厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》 作:アグニ会幹部
ホントよくやってる……やってない?
まあ、それはそれとして。
サブタイの訳は「未来の為の戦い」です。
お待たせしましたが、いよいよ開戦の時……やっとか、って感じがします。
私を焦らすなァッ!
パイロットスーツを着込み、ファスナーを引き上げる。……暗い更衣室の中で、アグニカ・カイエルは出撃の準備を整えた。背中に阿頼耶識接続用のコネクターが固定されたコトを確認し、ヘルメットを手にして、その反対の手でロッカーの扉を閉じる。
「―――」
アグニカは静かに目を伏せる。
そして――更衣室の入口に立ち、影を室内に入り込ませている男に対し、口を開く。
「―――今になって何の用だ、親父」
入口に立っているのは、ディヤウス・カイエル。
アグニカの父親にしてモビルアーマーの開発に関与し、その暴走後はヘイムダルを創設。ガンダム・フレームの建造に携わり、アグニカ達をそのパイロットに仕立て上げ、戦場へと送り込んだ男――ある意味では、全ての元凶とも言える人間だった。
アグニカは振り向くコト無く、淡々とディヤウスに用件を問うた。ディヤウスは一息吐いてから、死地に赴かんとしている実の息子に対して、重々しく口を開いた。
「……すまなかった。私は、俺はお前に何もかもを押し付けて、お前の人生をメチャクチャにした」
それは悔いるような謝罪。科学者としてではなく一人の父親としての、ディヤウスの悔恨だった――が、アグニカはその言葉に、苛立ちを以て返す。
「何だそれは。真っ当な贖罪のつもりか?
今更マトモな人間ぶってんじゃねぇよ。テメェも俺も、どう取り繕ってもマトモな人間なワケがねぇ――だったら、後悔なんてしたらお終いだろうが」
「………………ッ」
ディヤウスは歯噛みする。
息子をこうした、こうさせたのは自分だと分かっているからこその自己嫌悪が半分と――息子の姿勢は、目的達成の為に望ましいモノだと感じている、自分のどうしようの無さに呆れ果ててのコトだ。
「テメェも俺も同じようなクズだ。
最期まで開き直らねぇで、どうしようってんだ」
アグニカはそう吐き捨てて、ディヤウスの様子を悟ってか悟らずか、振り向かないままで次の言葉を待つ。
ディヤウスの今の言葉がただの気の迷いであり、そんなコトを言う為だけに話しかけてくるような人間ではないというコトを、アグニカは知っている。
「―――ガブリエルに関するコトだ。
暴走によって殺人マシンに成り果てた、というのが通説だが……
「……それで?」
「あくまでも、単なる私の仮説であるコトを前提として聞いてほしいが――
そもそも、
「自律兵器と言っても、それは
MAが兵器として一線を画する能力を有しているとしても、結局はそれ以前の無人兵器の延長線上に位置する兵器だ。基本的な部分に変わりはない。
もし目標の設定さえも自分で行えるとしたら、無人兵器の全ての行動は人間の関与しない――出来ないモノになる。有史以来、未知と差異を恐れ、己が支配を拡大し、自身のナワバリを築き上げてきた人類は、そんなよく分からないモノを容認出来ない。
「
それだけは人間がやらなければならないし、それを人間以外のモノが代替するコトなど、永遠に有り得ないと言っていい」
どれだけ強大だろうと、MAも人間が扱う兵器――道具の一つとして開発された。そういう意味では、どこの家にも在る家電製品などの、ごくありふれた機械と何も変わらない。
例えば自動販売機は、飲み物を無人で販売する機械である。利用する際には金を投入し、ボタンを押して買いたい飲み物を選択すると、その飲み物が出てくる。飲み物の提供は機械が勝手にやってくれるが、その為には人間が「ボタンを押す」コトによる「目標の設定」と「命令」を行う必要が有る。
