厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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我思、前書即是遊場也。
而最近、我前書不遊。即是懸案事項。
是以我遊前書。於是今回前書漢文「風」也。
無読辛事上。而本文即是真面目重要伏線今後為。
然当今回亦汝遊興。


#49 アフリカン共和国

 ザンジバル島奪還作戦の終了から数時間後、暗黒の帳が世界を包み込んだ頃――ヘイムダルのラファイエット級汎用戦艦「ゲーティア」は、無事にアフリカン共和国の首都「ヨハネスブルグ」へと入港していた。

 キリマンジャロ・ベースの時と同様に、チームリーダーであるアグニカ・カイエルとサブリーダーのスヴァハ・リンレスは呼び出しを受け、ヨハネスブルグ内へと向かった。

 

『…ん、ん――』

 

 アグニカとスヴァハが発った後、先の戦闘で気を失ってしまった「ガンダム・アンドラス」のパイロット、トビー・メイが目を覚ました。トビーがゆっくりと目蓋を開くと、その視界には一人の仲間の顔が映った。

 

「――気が付いたんだ」

『…大駕。僕は、一体――うっ』

 

 医務室の医療カプセルの中に寝かされていたトビーは、起き上がろうにも起き上がれない。治療中の為にカプセルが閉じられているので、五体満足だったとしても起き上がるのは不可能なのだが。

 

「怪我したんだ。ここはゲーティアの医務室」

『戦い、は――』

「終わった。今はヨハネスブルグに来てて、アグニカとスヴァハはそっちに行ってる」

 

 ひとまず状況を把握したトビーは、一息吐いて脱力する。基本的に治るまでカプセルからは出られないので、大人しくしておかないと脱出が遅くなる。

 

『アンドラスは、どうなったの…?』

「今、胸部装甲の取り替え作業をやってる。アマディスとソロモンも一緒に」

 

 新型モビルアーマー「イロウエル」の口径四百ミリ砲「バスターアンカー」を二度、三度と浴びたアンドラスの胸部装甲は、原形を留めていなかった。しかし、パイロットの命を守りきった。役目を果たしたのだ。

 

「トビーがカプセルから出る頃には余裕で直る、ってソロモンが言ってた」

『…良かった。僕はまた、戦えるんだね』

 

 心から安堵したように、トビーはそう言った。…大駕には、それが意外なように映った。

 

「――怖くないんだ?」

『それは…僕には、ここ以外に居場所が無いし。戦わずにいて、僕みたいな奴が増えるコトの方が怖いかな』

「そう…そうなんだな」

 

 トビーは、見知らぬ誰かの為に戦っている。そしてそれは、他のみんなも同じなのだろう。

 では、大駕は何の為に。復讐の為だ。家族を殺され、家を奪われた。全てを持って行った、天使の名を持つ殺戮機械への復讐が、今の大駕の全てだ。

 

(オレは――オレだけが、自分の為に戦ってる)

 

 後悔は無いし、それの何が悪いとも思わない。

 ただ、自分以外の誰かの為に戦うトビーが。みんなが、大駕には少し眩しく――オも見えた。

 

 

   ◇

 

 

 アフリカン共和国首都「ヨハネスブルグ」に入ったアグニカ・カイエルとスヴァハ・リンレスは、黒くて長いリムジンに乗せられていた。

 それからリムジンは、シェルターに覆われた都市の中を走り――とある場所に、アグニカとスヴァハを(いざな)った。

 

「…ねぇ、アグニカ。ここって、まさか」

「――奇遇だな、スヴァハ。俺にも心当たりが有るんだが、ちょっと信じられない。ちょっと、せーので言ってみようぜ」

「そ、そうだね。じゃあ、行くよ――せーの、」

 

 

「「大統領府」」

 

 

「――やっぱり?」

「…そうだよね」

 

 アフリカン共和国、大統領府。言わずもがな、アフリカン共和国の大統領がいる場所だ。

 ヨハネスブルグの中心地に位置し、鉄の格子塀に囲まれたご立派なレンガ造りの施設。隣の都市「プレトリア」に在る「ユニオンハウス」を模して造られたそこは、文字通りアフリカン共和国の行政の元締めである。

