厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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どっかで見たコト有る気がするタイトル。
ヒント:鉄血のオルフェンズ第17話


#55 レヒニータの決意

 火星の地方都市、スキャパレリ近郊。

 ハーフメタル含有地に身を隠すコトでエイハブ・ウェーブを隠匿し、何年も死守され続けていた人間の居住地に、駐屯する火星独立軍の隙を突く形で接近を果たしたモビルアーマー――「天使長」ハシュマルが、都市の悉くを焼き尽くさんとして放ったビーム砲は、天空より降臨した一機の悪魔(ガンダム)によって阻まれた。

 

 ガンダム・バルバトス。

 

 第八の悪魔、序列八位のガンダム・フレーム。

 汎用性に特化し、あらゆる戦場に適応するよう調整された機体。トリコロールカラーで彩られたそのモビルスーツは、一番機たる「ガンダム・バエル」以上に、伝説として記された「ガンダム」を想起させる外見をしている。

 現在装備するはメイスと太刀、二本の近接武装と左腕に接続された防御武装、ガントレット。シンプルな構成となっている本機は、大気圏を突破する形でこの戦場へと姿を現した。

 

「―――生きてる?」

 

 そのコクピットに座すは、一人の青年。

 銀に輝く髪に透き通るような金色の瞳を持ち、阿頼耶識システムを以て機体と五感をリンクさせている彼は機体を振り向かせ、自身の背後にいる少女を見やった。

 

「これが―――」

 

 バルバトスに守られ、一命を取り留めた金髪紫眼の少女――レヒニータ・悠那・バーンスタインは、呆然とスラスターの突き出した背中を見上げる。

 彼女がガンダム・フレームを見たのは、これが初めてのコトだった。火星独立軍にも、何機かのガンダム・フレームがヘイムダルから編入した――との情報を知ってはいたが、実際に目にすると、それは力強く、美しくすら見える。

 

『何でまだこんな所にいるか知らないけど、早く避難した方が良いよ。すぐに子機(プルーマ)が出て来るから、守りきれる保証は出来ない』

 

 バルバトスのパイロットは、外部スピーカーを通してレヒニータに話しかける。しかし、レヒニータの腰が抜けて、立てなくなってしまっているコトに変わりはない。

 

「え、いや、あの――」

『――怪我でもした? …じゃあ、動かずにそこにいて。やれるだけはやってみるから』

 

 長柄の鈍器、メイスを両腕で構えて、バルバトスは眼前のハシュマルを見据える。その双眼が輝きを増し、全身にツイン・リアクターシステムの膨大なエネルギーが循環し、熱を帯びていく。

 一方、ハシュマルは火星独立軍の駐屯部隊の第二陣が出撃し、接近して来ているのを感知していた。バルバトスとMS隊、どちらかだけならともかく、両方が相手となると、単騎で相手にするのは少々分が悪いと言わざるを得ない。

 プルーマを放出しながらワイヤーブレードを走らせ、ハシュマルはバルバトスを攻撃した。

 

『やらせない…!』

 

 繊細な攻撃には向いていないであろうメイスを、バルバトスは正確に振るい、ハシュマルのワイヤーブレードを弾き返す。それと同時に、バルバトスはメイスの長い柄の末端を右手だけで持ち、質量部を遠い地面に叩き付け、思い切り前方へと振った。

 単調な動きしか出来ないプルーマの群は、バルバトスのこの攻撃に飲まれ、後方へと吹き飛ぶ。ひっくり返ったプルーマは自走手段を失った鉄クズとなり果て、底面から地面に叩きつけられたプルーマもまた、無傷とはいかない。その場で崩れ、機能を停止した。

 

『敵は――チッ』

 

 その隙に、ハシュマル本体は後退し、ビームを目くらましとして撃ち放った。ビームはバルバトスの目前の地面に直撃し、大地を抉って煙と岩を巻き上げる。バルバトスがメイスの側面を前方に向け、屈んで防御姿勢を取った隙に、ハシュマルは反転して彼方へと走り去って行く。