だが、自動販売機が「目標の設定」=「提供する飲み物の選定」までを自分でやるようになったら、利用者は出てくる飲み物を自分で決めるコトが出来なくなる。それで利用者が求める飲み物が出てくるなら良いが、必ずしもそうなるとは限らない。コーラを飲みたいと思って自動販売機に金を入れたらホットコーヒーが出て来てしまった、なんてコトは決して有り得ない話ではない。そんな自動販売機は、ただの欠陥品である。
それがもし、破壊を齎す兵器であったなら。使用者すら意図していない、使用者が目標としていないモノまでも、破壊目標となる可能性が有る。
あるいは――
「―――つまり、
アグニカの問いを、ディヤウスは肯定する。
目標設定を使用者が行う、というのは、使用者の安全を守る為に必要不可欠な措置だ。道具の用途は限られているが、その能力を如何に発揮させるかは人間が決められるようになっていなければ、その道具はあまりにも危険すぎる。
「そうだ。起動した瞬間、自発的に『人間』を『目標』として『設定』するなんてコトは、ガブリエルには出来ない。
―――
他ならぬガブリエルの開発者として、ディヤウス・カイエルはそう断言した。
「何でこうなるか分からない」という技術は少なくないが、ことディヤウス・カイエルに限って言えばそれは無い。彼は、原理が完璧に理解されている技術でなければ使わない。原理が分からない兵器など、単なる欠陥品だ――というのが、彼の持論だ。
唯一の例外はガンダム・フレームの「覚醒」関連だが、それは彼の朋友マヴァット・リンレスが理解していた技術である。ディヤウスが理解出来ていなくとも、他の誰かが理解していれば問題は無い。
とにかく、ディヤウスが言えるコトは一つ。
その為にガブリエルは「人類の殲滅」という目標を達するとともに資源を確保すべく、月面都市「ヴェルンヘル」を制圧し、そこに製造プラントを築き上げて大量のMAを開発、建造して世界にバラまいた。ガブリエルがやっているコトは、言うなれば自動運転車が、人間の設定した目的地に行く為にガソリンスタンドに立ち寄って給油を受け、高速道路に乗るようなモノでしかない。
すると、此処に一つの問題が浮かび上がる。
―――
「ガブリエルの
アグニカは僅かに振り向いて、横目にディヤウスを見据えて質問する。廊下から白い光が差し込み、逆光でその表情は読み取り辛いが――ディヤウスが酷く顔を歪め、折れるほど歯を食いしばっているであろうコトは分かった。
間違いなく、ディヤウスには心当たりが有る。――そして、それが誰であるのか、アグニカも何となく悟った。
「―――エイハブ・バーラエナか」
苦虫をかみ潰したかのような表情で、ディヤウスは僅かに小さく、信じたくないとばかりに頷いた。
ディヤウスが崇拝する人物――アグニカ自身も子どもの頃に会ったコトが有るらしいのだが、当然ながら今のアグニカにその記憶は無い。
今や言わずと知れた、半永久的エネルギー機関「エイハブ・リアクター」を発明した男。そして、ディヤウス・カイエルと共にガブリエルの開発に関与し、ガブリエルの暴走に巻き込まれて死亡した――もう、この世にいない人間。MAに殺された、最初の犠牲者だ。
「……彼の考えを理解するコトは、最後まで出来なかった。誰よりも善人として在った彼が何故、火星独立軍に協力する気になったのか。もし本当に彼がガブリエルに命令を下したなら、人類を救おうとしていたハズの彼が、何故そうしたのかも―――だがアグニカ、彼は本当に人類の為、発展の為に人生を懸けていた人だった。万一にでも彼が元凶だったとしても、彼をうr」
「エイハブ・バーラエナは死んだんだろう? ――もういない人間のコトを恨んだとして、それで何になる?」
と、アグニカはあっさりと言い放った。
ディヤウスを正面から見据えて、あまりにも淡々と、当然のコトであるかのように。
