厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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本作は、今回から後半戦に突入致します。
「起承転結」の「転」、「序破急」で言う「急」にあたるエリア。ヱヴァで言う「破」→「Q」みたいな感じ。だからと言って訳分かんなくなったりはしないので、その点は安心してご覧下さい。

章タイトルも「暴力」と、かなりヤバそうな感じ。
「Can Not Coexist」の訳は「共存不可能」となっており、こちらも穏やかでない意味をお持ちです。

そして、後半戦と言うコトで、一話ごとのサブタイも英語に変わります。
「Four Archangels」の訳は、勿論「四大天使」。
念の為に言いますが、別にアークエンジェル級戦艦が四隻出て来る訳ではないよ!

【挿絵表示】


さあ諸君 地獄を創るぞ


第六章 暴力 -Can Not Coexist-
#61 Four Archangels


 ドルトコロニー群。

 M.U.0040年、火星独立戦争の際に火星独立軍が実行したコロニー落とし作戦で使用され、住民もろとも地球への降下軌道を取ったコロニー群だ。

 二年後、このコロニー群が在ったラグランジュ・ポイントには、エイハブ・リアクターを動力源とする新型のコロニーが一基完成した。更に追加で建造する予定も有ったが、月面で無人殺戮破壊兵器「モビルアーマー」が起動し、世界中に散らばったコトで計画は中止されている。

 また、MAの出現に際し、急遽、外壁がナノラミネート塗料で塗装された。この措置により、他の旧式コロニーが悉くMAに破壊される中、唯一その被害を免れるコトとなった。今ではイングランド統合連合国の宇宙艦隊が常駐しており、宇宙における人類の重要な拠点の一つとなっている。

 

 実に、M.U.0051年一月三日。

 巨大な脅威は、唐突に牙を剥いた――

 

「月方面、千キロの地点にエイハブ・ウェーブを観測しました」

 

 ドルトコロニーに常駐する、イングランド統合連合国の宇宙艦隊が、その予兆を捉えた。

 この艦隊はハーフビーク級宇宙戦艦三隻、バラクーダ級強襲装甲艦五隻で構成され、合計で八十五機ものモビルスーツ部隊を運用する大艦隊である。

 

「入港予定の艦は有るか?」

「いえ、今日は有りません。固有周波数、データベースに該当無し。恐らくは――」

「MA、か。毎度毎度、懲りない奴らだな。無駄だと分かっているだろうに」

 

 艦隊旗艦たるハーフビーク級宇宙戦艦「ナント」のブリッジで、オペレーターの報告を受けた艦隊司令官ナシオ・ドナルドソン中将は、呆れたように溜め息を吐いた。

 MAの襲撃は、珍しいコトではない。人口密集地に惹かれる性質が有る為、三日に一回は必ずやって来る。その規模はまちまちだが、何にせよ問題にはならない。どんなMAだろうと、ナノラミネートアーマーになっているコロニーの外壁を破壊するコトは出来ないからだ。

 

「数は?」

「他にエイハブ・ウェーブ反応は有りません。一機だけと思われます」

「単独行動――またザフキエル辺りか?」

 

 ザフキエルは、ビーム・ランチャーを搭載したコロニー破壊用MAである。旧型のコロニーに対して猛威を振るったが、ナノラミネートアーマーに守られたドルトコロニーに対しては無力。これまでも何度か攻撃を仕掛けて来ているが、初期型であるコトもあり、どうとでもなる機体だ。

 

「まあ、見れば分かるコトだな。監視衛星からの光学映像は出せるか?」

「はい。エイハブ・ウェーブを観測した衛星にアクセスします」

 

 コロニーの周囲数百キロに渡り、等間隔で配置されている監視衛星で、駐屯艦隊は敵の姿を捕捉するコトが出来る。敵機の種類と数を正確に把握し、敵がコロニーを射程圏内に捉える前に、迎撃して殲滅する――いつものパターンである。

 

「――!? シグナル、ロストしています!」

「…何? 他の監視衛星はどうだ?」

「つ、次々とシグナル消失! 破壊されているようです!」

「監視衛星からの画像には、何も映っていません! 詳細不明!」

 