 ハシュマルの撤退を受け、バルバトスは膝を伸ばして立ち上がった。火星独立軍の駐屯部隊は、ハシュマルの追撃に移ったようだが、バルバトスはそうしなかった。機体を振り向かせ、バルバトスはレヒニータを見下ろす。

 

『大丈夫?』

「――は、はい…ありがとう、ございます」

 

 レヒニータはバルバトスのパイロットに礼を返しつつ、真横に落下しているMSを見る。レヒニータの表情に影が落ちたのを知ってか知らずか、バルバトスのコクピットハッチが開き、操縦している青年が姿を見せた。

 

「あの機体が、どうかしたの?」

「え――はい。私の侍女だった人が、下敷きに…」

「――ごめん。間に合わなかった」

「い、いえそんな…私を、助けてくれました」

 

 青年の大きな瞳が、乙女を見下ろす。

 対するレヒニータは意を決して、こう言った。

 

「あの! ――よければ私を、連れて行ってもらえませんか!?」

「…何で?」

「あ、えっと…その…私は、火星の人達の為に何かしたいと思って――でも、私はまだ、何も知らないので…貴方と一緒にいれば、私は色々知るコトが出来て…皆さんの為に、今の私が出来るコトを見つけたいんです!」

 

 しどろもどろになりながらも、最後はハッキリと宣言した。そんなレヒニータの姿と目を見て、青年はバルバトスのパイロットから出たまま、阿頼耶識を通じて機体を跪かせ、その左手をレヒニータの前に広げた。

 

「乗っていいよ」

「…ありがとうございます」

 

 レヒニータがバルバトスの左手の上に乗ると、バルバトスは立ち上がりながら左手を己が胸の前に移動させる。

 パイロットの青年が右手を差し出すと、レヒニータは彼にこう問いかけた。

 

「――私は、レヒニータ・悠那・バーンスタイン。

 貴方のお名前を、聞かせて頂けませんか?」

 

 銀髪金目の青年は、その頬をほんの僅かに緩めつつ、自分の名前を己が舌に載せる。

 

「クレイグ・オーガス。よろしく、レヒニータ」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 クレイグの手を、レヒニータはしっかりと握り返すのだった。

 

 

   ◇

 

 

 それからバルバトスは、スキャパレリに長居するコト無く、次なる目的地に向けて出発した。なお、推進剤などは動けなくなったMSから抜き取って補給を済ませている。

 レヒニータを膝上に座らせて、クレイグはバルバトスを荒廃した火星の大地で滑らせる。

 

「あの…前は見えているんですか?」

「実は見えてない。一秒後には岩壁にぶつかったりするんじゃないかな」

「ええっ!? えっ、えっとどうすれば――」

「…冗談だよ。阿頼耶識は網膜投影するから、モニターも本当は無くても良いんだ。操縦桿とかは有った方が良いけど、無くても阿頼耶識で動かせる」

 

 本気で慌てたレヒニータに、クレイグは懇切丁寧に説明した。一方、説明を受けたレヒニータは、信じられないと思いながらクレイグの目の前に自分の手を翳してみるが、何の反応も示さない。

 クレイグは今、網膜投影をしているので、コクピット内がどうなっているか分からないのだ。

 

「『阿頼耶識システム』――身体にナノマシンの接続端子を埋め込んで、機体のシステムと脳をリンクさせる技術だと聞いていますが…」

「そう。感覚で動かすから、文字が読めなかったとしてもMSを動かせる。…だから、無理やり手術を受けさせられて、文字も読めないのに戦わされる奴らもいるんだけど」

 

 十国がそれぞれ編成した軍が主体となって戦争をしている地球と違い、圏外圏ではゲリラ的な戦いが多い。孤児の少年兵も少なくなく、彼らは劣悪な環境で無理やり阿頼耶識を施術させられ、効果も不完全なまま、MSに乗せられて戦わされている。

 火星も含めた圏外圏の状況は、地球よりもかなり悪い。火星独立戦争前から開発が始まっていた木星圏の状況は、火星よりも更に悪い。もう、木星圏に生きた人類はほぼいないとされているのだから。