「もう誰のせいか、何が悪かったのかなんてどうでも良いんだよ。俺が皆を犠牲にしなきゃいけなくなったのも―――スヴァハを死なせたのも、全部MAのせいで、MAをそうさせたのはエイハブ・バーラエナだから、あのジジイが何もかも悪い。だから俺のせいじゃない、俺は悪くない……そうやって全てを押し付けたとしても、事実が変わる訳じゃねぇ。話したコトもねぇ、もう喋れねぇ死んだ人間をスケープゴートにして、
アイツらを、大駕を、スヴァハを死なせたのは俺だ。そこから目を背けたら、俺には何も無くなる。それこそ、アイツらの死を無駄にする行為だ」
だから、と言って、アグニカは歩み出す。
入口に立つディヤウスの横を通り過ぎながら、アグニカは自分自身に言い聞かせるように、その決意を明確な言葉へと変える。
「皆の死は、俺が全部背負わなきゃならない。
―――裏切らない為に、この戦いを終わらせる」
アグニカは振り返らず、その場を後にした。
一人残されたディヤウスは、ただ呆然と立ち尽くし――
「……裏切らない為に、か―――」
ああ。全くその通りだ。
この戦いで、何人が死んだのか分からない。その火種を撒いた者として、戦争を終わらせるコトがディヤウスの責任だった。だから彼はその為に、多くの人を戦場へと導き、死なせたのだ。
もうすぐ、戦いは終わる。
今のアグニカ・カイエルは、本物の英雄だ。言葉通り、殺戮の天使を暴虐の悪魔の力によって葬り去り、悠久とも思えたこの大戦を終わらせるだろう。
なら、ディヤウス・カイエルはどうするか。
アグニカ・カイエルから「英雄」以外の在り方を奪った者として、最期まで責任を果たさなければならない。
それが、ディヤウス・カイエルに出来る最大の贖罪であり、最期に背負うべき――否、背負わなければならない責務なのだから。
「―――エイハブさん。ようやく、私たちはここまで辿り着きました。
私も、最期まで背負い続けてみせます」
暗闇に背を向けて、ディヤウス・カイエルは鉄の足を一歩、前へと踏み出した―――
◇
艦艇五百隻越え、モビルスーツは実に数千機。
今現在、人類が持てるほぼ全ての戦力が、月の周辺で陣形の展開を完了した。
時はM.U.0051年、十二月三十一日。
遂に、人類と天使が雌雄を決する時が訪れた。
『各軍艦隊、配置完了』
『ダインスレイヴ隊、全機装填完了。有視界距離に標的を観測、照準合わせ』
『核ミサイル、全弾発射準備完了とのコト』
この史上最大規模の大艦隊で旗艦を務めるのは、ヘイムダルのラファイエット級汎用戦艦の二番艦「サロモニス」。
その艦底に二ヶ所備えられたハッチの片方が開き、MSを射出するカタパルトが展開される。
そして、そのカタパルトに、白亜のガンダム・フレームが固定された。
『固定、完了しました。出撃のタイミングをパイロットに譲渡します』
「了解」
一瞬だけ伏せた目をゆっくりと開き、ペダルに足をかけて、真っ直ぐに眼前の月を見据え。
「アグニカ・カイエル、『ガンダム・バエルバーデンド』―――出撃する!」
一気にペダルを踏み込み、直角スティック型の操縦桿を押し込んだ。カタパルトが火花を散らして滑り出し、機体が宇宙空間へと放り出される。
全身に黄金の刃を備えた第一の悪魔は、急制動を掛けて勢い良く上昇し、姿勢制御用のエイハブ・スラスターを噴かせて停止。広範囲に展開した艦隊の中心部に位置して、全艦隊――否、全世界に向けての通信回線を開く。
『こちらは、ヘイムダルのアグニカ・カイエル。
―――全ての因縁を清算し、この長きに渡る戦争に終止符を打つ時が来た。それがこの戦いだ』
両手には、二機の「四大天使」を斬り伏せた黄金の双剣「バエル・ソード」。それとは別に、腰背部のブレードホルダーにも、同じ剣を二本懸架している。連戦を想定し、二振りを増産したのである。