 何事か、とナシオは眉を(ひそ)めた。

 監視衛星は無人、かつ旧時代の核融合炉を動力源にしている為、エイハブ・リアクターも搭載されていない。MAは人間とMSには反応するが、それ以外の物を無闇に破壊したりはしない。機械であるからこそ、そんな非効率で無駄なコトは()()()()ハズなのだ。

 

「敵MA、接近して来ている模様!」

「――全艦、第一種戦闘配置! MS隊、全機出撃させろ!」

「ぜ、全機でありますか…!?」

「全機だ! 敵戦力が未知数である以上は、こちらも最大戦力で対応する! 急げ!!」

 

 ナシオの命令で、全艦からMS隊が出撃する。

 全八十五機の内、ダインスレイヴ隊は四十機。全機が整列し、特殊KEP弾頭を装填されて、発射態勢が整えられた。八隻の艦隊も戦闘ブリッジに移行して全砲門を開き、敵機の接近に備える。

 

「光学映像、出ます!」

 

 ダインスレイヴ隊からの観測データが、艦に転送される。そして、遂に敵機の姿が、旗艦「ナント」の正面モニターに表示された。

 その威容を垣間見た瞬間、ナシオは驚愕し、震え上がらざるを得なかった。

 

「―――何だ、あの機体は…!?」

 

 まず、その機体はあまりに巨大だった。

 三百メートル近い全長に、四枚の長大な翼。血のような赤と純白で彩られた翼からは、一枚につき三本もの魔剣が突き出している。二本の腕には巨大なパイルバンカーを、もう二本の腕には五叉のランスが備えられている。五本の尻尾を蠢かせ、それらを繋ぎ止める胴体は八基ものリアクターと赤き装甲、それを修飾する黄金で象られていた。

 

 其はまさしく、大天使と呼ぶに相応しい。

 

 ナシオは、その機体が如何なるかを、直感的に理解していた。そして、理解した瞬間、否応無しに畏怖と絶望を抱かさせられた。

 

 

「……四大、天使―――」

 

 

 「四大天使」ウリエル。

 其は「破壊」を司るとされる智天使。神の御前に立つコトを赦された、四柱の大天使の一角。

 たった一機、ただ一つの行動のみであろうとも、世界全体の戦局を左右する怪物が――これまで姿を隠し続け、大戦を裏から動かしていた超越者が、遂にその威容を人類の前へと晒したのである。

 

 今、天上の大天使は地上に舞い降りた。

 人類を裁き、悪魔を断罪し、懺悔させる為に。

 

 

「し、司令…!」

「ッ…全軍、砲撃開始! 四大天使だか何だか知らんが、所詮は図体がデカいだけだろうが!! 何としても撃墜しろ、コロニーをやらせるなッ!!!」

 

 ナシオの絶叫にも似た命令で、四十基もの魔剣が一斉に放たれ、八隻の戦艦が艦砲射撃を開始する。ウリエルは一切の回避行動を取らず、四十本もの魔剣と無数のナパーム弾を全身に受けた。無数の火花と爆発がウリエルの体表で巻き起こり、三百メートル弱の巨体が覆い隠される。

 これを受けて艦砲射撃が停止され、ダインスレイヴ隊は再装填に移った。

 

「全弾命中!」

「フ、ハハハハハ…何だ、呆気ないモノだな。まさか本当に図体だけとは――」

 

 冷や汗を垂らしながら、ナシオが言い聞かせるように呟いた直後。

 

 

 爆煙を引き裂いて、桃色の閃光が(はし)った。

 

 

 頭部から放たれた極太のビームが、ナシオの乗る旗艦「ナント」の右舷側に並ぶハーフビーク級宇宙戦艦「レンヌ」に直撃。

 最も装甲が分厚い正面に当たり、一瞬は拡散させられたそれは――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「レ…『レンヌ』、撃沈!」

「て、敵機健在! 健在です!!」

 

 状況を報告するオペレーターの声は、悲鳴のようだった。司令官のナシオも、ただ絶句するしか無く――爆煙の中からは、傷の一つさえも付いていないウリエルが、ゆっくりと進み出て来た。

 