 

「…貴方は――クレイグは、どうして」

「俺は仲間と一緒に、地球でヘイムダルに保護されたんだ。そこで訓練を受けて、阿頼耶識を施術されて、ガンダム・フレームのパイロットに選ばれた」

 

 そうして火星に派遣され、MAと戦っている。クレイグ自身は孤児でこそあるが、訓練されると共に文字なども学んでいるので、圏外圏でMSに乗せられる孤児達よりは幾分マシな境遇と言える。

 

「――すみません。辛いコトを」

「仲間もいるから、俺はそんなに気にしてないよ。むしろ、一緒に派遣された別のチームの奴らの方が酷かったかな」

 

 当初、ヘイムダルが火星に派遣した二チームの内、一チームは既にバラバラになった。ガンダム・フレームも何機かは行方知れずのままで、中には火星独立軍に編入して戦い続けている者もいる。

 十国の支援を適宜受けられる地球と違い、火星ではヘイムダルも自分のコトは自分で何とかするしかない。火星独立軍と共同戦線を組むコトも有るが、火星独立軍にヘイムダルを支援する余裕は無い。

 

「…私は、火星の現状を変えたいんです。でも、ずっと話し合いで平和に、って言って来ましたから、今どうすべきか分からないんです。貴方達と――ヘイムダルと共にいれば、その答えが見つかるんじゃないかって。

 クレイグは、どう思いますか?」

「どう、って。戦うしかないでしょ」

 

 迷うコト無く、クレイグはそう即答した。

 生き残る為には戦うしか選択肢が無い。それが今の火星――いや、今の世界だ。

 

「――しかし、暴力では何も解決しません。暴力は暴力を呼び、憎しみを生み出します。火星の人達の幸せと平和は、暴力では保証出来ません」

 

 暴力で火星の平和を成そうとしている者がいる。

 それがセレドニオ・ピリー、火星独立軍の司令官だ。

 

「火星の独立は必要です。ですが、セレドニオ・ピリーのように武力で独立しようとするのは、その…あまりにも、危険過ぎだと」

 

 MAの跳梁跋扈で停止した状態にこそあるが、地球からの独立による自治の実現は、火星に存在する労働、貧困、格差――あらゆる問題を解決する糸口になる。それは今も変わらない。無論、独立は新たなる問題を噴出させるだろうが、自分達のコトを自分達で決定し、政治を進めていくのであれば、地球に搾取されるよりかは幾分マシになる。

 今は地球による搾取より、MAの方が目に見えて間近な脅威となっているものの、セレドニオは未だ火星の独立を考えているらしい。

 ヘイムダルにより惑星間航路「アリアドネ」が開通し、数年間止まっていた地球との交易が再開される中、セレドニオは民間業者の取り締まりを行っている。地球は火星にとって不倶戴天の敵であり、資源を輸出するなど火星への叛逆も同義だ――と、セレドニオは身勝手な理論を振りかざしている。

 

「でも、武力が無いと。戦ってMAを倒さないと、火星に住む人は皆殺しにされる」

「ええ――それは間違い有りません。ただ、戦力を増強してMAを倒した後、セレドニオは間違い無く矛先を地球に向けるでしょう。人間同士の殺し合いが、再開されてしまいます」

 

 戦後のコトを考えているのは、地球だけでなく火星でも同じだ。

 ヘイムダルやMS部隊の活躍により撃破されたMAからパーツやエイハブ・リアクターを鹵獲し、それを元にしてMSを建造するコトで、MSの総数は増加しつつある。撃破されるとしても、戦闘終了後に残骸を回収し、修理すれば使えるようになる。それだけの頑強さを、MSという新兵器は有している。

 やがて、MAの殲滅は成る。その先、地球はMAを造らせた火星独立軍の罪を追及しようとする。だからこそ、火星独立軍はその前に地球に今一度決定的な打撃を与えた上で、火星の独立を地球に認めさせようとする――レヒニータは、そう予想している。

 

