厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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サブタイの訳は「流れ星」です。
個人的には「堕ちていく星」と訳したい。


#69 Falling Star

 火星衛星軌道上で、ヘイムダルと火星防衛軍の合同艦隊が「四大天使」ウリエル襲来に対する火星防衛作戦を展開した日、火星では無数の流れ星が観測された。火星防衛軍本拠地「大舟」こと衛星「フォボス」が崩壊し、破片が大気圏に突入したコトで発生した現象だ。

 自爆したコトにより、大きな塊のまま地表に落下する事態は避けられたが――大気圏突入中の自爆であった為、全ての破片が燃え尽きるコトは出来ず、一部は最大十数センチの隕石として落着した。

 

 (おびただ)しい数の流星群が火星の全土で観測される中、フォボスの破片()()()モノもまた、地上へと落下していた。

 それは、火星のとある砂漠に、相当な質量を持ったまま墜落し――盛大な衝撃波と巨大な土煙を、火星の緑がかった青い空へと舞い上がらせた。

 

「――生き、てるか…」

 

 流星の正体は、一機のモビルスーツ。件の悪魔が大気圏突入用のボード代わりにしたのは、一機の巨大モビルアーマー…正確には、その残骸だった。

 如何にナノラミネートアーマーとはいえ、大気圏突入時の高熱には耐えられない。最強のMSたるガンダム・フレームでも、それは変わらない。完全に火星の重力に捕まり、一度は生を諦めたが――同じように落下するMAの残骸を発見し、一か八かとそれを大気圏突入用グライダーの代わりにして、燃え尽きるコトだけは回避出来たのである。MAの残骸は空中で分解して四散したものの、機体は無事、地上に落着した。

 

「…上手く、行ったんだ」

 

 そのコクピットで、銀髪に金目のパイロットは、ひとまず安堵したように息を吐いた。

 生き延びたとはいえ、乗機の損傷はかなり酷い。阿頼耶識で繋がっているコトもあり、パイロットは最早、戦闘など到底不可能な状態であるコトを容易に悟った。

 

「よ、っと」

 

 阿頼耶識を切り離し、コクピットハッチを開けて外に出て、火星の風に身体を晒す。「覚醒」の代償か、左腕も動かなくなったようだが、役目を終えた彼にはもう関係ないコトだ。

 小柄の青年はコクピットから食料を持ち出して、パイロットスーツを脱いでラフな服装に着替え、火星の土の上に降り立つ。火星のどの辺りに落ちたかは分からないが、遠方にオアシスが見えた。ひとまずはそこを目的地としよう。

 

「――またな、バルバトス」

 

 動かなくなった愛機に別れを告げ、砂塵避けのローブを被った青年は歩き出す。

 それから間もなく、落下の衝撃を受けた地盤が時間差で崩れ、第八の悪魔が砂漠の中へと埋もれていく。舞い上がった土煙が火星の風に乗り、青年の姿を覆い隠していった。

 

 

   ◇

 

 

 暗闇の底から、意識が浮上する。

 閉じられていた瞼を開くと、途端に蛍光灯の白い光が入ってきて、思わず目を細めた。同時に、自身の身体を覆っていた機械が音を立てて動き、冷たい外気が身体に触れた。

 

「――ここ、は」

 

 アグニカ・カイエルは目覚め、医療用ポッドから解放された。未だに脳は冴え渡らないが、アグニカはボンヤリと、自分と周囲の状況を把握しようと試みる。

 

『ハーフビーク級の医務室だ』

 

 そんなアグニカに、答えが齎された。スピーカー越しに仲間の声を聞いて、アグニカはひとまず医療用ポッドから出るべく、起き上がろうとするも――

 

「…うわっ!?」

 

 バランスを崩して、左側に倒れる。身体を支えるコトが出来ず、アグニカはポッドの上から床へ、派手に転がり落ちてしまった。

 その光景をガラス越しに見ていた仲間――ディアス・バクラザンとミズガルズ・ファルクは、静かに目を伏せる。そして、ミズガルズが口を開き、アグニカにこう言う。

 

『無理をするな、アグニカ。

 ――()()()()()()()()()()()()()

「……………何だって?」

 

