」

「特殊弾頭、装填――固定完了! 電力供給、問題無し!」

 

 ドリルが如き形状を取る、大型の特殊弾頭を超高速で撃ち放つ電磁投射砲――螺旋の魔剣「カラドボルグ」。

 右舷に設置された、ダインスレイヴの発展型と言える装備である。弾頭をドリル状にし、ダインスレイヴよりも大型の射出器を用いるコトで、速度と破壊力をダインスレイヴから大きく向上させている。大型化し過ぎた為、とてもMSには搭載出来ないサイズとなったが――その破壊力の前では、ナノラミネートアーマーだろうと粉砕させられるのみ。

 

「放てッ!」

 

 ゲーティア艦長ディリゲント・バンクスの命で、最強の魔剣が放たれ――艦砲射撃の終了と同時、島に突き刺さって大地をえぐり取り、土煙を高々と舞い上がらせた。

 下準備は終了。ここから、最後の仕上げだ。

 

『MS隊、全機出撃! 掃討作戦に移ります!』

 

 アフリカン軍MS部隊隊長、アーヴィング・リーコック中佐は、そう叫びながら、自ら前に出る。

 

 ガンダム・アンドレアルフス――其は、六十五番目のガンダム・フレーム。

 大太刀「オオデンタミツヨ」を主武装としつつ、パーツの換装でダインスレイヴ用特殊KEP弾頭を運用出来るハイパー・バズーカ、ビーム・バズーカと砲撃能力が非常に高い。また、ビーム・バズーカは核弾頭を装填するコトでアトミック・バズーカにもなり、強大な破壊力を獲得している反面、ハイパー・ジャマーによる攪乱で隠密行動を得意とする。

 最強の矛を持ちながら、奇襲と隠密作戦に特化した、隠密機の頂点と言える機体に仕上がっている。

 

『隊長に続け! ヘイムダルにアフリカン軍の勇姿を見せつけるのだ!』

 

 それに続くは、ミエッカ・イリヴァータ少佐の狩るヴァルキュリア・フレーム五番機「シュヴェルトライテ」――「剣の支配」を意味する名の如く、ナイフを六本と、全てを合体させるコトで大剣にもなる片手剣「ヴァルキュリア・シュヴェーアト」を八本装備している機体である。

 

「アフリカンが動いた――行くぞ!」

 

 アンドレアルフスとシュヴェルトライテに先導され、海上を滑るアフリカン軍の上空から、ヘイムダルのガンダム・フレームが六機進軍する。

 ――そして、その光景を後方から眺める悪魔が、一機いた。

 

「おーおー、皆様お元気なこって」

 

 アフリカン軍、サンディ・ロー大尉の乗る「ガンダム・シャックス」は、ヘイムダルの後ろに続く形で飛び上がった。

 やがて、MS隊が島まで十キロの距離に接近した時――天使の沈黙が、破られた。

 

「ッ、熱源感知! 来るぞ!」

 

 アマディス・クアークがそう言った直後、島から幾多ものビームが走った。空中のアグニカチームに放たれたそれを、全機は鮮やかに回避し、速やかに散開する。

 ソロモン・カルネシエルの「ガンダム・オセ」は四脚獣形態に変形して海上でホバー走行を開始し、アマディスの「ガンダム・フォカロル」が海に潜って進軍を再開。残るアグニカ・カイエルの「ガンダム・バエル」とスヴァハ・リンレスの「ガンダム・アガレス」、大駕・コリンズの「ガンダム・グラシャラボラス」、トビー・メイの「ガンダム・アンドラス」は変わらず空中から島への接近を続ける。

 

「スヴァハ、射点は分かったか?」

「うん、アフリカンにも解析データ送っとくね」

 

 スヴァハは全員に特定した敵の位置データを転送し、アガレスにライフルを構えさせて、射撃を開始した。森が燃えているコトもあって視界は悪いが、アガレスの射撃は的確に敵を捉えているようだ。

 

『――さっきの攻撃だけで射点を特定するとは…感謝する! 全軍、ポイントには必ず小隊ごとに向かうように。孤立したら狩られますよ』

 

 これを受けて、アフリカン軍も動き出す。ヘキサ・フレームの機体で構成されたMS隊は、アンドレアルフスに続いて次々と島へと上陸していく。

 一方、先立って上陸したヘイムダルの六機が、上空に撃ち上げられた大型弾を捉えた直後――その大型弾は空中分解し、微細な弾丸が雨のように降り注ぎ始めた。

 

