厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》 作:アグニ会幹部
Twitterと前書きを遊び場にするアグニ会幹部、NTozと申す者です。
作者名の読み方は「ニュータイプオズ」もしくは「ナラティブオズ」と言うコトで。
挨拶から分かる通りアグニカバエルバカですが、よろしくお願いしますm(__)m
とまあ、遊ぶのはここまでにして。
最初は序章「戦闘 -Fight of the Hero-」――第零話と称しまして、いきなりの戦闘から始まります。
「Fight of the Hero」は「英雄の戦い」と言う意味で付けています。
詳しい設定、背景、経緯などは、物語が進むにつれ明らかとなりますので、ひとまず空気感的なモノを感じて頂けたら幸いです。
それではどうぞ。
#00 厄祭戦
旧ドルト暗礁宙域。
かつて「ドルトコロニー群」が存在した、地球圏に於ける重力均衡点「ラグランジュ・ポイント」の一つである。
「『キマリス』より『ゲーティア』へ。モビルアーマーの『エイハブ・ウェーブ』を探知した」
哨戒機として出撃し、暗礁の中を飛行するのは、純白と薄紫で鮮やかに塗装された一機の「モビルスーツ」。その機体は背中にブースターユニットを背負い、脚部のバーニアユニットを露わとした巡航形態となり、右手に身の丈ほども有る鋭利にして巨大な
対
「数は二十、急速に近付いて来る。ゲーティアへ、指示をくれ」
高速機動故に繊細さと動態視力を問われる「ガンダム・キマリス」を操るパイロット、クリウス・ボードウィンは、通信先である母艦「ゲーティア」に指示を仰いだ。
それから数秒後、母艦から返答が下る。しかしそれは、クリウスが求めた指示では無く、一つの質問であった。
『到達までの時間は?』
「敵長距離砲撃型の射程圏内に入るまで、およそ
『成る程――全艦、第一戦闘配置。MS部隊、発進準備。ガンダムを最優先だ』
『了解! 全艦へ通達、第一戦闘配置! 総員、ノーマルスーツ着用!』
『MS部隊、発進準備! ガンダム・フレームを優先せよ!』
『艦レーダーに、エイハブ・ウェーブを探知!』
ゲーティアからの通信に、艦内放送されているらしいアラートや、オペレーターの声が混じる。しかし、未だにクリウスの求める指示が来ない。
「――ゲーティア。頼むから指示をくれ」
『ああ、すまん。クリウスは俺達が着くまで、敵を足止めしてくれ。絶対にゲーティアを撃たせるなよ。――艦長、後はよろしく』
『任せてくれ』
そこで、キマリスとゲーティアの通信は途絶えた。クリウスの通信に応えていた男が艦のブリッジを後にし、指揮官が変わると同時に切られたようだ。
さて――二十機ものMAを相手に「足止めしろ」と、無理難題を軽くふっかけられたクリウスは、思わず溜め息を一つ吐く。
「全くあの野郎、ムチャぶりしやがって――まあ、やるしかないんだが…っと!」
クリウスは脚でペダルを踏み込み、キマリスを一気に加速させた。
ガンダム・キマリスの強みは、高速機動による槍を構えての突撃である。それを生かす為に、何より二十機のMAを相手取って死なない為には、決して減速してはならない。取り付かれれば、下級のMAにもそれなりの時間をかけねばならなくなる。
「早く来てくれよ――推進剤が尽きる前にな…!」
哨戒機としてしばらく飛び回っていた為、キマリスはそれなりに推進剤を消耗している――が、だからと言って、決してケチりはしない。推進剤をケチって速度を落とせば、MAにこちらの動きを捉えられてしまうからだ。
キマリスは現状での最高速度を以て、敵の一群に飛び込んで行った。
◇