 その言葉を受けて、アグニカは寝転がったまま、己が左腕に目を向ける。…すると、着流しのような病衣の上からでも、自分の左腕が肩口から無くなっているコトが見て取れた。

 それだけではない――()()()()()()()()()()()()()()()

 

『「覚醒」の影響だ。お前の左腕と左目、左耳に左側の肺は、お前の阿頼耶識をバエルから切り離した瞬間――()()()()()()()()

 

 苦虫をかみ潰したように、ディアスが告げる。その宣告を、アグニカは自分でも驚くほど、冷静に受け止め、納得するコトが出来てしまった。

 

 それが、悪魔の王「ガンダム・バエル」がアグニカ・カイエルに与えた、「四大天使」ウリエルを打ち倒せるほどの力――その()()だ。

 

 ソロモン七十二柱において、序列第一位に君臨する地獄の王、悪魔「バエル」。カナン神話の最高神バアルを原形とし、蝿の王(ベルゼビュート)とも同一視される悪魔に相応しい代償と言えよう。

 蝿は幼虫の頃より腐敗した動植物に生息し、成虫化してからも腐敗した動植物の死骸、排泄物などから食物を摂取する。まさしく、蝿が(たか)るに相応しい状態にまで、アグニカの身体の一部は変貌させられたのである。

 機体に阿頼耶識で繋がれば元に戻るかもしれないが、阿頼耶識が切断された瞬間に腐る以上、医療用ポッドに入れる為にも、腐蝕部は切断、除去するしかなかった。地球に戻ってから、無くなった部分は機械で補う他に無いだろう。

 

「―――そうか。…ところで、ハーフビーク級の医務室、ってのはどういうコトだ?」

 

 自分の状態を把握したアグニカは、あっさりと話題を変えた。変えてしまった。

 元々「俺をどうしてくれても良い」と言って、アグニカはバエルの力を引き出した。その結果、しっかり代償を奪われたというだけの話であり、アグニカはそれで納得している。気にならない訳ではないし、当然ながら嫌悪感も抱くが――人間が天使に勝つ為だ。必要な犠牲でしかない。

 

『…今、オレ達が乗っているのはハーフビーク級宇宙戦艦だ。二日前に火星を発って、地球への帰路についている。この艦は、帰る足が無ければ困るだろう、と火星防衛軍が譲ってくれた』

「――随分と羽振りが良いな。あの戦いで、火星防衛軍の艦隊はほぼ壊滅してた気がするが?」

『それはその通りだがな。お前の活躍で、ウリエルは無事に討伐され、火星への被害は免れた。エメリコ・ポスルスウェイト司令曰く、「ほんのお礼」だそうだ』

 

 ディアスに続き、ミズガルズが説明する。それからも、これまで気を失っていたアグニカに、二人は「四大天使」ウリエル討伐後の経緯を話した。

 

 戦闘終了後、本拠地「大舟」を失った火星防衛軍の残存艦隊と共に、ヘイムダルは民間の共同宇宙港「方舟」に収容された。火星のもう一つの衛星「ダイモス」に築かれたこの施設で、ヘイムダルは治療を受けるとともに、火星防衛軍からハーフビーク級宇宙戦艦一隻を譲り受けた。

 そして、火星にいた元パリス・イツカのチームメンバーを残し、地球から来たウリエル討伐部隊は「方舟」より出航。今は、地球への帰還コースを取っているのである。

 

「――成る程な。ありがとう、状況は分かった。リーダーなのにブッ倒れて、後処理を任せっきりにして悪かった」

『お前が気に病む必要は無い。お前は誰よりも勇敢に、命を賭して戦ったんだ。それに、事後処理くらいどうってコトは無い。カロムもフェンリスもドワームもケニングも、こんなディアスだってチームリーダーをやってた訳だしな』

『オイ、こんなとは何だミズガルズ。

 …それよりも、だ。起きがけに悪ィが、お前にはお前にしか出来ねェ大仕事が残ってるぞアグニカ』

 

 「俺にしか出来ない、大仕事…?」と、アグニカは病衣を脱いで制服に着替えながら、ディアスに聞き返す。対するディアスは神妙な面持ちで頷いて、その「大仕事」について述べる。

 