「これは、」

「…クラスター弾か!」

 

 一発から何百もの弾丸が四散する、恐らくは対人用のクラスター弾。都市部で使用されれば甚大な被害を齎すだろうが、MSのナノラミネートアーマーにとっては、ハエが止まる程度の効果しかない。

 アグニカが射点に目を向けると、そこでは四脚の見慣れないMAが、燃え盛る森の中に潜もうとしていた。

 

「何か見えたの、アグニカ?」

「ッ、逃がすか!」

 

 バエルが剣を投擲し、見事そのMAの背中に突き立てる。背部の爆薬が爆発したコトで、敵はその場に崩れ落ちた。

 撃破したMAの側に着地したバエルの目は、その全容を捉えた。

 

「アグニカ、それは…!」

「――データ上、一致する機体は無い。新型だ」

 

 刺さった剣を回収しながら、アグニカはそう断定した。都市虐殺用MA「ペネプエ」――未確認だっただけで新型ではないのだが、それは人類には知る由も無い。

 しかし、次の瞬間――バエルが立つ地面が、()()()()()()()()()()()()()()

 

「何…!?」

 

 飛び上がって回避したバエルに、ひび割れた地面からビームが伸びる。バエルは剣でビームを斬り払って後退したが、地下からはプルーマと共に、新たなるMAが姿を現す。

 

 新型MA「イロウエル」。

 中期型の機体であり、頭部ビーム砲とミサイルポッド、胸部には大口径砲「バスターアンカー」を備える。シンプルな武装強化を行っており、それ故に分かりやすく強い天使だといえるだろう。

 

 一機だけではない。地下に潜むコトで艦砲射撃から生き残ったらしい新型は、続々と地上へと這い上がって来る。

 二機、三機どころではない――その総数は、恐らく二十機以上だ。

 

「新型確認! 交戦するぞ!」

「何だか知らないけど――殺すッ!」

 

 真っ先に、大駕のグラシャラボラスが飛びかかった。バスターアンカーの砲撃は、直撃を食らえばナノラミネートアーマーすら砕くだろうが、グラシャラボラスはジャンプしてヒラリとかわしつつ、空中で身体を回しながらテイルブレードを射出。頭部を跳ね飛ばし、懐に飛び込んで徒手空拳による攻撃を開始する。

 ネイルクローを火砲の発射口に突き立て、部品を引きちぎる。顔に装備された口のようなマウスファングで噛み付き、装甲を引き剥がして行く。イロウエルはプルーマを差し向けようとするも、グラシャラボラスはテイルブレードで一蹴。その牙が中枢コンピューターに食らいつき、噛み砕いたと同時――

 

「大駕!」

「がアぅッ!?」

 

 別の二機がバスターアンカーを撃ち、破壊された機体ごとグラシャラボラスを滅ぼさんとする。その直前で、グラシャラボラスはソロモンのオセに引っ張られて後退した為、死体が吹き飛ぶだけに終わったが。

 その頃、バエルとフォカロルはそれぞれがイロウエルに向けて攻め込んでいた。空中のアガレスが両手のライフルによる援護射撃を行い、プルーマを正確無比に撃ち落とす。

 ただ、そのアガレスに向けて、イロウエルはミサイルを放った。

 

「ナメないでっ!」

 

 弾倉を交換しつつ、アガレスは迫り来る無数のミサイルを、弾を無駄にするコト無く撃ち落として行く。それでも全てを落とすコトは出来ず、何十ものミサイルがアガレスに迫るが――ライフルの銃身下部に設置されたジュッテでミサイルを斬り捨て、機体をグルグル回転機動させるコトで、アガレスは一撃も食らわずにミサイルの雨を凌ぎきった。

 そして、そうなる時にはバエルとフォカロルもそれぞれ目標を撃墜せしめている。

 

「よし、僕も―――」

 

 トビーもまた、アンドラスに剣を構えさせ、敵群への突撃をかけようとしたが――

 

「ちょっと借りるぜ」

「―――え?」

 

 背後から無数のワイヤーを伸ばされ、アンドラスの全身には幾つもの端子が接続される。更に、そこから極細のワイヤーが伸び、絡みつかれた。

 

「トビー、どうした?」

「な、これは――どうなって…!?」

 