アグニカが得意とする近接戦闘の能力を更に高める為、両腕部には盾と剣を一体化させた攻防一体の新装備「シールドソード」を増設。脚部の膝から足首にかけてと、長大な背部のスラスターウィングにも、特殊超硬合金製のブレードが敷設された。
そして、両肩部と両肘、両腰と両膝の側面には、遠隔操作可能な攻撃端末「ブレード・ファンネル」が接続されている。エイハブ・スラスターにより機動し、本体と合わせてオールレンジ攻撃を可能にする。
ガンダム・バエルの最終決戦仕様。
名を「ガンダム・バエルバーデンド」―――これまで失われたモノの全てと、今を生きる全ての人々の希望を背負う、アグニカ・カイエルの力である。
『全ての始まりは、エイハブ・リアクターの誕生。エイハブ・バーラエナが創造した半永久的なエネルギー源――人類に悠久のエネルギーと、永遠の繁栄を約束するハズの発明。神の心臓は、思わぬ形で過去最悪の戦争を呼び込んでしまった』
サロモニスのブリッジで、ディヤウス・カイエルは自身が英雄と祭り上げた息子の言葉を聴く。
『始まった戦争の中で、人類は禁忌に手を染めた。その過ちは、天使の名を冠する、災厄を齎す無人殺戮兵器―――モビルアーマーという形で結実した』
サロモニスのMSデッキで、ソロモン・カルネシエルはアグニカの演説を耳にしつつ、顔も思い出せない恩師の姿を朧げながらに想い返す。
『それ以降、この戦争は己が過ちを正す為の戦争へと姿を変えた。天使を堕とし、種としての存続を目的とする為のモノになった。
―――だが、敵はあまりに強大であり、軍民問わずに多くの犠牲が払われてしまった』
トビー・メイは、自分を産んでくれた家族と、独りだった自分を救い上げてくれた新しい家族の顔を思い浮かべた。
『俺たちヘイムダルと、ヘイムダルが開発した「ガンダム・フレーム」は、その絶望を覆す為に在る。
今、ここにいる全ての人間がそうだと思うが――俺たちは多くの仲間を失って、数え切れないほどの屍を踏み越えて来た』
サロモニスと、それに随伴するハーフビーク級宇宙戦艦「ヴォルフウールヴ」で、ヘイムダルのパイロット達は己が愛機を眺めながら、もういなくなった仲間達の顔を一人ずつ思い出す。
『もう充分だ。もう沢山だ。もう嫌だ。
――もう、終わらせなきゃならねぇ。こんな下らねぇ戦いで、何かを失うのはもう御免だ』
それは、その場に集った者たちの総意だった。それぞれが失ったモノ、守れなかったモノを背負い込んで、悔恨を抱きながら生きている。
―――こんな空虚な戦いは、こんな暗い時代は、もういい加減に打破しなければならない。
『今こそが、終わらねぇ戦いを終わらせる時だ。
最初に造られた機体であり、あらゆる機体を生み出し続けている「四大天使」ガブリエルを撃破し、その先に未来を掴まなきゃならねぇ。その先でバカ笑いしなけりゃ、これまで払われた犠牲が、失われたモノの何もかもが無駄になっちまう』
その為に、その為だけに今、彼らはここにいる。
全ての犠牲に報いる為に。――これから先、未来まで生きていく人々の為に、彼らは最期まで祈り、その命を懸けるのである。
『この戦いを、最後の戦いにする。人類が、最後に血を流す場所は此処だ。此処を本当に、人類最後の戦場にする――いや、しなければならない!』
見た限りでは静寂を守っているものの、実際には数えるのもバカバカしいほどのエイハブ・ウェーブが、月面から放たれている。それは、敵も全戦力を集結させているというコトの証左だ。
『今、此処に集うは人類の全戦力である! これ以上の戦力は存在し得ない! 我々の敗北とは、即ち人類の敗北、人類の滅亡に直結する!』
言葉を発しながら、アグニカは改めて、その事実の重さを実感する。自らの言葉が、背中にズッシリと重くのしかかる。
『どれだけの劣勢に立たされ、どれだけの犠牲を払おうとも、我々に撤退と言う選択肢は無く――敗北と言う結果は、絶対に有り得てはならない!