『―――スヴァハが、部屋に閉じこもったきり出て来ねェんだ。「方舟」から出航してから、ずっと。もう二日になる』

「……………!」

『メシも八割以上残しててな…ほとんど、喉を通ってねェみたいなんだよ。色々有ったから、そっとしとくべきなのかもしれねェが――お前が目覚めた以上、言っとこうと思ってな』

 

 片腕での着替えで手間取りつつ、アグニカはラフに制服を着込んだ。そして、ガラス越しにディアスの瞳を見据えて問う。

 

「スヴァハの部屋はどこだ?」

『Bブロックの十一号室だ。――で、これがマスターキーな』

 

 ディアスは懐から、カード型の鍵を取り出した。アグニカはディアス達がいる、医務室に隣接する通路に出て、ディアスが見せたマスターキーを取り上げる。そして、左腕を失くしたコトでバランス感覚が狂った為か、少しフラつきながらも歩き出す。

 

「―――、……」

 

 その時、ディアスは口を開けたが、すぐ閉じた。

 アグニカがエレベーターの扉の向こうへと消えて行った頃、ミズガルズはディアスにこう問う。

 

「…この艦に乗るまで、スヴァハがアグニカに付きっきりだったコトは、言わなくて良かったのか?」

 

 そう。自分の部屋が与えられるまで、スヴァハはずっと、眠るアグニカに付き添っていた。涙の一つも見せないまま、ずっと。

 それを、ディアスはアグニカに言わなかった。

 

「お前も、言わなかったじゃねェか」

「――それは、そうだがな…」

 

 問われたディアスは、俯いてそう返す。ミズガルズも、これには何も返せなかった。

 アグニカに付き添っていた時のスヴァハは、泣くでもなく、いつも通りの笑顔を見せていた。…その笑顔が無理な笑顔だと言うコトは誰の目にも明らかだったし、その背中は小さく、痛々しかった。

 ディアスもミズガルズも、その様子を言葉にして伝えるのは、どうしても憚られた。言うべきではあったのかもしれないが、その姿は思い返すだけで、抉られるような痛みを与えて来るのだ。

 

「…身勝手で、余計なお世話かもしれねェがな――アグニカ。スヴァハを救えるのは、お前だけだ」

「――そうだな。アグニカはウリエルから火星を守った、英雄だからな…」

 

 二人はそれからもしばらく、その場に佇んだ。

 「四大天使」ウリエルとかいう正真正銘の化け物から、間違い無く勝利を得たハズなのに――彼らが犠牲にしたモノは、あまりにも大きかった。

 

 

   ◇

 

 

 スヴァハの部屋を前にし、俺は緊張からか、思わず息を吐いた。少し息苦しいのは、左肺が失われているからだろう。それでも、深呼吸を二、三回してから、ロックされた扉をノックする。

 

「スヴァハ。いるんだろ?」

 

 声も掛けるが、返事が無い。もう一度繰り返したが、結果は同じ。

 そして、自分の右手に握られたマスターキーに目をやり――罪悪感を噛み殺して、扉の横に設置された操作パネルに(かざ)した。ピ、という無機質な電子音が鳴ると共に、扉が自動でスライドして開かれる。

 部屋の中は真っ暗だ。そういえば時計を見るのを忘れていたが、今は一体何時なのだろうか…と思いつつ、俺はスヴァハの部屋に足を踏み入れた。

 

 ここまで来ても、スヴァハからの反応は無い。

 背後の扉が閉まって、再びロックが掛けられる。廊下から差し込んでいた光が遮られ、部屋の中は完璧な暗黒のヴェールに包まれた。そう広くない部屋なのに、左目が見えなくなったコトも相まって、スヴァハを見つけるコトが出来ていない。

 

「――スヴァハ?」

 

 もう一度、スヴァハの名を呼ぶ。

 何かあったのでは、と焦燥感と不安感が胸中に(にじ)み始めていたが、その不安はすぐに杞憂となった。

 

「…アグニカ。良かった――目が覚めたんだね」

 

 今度は、スヴァハからの返事が有った。その声にひとまず安堵しつつ、ようやく暗闇に慣れてきた右目で、机の上のランプをパチリと点す。

 柔らかく切ない光がスヴァハの部屋の中に現れ、俺はマスターキーをランプの上に置いて、スヴァハがいるであろうベッドの方に右目を向けた。

 

