厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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サブタイの意味は「天使の花園」。固有名詞です。
なお、直訳すると「天国の恐怖」となります。

ついでに「天使の花園(ヘブンズフィア)」の構造図を載っけておきます。
現状、内部構造はアグニカ達の知る所ではないですが、読む際には把握しておいて頂く方が良いと思いましたので。

【挿絵表示】



#83 Heaven's Fear

 遂に切って落とされた、人類と天使の最終決戦。

 舞台となる月、旧月面都市「ヴェルンヘル」こと「天使の花園(ヘブンズフィア)」は、人類の先制攻撃により早くも蹂躙されていた。

 銀色の大地は砕かれて分離し、大小様々な無数の破片が撒き散らされている。微細な破片は灰色な土煙となって、月の輝きを霞ませる。

 

 始まりの天使にして、全ての天使を生み出した存在――「四大天使」ガブリエル。

 モビルアーマーの製造プラントを兼ねた要塞の最奥に立てこもる機体の撃破こそが、本作戦の勝利条件であり、全人類の悲願だ。しかし、当然ながら、そう易易(やすやす)と達成させてくれはしない。

 要塞の最奥へと繋がる入口を守護するは「四大天使」ラファエル、そして数多の天使たち。

 ラファエルの「ビーム・バリアービット」が入口に展開されている以上、要塞内部への侵入は叶わない。まずはラファエルと配下のMAを撃破し、活路を見出さなければならない。

 

 全戦力を集結させているとは言え、疲れ知らずの機械を相手に持久戦、長期戦、消耗戦をするのは得策ではない。人類には出来る限りの速攻、一撃離脱の電撃作戦を行うコトが求められる。

 幸い、二度に渡るダインスレイヴと核ミサイルによる先制攻撃で、ビーム・バリアービットに守られた入口以外には絨毯爆撃を行うコトに成功した。少なからぬ数の敵を掃除出来たと見られるので、後は残敵の掃討をし、全戦力をラファエルに差し向けるのみだ。

 

「―――どけ!」

 

 人類軍の先陣を切るのは、アグニカ・カイエル。

 彼の駆る「ガンダム・バエルバーデンド」は、戦闘宙域に浮かぶ月の破片を飛び石の如く蹴って飛行し、全身から新たなる刃を射出する。

 

 ブレード・ファンネル。

 

 「四大天使」ミカエルの「ブレード・ビット」と同じ、特殊超硬合金製のブレードを持つ、遠隔操作型攻撃端末だ。バエルバーデンドが扱うのは全部で八基。全てがアグニカの思うがままに宇宙(そら)を駆け、四方八方、縦横無尽に敵を斬り刻む。

 新型と思しきMAが、接近をかけてくる。アグニカはそれを一瞥するや、攻撃命令をブレード・ファンネルに下し――瞬く間に、そのMAは全身をバラバラにされた。

 

 ―――が。

 M()A()()()()()()()()()

 

 そして、全身を埋め尽くすバーニアを噴かせて急加速し、ブレード・ファンネルの剣戟を突破。赤熱した(ウィップ)を振りかざし、バエルに肉薄して来た。

 

「……ッ!」

 

 アグニカは意表を突かれながらも、左手のバエル・ソードを振ってヒート・ウィップを斬り払い、右手のバエル・ソードを振り下ろす。全身がバーニアとなっている為に装甲を持たない、四本の腕を振るう新型MA――「メタトロン」は、一撃で呆気なく両断され、沈黙した。

 

 ―――否。沈黙した、ハズなのに。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ヒート・ウィップも復元し、メタトロンは至近距離から超速で振って来る。バエルは両腕に新たに装備された攻防一体のシールドソードでこれを防ぎ、脚部に新設したブレードで斬り上げ、再びメタトロンを下部から頭部まで真っ二つに切断してみせる。

 しかし、二分されたメタトロンはたちまち一つに再合体し、攻撃を継続して来る。

 

「なんだ、一体これは―――!?」

 

 二機目、三機目のメタトロンが襲いかかって来たため、アグニカは眼前のメタトロンが振った四本のヒート・クローを全て切断しつつ、右手の剣を胴体に突き立て、それを手放して思いきり蹴飛ばした。

 急速に接近してきた二機のメタトロンが振ったヒート・ウィップは、バエルに殺されたメタトロンを粉砕する。突き立っていたバエル・ソードが放り出された為、アグニカは二機をブレード・ファンネルで破壊しつつ、ファンネルの一基に手放した剣を弾かせるコトで、自身の手元にまで引き寄せて、再び右手で剣を掴み取る。

 

 ―――それでも。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 アグニカは射出していたファンネルをバエルに再接続させ、一機目を左手の剣を斬り払うコトで仕留める。二機目の攻撃は機体を回転させて回避しつつ、脚部ブレードで二機目を蹴り砕き、回転する勢いで三機目もスラスターウィング部のブレードで貫いた。その全てが間違いなく、中枢コンピューター部を破壊する攻撃。

 

 ――だが、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そんなバカな―――、ッ!」

「アグニカ、避けろ!」

 

 仲間からの通信が飛んで来るより早く、アグニカはバエルを急上昇させた。その一秒後、バエルがいた場所を無数のミサイルが通過し、三機のメタトロンを爆散させるが――やはり、またすぐに修復されて復活する。

 アグニカは舌打ちしつつ、自分がもたついている間に追い付いて来た仲間たちに視線を向ける。

 

「悪い、助かった」

 