我々が得るべき結果はただ一つ、ガブリエルの撃破―――即ち、勝利のみである!!』
人類史上、最大の作戦。関与する人間の数は、億をすら超えている。この作戦の成否はそれ即ち、人類の行く末の決定に繋がるのだ。
『敵の戦力は未知数!! 何が起こってもおかしくはなく、どんな機体が待ち構えているかは全く分からない!! これほどの戦力を以てしても、非常に厳しい戦いとなるのは確かである!! しかし、ゆめ忘れてはならない―――これは、未来の為の戦いだというコトを!!』
そして、バエルは右手に握る黄金の剣を、高らかに掲げた。
漆黒の宇宙の狭間できらびやかに輝く光は、人類の前に立ちはだかる天使と言う名の闇を討ち祓い、先の見えぬ時の中で人類を導く、
『どれだけの難敵が待っていようが、知ったコトか!! 此処に集う人間、全員が英雄だ!!
俺たちの力で奇跡を起こして、人類を救ってやろうじゃねぇか―――!!!』
アグニカの演説の終了から、一瞬の間を置いて――巨大な
その直後、艦隊の全てが動き出す。
『ダインスレイヴ隊、並びに全艦核ミサイル照準! 目標、旧月面都市「ヴェルンヘル」!』
『サロモニス、「クラウ・ソラス」並びに「カラドボルグ」展開! 照準構え、敵要塞入口!』
『核は全三波、全弾を撃ち尽くすぞ!』
『全艦、最大戦速用意!』
結局の所、作戦はシンプルな形に収まった。
まずは核ミサイル約三万発と、ダインスレイヴ約一万発の一斉発射による殲滅攻撃で、ヴェルンヘル全域の敵MAを一掃しつつ要塞入口を破壊。攻撃終了後、全艦が最大戦速で月面に突撃し、MS隊も全機発進。一気に制圧し、ガブリエルを撃破する――という流れだ。
『射線クリア!』
『……撃て―――!!!』
全艦の艦長が、ほぼ同時に命令を下す。
無数の弾頭と核ミサイルが発射され、雨のように旧月面都市「ヴェルンヘル」へと降り注ぐ。
一発一発が絶大な破壊を齎す、人類が生み出した最強の破壊兵器の雨は、要塞の入口を中心に、月の表面積の半分を覆い尽くすほどの物量だ。ここまでの量の直撃を食らえば、流石の「四大天使」だろうと、ただでは済まない。堅牢なナノラミネートコートですら、これほどの破壊と熱量を前にしては崩れる他に無い。当然、要塞の入口を閉じるハッチなどは、塵でも吹き飛ばすかのように消し飛ぶ。
―――だが、その攻撃を前にして。
一機の巨大なMAが、六翼を広げ、射出した。
その機体は、件の要塞入口の前に陣取っている。射出された六枚の翼は、要塞入口を囲むように展開し―――それぞれが極太のビームを撃ち出して、隣接する翼と対角線上に在る翼に繋げ、六芒星を描き出した。極太のビームに囲まれた範囲には濃密なエネルギー空間が形成され、要塞入口を覆い隠す。
要塞入口の周囲に着弾した弾頭が爆発が引き起こし、月面の半分が爆発に覆われ、地上からでも見えるほどの光を発生させる。膨大な熱量が銀色の土を砕き、穿ち、溶かして焼き尽くしていく。
その破壊の輝きの中で、桃色の六芒星は燦然と光り輝き続ける。―――爆発の光が収まった後も、要塞入口は破壊されるコト無く、在り続けていた。
『全弾命中! ――しかし……!』
『敵要塞入口、なおも健在! 何らかのエネルギーフィールドが展開されています!』
『次弾装填急げ、全艦再装填せよ!』
続いて、第二波も放たれる。
―――が、結果は同じ。月面を焼き尽くすも、六芒星の存在により、敵の要塞入口は破壊出来ていないようだ。
