厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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鬼滅くんの映画良かったです(唐突)

今回もご覧頂き、ありがとうございます。
サブタイの訳は「たった一人の親/子」です。


#67 only one Parent/Child

 「四大天使」ウリエル。

 数あるモビルアーマーの中で頂点に君臨する、最強にして最凶、最狂最悪の四機――その内の一機。

 

 全長約二百九十メートル。三本の超大な魔剣(ダインスレイヴ)と拡散ビーム砲を備える純白の翼を四枚と、ナノラミネートアーマーをすら容易く打ち砕くヒート・クローを持つ腕を四本。同じくナノラミネートアーマーを溶解させるほどの出力を有するビーム砲を頭部に内蔵し、覚醒したガンダム・フレームの速度にすら追随する大型のワイヤーブレードを五本、縦横無尽に奔らせる。堅牢極まりないナノラミネートコートで全身を覆い、その動力源は四基のエイハブ・リアクターを同調させた「フォース・リアクターシステム」が二セット。

 更に「四大天使」の位階に属するMAだけがそれぞれ一つずつ有する「特殊機能」として、ウリエルは「徹底破壊」を掲げる。一定範囲内に存在するモノを敵味方問わず、圧倒的なパワーで以て徹底的に破壊する、ウリエルを最凶/最狂たらしめるプログラム。この機能を発動させたウリエルの攻撃範囲内に入り、木っ端微塵に破壊されなかったモノは存在しない。

 

 ――例え、それが地獄の「王」たる、最強のガンダム・フレームの一機であろうとも。ウリエルは魔剣一本で、其を容易く粉砕してみせた実績が有る。

 

 開戦からそう時間は経っていないが、ウリエルは百発以上の核ミサイルと無数のダインスレイヴを食らいながらも傷一つ付かないまま、乱戦へと突入していた。モビルスーツには到底搭載不可能なほどに分厚い、ナノラミネートコートが成せる業だ。

 そして、早くも火星防衛軍の宇宙戦艦を一隻、爆砕せしめた。ナノラミネートアーマーに守られた、粉砕など不可能であるハズの強度を有する宇宙戦艦を、たった一発のダインスレイヴで。

 

「あの、ダインスレイヴは――フェンリス!」

「――ああ、間違い無い…アイツがベレトを、レタを殺したMAだ!!」

 

 クリウス・ボードウィンの「ガンダム・キマリス」と、フェンリス・ファリドの「ガンダム・アスモデウス」が、ウリエルに向けて突撃する。

 そう。彼らの気付き通り、ウリエルは既にガンダム・フレームを一機、破壊している。かつてフェンリスのチームに属した、レタ・クィルターの駆っていた「ガンダム・ベレト」を。

 

「フェンリス、クリウス!」

「オレ達も行くぞ、あの二人に続けッ!」

「火星はやらせない…!」

『全艦及び大舟、全砲門を以て砲撃開始! 奴を火星に近づかせるな!!』

『MS隊全機、ヘイムダルに遅れるな! 装甲を破れないなら、直接取り付いて引き剥がす!!』

 

 ヘイムダルのガンダム・フレーム十二機に続き、火星防衛軍のMS隊も、ガンダム・フレーム二機を先頭にして、ウリエルに接近を試みる――が。

 

「ッ、がぁッ!」

「うおあッ!」

 

 まず最初に、先陣を切ったアスモデウスとキマリスが、ウリエルの振るう超硬大型ワイヤーブレードに、ハエを追い払うが如く弾かれた。アスモデウスは長槍「ヴァナルガンド」、キマリスは馬上槍「グングニール」で辛くも防いだが、ワイヤーブレードの速度に反応出来なかった他の機体は直撃を受け、一撃で胴体から粉砕させられていく。

 黄金の双剣「バエル・ソード」でワイヤーブレードを逸らしつつ、「ガンダム・バエル」に乗るアグニカ・カイエルは、ヘイムダルのガンダム・フレーム達に指示を出す。

 

「闇雲に突撃して、勝てる敵じゃない! ガンダム各機、ワイヤーブレードを引きつけろ! 切り札の使い所を間違えるなよ!」

 

 ウリエルが四枚の翼をそれぞれ対角線上に広げ、先端に一基ずつ内蔵する拡散ビーム砲を発射。戦艦から飛来するミサイル及びナパーム弾を一緒くたに爆発させ、同時にダインスレイヴを二発発射。火星防衛軍のバラクーダ級強襲装甲艦とエンタープライズ級宇宙戦艦改が一隻ずつ直撃を受け、同時に沈黙させられた。