 そう、ウリエルは無傷だった。

 

 四十発ものダインスレイヴと、ナノラミネートの天敵である高熱を発する、無数のナパーム弾の直撃を受けてもなお、傷さえ付いていなかった。

 

「あ、有り得ない…アレを食らって、五体満足でなどいられるハズが――!」

 

 次に翼の一枚が動き、内蔵された特大のダインスレイヴが三基、同時に放たれる。

 それは「ナント」の左舷側、外側のバラクーダ級強襲装甲艦三隻に一発ずつ直撃し、貫通。まさに一瞬、たった一撃の下に沈黙させられた。

 

「『トゥール』、『リモージュ』、『ボルドー』沈黙!!!」

「も、MS隊と接触します! MS隊、敵機との交戦状況に入ります!」

 

 ウリエルは遂に、ロディ・フレームで構成されるMS隊の目前に迫り、ダインスレイヴ隊が二射目を放つ。しかし、ウリエルが装備する五基もの「超硬大型ワイヤーブレード」が音すら置き去りにするほどの速度で機動し、その全てを瞬時に弾くと共に、四十機のダインスレイヴ隊を薙ぐように一掃した。

 ダインスレイヴ隊の全滅を受け、残り四十五機のMS隊が接近を試みるが、音速で機動するワイヤーブレードの前では為す術など無い。そもそも、パイロットは認識して反応するコトすら出来ない。

 

「うあああああ!!」

「なn」

「どこかr」

 

 四十五機のMS隊は、ハエを振り払うかのように破壊され、無力化させられた。全滅するまでの時間は、三分にも満たなかっただろう。

 ウリエルはまた一枚の翼を動かし、三基のダインスレイヴを一斉射。残り四隻となった艦隊の内、旗艦「ナント」以外の三隻が一発ずつ撃ち抜かれ、撃沈させられる。

 

「敵機、接近して来ます!!」

 

 そして、ウリエルの四本の腕の内の一本が、艦のブリッジの真上を掴んだ。巨大な格闘用クローはヒート・クローであるらしく、ウリエルの触れた箇所の装甲が溶解し、その爪は艦に深々と食い込む。

 艦が歪み、各所で爆発が発生し、ブリッジのメインモニターも暗転。恐慌状態に陥ったオペレーター達が、命令も無く勝手に席を立って逃げ出す中、司令官であるナシオ・ドナルドソン中将は、ただ呆然と立ち尽くすコトしか出来なかった。

 

「―――間違っていたのだ。偉大なる神の裁きに、逆らおうなどと……」

 

 腕部に内蔵されたヒート・パイルバンカーが放たれ、上部装甲もろともブリッジを貫く。ダメ押しと言わんばかりに、開けられた風穴にビームが撃ち込まれ、艦は内部から爆発。轟沈した。

 それからウリエルは、残る六基のダインスレイヴを撃ち放ち、ドルトコロニーはいとも容易く貫かれる。続けざまにビームが放たれ、あまりに脆く、砂の城でも崩すかのように、九年間MAを退け続けたコロニーは分解させられた。

 

 それで終わり。

 出現から一時間も経たない間に、ウリエルは駐屯艦隊を全滅させ、ドルトコロニーを粉砕せしめた。

 

 ――目標、破壊完了。

   次目標、木星。移動開始。

 

 ウリエルは広げていた四枚の翼を畳み、転進。

 破片が散乱し、暗礁宙域と化したドルトコロニーに背を向け、木星圏への進路を取った。

 

 

   ◇

 

 

 ヘイムダル本拠地、ヴィーンゴールヴ。

 地球上の海を漂い続ける巨大メガフロートには、実に六つものチームが一挙集結していた。そして、ブリーフィングルームには、六つのチームから九人のパイロットが集っている。

 

「――私たち全員が呼び戻されるなんて、一体何が起こったのかしら?」

 

 「ガンダム・パイモン」のパイロット、カロム・イシュー。

 

「しかもこうして、チームリーダーばかりが呼びつけられるとはな。相当な何かが起こったに違いあるまい」

「…ただ、俺とミズガルズがいるってコトは、リーダーだからって訳でもなさそうだが」

 