 スヴァハは、ベッドの端に座っている。

 シーツを被って俯き、その表情をしっかりと確認するコトは出来ないが――こんなに小さかったかと思うほど、その存在感は淡く儚げだ。

 

「…どうして、私の部屋に? 鍵はどうしたの?」

「あ、ああ――マスターキーを借りて来た。スヴァハがここ数日、部屋から出て来てないって聞いて…勝手に入ってゴメンな」

「良いよ、アグニカなら。――それに、私の方こそごめんね。逆に心配させちゃうなんて…でも、私は大丈夫だよ」

 

 いつも通り、笑ってそう言うスヴァハ。

 …それが嘘だってコトは、すぐに分かった。

 

「そんな訳無いだろ。何日も閉じこもるなんて」

「ううん、本当に大丈夫だよ。気にしないで。

 …だって、私たちは――アグニカは、勝ったんだから。ウリエルを倒して、火星を守れたんだから」

 

 アグニカならきっと、残りの三機も倒せるよ――と、スヴァハは言う。だから大丈夫だと。

 

「…それも嘘だ。本当に大丈夫なら――そんな、辛そうな笑顔を浮かべたりするハズが無い」

 

 思わず、そんな言葉が声に出た。

 スヴァハは固まって、浮かべていた笑顔を引きつらせながら、震える声で続ける。

 

「――アグニカ…何、言って…あはは! いきなりどうしたの、そんなコト…」

「…ッ!」

 

 唇を噛み締めた。それからすぐ、俺はスヴァハに駆け寄って――その小さな身体を、抱き留めた。

 

「………アグ、ニカ――?」

 

 左腕が無いコトがもどかしい。本当は両腕で、もっと強く抱きしめてあげないといけないのに、今はそうするコトが出来ない。

 情けないが、かける言葉なんて思い付かない。

 

 スヴァハは、父親を喪った。

 母親と物心付く前に別れたスヴァハにとって、マヴァット・リンレスは唯一の肉親だった。イカれたマッドサイエンティストだったが、スヴァハへの愛は、間違い無く本物だった。

 それなのに、結局はゆっくり話すコトも出来ないまま、すれ違ったままで――永遠に、離れ離れになってしまったのだ。

 

「アグ、ニカ―――」

 

 呆気に取られたように俺の名を呟くスヴァハを、俺は今出来る限りの力で抱きしめる。…やがて、スヴァハの左目から、一筋の涙が溢れ出した。

 

 

「うっ…うああ、あああああ――ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 スヴァハの左手が、俺に縋りついて来る。顔を俺の胸元に押し付けて、スヴァハは絶叫する。

 ――ただ、右手は垂れ下がったまま、動かない。恐らくは、ガンダム・フレームの「覚醒」の代償。スヴァハは右目に続き、右腕を奪われたのだ。

 

 俺たちは、多くのモノを喪った。

 自分だけじゃない。多くの仲間を犠牲にした。

 

 スヴァハはいつまでも、いつまでも泣き続けた。

 これまで、ずっと耐えてきたのだろう。耐えて堪えて、笑顔を振りまいていたのだろう。ダムが決壊したかのように、スヴァハは涙を流し続け、悲痛に叫び続ける。

 

 分かってる。これは、俺のせいだ。

 俺が守らなきゃいけなかった。絶対に守ると誓ったのに、俺はスヴァハを、こんなにも傷付けてしまった。

 

「ごめん…ごめんな、スヴァハ」

 

 こんな言葉をいくら繰り返した所で、やり直しが利く訳じゃない。死というのは、そういうモノだ。時間は巻き戻らず、一度失われたモノは二度と帰って来ない。

 それでも、俺にはこんなコトしか言えない。こんなコトしか出来ない。…いや、もう抱きしめるコトすら、満足に出来ないか。

 

 そうして、どれだけの時間が流れただろうか。

 左手でしがみつき、俺の胸元に顔を(うず)めたまま、スヴァハは小さく呟いた。

 

「…アグニカ。どうしてあの時、私を守ろうと思ってくれたの? 何で、ここまでしてくれるの?」

「――俺は、スヴァハを死なせたくない。スヴァハに生きていてほしい。…笑っていて、ほしかったんだ」

 

 だけど、今は少し違う。

 無理をしてまで、笑ってほしくはない。

 