 トビーは両手に握る直角スティック型の操縦桿を前後させるが、アンドラスは全く反応しない。阿頼耶識を通して動くよう命令しても、アンドラスは応えてくれない。

 

「どうして…動け、動いてくれアンドラス!」

『うるせぇな、いちいち騒いでんじゃねぇ』

 

 狼狽えるトビーに、無感情で面倒臭がっているような声がかけられる。それを聞いたトビーは、自分の手足でなくなった機体の中で、独り恐怖する。

 

『ちょっと借りる、っつっただろうが。まさか、言葉も通じねぇお子様なのかよ?』

 

 言葉の主は、サンディ・ロー大尉。アンドラスの全身に絡み付くワイヤーは、彼の乗機たる「ガンダム・シャックス」の腕部から伸ばされたモノだ。

 

 四十四番機、ガンダム・シャックス。

 「シャックス・ランス」なる二本の槍しか固定武装を持たない本機には、とある特殊システムが組み込まれている。

 

「お前…僕のアンドラスに、何を――!?」

『ああ? 察するくらいの知能も無ぇのかよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ジャック・システム。

 腕部に内蔵された有線端子を他機に伸ばし、装甲に覆われていない部分に接触させるコトで、そのシステムを強制的に乗っ取る。MSは勿論、MAすらジャックして己が傀儡とする、凶悪な能力だ。

 

『安心しろ、戦闘が終わったら解放してやるよ。こちとら武器が少ねぇモンでな、誰かの陰に隠れてねぇと怖くてしょうがねぇんだ。悪いな』

 

 全く悪びれるコト無くそう述べ立てて、シャックスはアンドラスを敵群の真ん中へと突撃させる。

 アンドラスがバスターアンカーによる反撃を胴体に食らい、ナノラミネートアーマーを破られて胸部装甲がヘコむが、当然そんなコトはお構いなしだ。手始めにライフルを撃たせ、それが味方に当たるコトも意に介さず、シャックスは人形(アンドラス)を弄ぶ。

 

「ッ…!?」

「トビー、何を…!」

「うわあああああああああああ!!! やめ、やめて…やめてくれえええええええええ!!!」

『うるせぇな。もう一、二発コクピットに食らってみるか? テメェが生きてようが死んでようが、俺には関係無ぇしな』

 

 アンドラスが飛び上がり、剣を突き出して敵の胸部を貫く。しかし、捨て身の反撃として放たれたバスターアンカーが再びアンドラスの胸部に突き刺さり、コクピットブロックを守る装甲が脱落する。

 それすら歯牙にかけず、シャックスは次の標的にアンドラスを向かわせようとしたが。

 

「テメェ、何してやがる!!?」

 

 アンドラスの背後にバエルが降り立ち、シャックスが伸ばすワイヤーを切断した。解放されたアンドラスはその場で停止し、倒れ込む。

 せっかくの操り人形を奪われたサンディは、不快感を隠すでもなく、アグニカに向けてこう言い放った。

 

『何だよ、お楽しみはこれからだってのに。もうすぐ素敵なオブジェが出来上がろうって時に、ナニ邪魔してくれてんだ。敵を間違えてんじゃねぇ』

「もう良い――そろそろ黙れ、外道」

『外道はどっちだよ? せっかくの芸術品を台無しに―――』

 

 サンディは、そこで閉口せざるを得なかった。

 バエルが全速で突撃し、右手に握った剣を迷い無く振り下ろして来たからだ。

 

『―――何ッ!?』

 

 シャックスが背中から二槍を引き抜き、交差させてバエル・ソードを受け止める。しかし、バエルは止まらない――左の剣を振り、それを防がれると同時に機体を回転させ、全力の回し蹴りをシャックスの頭部へと叩き込んだ。

 

「アグニカ!?」

「悪い、スヴァハ。MAは任せて良いか?」

「――了解」

『ッ、調子に乗ってんじゃねぇ!』

 

 シャックスが左腕から有線端子を射出するが、バエルはそれを右の剣で斬り裂き、間髪入れず左の剣を投擲。剣がシャックスの左腕に突き刺さった頃、既にバエルはシャックスの背後を取っており――背部スラスターを斬り裂いた後、シャックスを蹴り上げて宙に浮かせたバエルは、握り締めた左手を全力で打ち込み、地面へと叩き付けた。

 

『ぐ、うぁがッ!』

 