 更に頭部ビーム砲を展開の後、発射。絶対防衛線に配された火星防衛軍本拠地「大舟」に直撃し、表面に張り付く無数のモビルワーカーと固定砲台が塵のように消し飛ぶ。それだけでなく、ビームは大舟の内部へと侵入し、施設の二十パーセントを焼き尽くしてしまった。

 

「ち、直撃です! 二十パーセントが消滅!」

「表面のモビルワーカー隊、七十五パーセントがシグナルロスト! 固定砲台、ほぼ全て機能停止!」

「軌道、火星側にマイナス五! このままでは、火星に落下します!」

「ブースター点火、軌道修正急げ! 艦隊の状況はどうなってる、報告しろ!」

「『カーディフ』と『エクスター』、轟沈!」

「MS隊、三十二機ロスト! ガンダム・フレームも頑張っていますが、敵に取り付けません!」

 

 大舟の指令室が阿鼻叫喚の様相を呈する中、ヘイムダルは血路を開くべく、突撃を繰り返していた。

 

「うおおおおおあああああああああああ!!!」

 

 重装甲を持つ和弘・アルトランドの「ガンダム・グシオン」が、ウリエルのワイヤーブレードをギリギリの所で致命を避けつつ突撃し、遂にウリエルの翼の表面に張り付いた。

 その背中に迫った二本のワイヤーブレードは、カロム・イシューの「ガンダム・パイモン」とケニング・クジャンの「ガンダム・プルソン」が迎撃。僅かな間に、グシオンの胸部に四門内蔵された「バスターアンカー」がゼロ距離で放たれ、ウリエルの一翼を基部から揺るがす。間髪入れずにグシオン・ハンマーを両手で構え、回転して遠心力も乗せ、バスターアンカーを当てた場所に全力でブチ込んだ。

 

「手応え、有ったぞ…!」

 

 会心の一撃。そうしてようやく、装甲の表面に一本のヒビが入った。好機と見て、和弘は左手の手刀をそのヒビに刺し込んだが、次の瞬間――ウリエルの腕の一本が動き、グシオンの足を捕まえた。

 内蔵する槍の穂先が触れた瞬間、グシオンの足を覆う装甲の一枚が()()し、穂先が突き出されると共にその先端に付いたビームが放たれ、グシオンの太い足は半ばから切断された。

 

「な、何だコイツァ…!」

「和弘、避けろ!」

「ッ――ぐ、がァッ!」

 

 飛来したワイヤーブレードを避けきれず、グシオンは胸部に直撃を受け、弾き飛ばされた。重装甲のおかげでコクピットにまでは届かなかったが、それでも胸部装甲は大きく引き裂かれ、四門中二門のバスターアンカーが損壊した。

 その一連の攻防を見て、「ガンダム・ベリアル」に乗るドワーム・エリオンは、一つの事実に気が付いた。

 

「あの槍、まさか…分子破壊効果が有るのか!?」

 

 ウリエルの腕は四本。二本は「ヒート・パイルバンカー」を内蔵するが、もう二本は「デストロイ・ビームランス」である。穂先にビーム砲が配され、貫いてからビームを撃つコトでフレームを直接破壊する凶悪な武装――しかして、その穂先には「分子破壊構造」が存在しているようだ。

 かつてオセアニア連邦国が有した対宇宙居住地用特殊調整分子破壊砲「マサライ・ペレアイホヌア」――開戦後も残骸が長らく宇宙に放逐されていた彼の兵器の技術が、ウリエルには使用されている。

 

「ドワーム、何だそれは!?」

「あの槍に対し、物体の硬さは意味を成さない――原子で出来ている限り、あの槍の攻撃を防ぐ手段は存在しない…!」

「そんな――どうにかならないの!?」

「無理だ。あの槍を破壊するしかない、ないが…」

 

 接近すら困難を極める状況で、そんなコトが出来かどうか。ともあれ、最優先破壊対象と言えるのは確かだが――狙って破壊する余裕など無い。

 ともかく、あの槍には掠るのすらアウトだ。完全に躱すしかない。掠りでもした瞬間、その部分の装甲は分子レベルで崩壊させられ、消滅させられる。

 

「ッ、ダインスレイヴだ! 躱せ!」

 

 三度目、ダインスレイヴの斉射。今度は同時に四発が放たれ、バラクーダ級強襲装甲艦が三隻、ハーフビーク級宇宙戦艦が一隻沈んだ。

 そしてその間もワイヤーブレードは機動し続け、量産型のMSが次々と犠牲になっている。その数はいよいよ百の大台に乗らんとする勢いである。

 

