厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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本当は土曜日に投稿しようと思っていたのに、劇場版HF第三章の舞台挨拶を観に行ったりマキオンやったりしてたら水曜日になってました。
時の流れが速すぎて笑えない今日この頃。


物語の内容的には、ようやく火星編におけるMA戦が始まります。
火星編もいよいよ後半戦、第五章が終わった後は作品全体としても折り返しとなるので、火星編の残りはそう日を空けずに投稿したい次第です。

なお、このMA戦はエヴァのサントラを聴きながら書いたおかげで、主に後書きの機体解説のテンションがおかしくなってますが、気にしてはいけない。


#58 蛇行せし炎聖剣

 火星独立軍は、総司令官セレドニオ・ピリーの死により、一時解体された。そして、その戦力はレヒニータ・悠那・バーンスタインの支持の下、エメリコ・ポスルスウェイトを中心として結成された「火星防衛軍」に受け継がれるコトとなる。

 また、レヒニータ・悠那・バーンスタインは、ノアキスから火星の人々に対して、こう宣誓した。

 

「私は、レヒニータ・悠那・バーンスタイン。

 火星に住む、全ての人々へ申し上げます。この度の火星独立軍の解体と、火星防衛軍としての再編。これは、私の行動が生み出した結果です。

 ――私は地球からの独立に際して、平和的な解決手段を模索して来ました。しかし、エイハブ・リアクター発明を受けての、セレドニオ・ピリー率いる火星独立軍による、地球への宣戦布告を止めるコトは出来ませんでした。結果として、火星独立戦争の勃発を招き、火星独立軍は『モビルアーマー』を建造するに至るまで暴走した。その責任は、彼らを止められなかった、不甲斐ない私に有ります。弁明するつもりは毛頭有りません。責任は果たされなければならない。

 だからこそ、私は火星防衛軍としての再編に関わりました。十年前、平和的な解決を望み、私を支持して下さった皆さんには、その信条を捨て去ったと捉えられても仕方有りません。ですが、現在私たちが直面する危機であるMAには、残念ながら話し合いが通用しません。彼らは人類の殺戮をプログラムされた無人兵器であり、私たちがMAの脅威から脱却する為には、現状、物理的に破壊して停止させる他に無い。武力以外での解決法が無く、これを躊躇っては、火星に住む人類は絶滅させられる。――火星防衛軍が行使する武力は、誰かを傷付け、服従させる為の力ではありません。火星に住む全ての人々を守る為にのみ、振るわれる力です。

 皆さんに、お願い致します。私たちの行動を支持しろ、とは申しません。ただ、私たちの行動を見守り、黙認して頂きたいのです。

 これから先、皆さんの内の一人も亡くなられるコト無く、戦争を終わらせると断言するコトは出来ません。MAの力は未知数であり、私たちが保有する戦力には限界が有るからです。しかし、これを言い訳とするコトは決してしないとお誓いします。私たちは全力全霊で防衛任務を遂行し、力を持つ者としての責務を、ヘイムダルとも協力しながら全うして行く次第です」

 

 この宣誓と火星防衛軍が、火星の人々にスンナリと受け入れられた訳ではない。都合が良すぎる、手のひらクイックルワイパーじゃねぇかと言った批判も噴出し、地球に恨みを抱く者達の中には、今なおセレドニオ・ピリーを支持する声が有る。

 しかし、MAによって命の危機に晒されているという意識もまた明白であり、MAに大切な人の命を奪われた者も多い。地球の都市のように、堅牢なシェルターに守られている訳でもない。誰かに守ってもらわなければ、守ってくれなければ困るのも事実だった。

 レヒニータと火星防衛軍は、ただ行動によって己が意志を示した。ヘイムダルとも連携し、火星の都市の防衛体制を整え、衛星軌道上にも艦隊を常駐させ、宇宙からの攻撃にも警戒する姿勢を取った。地道な努力、取り組みの積み重ねにより、火星防衛軍はゆっくりと、火星の人々から黙認される存在となり、受け入れられて行った。

 

 多数からの支持を得ている訳ではない。

 それでも、「革命の乙女」と呼ばれる彼女は、彼女なりのやり方で戦い続けている。

 

 

「すごいな、レヒニータ」

「ああ。俺たちとしても、かなり戦いやすくなったしな。被害は着実に抑え込まれ始めてる。

 …で、レイ。結局、あの後何も無いのか?」

「――会ってすらいない、って言ってるじゃん」

 