 「ガンダム・アスモデウス」のパイロット、フェンリス・ファリド。

 「ガンダム・キマリス」のパイロット、クリウス・ボードウィン。

 

「しかも至急、と来た。おかげで私は宇宙からとんぼ返りだぞ」

 

 「ガンダム・ベリアル」のパイロット、ドワーム・エリオン。

 

「何であれ、我らはやるべきを果たすだけだ!」

 

 「ガンダム・プルソン」のパイロット、ケニング・クジャン。

 

「ケニングの言う通りだな。とにかく、話を聞いてみないコトには何とも言えねぇ」

「そうだな――アグニカ、何か聞いていないか?」

 

 「ガンダム・ヴィネ」のパイロット、ディアス・バクラザン。

 「ガンダム・アモン」のパイロット、ミズガルズ・ファルク。

 

「まあ、ちょっとは聞いてる。この面子が呼び出されたのも納得はしてる、と言うかこの面子しかないだろうなとは」

「昨日、ディヤウスおじさんから色々言われてたもんね。私はまだ知らないんだけど」

 

 「ガンダム・バエル」のパイロット、アグニカ・カイエル。

 「ガンダム・アガレス」のパイロット、スヴァハ・リンレス。

 

 以上の九名である。

 九名中六名がチームリーダーを務めている他、ガンダム・フレームの完成以前は共に訓練に励んでいた。良きライバルであり、友人であり、家族とすら言える同期の九人。世界中に散らばって戦い続けて来た彼らが、一体何故、一同に介するコトになったのか。

 

「おーはよう諸ー君!!!」

 

 それを説明するマッドサイエンティストが今、部屋に飛び込んだ―――!

 

「ゲッ、マッド野郎!!」

「『ゲッ』とーは何ーだねディーアスくん! 仮にーも娘ーがいる前でー父親に向かーって『ゲッ』とは! ほら見ーろ、スヴァハーが哀しんで」

 

 言いながら己が娘の方に視線を向けるは、マヴァット・リンレス。痩せこけた身体に白衣を纏った彼の、何故かビームを出せる義眼は、娘の哀しげな表情を捉える――ハズだった。

 

「あの、別に哀しくはないかな」

「スヴァーハー!?」

 

 なお、実際には真顔だった。

 常に微笑みを浮かべているスヴァハが、何とも珍しい真顔を披露している。感情が読み取れず、隣に立つアグニカは「レアな表情だな…」とふと思う。

 

「スヴァハちゃんは、自分の父親がいい歳こいてマッドサイエンティストなのに哀しんでるわよ」

「落ち着けマッド。用件だけ言え用件だけを」

「緊急なのだろう? 茶番劇を展開している場合ではないほどのな」

 

 カロム、フェンリス、ドワームがマヴァットに本題に入るよう求める。この場に集った九人は、何年かヴィーンゴールヴで暮らしていた分、マヴァットの扱い方をよく心得ている。

 マヴァットは「つまーらん奴ーらめ」と毒づきながらも、咳払いをしてから本題に入った。

 

「でーは、一言で言ーおう。これーかーら我々ーは火星ーに向ーかい、MAを倒ーす」

 

 以上、とマヴァットは締めた。

 しかし、流石にこの一言で納得出来る訳もなく、ミズガルズが「どういうコトだ」と問い質すと。

 

「『四大天使』が現ーれ、ドルトコロニーが壊ー滅した。恐らーくは『破壊』ーの大ー天使ウリエル。奴は圏外ー圏に向ーかったとアーリアドーネかーらの観測ーで明らーかになっている」

「よ、『四大天使』…ウリエルだと!?」

「ドルトコロニーが、壊滅――あの、九年間敵を寄せ付けなかった新造コロニーが、壊滅!?」

「そう、良ーいリアークションだ――とー冗談ーを言ーうには、いさーさーか状ー況が悪い。実のーとこーろ、猶予ーがそんーなに無ーくてな」

 

 件の「四大天使」ウリエルは、ドルトコロニーを粉砕した後、圏外圏――木星方面に向かった。恐らく、小惑星帯(アステロイド・ベルト)でしぶとく生き残る木星開発者達を全滅させてから、火星に向かうと想定される。