 リアクターによる重力制御がまるで間に合わないほどの猛攻を受け、全身を打ち付けられたサンディが呻く。一方、全身に籠もった力を抜いてリラックスするかのように、バエルは全身から排熱した。

 

『テ、テメェ…こんなコトして、ただで済むと思って――』

「黙れ」

 

 うつ伏せに転がるシャックスの左肩を踏みつけながらも、バエルはシャックスの左腕に刺さったままになっていた剣を回収。左手で逆手に持ち、その背中へと突きつける。

 

「ここがコクピットの真後ろだ」

『―――ッ』

 

 遂に、サンディは黙らさせられた。ガンダム・フレームを造ったのがヘイムダルである以上、アグニカはそれについて知り尽くしている。

 先ほどサンディを置いてけぼりにした超機動も、一時的にツインリアクターの出力を解放し、バエルの全身に配されたエイハブ・スラスターをフル稼働させたが故のモノである。あくまで機体性能の限界値を引き出しただけのコトで、限界を超える為に行う「覚醒」ではない。

 そして、バエルがシャックスを踏みつける状況は、アフリカン軍MS隊隊長のアーヴィングが駆るアンドレアルフスが、イロウエルを破壊しながら現れるまで続いた。その傍らには、大剣を持つシュヴェルトライテの姿も在る。

 

『――隊長、この状況は一体何なんでしょうね』

『何となく察してるのに私に聞かないで下さい、イリヴァータ少佐。

 …敵を殲滅した後で、また詳しい事情をお聞かせ下さい』

 

 その言葉を受けて、バエルは右腕を斬り落とした後、シャックスを解放した。しかし、シャックスに操られたアンドラスには、未だ音沙汰が無い。

 

「トビーは?」

「――生きてはいるが、意識が無い。敵に囲まれている今、動かすワケにもいかんな」

 

 アンドラスの側にしゃがみ込むオセから、ソロモンはそう言った。これからは、ここで防衛戦じみた戦いを強いられそうだ。

 

「元々速攻作戦なんだから、さっさと終わらせようよ」

「…大駕の言う通りだな。行くぞ!」

 

 ヘイムダルは、対MA戦を再開した。

 それから一時間足らずで、島に潜む敵はあらかた殲滅され、ザンジバル島奪還作戦は終了。損傷したアンドラスを収容し、ヘイムダルは予定通り、アフリカンの首都「ヨハネスブルグ」へ進路を取った。




第四十八話「マリオネット」をご覧頂き、ありがとうございました。

サブタイが何のコトかって? …勿論アレのコトですよ。我ながらひでぇタイトルだと思います。
まあ、MAの懐に飛び込んで端子を取り付かせるより、性能が高いガンダム・フレームを後ろから操る方が効率良くて合理的かつ強力なんですが――何でこんな装備造ったんだ(困惑)


《新規機体》
ASW-G-65 ガンダム・アンドレアルフス
・アフリカン、アーヴィング・リーコックの機体。
・アトミック・バズーカとかいうヤバい武器を持っているが、当然ながら普段は使い所が無いので、ビーム・バズーカとして使っている。GP02かな?

V05-0913 シュヴェルトライテ
・アフリカン、ミエッカ・イリヴァータの機体。
・全身に剣を仕込んでいて近接戦闘能力が高いが、使いこなすのは相当難しい。しかしこの八本の剣、合体して一本の大剣になる。00世界の住人説有る。

ASW-G-44 ガンダム・シャックス
・アフリカン、サンディ・ローの機体。
・「ジャック・システム」なる、ネオ・ジオングのような装備が最大の特徴。間違い無く、全てのMSの中で最も悪質だが、マシーンでマシーンを操ってるだけなので、非常に人道的(ゾルタン並みの感想)

ペネプエ
・初期型のMA。
・クラスター弾と焼夷弾を持つ、四脚の機体。決して出し忘れていたとかではない、決して。うん。

イロウエル
・中期型のMA。
・バスターアンカーにミサイルポッドと、かなり対MS戦を意識した武装構成をしている。


《新規キャラクター》
ミエッカ・イリヴァータ
・アフリカン共和国の軍人で、階級は少佐。
・MS隊の副隊長。セリフがとても少なくなってしまったので、再登場の機会が有ればいっぱい喋らせてあげたい。オフの時は気さくなお姉さん。


《今回のまとめ》
・シャックスさんえげつない
・パイロットの方もかなり狂ってる
・そりゃアグニカもキレるわ




次回「アフリカン共和国」
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