 彼女の手助けをしたパリス・イツカ率いるヘイムダルのチームは、その戦いぶりを評価している。

 ――なお、レヒニータによるキス事件は、パリスによって瞬く間にチーム中に知れ渡り、クレイグは「やっぱり女を連れ込んだんじゃねぇか」と言われてからかわれるようになった。その後、クレイグがパリスの首を締め上げたコトは言うまでもない。

 

「――ん?」

 

 と、その時。パリス達が運用するバラクーダ級強襲装甲艦「サタナキア」のブリッジにいるオペレーターが、何かに反応した。

 それを聞き逃さなかったパリスは、そのオペレーターに対して報告を求める。しかし、オペレーターはどうにも歯切れが悪い。

 

「いや、まさかそんな――センサーの故障か?」

「何か有るなら報告しろ。何でもいいから」

「あ、ああ――四時方面に、無数のエイハブ・ウェーブの反応が有る。データに該当無しの」

「は!? んなモン、MAに決まってんじゃねぇかよ! 何でさっさと報告しなかったんだ!?」

 

 パリスの叱責に、オペレーターはでも…と反論する。

 

「数が多すぎるんだよ! 五百とか、どう考えてもおかしいだろ!?」

「五、」

「百ゥッ!?」

 

 クレイグとパリスが驚きを露わにし、映像で捕捉するよう命令する。オペレーター達が半信半疑で、四時方面の観測を行うと―――

 

「―――オイ、オイオイオイオイオイ…!」

「…これは―――」

 

 ――センサーの故障でないコトは、証明された。

 同型のMAが、一列に並んで群体を成し、蠢きながら接近して来ているのだ。

 

「そ、総員! 第一種戦闘配置だ!! MAの大群が迫って来てんぞ!!」

 

 その数、五百三機。

 一体一体は小型であり、大した戦闘力も持ち合わせてはいないようだが――数の桁がおかしい。どう考えても異常だ。

 百機を超えるMAの群すら、地球でのロサンゼルス攻防戦やオデッサ奪還作戦など、超大規模な戦闘でしか確認されていない。それが五百機、しかも全て同型のMAであるなど、あまりに奇怪過ぎる。

 

 そのMAの名は、イオフィエル。

 小型ビーム砲を搭載した頭部が、それぞれ四枚の翼に埋め込まれており、翼一枚につき一本、二股のランスを装備している。群体で行動するコトを前提として開発された、中期型最後にして()()()()()()()()()()()

 

『防衛軍にも応援を要請しろ! 数が多過ぎる!』

『ガンダム・フレームは、準備完了した機体から順次出撃! 殲滅作戦をやるぞ!』

「五百機なんて、メチャクチャ過ぎるだろ…! 頭がおかしいんじゃねぇのかアイツら!」

「だが、ある意味合理的でしょう」

「だね。――あんな数、殲滅しきれない。何機か突破して、都市に辿りつければ、アイツらはそれで良いんだから」

 

 戦闘配置に移行するサタナキアから、ガンダム・フラウロス、ガンダム・マルコシアス、ガンダム・グシオン、ガンダム・バルバトスが出撃した。

 宇宙にいる火星防衛軍の艦隊も、じきに到着するだろう。――殲滅戦だ。無理でもやらねば、火星の人々が虐殺される。

 

「まあ、ポジティブに考えようぜ。…リアクター、獲り放題だ。アレだけ有れば、火星のリアクター不足は一気に解消出来る」

「――和弘の言う通りだね」

「しょうがない…やってやっかァ!」

「フォームチェンジ。バレルドッキング、ゴー」

 

 ゴドフレドとメイベルが乗るフラウロスは、変形を開始する。サタナキアの上部甲板に取り付いてから腕部装甲を掌部に回して固定し、腰部を百八十度回転させ、機体をその場に固定。両肩に背負うロングバレルキャノンがリアクターと直結、展開。装填された特殊KEP弾頭が砲口から僅かに飛び出し、射撃準備が完了された。

 これが、フラウロス特有の変形機構。ロングバレルキャノンこと電磁投射砲(ダインスレイヴ)を、たった一機で二基も運用せしめる為の、砲撃形態である。

 

「変形終了、固定完了。後はよろしく」

 

 変形作業が終わったので、操縦担当のメイベルは一旦お役御免だ。ここからは、砲手であるゴドフレドの腕の見せ所となる。

 網膜に狙撃用スコープを投影しながら、ゴドフレドは仲間のガンダム三機に呼びかける。

 

「さぁて、最低でも五十機は吹っ飛ばそうぜ! お前ら、上手くやれよ!」

「「「了解」」」

 