 その敷地内に招かれた。今も、黒服にサングラスをかけた、身長二メートル近い屈強そうなSPが、アグニカとスヴァハに「こちらです」などと呼びかけて来ている。

 

「…きっと何かの間違いだな、これは」

「そうだね、何かの間違いだね! 夢だよ!」

「ちょ、スヴァハ。何で俺の頬を引っ張るんだ」

「痛い?」

「痛い」

「じゃあ夢じゃないじゃん」

「確かに。けど、夢じゃないなら何なんだ」

「何だろう? 幻覚? まぼろし~?」

「二人して同じまぼろし~」

 

 予想外の事態に若干IQが下がった二人は、鉄面皮のSPの皆様が思わず破顔一笑するような微笑ましい会話を交わしていたが、いざ建物の中に入り、とても強そうなSPが要所要所に並ぶ廊下を進むに連れ、ようやく現実を受け入れ始めた。

 

「(マジじゃね?)」

「(マジだね…失礼じゃないかな、この服)」

「(い、一応ヘイムダルの制服な訳だし、失礼ではないだろ。軍人の正装が軍服なのと同じだろ?)」

 

 やがて、二人はとある部屋の前に辿り着いた。案内役のSPが、扉を挟んで部屋の前に立つ二人のSPに「ヘイムダルの御二人です。大統領との面会を」などと言うと、立っていた二人は頷いて、扉を引いて開け始めた。

 

「どうぞ」

「「…ど、どうも」」

 

 扉が全開にされ、中に入るよう促されたアグニカとスヴァハは、SPの皆様に礼を言いつつ、恐る恐る中へと入った。

 壁には歴代大統領の写真がズラリとかけられ、地図が印刷されたタペストリーがかかっている。巨大なシャンデリアが天井から吊され、部屋の奥には豪華な執務机がドカンと置かれ、その後ろには国旗がデカデカと掲げられている。執務机の手前には来客用と思しき机とソファーが並べられており、これもまた絢爛である。

 そんな、いるだけで息が詰まるような空間を支配する一人の男が、机の近くで扉に背を向けて立っている。扉が閉じられた後、男はゆっくりと振り向き――

 

「すまなかった!」

 

 一言目で謝罪の言葉を述べ、爆速で腰を曲げた。キッチリ四十五度、美しい謝罪の礼である。

 

「え…え、ええっ!?」

「な、何なのかなアグニカ!」

「おお俺が知るか!」

 

 急展開に動揺し、テンパって怯えるように身を寄せ合う二人。む、と言って謝罪した男は頭を上げ。

 

「第一に謝罪をと思ったのだが、混乱させてしまったかね。これは失礼、まずは自己紹介からするべきだったな。

 アフリカン共和国大統領、ベンディル・マンディラだ。よろしく」

 

 いとも容易く呆気なく、とんでもない肩書きを述べて軽い自己紹介をしてしまった。二人は呆気に取られたものの、すぐに身を正して名乗り返す。

 

「ヘイムダルのアグニカ・カイエルです。第一チームのリーダーを務めています」

「サブリーダーのスヴァハ・リンレスです、よろしくお願いします」

「ああ。君たちのコトについては承知しているよ。立ち話も何だ、まずは座ってくれたまえ」

 

 ベンディル大統領は、そう言ってアグニカとスヴァハを、二人掛けのソファーに座るよう促した。断るのも失礼なので二人がソファーに座ると、ベンディルは慣れた手付きで紅茶を淹れ、レモンを添えたカップをソーサーに載せた上で、音もなく差し出してみせた。

 

「この街で作られた紅茶だ。私はこれが気に入っていてね、客人には必ず自分で出すようにしている。こう見えて、昔はバーのマスターをしていてね」

 

 アグニカとスヴァハの対面、二つ並ぶ一人掛けのソファーの一つに腰掛けて、ベンディルはマイカップに淹れた紅茶を嗜む。一方、二人は顔を見合わせつつも、せっかくなので頂くコトとした。

 

「さて、まず改めて言わせてもらいたいが――先の作戦では、我が国の者が失礼をした。国の一権を預かる者として、改めて詫びさせてほしい」

 

 そう述べて、再びベンディルは頭を下げた。これに、アグニカは慌てて言う。

 