クリウスがキマリスを高速機動させ、果敢にMAの足止めを敢行し始めた頃。
キマリスの母艦であるラファイエット級汎用戦艦「ゲーティア」からは、次々とガンダム・フレームの機体が出撃していた。ゲーティアが現在搭載するガンダム・フレームのMSは、哨戒中だったキマリスを含めて九機。今の所、六機が戦闘宙域へと進行中である。
キマリスとMA群の戦闘宙域に全速で向かいながら、ガンダム・フレームのパイロットの一人が、母艦に光学カメラによる観測結果を問う。
「該当宙域までざっと三百キロって所か――ゲーティア、敵の種別は?」
『「天使長」が一機。その他の「天使」は初期型が十二機、中期型が七機。警戒度が高いのは、長距離砲撃型の「ザフキエル」です』
「じゃあソイツから片付k――来るぞ!」
その一喝が言われ終わるよりも早く、密集していた六機のガンダム・フレームは、一斉に散開する。散開した直後、先程まで六機が密集していた場所に、MAが撃ち出した桃色の高エネルギー集積体――「ビーム」が走った。
「全機、このまま吶喊! 目標を殲滅する!!」
『おう!!』
スラスターの青い光で尾を引いて、漆黒の宇宙を引き裂きながら、暗礁の中をガンダム・フレームのMS達が駆ける。されど、その動きに端正な美しさは無く――ただひたすら、実戦の中で磨き上げられただけの、合理的な軌道を描いている。
一方。
ゲーティアの直衛に就く一機のガンダム・フレームのコクピットでは、そのパイロットが仲間の見事な動きを見学していた。
その機体は、白と桃色の二色で装甲が彩られていた。背部に巨大なスラスターウィングを持ち、両手に銃身七メートルほどの専用ライフルを一丁ずつ保持し、デュアルアイを青色に光らせる。腰部にはライフルの予備弾倉や、弾倉交換、装填用のサブアームが無造作に配置されている。
ASW-G-02 ガンダム・アガレス。
ガンダム・フレームの実証機であり、試験機である一番機の次に造られた、二機目のガンダム・フレームだ。
そして、アガレスに近寄るMSが一機。これもまた、ガンダム・フレームの機体だ。
白と青の装甲がフレームに組み付けられた、アガレスとほぼ同じ、シンプルでスタイリッシュなデザイン。アガレスと同型のスラスターウィングを背部に装備しているものの、その両手にはアガレスと相反する二本の剣が握られている。デュアルアイは桃色に輝き、腰部後方には剣を格納する為のブレードホルダーが接続される。
ASW-G-01 ガンダム・バエル。
ガンダム・フレームの試験機にして、最初に建造された「原初のガンダム・フレーム」――栄えある一番機である。
「…?
「ああ。あの調子なら、アイツらに任せとけば良いだろ」
アガレスのパイロットは、バエルのパイロットの返事に、ただ「ふーん」と返した。それは失望などではなく、単純な「まあ、そうだよね」と言う同意の意志が込められている。
「そう言うお前はどうなんだ?」
「アガレスの装備で、突撃なんてするわけ無いじゃん」
「――まあ、そうか…」
今度は、逆にバエルのパイロットがアガレスのパイロットに同意した。――ここに至るまでの戦いで、縦横無尽に戦場を飛び回って四方八方から射撃しまくっていたアガレスの姿が思い返されたが、大人しく記憶の片隅に封じ込める。
「しかし、敵には『天使長』がいる。そう簡単に行くかどうか…」
「――フラグ建てちゃダメだよ…」
その時、バエルとアガレスから見て、遠方の戦闘宙域に動きが有った。
美しい軌道を描いていたガンダム・フレーム達の動きが、何かに遮られた――何かに攻撃され、一気に揺らいだのである。
「ほら」
「――ザドキエルが出て来たか。スヴァハ、悪いがゲーティアの護衛は任せるぞ」