『クソ――ッ、奴め何をする気だ…!?』

『中佐、退避を!』

 

 その場に留まって群がるMS隊を迎撃していたウリエルが、痺れを切らしたように一気に前進する。三百メートル近い巨体でありながら俊敏に、ガンダム・フレームをワイヤーブレードで迎撃しつつ火星に迫り――艦隊の内の一隻、ラファイエット級汎用戦艦「ゲーティア」に接触した。

 

「と、取りつかれました!」

「ウリエル、直上です!」

「うろたえるな、全砲門をウリエルに向けて斉射しろ! クラウ・ソラス発射、カラドボルグ装填!」

 

 ここに至っても艦長ディリゲント・バンクスは、冷静に指示を出す。主砲と対空砲が、ゼロ距離からウリエルに放たれるが、当然ウリエルにそんな攻撃は通用しない。

 ウリエルは四本の腕でゲーティアに組み付き、ヒート・クローが艦の装甲を溶解させ、ヒート・パイルバンカーとデストロイ・ビームランスが艦体を穿ち貫く。爆発が各所から発生し、スラスターも内部から誘爆して、艦のあちこちから煙が舞う。

 

「ゲーティアが…!?」

「ディリゲントさん、退艦しろ!」

 

 スヴァハとアグニカが、呼びかけながらウリエルの背中側から突撃する。しかし、バエルはワイヤーブレードのせいで思うように行かず、アガレスのライフルが当たった所でウリエルはビクともしない。他のガンダム・フレームも同じように攻めるが、こちらも上手く行かない。

 警報が鳴り響き、航行能力を失ったゲーティアの艦内で、アグニカとスヴァハの声を聞きながら、ディリゲントは艦長席で不敵に笑ってみせる。

 

「我々に構うな! パリス君、頼んだぞ!!」

「―――ああ、後は任せろ! 行くぞお前ら!!」

 

 ウリエルがブリッジの直上で、頭部ビーム砲を展開する。一方、ディリゲントからの通信を受けたパリス・イツカは乗艦たるバラクーダ級強襲装甲艦「サタナキア」を動かし、ウリエルの背後に回り込ませた。ゲーティアとサタナキアで、ウリエルを挟み込む配置だ。

 その意図を火星防衛軍は愚か、ヘイムダルのパイロット達すら理解出来ていない中、ウリエルの頭部ビーム砲が放たれ――ゲーティアのブリッジを消し飛ばし、艦を上部から下部まで貫いた。

 

「そ、んな…!」

「…ディリゲント艦長―――!」

「パリス、何を…!?」

「行けぇええええッ!!!」

 

 サタナキアが全速で突撃し、ウリエルに背後から激突。ウリエルを、ゲーティアと挟み込んだ。

 四本の腕をゲーティアに突き刺したままのウリエルは、ワイヤーブレードを振って攻撃するしかないが、流石に強襲装甲艦の装甲に致命打を与えるコトは出来ない。

 

「これは、ウリエルを――」

「――封じた…!?」

『成る程。そういうコトか…!』

『なら、我々も行くぞ! 突撃せよ!!』

 

 その光景を見て、火星防衛軍の艦隊も動いた。二隻のバラクーダ級強襲装甲艦が、サタナキアの反対側から突撃し、ゲーティアを押し上げる。ウリエルは完全に、動きを封じられた形だ。

 そして――ゲーティアは、まだ戦える。

 ブリッジは既に無く、航行能力も失われた。それでも、ゲーティアには二振りの最強の矛と、この男が残っている。

 

『素ー晴らしーい! ならーば後一押ーし、この私ーがやーってやろーうじゃなーいか!』

 

 マヴァット・リンレス。

 世界一のマッドサイエンティストにして、ディヤウス・カイエルと共にラファイエット級汎用戦艦の開発に関わった男が今、艦後方の火器管制室に座っていた。

 

「な、マッド!? 何をする気だ!?」

『決まーっている! ――クラウ・ソラスとカラドボルグを、こーの化けー物の中ー枢コンピューター部にブーチ込ーんでやーるのだ、ッ!?』

 

 ゲーティアの右舷にビーム砲「クラウ・ソラス」が、左舷に発展型ダインスレイヴ「カラドボルグ」が展開される。感づいたのか、ウリエルがゲーティアに突き立てた四本の腕を動かし始め、ゲーティアの各所が誘爆し始めた。なお、ワイヤーブレードはガンダム・フレームの足止めに使われている。

 

「ダメ! お父さん、逃げて!!」

『――バカな親ですまなかーった、スヴァハ。アグニカ、スヴァーハを頼む。私の大ー切な、たった一人の娘なんだ』

「…アンタ、まさか――」

『さーて、食らいやがーれ化けー物ッ!!』

 