「それは間違いだと、私は思います。…ですが、本当に火星を独立させようとするなら、セレドニオのやり方の方が良いのではないかと、思ってしまうコトも有るんです」

 

 戦後、地球が火星との話し合いのテーブルに付く可能性は低い。

 何故なら、火星独立戦争とその後のMAとの戦いは、元を質せば火星独立軍の行動が原因だ。新たに得たMSという兵器を、人間同士の戦争に投入するのは、地球の方が先かも知れない。両者の間に有る互いへの悪感情は絶大であり、相手を完全に屈伏させるか――最悪、完全に滅ぼすまで戦争は終わらないだろう。

 だったら、その後の関係が最悪になるとしても、地球の先手を打って火星の独立を強引にでも認めさせた方が良いのではないか。強攻策が絶対に間違いだと言い切るコトは、レヒニータには出来ない。

 

「難しいコトは、俺にはよく分かんないけど――だったら尚更、レヒニータは戦わなきゃダメだ」

「……何故、そのように」

「昔、地球にいた時に言われたんだ。戦うコトは、何もMSに乗って殴り合うだけじゃないって」

 

 ヘイムダルに保護され、クレイグはそのように教育を受けた。今まで忘れていたが、レヒニータと話す中で、それをふと思い出したのだ。

 

『戦いの方法は、物理的な殺し合いだけじゃない。精一杯生き抜くコトや自分のやりたいコトをやり抜くコト、話し合うコトだって立派な戦いだ。戦い方は人それぞれ、多種多様なんだよ。

 私達が教えるコトは、どうやっても物理的な殺し合いという意味の戦いが多くなってしまうが――どうか、それしか出来ない人間にはならないでほしいと、私達は君達に願う。人は何だって出来る。若い君達は尚更、何だって出来るし、何にだってなれるだろう』

 

 誰に言われたか、までクレイグは覚えていない。きっと、ヘイムダルにいる大人の内の誰かだったのだろうと思うが――全く意味の分からない言葉だった。

 ただ、クレイグはそれが何故か、印象に残った。

 

「だからきっと、レヒニータにはレヒニータの戦い方が有る。レヒニータは、レヒニータにしか出来ない戦いをすれば良いんだと思う」

「―――私の、私にしか出来ない戦い…」

 

 レヒニータは、かつて戦うと誓った。

 銃を取り、人を殺す為の戦いではない――火星の人々の為、一人でも多くの人に笑ってほしいと。何も知らず、何も分からない中でもそう願い、レヒニータは立ち上がったのではなかったか。

 たった一人で独立運動を起こし、それを火星全土にまで広げ、地球との交渉の場まで設けんとした。彼女を突き動かして来たモノは、常に崇高な理想であり、現実味の無いモノだったのだろうが――彼女は、言葉という武器を使って、戦って来た。

 

 この時代は、狂っている。

 

 誰もがそう思っているし、事実その通りだ。地球へのコロニー落としから始まり、人殺ししか能のない無人殺戮兵器が世界を席巻し、人類は戦わされ続けている。人類に無限のエネルギーを齎すハズのエイハブ・リアクターの誕生が、巡り巡ってこんな地獄に繋がるなど、世界を回す歯車は明らかに壊れているとしか言いようがない。

 しかし、でも、だからこそ――レヒニータ・悠那・バーンスタインはレヒニータ・悠那・バーンスタインとして、レヒニータ・悠那・バーンスタインにしか出来ない方法で戦わなければならない。

 

 殺すか殺されるかの世界で、言葉を武器とする。

 頭がおかしい。バカげている。狂っている。世間知らずの小娘の綺麗事。

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 

 レヒニータは、ずっとそうやって戦って来た。だったら最後まで、どんなに時代が狂っていようと、レヒニータは自分の武器を信じて最期まで足掻くしか出来ない。

 時代が狂っているから、時代と共に狂うなどまっぴらだ。狂っている時代の中で狂わないコトこそ、本当に狂っていると言うのかも知れないが――ただ周りに合わせて、染まっていくだけの者に、革命などどうして成し遂げられようか。

 