 バルバトス、グシオン、マルコシアスが、誘導の為に敵群への突撃を仕掛ける。バカ正直に一機ずつ落としても、埒が明かない。ダインスレイヴで、複数機を一網打尽とする算段だ。

 その為には、蛇行しながら接近して来る敵を、一直線に整列させなければならない。ダインスレイヴは確かに強力な兵装だが、基本的には直進しか出来ないのだから。

 地球圏なら、ダインスレイヴ隊をズラズラと並べて殲滅戦を行えるが、基本的に数と資金、何よりもエイハブ・リアクターが不足している火星圏では、残念ながらそんな荒っぽい使い方は出来ない。

 だからこそ、ガンダム・フレームが対MA戦の中核を担っており――故にこそ、MAは質だけではどうにも出来ないほどの数を、一挙に投入して来たと言う訳だ。

 

「行けッ!」

 

 和弘のグシオンが、胸部に装備された大口径砲「バスターアンカー」を発射。四発の四百ミリ弾頭は、群団の先頭に位置する機体を挟み込むように飛び、後方で蛇行する機体に直撃し、粉砕させる。蛇行して舞う列が乱れ、欠けた場所を埋めるように、次なる機体が入り込んだ。

 一方、近接武装ばかりのバルバトスとマルコシアスは、先程の爆撃で吹き飛ばされた機体に取り付き、素早く機能を停止させた上で、押し出すようスラスター全開で飛翔する。他の多くの機体が接触して巻き込まれ、重なり合い、フンコロガシが如く球体に集積して行く。

 

「行くよ…!」

「せー、のッ!」

 

 ガンダム・フレームの出力を以てしても御しきれないほどに集めた無数の機体を、バルバトスとマルコシアスは、グシオンが抑え込む先頭集団に向けて、一斉に放り投げた。二つの集まりが先頭集団にぶつかり、三つの群団が一挙にまとまった。

 そして、それと同時にグシオンは先頭集団から離れる。百機ばかりが密集した箇所が現れ、それをゴドフレドは見逃さない。

 

「ダインスレイヴ、発ッ射ァッ!!」

 

 二本の魔剣が(いかずち)を吹き、密集箇所へと突入。直撃を受けた機体が分解し、密集していたが故に衝撃が全機へと伝播して、内側から破裂するように吹き飛ぶ。装甲自体は大した分厚さでないのか、巻き込まれたイオフィエルは、その一撃で大半が停止させられた。

 しかし、残りは復帰してすぐに列を組み直す。そしてまだ、前方も前方が破壊されただけ。敵は八割以上が、無傷のまま残っている。

 

「っしゃ、まずは三十七機!」

「後、四百六十六機――十三回やればいけるかな」

「ケッ、何だ楽勝じゃねぇか!」

「な訳ないでしょ、弾頭の数が足りないよ!」

「とりあえず、ダインスレイヴで削れるだけ削ってみよう。残りは俺たちが何とかする」

 

 ただ、悠長に何度も繰り返している訳には行かない。敵群は徐々に火星へと接近しており、タイムリミットは刻一刻と迫っている。フラウロスが弾頭を再装填し、三機で誘導して発射する一連の流れにかかる時間を考慮すると、このままではとてもじゃないが間に合わない。

 敵群は、既に火星の衛星軌道に迫りつつある。軌道に乗り、突入シークエンスを開始するまで、一時間を要するか怪しいモノだ。

 

「だが、やるしかねぇだろ! サタナキアからも砲撃支援する!」

「艦長、新たなエイハブ・ウェーブを確認! …これは、火星防衛軍の艦隊です!」

「よし――来てくれたか!」

 

 この時、増援が到着した。バラクーダ級強襲装甲艦が三隻と、ハーフビーク級宇宙戦艦が一隻――火星防衛軍の、宇宙艦隊である。

 四十機近くのスピナ・ロディ、ガルム・ロディ、グレイブ・ロディからなるMS部隊の先頭に、二機のガンダム・フレームが存在している。

 

『モビルスーツ隊、続け! 一機たりとも火星に下ろさせるな!』

 

 一機は、レグロ・サッチ中佐の駆る「ガンダム・エリゴール」。

 ガンダム・フレーム十五番機であり、支援を前提として開発され、高性能量子コンピューターと予測演算を行って対応する「ノルンシステム」を搭載しているのが特徴である。このシステムにはパイロットの脳とリンクさせる事で体感を一千倍にまで跳ね上げる「ヴェルダンディ・モード」と、観測データから未来の戦局を予測する「スグルド・モード」の二つが有り、冷却の為に展開される極薄の金属板が靡く光景は、さながら旗を掲げる聖者、マントを羽織る騎士の姿を想起させる。ただ、エネルギー消費量が激しく、システム起動時には機体出力が低下すると言う大きな欠点が有る。