「いえ、そんな…こちらこそ、貴国の機体を傷付けてしまい――」

「それは正当防衛で、非は完全にこちらにある。あの者はどうも、性格と思想に些か以上の問題が有ってな…私としても、あのような者にガンダム・フレームを任せたくはないのだが、あの機体を十二分に扱える彼以上の人材がおらぬ故。軍部にも釘を刺しておいた、許してくれ」

 

 大統領にまでこう言われるとは、あのサンディ・ローとか言う奴はとってもヤバいのではなかろうか――と、二人は思わざるを得ない。

 ベンディル曰く、今後は首に爆弾を付けて独房にブチ込んでおき、問題行動を起こしたら即ポチるようになるらしい。機体との相性が良いパイロットを見つけ次第、交代させる予定とのコトだ。

 

(ガンダム・フレーム、こういう時不便だよな…)

「…本来なら、こんなコトを言う予定は無かったのだが。すまないな」

「――では、今回はどのようなご用件で?」

 

 スヴァハの問いを受け、ベンディルは紅茶を一口飲んでから、のんびりと話し出した。

 

「私が個人的に、君たちと言葉を交わしてみたくてね。ディヤウス・カイエルに言って、わざわざ来てもらったのが本音だ」

「…我々と、言葉を?」

「そうとも。飾っても仕方無いから、単刀直入に聞かせてもらうが――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 その言葉は、皮肉にも――ほんの少し前、スヴァハがアグニカに問うた言葉だった。

 二人が身構えたコトを悟ってか、ベンディルは「いやいや」と述べて、こう注釈を入れた。

 

「そうかしこまってくれなくて良い。ここの会話は記録されていないから、我々三人以外知るコトは無い。君たちがここで私に暴言を吐いたとしても、私が訴えない限り問題にはならんくらいだ。

 ――まあ、何の為と言い替えても良いかな。単純に、個人的に思う疑問…かな。君たちのような若者が何故、戦地に赴いているのか。本来なら、ヘイムダルの全員に聞いて回りたいくらいなのだが、私も多忙の身だから、そうも行かなくてね」

 

 ヘイムダルには、色々な事情を抱えた者達が大勢いる。戦う理由も、人によって様々だ。

 孤児で身寄りが無く、戦うしかない者。

 自分と同じ悲劇を繰り返させない為に、戦う者。

 MAに家族を奪われ、その復讐の為に戦う者。

 

 では、アグニカとスヴァハは、何の為か。

 

「MAを倒し、人類を救うt」

「いや、組織の大義名分を聞きたい訳ではない。そんなモノはウィ●ペディアにすら書いてある。

 私が聞きたいのは、君個人の意見さ。君はディヤウス・カイエルの息子だとは言え、戦うかどうかの選択の自由は有ったと聞き及んでいる。何故、君は戦うコトを選んだのか――私はそれが気になるがあまり、大人げなく君たちを呼びつけたのさ。

 赤の他人である私には言いたくない、と来れば、それ以上は聞かないが。誰もが人権を持っていて、プライバシーは守られねばならないからね」

 

 あくまでも朗らかに、ベンディルは問うが――その目は笑っていない。鋭い眼光は、アグニカを貫いている。見通しているのではないか、とアグニカが思わされるほどに。

 言いたくない、と言えばそれで終わりだ。人権だのプライバシーだのと、ベンディルは本気で言っている。何せ、人権を憲法の条文に取り入れた、近代国家の行政を預かる男なのだ。尊重する気しかないのは間違いない。

 だが、何故か誤魔化してはならない、とアグニカは感じた。

 

「――大した理由じゃありません。俺はただ、スヴァハを守りたいんです。人類がどうこうとかは、よく分かりません。…それだけです」

 

 戦うと決めた時から年を取ったコトもあって、改めて言うのはかなり恥ずかしく感じる。これを真面目に言っていたかと思うと、アグニカは胃が痛くなってくるようだった。

 ――うるさい、何とでも言え。今もそうなんだから何か文句あっか、と、心中で誰に言うでもなく言い訳し、開き直るコトにした。

 

「私は――みんなの為になるのと、ちゃんとアグニカに守ってもらう為です。放っておけませんから」

 