「…そうですね。そうかもしれません。

 私は私にしかなれません。だから、私は最期まで私らしく、私のやり方で戦い抜きます!」

 

 レヒニータは今、決意した。

 少女ではない、革命の乙女としての真の出発。

 

 支持者など一人もいない。場所も大層な演説会などではなく、他に聴く者も一人しかいないMSのコクピット。

 ここが始まりだ。彼女の戦いは、まさに今、ここから始まったのだ。

 

「――うん。俺も手伝うよ」

 

 己が膝の上で宣言した革命の乙女に、クレイグは冷静に、されど力強くそう返した。どうやら、一時的に網膜投影を止めているらしく、その瞳は真っ直ぐにレヒニータの双眸を見据えている。

 クレイグと目を合わせたレヒニータは、朗らかに微笑んで――唐突に、クレイグに抱きついた。

 

「…レヒニータ? どうしたの?」

 

 真っ直ぐ火星の大地を滑っていたバルバトスは、その瞬間僅かに蛇行した。それにレヒニータは満足しつつ、抱きついたまま「何でもありません」とだけ答える。

 クレイグはレヒニータの心情を掴みきれなかったが、すぐに網膜投影を復帰させ、バルバトスに彼方を指差させた。

 

「見えたよ。アレが、クリュセのマスドライバー」

 

 峡谷に守られた火星有数の都市にして自治区、クリュセに隣接するは、天に突き出す宇宙への橋――マスドライバーである。

 

 

   ◇

 

 

 ところで、このマスドライバーには先客がいた。

 バルバトスの他にも、火星独立軍所属の量産型MSが複数と、もう一機――ガンダム・フレームが、宇宙行き大型シャトルへの積み込みをされていた。

 

「お? ようクレイグ、久し振りだな!」

「久し振り、ゴドフ。メイベルも」

「ええ。何ヶ月ぶりかな、クレイグ」

 

 クレイグ達は、そのガンダム・フレームのパイロットをしている二人と、空港の搭乗口でバッタリ出会った。

 

 ゴドフレド・タスカーと、メイベル・タスカー。

 コクピットに複座式を採用している遠距離射撃特化機体――「ガンダム・フラウロス」を駆る夫婦である。

 彼らが乗るフラウロスは、ガンダム・フレームの六十四番機。二丁ものバレルキャノン――ダインスレイヴを背負い、それを最大限生かすべく、射撃形態への変形機構を備えるのが特徴だ。白と青で染め上げられているのは、どうやらガンダム・フレーム一番機の「ガンダム・バエル」を意識した配色らしい。

 

「――あぁ? オイオイ、どうしたよクレイグ! お前が女連れだなんて、珍しいコトも有るじゃねぇかよ! しかも、まだ若ぇけど結構美人じゃnッてぇ!」

 

 レヒニータを発見し、茶化しに入ったゴドフレドの足を、メイベルは思い切り踏んづける。足を押さえうずくまったゴドフレドを傍目に、メイベルはクレイグに改めて問う。

 

「ゴドフ、調子に乗らない。

 …でも、本当にどうしたの? ゴドフじゃあるまいし、まさか恋人だとかそう言うのだから連れてる訳じゃないよね、クレイグ」

「こ、恋人だなんてそんなコト…!」

「コイツはレヒニータ。革命するんだって」

 

 レヒニータがメイベルの言葉に反応する中、クレイグは淡々とそう述べた。

 その名前と革命、の二文字を聞いて、メイベルには思い当たる節が有ったようだ。

 

「革命――貴女、もしかして『革命の乙女』のレヒニータ・悠那・バーンスタイン?」

「あ、はい。そうです、一応」

 

 乙女、なんて二つ名を言われるのは恥ずかしいのか、レヒニータは歯切れ悪く肯定する。

 メイベルは多少驚いたようだったが、すぐに笑顔を浮かべて手を差し出した。

 

「『革命の乙女』に会えるなんて、光栄だね。私はメイベル・タスカー、よろしく」

「俺はゴドフレド・タスカー! ところでレヒニータさんとやら、クレイグの野郎とはどこまで――ごあっ!」

 