 残念ながら、木星への支援は到底間に合わない。だが、多くの人々が暮らす火星への侵攻は、何としても防がねばならない。

 

「だから、火星に大至急討伐隊を送る――と」

「そうーだ。だーが、困っーたコートに十ー国の首脳ー陣は火星ーへのー救援に乗ーり気でーは無ーくてな。ディヤーウスが懸命ーに交渉しーているが、恐らーく戦艦一隻ーを派ー遣させるのが落ーとしどころになーるだろう」

 

 本来なら、現存する全てのガンダム・フレームを派遣するコトさえ視野に入れるべきだ。しかし、それでは地球が完全に留守になる。

 ただでさえ地球の方が月に近く、また「四大天使」と言うからには、間違い無くウリエル以外の機体も存在している。十国は特に「四大天使」ミカエルを警戒しており、火星などという問題の発端になる辺境は、正直なところ捨ておきたいとすら思っているだろう。

 

「十国は軍を一切派遣しない。俺たちが出せる増援は戦艦一隻だけ、後は現地で協力しろと」

「…フザケてんのか! 火星の人類が滅ぼされれば次は地球、最悪ウリエルとミカエルを同時に相手にしなけりゃならないってのに――!」

 

 ディアスの言う通りだ。速やかにウリエルを打倒しなければ、人類は最悪ミカエルとウリエルの二機を相手取らねばならなくなる。一機相手でも勝てるか分からないというのに、二機が相手になれば人類は終わりである。

 その言葉に頷きつつ、マヴァットは続けてこう述べた。

 

「だーが? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これに、九人はほぼ同時に頷いた。

 理解したのだ――この九人が、呼ばれた理由を。

 

 使う艦は、現在における最強の戦艦――ラファイエット級汎用戦艦。

 それに乗り込むのは、訓練時代にトップの成績を納めた九人と、その愛機たるガンダム・フレームのみ。数年間を共に過ごした、気の知れた友人でもあるからこそ、「覚醒」時の連携にも全く問題の無いパイロット達。

 

 一隻しか派遣出来ない?

 なら、その一隻に最大戦力を集約するだけだ。

 

「――待てマッド。ラファイエット級の艦載可能機体数は、十機じゃなかったか?」

「残ーり一機ー分のスペースにーは、可ー能なー限りのー弾薬を詰めー込む」

 

 火星までの道中、MAの襲撃を受ける可能性は大いにあり得る。火星は資材が少ない為、救援で来た者が弾薬をたかるような事態は、出来る限り避けねばならない。だからこそ、貴重なMS一機分のスペースをフル活用し、多すぎと言えるほどの弾薬を詰め込んで旅立つ。

 

「そーしーて! 整備ーを迅速ー丁寧かーつ完ー璧に行うー為、今回ーは私ー自らが整ー備長としーて乗ーり込む!!」

「マジかよ」

「うわぁ」

「嬉しいような嬉しくねぇような…」

「待てお前ら、このマッドは一応世界最高レベルの研究者だからな? 一応」

「アグニカの言う通りだよ…もうちょっと落ち着いてほしいけどね」

「キーミたち酷ーくなーいか!?」

 

 ドン引きする七人と、フォローなのか追い打ちなのか分からないフォローを入れるアグニカとスヴァハ。凄いハズなのに扱いが基本的に雑なのが、マヴァット・リンレスというマッドサイエンティストなのである。

 

「今、おー前たちーの機ー体を突貫ー作ー業でゲーティアに詰ーめ込んーでいる! 出発ーは明ー日だ!!」

『はえぇな!?』

「事態ーは一刻ーを争ーう! ウーリエルが出ーた今、いーつ何処ーからミカエールが現ーれるか知れーたモノではない! さっさーと行ーってさっさーと帰ーって来ーい、というーのが十国(オカミ)の仰ーせだーからな!」

 

 それから、リーダーを決めておくよう言い残し、そそくさとマヴァットはブリーフィングルームを後にした。ゲーティアへの搬入作業の指揮に向かったのだろう。

 残された同期の九人は、嵐のように去って行ったマッドサイエンティストの背中を見送った後、ドワームから口を開いた。

 