そうアガレスのパイロット――スヴァハ・リンレスに言い残して、バエルのパイロットは足下のペダルを踏み込んだ。バエルのスラスターが青い光を放ち、推進剤を消費して戦闘宙域へと凄まじい速度で突き進んで行く。
その光を微笑みながら見届けつつ、スヴァハは聞こえないと分かりながら、コクピットの中で手を振りながら呟いた。
「―――頑張れ、アグニカ」
◇
「――アグニカ!?」
「時間は稼ぐ、陣形を立て直せ!」
ゲーティアの直衛を離れ、戦闘宙域に飛来して来た「ガンダム・バエル」だ。
かく言うバエルは、両手に持つ二本の黄金の剣「バエル・ソード」を構え、真っ直ぐザドキエルへと吶喊する。
バエルの黄金剣とザドキエルのワイヤーブレードが接触し、盛大に火花が散った。数秒のみ鍔迫り合った後、バエルは黄金剣を振り切り、その勢いでワイヤーブレードが弾き返される。
その僅かな隙を見逃さず、バエルはスラスターを吹かして一息にザドキエルとの距離を詰め――ビーム砲を放とうとするザドキエルの顎と言える部分を、下側から剣で斬り上げた。
『 』
ザドキエルは強制的に顎が跳ね上げられた瞬間にビーム砲を発射してしまい、飛び散ったビームで自らの「ナノラミネートアーマー」を損耗する。ザドキエルの懐に飛び込んだバエルは、此処で追撃を掛けるコト無く、僅かにスラスターを動かしてザドキエルと距離を開ける。その時に生まれたバエルとザドキエルの間に、ザドキエルのワイヤーブレードが走った。
「よっ!」
このブレードを交差させた剣で弾き、バエルは上昇してザドキエルとの距離を大きく取る。これを好機と見たザドキエルは、損傷したハズのビーム砲をもう一度開き、バエルに照準を合わせた。
そして、発射。完全に集束出来てはいないが、ビームは真っ直ぐに宙域を裂き、バエルに迫る。
「そらっ!」
コクピットが存在する胴体に直撃するハズのビームは、しかし――バエルが右手に持つ剣を振ったコトで逸らされ、バエルの後方に漂っていたスペースデブリに当たり、これを溶かすだけで終わった。
ビーム砲自体からも煙が上がっているにも関わらず、ザドキエルは発射を決して取り止めない。頭を振り、機動するバエルを追うように、ビームを撃ち放ち続ける。
だが、この時にバエルに固執し過ぎたコトが、ザドキエルの運命を分かつコトになった。
「どこを見ている!」
ザドキエルのウィングの下部を狙って、キマリスが突撃した。防御を怠ったザドキエルのスラスター部が破壊され、暴発してしまう。これを受け、放っていたビームも消滅した。
『 』
更に、ザドキエルに攻撃するのはキマリスだけではない。共に出撃した機体の全てが、ザドキエルを
「ふっ!」
その間、バエルはザドキエルの背後に回り込み、両手の黄金剣を思い切り振りかぶり――ザドキエルの頭部後方、超硬ワイヤーブレードの接続場所に勢い良く突き立てた。
スパークが走り、僅かな爆発を伴いながら、ワイヤーブレードが引き剥がされる。
『 』
全ての固定武装を奪われたザドキエルは、悔し紛れに機体の陰から子機である遠距離稼働ユニット「プルーマ」を放出するが、子機の武装ではよほどの幸運に恵まれなければMSを撃破出来ない。事実、放出したプルーマは為す術もなく、悪魔の力を宿すMSに破壊されるのみだ。
「――!」
プルーマの群をアッサリと突破したバエルは黄金剣を構え、ザドキエルの頭部下に存在する、中枢コンピューター部に向ける。機体の推進力を全て乗せて、バエルは黄金剣を、ザドキエルを制御する中枢コンピューターに突き出す。
そしてその鮮烈な一撃は、ザドキエルの頭部真下に存在する中枢制御コンピューター部を間違い無く、確実に貫いた―――