 武装は二十メートルにもなる長大な槍「アビゴル・ランス」と、刀身の付け替えが可能なレアアロイ製の剣「アビゴル・ソード」で、腰部ブレードコンテナに換えの刀身が二本ずつ格納されている。

 

『数だけ揃えても何ともならないと言うコトを、あのポンコツどもに思い知らせてやるぞ!』

 

 もう一機は、シプリアノ・ザルムフォート大尉が操る「ガンダム・ダンタリオン」。

 多彩な装備により如何なる戦場にも対応する万能機で、今回は銃と剣の二つのモードを使い分けられる「ベイオネット・ライフル/ソード」を両手で二丁持ちし、腕部ユニットに変形する「ハーフカウルT」を背中に、脚部ユニットに変形する「ハーフカウルB」を腰背部にそれぞれ接続している。「フルブースト形態」と呼称され、機動性に優れる。

 七十一番機と言うコトもあり、殺意に満ち溢れた装備を持つ本機は、火星戦線において最も強力なMSとして君臨している。その戦果たるや、パイロットのシプリアノ・フォッシルが「城砦の帝国伯(ザルムフォート)」の名を戴き、名乗るコトになったほどである。

 

『砲撃開始! 殲滅するぞ!』

 

 火星防衛軍が、戦線に参列した。

 これで少しは戦況が好転した――とは言えない。防衛軍のMSを加えても、こちらは五十機にも満たないのである。対して、敵の数は未だ、四百機を超えている。

 そして、更に戦局は流転する。

 

「――!? 敵群の後方に、新たなエイハブ・ウェーブを確認!」

「ッ、何だと!?」

 

 サタナキアのブリッジでは、四百機もの敵群の後方に、また新たなエイハブ・ウェーブを観測していた。

 その報を受け取ったMS隊、防衛軍艦隊の面々の反応は、絶望するか舌打ちするかの二択である。

 

「――ッ!」

 

 敵群に突入し、二本のメイスを振るっていたバルバトスが、その新たなるMAからの攻撃を受ける。()()()()をメイスで弾きつつ、クレイグはその姿を捉えた。

 

 裏返しになった二枚の翼の上に、二本の腕を持つ異形のMA。頭部にビーム砲を備え、その背後から超硬ワイヤーブレードを機動させる、白と黄の威容を持つ機体。

 そんなモノ、たった一種しか存在しない。

 

 

 「天使長」ザドキエル。

 

 

 下級の「天使」に対する指揮権を持つ、この戦場の支配者たるMAである―――




第五十八話「蛇行せし炎聖剣」をご覧頂き、ありがとうございました。

厄祭戦の本題、対MA戦でございます。
四章最終決戦と言い火星独立軍絡みのいざこざと言い、どうも脇道に逸れがちでしたが、そろそろ本線へ戻して行きたいと思いまして。
サブタイトルは今回登場した「イオフィエル」のコトです。象徴(シンボル)が「炎の聖剣」なので。

ダンタリオンとシプリアノ君は、第二十三話「失われた悪魔」に登場しているので、この場での解説は行いません。


《新規機体》
イオフィエル
・中期型のMA。
・群体での運用を想定している為、単体での戦闘能力は初期型並みに低いが、とにかく数が多い。
・ぶっちゃけ、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の「AVANT1(冒頭10分40秒00コマ)0706版」に登場する航空特化タイプの「EVA-44A」みたいな感じ。

ASW-G-15 ガンダム・エリゴール
・火星防衛軍、レグロ・サッチ中佐の機体。
・ヴィダール的な剣を持っている。冷却モードは「Fate」シリーズのジャンヌ・ダルクがイメージらしいが、旗っぽいのは放熱板なので、もしかしたらフィン・ファンネルなのかもしれない。


《新規キャラクター》
レグロ・サッチ
・火星防衛軍MS部隊の隊長で、階級は中佐。
・実は熱狂的なレヒニータファン。キス事件で並々ならぬ衝撃を受けていたりもする。


《今回のまとめ》
・独立軍は解体され、火星防衛軍が結成
・遂にゼーレNERVのEvangelion Mark.04が(違う)
・出ました! ボスキャラ(天使長)です!




次回「(ソラ)と地から人々を試す」
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