 アグニカに続いて、スヴァハは笑顔で言った。何故か恥ずかしさが倍増したアグニカだったが、その前に座るベンディルは――満面の笑みを浮かべていた。

 

「…何ですか?」

「ああ、いやすまないね。いつの間にか自分が失っていたモノを垣間見た気がして、ちょっと涙を堪えていた。

 ところで君たち、付き合ってるのかね?」

「はあ!?」

「い、いえいえそんな! そんなコトないです!」

 

 驚きと共に否定する二人。ベンディルは気付かれない程度に舌打ちし、この無自覚×2をどうしてやろうかと一瞬策謀を巡らせたが、流石にゲス過ぎだなと思い、脳内から抹消させた。

 とにかく、とベンディルは言って、端末を取り出して何かしらのデータを閲覧し始める。

 

「変なコトを聞いてすまなかったね。――まあ、持論を述べるなら、我々の戦いは種の保存の為の戦いだろう。もしかしたら向こう側には、人類滅亡以外の目的が有るのではと勘ぐりたくもなるが…いや、これはやめておこうか。何の裏付けも無い、私個人の妄想だからな。

 ともかく、これからは少し現実的な話をしよう。君たちのチームの働きで存在が露見した、傭兵組織『フヴェズルング』についての調査に関してだ」

 

 フヴェズルング、の名を聞いて、二人は気を引き締め直した。ベンディルもまた、先ほどまでとは打って変わって、話す速度が早まっている。

 

「知っているとは思うが、奴らに対しては我が国とサハラ、イングランドの三国が合同で調査団を編成し、捜査に当たっている。

 ただまあ、本社へのガサ入れは見事に空振り。(ボス)を探そうにも、手がかりが全くと言って良いほど無い。何人か組織のメンバーをこちらでとっ捕まえて色々喋らせたりもさせたが、特に進展は無し。現状、捜査は完全に行き詰まった形だ」

 

 不甲斐ないコトにな、とベンディルは息を吐く。

 アフリカンはフヴェズルングへの捜査でリーダーシップを発揮しており、だからこそ迅速なガサ入れなども可能だったのだが、証拠は何一つ見つからなかったという。抹消されたなんてレベルではなく、初めから存在していなかったのだろう。

 

「規模や装備からして、どこぞの国が一枚噛んでいるのは間違い無い。軍部の暴走か、あるいは首脳の了承でかは不明だが、かなり上層部の人間が関わっている――と言うのが、三国の共通見解だ。

 下手に疑えば、国家間の関係悪化に繋がり、MAとの戦いに支障を来す。どの国もただでさえギリギリなのに、これ以上内部を瓦解させれば、それこそ人類はこの宇宙から消える。痛い所を突かれ、上手く出し抜かれて、我々は踊らされた」

 

 戦時中に戦後のコトまで考えてこそ、真に優秀な 政治家というモノだ。十年以上続くMAとの戦いをいい加減終わらせたいのは、全人類共通の願い。ガンダム・フレームの戦線投入で、戦争終結への道が垣間見えるようになり、その先を考えているからこそ、黒幕は他国を削りに入った。

 身勝手だが、実に利己的な考え方だ。国の頂点に君臨するには必要な姿勢とすら言えよう。

 

 

「ただ、少し()()()()()()()()()

 

 

 そう評価しつつも、ベンディルはこう述べた。アグニカがその言葉の意味を問うと、ベンディルは声のトーンを落として続ける。

 

「ここからはあくまで、私の予測だが――()()()()()()()()()()()()()()()()。その国こそ、フヴェズルングの裏側にいる国だと、私は睨んでいるよ」

「内部から――切り、崩される?」

「…それって、まさか」

 

 スヴァハが更に深く聞こうとするが、ベンディルは「これ以上、他国について私が言うのはまずい」と口を閉ざした。

 目の前の大統領が、まさか()()()()()()()()()()()()とも思い難いが――

 

「――疑惑の目を向けてくれているが、私は何もしていないよ。起こるべくして起こるだろうという、あくまでも歴史からの予測でしかないからね。ただそれが、結果として我々の調査の益となるだけさ」

 

 証拠が出揃っていないだけで、ベンディルは黒幕が誰かを見抜いている。そうやって「内部から切り崩された」時、初めて証拠が出揃う。

 そして、その為にはフヴェズルングの中心人物もキッチリ捕らえる必要が有る。「仕事だからやっただけです許して下さい」で終わらせる気など、ベンディルには――いや、三国には全く無い。