◇
其は、人を狩る天使こと「モビルアーマー」と、人と契約する悪魔こと「モビルスーツ」が殺し合ったとされる、世界大戦の俗称である。
いつからそう呼ばれるようになったかは定かではないが、少なくとも今、「厄祭戦」という名称は付けられていない。今はその大戦の真っ最中であり、人類は絶賛、存続のピンチに立たされている。
いつ自らの住まう都市が、街が、村が
最早、人類の生存圏に安全な場所など無い。地球はもとより、月、コロニー、金星、火星、木星に至るまで――人類がいる限り、その悉くが奴らの標的だ。
自分が人類である限り、奴らに取っては抹殺対象となるのだから。
モビルアーマー。
人を狩る天使。人類の業の具現。完全自律式大量殺戮破壊無人兵器。
完全自律式の無人兵器と謳われる通り、モビルアーマーは
全てを自分達で考え、全てを自分達で決定し、全て自分達だけで行動する。設計、開発、製造、運用、修理、補給――そして戦闘。全てを自分達だけで完遂させてしまえる、まさしく「無人兵器の到達点」と称するに相応しい、信念無きブリキの怪物。
彼らの前では、人類は怯え逃げ惑い、殺されるしかなかった。
――「モビルスーツ」が、開発されるまでは。
モビルスーツ。
天使を狩る悪魔。天使を真似て造られた、天使を撃退する為の存在。人型巨大機動兵器。
その中でも、真に悪魔の
その時より、人類の反撃は始まった。
これは、天使に対抗する悪魔のモビルスーツ――「ガンダム・フレーム」に乗り、戦った者達の物語。
モビルアーマーという絶望を前にした、人類の物語。
そして、厄祭戦を終わらせた、若き英雄達の戦いを綴る物語。
即ち――アグニカ・カイエルの伝説を記す、英雄譚である。
第零話「厄祭戦」をご覧頂きまして、ありがとうございました。
そして序章「戦闘 -Fight of the Hero-」も、この一話限りで終了です。
登場する機体を原作で登場した物に限定し、オリジナルは最小限に留めてみました。
結構オリジナル有った気するけど、そんなコトは気にしない方向で。
《オリジナルキャラクター》
アグニカ・カイエル
・厄祭戦における、伝説の英雄。
・本作の主人公。段々コイツを中心にして、ストーリーが動いて行くようになる予定。
・「ガンダム・バエル」のパイロット。
スヴァハ・リンレス
・本作のヒロイン。ストーリー的には重要人物。
・「ガンダム・アガレス」のパイロット。
クリウス・ボードウィン
・後世に「セブンスターズ」の第三席となる「ボードウィン家」の初代当主。ガエリオとかの先祖。
・「ガンダム・キマリス」のパイロット。
《オリジナル機体》
ASW-G-02 ガンダム・アガレス
・ガンダム・フレームの実証機にして、射撃特化機体。
・デザインはバエルと同一だが、青の部分がピンク色に変更されている。
ザフキエル
・コロニー破壊用長距離射撃型モビルアーマー。
ザドキエル
・「ハシュマル」と同格のモビルアーマー。
・武装はハシュマルと同一。
《オリジナル戦艦》
ラファイエット級汎用戦艦「ゲーティア」
・アグニカの母艦となる汎用戦艦。
・ハーフビーク級よりデカく、スキップジャック級よりは小さい。
《今回のまとめ》
・アグニカは強い
・戦闘はとりあえずこんな感じで
・厄祭戦とは何か、本作はどんなお話なのか
次話は今話から時間を結構巻き戻しまして、厄祭戦勃発前のお話です。
リアクターの誕生、厄祭戦の勃発、厄祭戦の経過などを、時系列順に辿って行きたいと思います。
明日更新予定。
次章「開戦 -Open the Certains-」
次回「エイハブ・リアクター」