「…とりあえず、マッドの捨て台詞通りこのチームのリーダーを決めよう」

「そうだな。――このメンバーで立候補などバカバカしい、指名でどうだ?」

「ほう、たまには良いコトを言うなケニング」

「フェンリス貴様、たまにとは何だたまにとは!」

「まあまあ、じゃあ誰か一人を指差すってコトにしようよ」

 

 スヴァハの意見で、決め方が決定した。カロムが「せーの」と言い、全員が同時に指を差す。

 

「――アグニカね」

「アグニカだな」

「異議無し」

 

 結果、八人がアグニカを指差し、一人がドワームを指した。

 

「…は?」

「後、確認しとくコトとか有ったか?」

「まあ、このメンバーならその場のノリでも何とかなるだろうよ」

「だな。何であれ、全力で叩き潰すだけだ」

「チーム名が必要だわ! 『光神(ヘイムダル)特別機動遊撃機甲戦隊』でどうかしら!?」

「おお、良いんじゃないかな?」

「ああ…好きにしとけ」

「言っておくが、我々はお前の口上には付き合わんぞ」

「何よ、ノリの悪い奴らね! そんなので勝てると思ってるのかしら!?」

「いやオイ、ちょっと待てお前ら」

 

 決めるべきを決め、久々の雑談に移行した八人に、アグニカが待ったをかけた。何だ、と言わんばかりに、八人はアグニカを見る。

 一気に注目を集めたアグニカは、心底解せないと言わんばかりにこう訴えた。

 

「何で俺だ? ドワームの方がリーダーには向いてるだろ?」

「…アグニカ、お前それ本気で言ってるか?」

 

 え、と困惑するアグニカに、八人を代表してドワームがこう言い放った。

 

「お前がやるべきだと、お前以外の全員が思った。だからお前がリーダーに相応しい。お前になら命を預けられると、私たち全員が判断したのだ」

「とは言え、お前一人に全部を背負わせるつもりは微塵も無い。全員で考え、協力し、責任を負う。チームとはそう言うモノだろう?」

 

 ドワームとフェンリスの言葉でアグニカは呆気に取られる中、じゃあまた明日、と言い残して七人はブリーフィングルームを去った。唯一残ったスヴァハが、アグニカに笑いかける。

 

「良かったね、アグニカ」

「…良かったのか?」

「うん。みんながアグニカを信じてるなら、アグニカだってみんなを信じられる。――相手がどんな化け物でも、このチームなら絶対に負けないと思う」

 

 お父さんも着いて来るしね、とスヴァハは付け足した。いつも変わらない笑顔に、アグニカも思わず口元を緩める。

 

「だから不安なんだよ。…どんな実験をやらされるか、分かったモンじゃない」

「アハハ――確かに」

「だろ?」




Episode.61「Four Archangels」をご覧頂き、ありがとうございました。

【速報】ウリエル、相当な化け物
では、今回の戦闘で発揮されたウリエルの化け物ポイントを、箇条書きで確認してみましょう。

・四十発のダインスレイヴと無数のナパーム弾の直撃を受けて無傷
・ビーム砲でハーフビーク級宇宙戦艦を爆散させる
・ダインスレイヴ一発で戦艦一隻撃沈
・その特大ダインスレイヴを全部で十二基装備
・五本の超硬()()ワイヤーブレード
・腕部ヒート・クロー
・腕部ヒート・パイルバンカー
・外壁がナノラミネートアーマーになったコロニーをいとも容易く粉砕

信じられるか…? これで全部じゃないんだぜ…?
アグニカとスヴァハ、初代セブンスターズがドリームチーム組んだ程度で勝てんのかこれ…?


《新規キャラクター》
ナシオ・ドナルドソン
・イングランド統合連合国の軍人で、階級は中将。
・ドルトコロニー駐屯艦隊司令官。優秀な人なんですが、相手が悪すぎるよ相手が…。


《今回のまとめ》
・ウリエル氏、ヤバすぎる
・ドルトコロニー二度目の大被害
・アグニカ&スヴァハ&初代セブンスターズ、チーム結成




次回「Departure to Mars」
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