 今度はメイベルの肘鉄が、ゴドフレドの鳩尾に突き刺さった。ゴドフレドが再び倒れ込み、レヒニータは驚愕して心配する素振りを見せるが、メイベルは唇を尖らせて言う。

 

「コイツ、すぐ調子に乗るんだ。気にしないで」

「で、ですが…ですよね、クレイグ!」

「――何が『ですよね』なのか分かんないけど、この二人はいつもこんな感じだよ。ゴドフも慣れてるから気にしないで。わざとやってるだけだから」

 

 ぶっきらぼうなクレイグの言葉に、ゴドフレドは速やかに起き上がって突っかかる。

 

「ちょっと待て、その説明だと俺がドMみてぇじゃねぇか! 訂正しろクレイグ! 俺は別にやられたくてやってる訳じゃねぇからな!」

「ふーん」

「真面目に聞きやがれ!」

 

 ゴドフレドの主張をクレイグが適当に聞き流していると、空港にアナウンスが流れた。大型シャトルに貨物を積み終わり、搭乗手続きが始まったとの内容である。

 

「とにかく、アレに乗って出発しよう。…私達以外の客は、ほぼ全員が独立軍の奴らだけど」

「――全員、って…何故ですか?」

「そいつは分かんねぇがよ。どうも最近、独立軍の奴らが宇宙に上がり始めてるらしくってな」

 

 外に並ぶ大量のMSも、随時宇宙に上げられる手筈になっているらしい。ヘイムダルとしては、宇宙でMAが増えていると言った情報は今の所掴んでいないので、独立軍のこの動きの意図を図れずにいるのが実情だ。

 最近、民間の物資は後回しにされ、MSも含めて独立軍がらみの物が宇宙に上げられているとか。

 

「独立軍が、ハーフメタル含有地を中心に火星のあちこちに置いてたMAの観測部隊も、引き上げ始めてるらしいよ」

「…スキャパレリに敵の接近を許したのと、関係が有ると思いますか?」

「多分、有るんじゃないかな」

 

 不可解な点は多いが、まあ敵を同じくする以上、ヘイムダルにとって火星独立軍は仲間だ。別に争う理由は無いので、内部事情に下手に関わるコトは出来ない。

 

「行こうぜ。出発まで、そう余裕は無ぇからよ」




第五十五話「レヒニータの決意」をご覧頂き、ありがとうございました。

出て来る機体が原作に登場済みのモノが多いせいかは分かりませんが、何かすごく書きやすい火星編。
ヒロイン(暫定)と主人公(暫定)が合流しまして、レヒニータは改めて決意を固めました。
ミカクー派の私としては、この二人を見てると何かを思い出すような気がします。


《新規機体》
ASW-G-64 ガンダム・フラウロス
・ヘイムダル、ゴドフレド・タスカーとメイベル・タスカーの機体。
・原作でも登場していますが、当然ながら色はピンクでないし、勝手に複座式にされております。白と青のカラーリングは、厄祭戦時Ver.としてプレバンで出てましたね。


《新規キャラクター》
クレイグ・オーガス
・ヘイムダル所属で、ガンダム・バルバトスのパイロット。
・どっかで見た苗字だが、同じだけで別にミカとは何の関係も無い――かもしれないし、実は有るのかも知れない。その辺りはご想像にお任せしますが、銀髪の金目ってとある原作キャラと同じですね。

ゴドフレド・タスカー
・ヘイムダル所属のパイロット。
・フラウロスでは砲手担当で、腕はかなり変態的。女好きでノリが軽く、かなりの頻度で嫁のメイベルに制裁を食らう。

メイベル・タスカー
・ヘイムダル所属のパイロット。
・フラウロスでは操縦担当。夫のゴドフレドに対するツッコミ役で、相対する性格と口調をしている。


《今回のまとめ》
・個人的にクレイグとレヒニータはお気に入りキャラ
・レヒニータ、自分なりに戦う決意を固める
・謎も有りつつ、新登場の仲間と共にいざ宇宙へ




次回「革命前夜」
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