 左舷のカラドボルグが、ウリエルの胴体を直撃。回転しながら超速で放たれた螺旋剣はしかし、四基のエイハブ・リアクターに囲まれた中枢コンピューター部を守るナノラミネートコートに火花を立てて弾かれ、ヒビを入れるだけに終わる。

 ウリエルは翼からダインスレイヴを二発放ち、ゲーティアの艦体を貫く。交差するように特大サイズの特殊KEP弾頭が突き刺さり、マヴァットのいる火器管制室をピンポイントに攻撃。接触したマヴァットは、下半身と左腕を失った。

 ――だが、最強の矛はもう一つ。

 

『がああああ――ッ…もーう、一撃ィッ!!!』

 

 残った右腕で、マヴァットは操作パネルを叩く。

 右舷のクラウ・ソラスが、大型のリアクターと直結しているが故の膨大な出力のビームを、そのヒビを狙って照射した。ナノラミネートコートの前には拡散させられるが、ビームは装甲表面のナノラミネート塗料を剥がすと共に、ヒビに入り込んで装甲に内部からダメージを与えた。

 しかし、それで終わり。装甲を破砕するコトは叶わず、ウリエルは激昂するか、はたまた嘲笑うかのように頭部ビーム砲を再度ゲーティアに撃ち込む。

 

『ディヤウス、先に逝って―――』

 

 光に呑み込まれたマヴァットが蒸発すると同時、ゲーティアは内部から爆散した。

 

 

「お父さああああああああああああああん!!!」

 

 

 間髪入れず、ウリエルはゲーティアを押していた二隻のバラクーダ級強襲装甲艦に二本ずつ腕を突き立て、それぞれをヒート・パイルバンカーとデストロイ・ビームランスで貫いた。

 直後に頭部ビーム砲を自らの後方に向け、発射し――後退していたサタナキアの底部に直撃させる。

 

「クソッ、ここまでかよ…!! レイ、後は――」

「―――パリス!!!」

 

 ビームの照射が終了すると同時に、サタナキアもまた、エンジンの誘爆によって内側から爆発四散した。艦長パリス・イツカは宇宙に放り出され、サタナキアは数多のクルー達と共に、宇宙の塵と化してしまったのである。

 これだけの攻撃を受けてもなお、健在のウリエルは二隻のバラクーダ級を打ち捨て、火星絶対防衛線に位置する「大舟」への侵攻を再開した。

 

 その光景を見ていた者は、誰もが言葉を失った。誰もが言葉を発するコトが出来ないまま、未だ五体満足の大天使が侵攻する様を、呆然と見つめるコトしか出来なかった。

 恐怖ですらない――それは最早、ただの諦観だ。

 

 圧倒的過ぎる。

 あまりにも、戦力差が大きすぎる。

 

 文字通り、次元が違う。神に創られた人類が、神の代弁者たる天使に勝てる訳など、最初から無かったのだ。

 絶望が戦場を支配し、誰もが抵抗を諦める中――一機の悪魔だけが、沈黙の中で動いた。

 

 

「…う、うう――うわあああああああああ!!!」

 

 

 絶叫。悲鳴を上げながら、スヴァハ・リンレスが――ガンダム・アガレスが、その双眸を真紅に輝かせて、ウリエルに突撃したのである。

 

「スヴァハ!?」

「無理だ、やめろ! 勝てる訳――」

「…ええい、何をビビってるのよ! 行くしかないでしょう!?」

 

 それで目が覚めたのか、少しずつ他の者も動き出した。ガンダム・フレームを中心に、絶対防衛線に迫るウリエルの背中を追いかけ始めた中、最後の悪魔がひっそりと、沈黙を破った。

 

「―――オイ、バエル」

 

 白と青の悪魔。第一の悪魔にして地獄の東方を支配する、六十六の軍団を率いる王の一柱。

 

「お前、ソロモンの悪魔の中でも、屈指の実力者らしいな」

 

 柄が折れそうなほど、黄金の双剣を握り締めて。

 肉に食い込み、血が滲むほど、操縦桿を握って。

 

「俺をどうしてくれても良い―――」

 

 遠ざかる智天使(ウリエル)を睨み付けて。

 憤怒と憎悪にその身を焦がしながら、火神の名を持つ皇帝(アグニカ・カイエル)が。

 

 

「―――あの天使(ゴミ)を殺せる力を寄越せ」

 

 

 今、悪魔の王(バエル)覚醒(めざめ)させる―――




次回「Arousal」
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