 責任は必ずや取らせねばならない。ただし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――ヘイムダルを、その為に利用しようと…?」

「まさか。内政不干渉がヘイムダルのスタンスであり、国家間のいざこざは君たちの関知する所であってはならないからね。

 ただ君たちは、アフリカンとサハラとイングランド――()()()()()()()()()()()()()()()、という立ち位置であってくれるのがありがたい。結果的に十国の不利益に繋がらないなら、君たちがフヴェズルングを相手取った所で、十国から反対意見は出ない。ヘイムダルがその有り様を問い直される事態にはならないし、そんなコトは我々が絶対にさせない。君たちには、最前線でMAと戦う、人類の反撃の象徴であってもらわなければならないのだから」

 

 これがアフリカン共和国大統領、ベンディル・マンディラの描く、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 十国間の関係に禍根を残すコト無く、自身の首を絞める行為を行う者達を淘汰し、クリーンな対MA戦の体制を築き上げ直す。勿論、対MA戦をリードするヘイムダルにも、何ら不利益は生じない。文句が出るハズも無い、完璧な勧善懲悪(シナリオ)

 長年、大統領として行政の長であり続け、他の全ての国と友好的関係を築き、場合によっては仲介すら成し遂げるのがベンディル・マンディラという男――国民の支持率も高く、本当に心から世界平和と人類全体の幸福を願う男である。が、彼はその実、誰よりも残酷で冷酷。それ故に絶対に間違えない。

 

「長くなってしまってすまないが、これで私の用事は全て終わった。

 今日は来てくれてありがとう、アグニカ君、スヴァハ君。君たちの一層の活躍を願っているよ」

 

 ベンディルが執務机に設置されたボタンを一つ押すと、SPが外から扉を開け始めた。アグニカとスヴァハは空恐ろしさを覚えつつ、ソファーから立ち上がる。

 去るべくして、ベンディルに背を向けた二人に、世界屈指の政治屋は最後にこう言った。

 

「機会が有れば、サンパウロへ行ってみると良い。

 イビラプエラの公園は、一度くらいは歩いて回るだけの価値が有ると思うからね」

 

 

 

 

   ―interlude―

 

 

 大西洋のどこかで、一隻の潜水艦が航行する。

 グレイバック級ステルス潜水艦「パルミュラ」――現在、MAの誘導を請け負っている傭兵組織「フヴェズルング」の一チーム、ロブ・ダリモアの部隊が運用する艦である。

 

「本部に戻れ、ってのはどういうコトだァ?」

『言葉通りの意味だよ。雇用主(クライアント)は近々、次のステージにコトを進めるつもりらしくてね。その為にも、戦力の増強を図らねばならない。

 特に君のチームは、パイロットを一名失っているからね』

 

 本部との通信で、相も変わらず暗室にいるボスはそう言ってくる。端末が放つブルーライトしか部屋に光源が無い為、ボスの顔は不気味に青白く浮かび上がっていて、ロブは「何で電気点けねェンだ」と今更ながら思った。

 

『新しいMSを譲渡する準備もしている。司令を伝える為にも、一度帰投してくれたまえ』

「…了解したぜ、ボス。

 艦の進路、サントスに向けろ!」

 

 

   ―interlude out―




第四十九話「アフリカン共和国」をご覧頂き、ありがとうございました。

今回はアフリカンのトップに迫りつつ、次回以降のラテンアメリア編への布石的な感じです。
ただ、一つ注意して頂きたい点は、ベンディル・マンディラ大統領は高い推察力による予測を述べているだけなので、裏で密かに手を回したりとかは一切してません。
全部この人の掌の上であるかのように見えるかも知れませんが、全然そんなコト無いです。
実際、彼がやったコトはフヴェズルング調査団への協力と、ヘイムダルへの軽い助言だけなので(それで大体予測出来る辺りが恐ろしいですが)


《今回のまとめ》
・紅茶と食器は大統領の私物です
・ベンディルさんの推眼マジパネェんだけど
・「内部から切り崩される国」とは?




次回「ラテンアメリア連邦共和国」
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