「俺に出来るコトなんて、何にもないけどな。いつの間にか、こんな腕になっちまったし」

「…そんなコトない。アグニカはいつも、私に優しくしてくれて――だから、私は笑っていられる。

 ねえ、アグニカ…」

 

 それから、スヴァハはさっきまでと違い、はっきりとした口調でこう続けた。

 

「私も、アグニカを死なせたくない。アグニカに、生きていてほしい。…私、アグニカが突っ込んで行った時、怖かった。お父さんだけじゃなくて、アグニカまでいなくなるんじゃないか、って…。

 アグニカ――生きてるよね? ちゃんとここに、私の側にいるんだよね…?」

「――ごめんな、心配かけて。

 大丈夫だよ…俺はちゃんと、ここにいる」

「うん…うん、そうだよね――ごめんね、変なコト言っちゃって。私、もう右目が見えないから」

 

 上目遣いで見上げてくるスヴァハの右目に、光は宿っていない。その目はやはり、どうしようもなく痛々しくて――守れなかったという事実を、俺に容赦無く突きつけてくる。

 

「だったら、俺がスヴァハの目になるよ」

「――え?」

「いやまあ、俺も左目が見えなくなったからな。…ほら、その――二人合わせれば、両方見えるようになるんじゃねぇか?」

 

 …我ながら、何を言ってるんだと思う。

 だが、スヴァハはそれを聞いて一瞬目を見開いた後――クスリ、と吹き出した。

 

「あはは、何それ。…それって――ずっと、一緒にいようって意味?」

「――まあ、そうなる…よな、うん」

「…そっか。それなら、私も嬉しいかな」

 

 そうして、柔らかくスヴァハは笑った。

 僅かな光に照らし出されたその笑顔は、あまりにも綺麗で――自分の心臓が、跳ねるのを感じた。

 

「アグニカ。私、アグニカが好き。大好きだよ。

 ねぇ――アグニカは、私のコト…」

「――俺も、好きだよ」

 

 言葉に出してから、ようやく気付いた。

 

 ―――そうだ。俺は、スヴァハが好きなんだ。

 だから、守らなきゃいけない。守りたいと、そう思ったんだ。だって、好きなんだから。

 

「――スヴァハ」

「…アグニカ――んっ」

 

 気付いた途端、胸の中のスヴァハが愛おしくて堪らなくなって――顔を近付けて、スヴァハの唇を塞いだ。

 

「あ…」

 

 触れ合うように口付けをして、一度離れて。もう一度、互いの唇を触れ合わせる。今度はもっと、もっと深く、味わい尽くす為に。

 永遠にも思える触れ合いはしかし、息苦しさを感じたコトで終わる。スヴァハの金の瞳と、これまでに無かった距離で、互いに吸い込まれるように見つめ合う。

 

「スヴァハ――良いか?」

「…うん」

 

 スヴァハの左手が、俺の首筋に回る。そうして、吸い寄せ合うように、三度目の口付けを交わす。

 

 ――足りない。もっと、もっと触れていたい。

 

 その熱に身を任せるまま、俺はスヴァハを、背中からベッドへと押し倒した―――




Episode.69「Falling Star」をご覧頂き、ありがとうございました。

前回、前々回は内容を考慮して後書きを省略しましたが、今回は無事に復活致しました。
前回に関して言うと、本当は前書きも無くしてダイレクトに本文突入したかったんですが、流石に閲覧感謝の挨拶とサブタイ解説だけは入れた形です。

ともあれ、何とか「四大天使」ウリエルを撃破し、火星はギリギリで守られました。
相当な犠牲も払ってしまい、今回は残された者達について少し語りました。次回で火星側と地球の事後処理を書いて、第六章を閉幕する予定。


《新規機体》
ウリエル
・「四大天使」の位階に属する、強大なMA。
・まさしく理不尽な強さで、大暴れしてくれやがりました。もう書き連ねるのもバカバカしいほど武装とか色々と盛ってますが、これでも「四大天使」の中では一番倒しやすい奴だったりしますよ…(白目)


《今回のまとめ》
・外道サーフィンで彼が生還
・アグニカにも遂に「覚醒」の代償が降りかかる
・七十話を目前にしてようやくアグスヴァ成就




次回「Torch under Fire」
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