『敵要塞入口、健在です!』
『―――何だ、あのMAは……!?』
その光景をバエルから眺めていたアグニカは、舌打ちすると共に、そのMAの名を口にした。
「間違い無い……アレが、ラファエル―――!」
「四大天使」ラファエル。
マザーMA、ガブリエルの潜む旧月面都市「ヴェルンヘル」――「
防御に特化した本機は、ガブリエルへと繋がる要塞の入口に配されている。六枚の翼は「ビーム・バリアービット」となっており、入口の周囲で円形に展開して、六芒星型の超巨大かつ超高出力のビームシールドを発生させる。その出力たるや、飛来したダインスレイヴ弾頭を接触と同時に溶解、蒸発させるほどのデタラメなモノだ。
ラファエルがビーム・バリアービットを展開する限り、要塞に侵入するコトは出来ない。いくら弾を打ち込もうと、ハッチに傷の一つすら付けるコトも叶わないのである。
『このままでは、侵入路を開けない……!』
『第三波攻撃は中止する! 全艦、最大戦速!』
『最大戦速! MS隊、順次発進!!』
示し合わせるでもなく、全軍が作戦を切り替える。ラファエルをどうにかしない限り、要塞に有効打を与えるコトは出来ないと、全軍で同じ判断が為されたのだ。―――全艦隊で接近を仕掛け、MS隊による攻撃でラファエルを撃破してから、温存しておいた第三波攻撃で、要塞への侵入路を切り開くべきだと。
要塞入口の破壊こそ達成されなかったが、二度の攻撃で、その周辺には相当なダメージを与えた。月の質量が減少するほどの攻撃を加えたのだから、待ち構えていた敵も相当数は撃破出来たハズだ。敵要塞の製造プラントから戦力が補充されるより早く、ラファエルのビットを破壊して防御を切り崩し、ガブリエルの下に至らねばならない。
―――かくして、決戦が始まった。
敵は「四大天使」ガブリエル。
その行く手には、同じく「四大天使」ラファエルが立ちはだかる。
二機の「四大天使」に立ち向かうは、人類が持てる全戦力を集結させた巨大艦隊。作戦の失敗、艦隊の敗北とは即ち、人類が天使に屈したコトと同義である。
望む未来を掴み取る為、己が使命を果たす為に。
人類は全てを懸けて、「
Episode.82「Battle for the Future」をご覧頂き、ありがとうございました。
厄祭戦の最終決戦、遂に開戦です。
これまで影も形も無かった「四大天使」ラファエルが登場し、ラファエルの撃破無くしてガブリエルの撃破は無い――つまり、二機の「四大天使」をこの場で撃破しなければならないと言うクソゲー状態。
なお、ラファエルの「特殊機能」は全「四大天使」の中で最もチート極まってると思うので、それもお楽しみに(?)
《新規機体》
ASW-G-01 ガンダム・バエルバーデンド
・「ガンダム・バエル」の最終決戦仕様。
・全身が剣、かつ「ブレード・ファンネル」を装備した「作者が考えた最強のバエル」。バエルに武装を増やすべきかについては論争が絶えないですが、作者的には「アグニカが乗る」という前提の下、バエルのイメージが崩れないギリギリのラインを攻めたつもりです。
・「バーデンド(burdened)」の訳は「背負う」。
《今回のまとめ》
・ガブリエル、実は暴走してなかった?
・バエルがまさかの最終決戦仕様に
・「四大天使」ラファエルが颯爽と登場
・厄祭戦の最終決戦、スタート
次回「Heaven's Fear」