 先のミサイルを撃ったのは、アマディス・クアークの「ガンダム・フォカロルテンペスト」だ。

 水中戦用に開発されたフォカロルが、宇宙で最大限の性能を発揮する為の装備。散弾式のキャニスターガトリングとマシンガングレネード、多目的ランチャーポッドの追加により火力を増強し、水中戦用の長槍「トライデント」を柄の中央で分離可能なオール状の武器「バスターオール」へと持ち替え、二基のダインスレイヴを新たに装備している。

 

「おう―――で、アレはどういうコトなんだ?」

 

 アマディスの問いの答えを、アグニカが知っているハズも無い。「どう思う?」という意図を込めて放たれたのであろう言葉に、アグニカは数瞬思案して、とりあえず仮説を並び立てる。

 

「どうもこうも、()()()()()()()()()

 ―――問題は、()()()()()ってコトだ」

 

 実際の所、修復能力自体は驚きを以て見るモノでもない。初期型の「天使」であろうと、MAは子機(プルーマ)に自らを修復させるコトが出来る。補給、修理を自分でやる、というのはMAという完全自律型兵器の売り文句の一つだ。

 ただ、問題なのはその修復が一瞬で行われているというコトと、明らかに物理法則を逸脱しているというコトである。破損した部分――例えば腕を切断した瞬間、如何なる手段によってかは定かではないが、()()()()()()()()()()()()()。交換パーツを持っているようにも見えず、まるで無から有を生み出しているとしか思えない直り方。

 

「誰、ってお前――いくら新型っつっても、こんな機能(モン)を『天使(ザコ)』に持たせると思うか?」

「いや、全く思わねぇな。―――もしかしてとは思うが、この現象……」

 

 あーイヤだフザケんなよ、と言わんばかりに、アグニカは再び修復()()()襲ってくるメタトロンをいなしつつ、戦場の中心に視線を向けた。

 続いて戦場の全域、月の欠片と銀色の土煙の舞う中で戦う連合軍の各地に目を配り――目線を戻し、機体越しに犯人を睨み付ける。

 

「……クソ、まずいな―――!」

 

 アグニカは焦燥と共に、そう毒づく。

 違うタイプのMAも、同様に即時修復を行っている。というコトは、MAの持つ武装などではなく、言うなればステージギミック的なモノ。

 

 

 ―――「四大天使」ラファエルこそが、この怪奇現象の犯人なのだろう。

 

 

 アグニカ達には詳細を知る由もないが、これはラファエルの特殊機能「万物修復」の結果である。

 一定範囲内にナノマシンを散布し、それを用いて、ラファエルが設定する対象の損傷箇所を、速やかに修復する。――つまり、今この場に在るMAが減るコトは無い。戦えば戦うほど、人類側の戦力が一方的に削られるだけだ。

 

 するとまずい。非常にまずい。

 

 「消耗戦、持久戦になるのが最悪の展開」だというコトは、直前の作戦会議で十国が確認したコトである。人間には疲れが有り、弾薬にも限界が有る。対してMAは疲れない。弾薬とて、あの要塞の中にどれだけ貯め込んでいるか知れたモノではない。

 だからこその開幕と同時の核とダインスレイヴによる絨毯爆撃、全軍を前進させての全機投入。速攻で目標たる「四大天使」ガブリエルを撃破する手筈だった。

 

 ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 眼前のメタトロンを捌いて前進し、アグニカは脳をフル回転させて、戦況の予想を立て――とある仲間の名を叫ぶ。

 

「―――ドワーム!」

「分かっている!」

 

 アグニカが声をかけるより前に、ドワーム・エリオンは既に動いていた。

 新たなる「ガンダム・ベリアルコンセンサス」――飛行機が如きウィングユニットに通信機器とセンサーを増設したバックパック「アンドヴァラナウト」は、頭部のブレードアンテナや腰部の信号弾と合わせ、指揮官機として極めて優秀な能力をベリアルに齎した。武装面でも迫撃砲「アンドヴァリ」の両肩部への追加と頭部バルカン砲の付設に加え、主兵装たる大剣「グラム」の追加建造、バックパックへのダインスレイヴ二基及び「ファンネル・ミサイル」の装備により、大幅な性能向上が行われた。

 その機体の性能をフルに生かし、エイハブ・ウェーブの影響下でありながら、ベリアルは広範囲に展開する全艦隊へと通信を繋げる。

 

『ヘイムダルより全軍! ()()()()()()()()()()()()()()()()()! 不死の兵団など相手にする必要は無い、適当にあしらいつつ道を拓く!

 ―――これで良いな、アグニカ?』

「ああ、バッチリだ――っと!」

 

 フォカロルと連携して戦場を飛び、壊しても壊しても襲ってくる「四大天使」ガブリエルの直属機たる対ガンダム・フレーム用MA「メタトロン」をあしらいつつ、アグニカは返答する。

 一方、先程の指示を聞きつけたフェンリス・ファリドは、ドワームに近寄ってきて問いを投げる。

 

「こんな状況で、ラファエルの撃破が叶うと?」

「叶わせなければ、我々の負けだ。だな?」

「当然だ」

 

 ドワームに続き、アグニカもそう返答する。

 間髪入れず、クリウス・ボードウィンもフェンリスと合流し、これまたドワームとアグニカに問う。

 

「―――あのビーム・シールドを突破したとして、修復がラファエル自身に適応される場合は?」

「我々の負けだ。だな?」

「言わせんな」

 

 断言する二人に、クリウスは「オイ」と抗議の言葉を口にしかけるが、断念してフェンリスと目配せし、同時に槍を構えた。

 フェンリスの「ガンダム・アスモデウスベンジェンス」は長槍を、クリウスの「ガンダム・キマリスデストラクション」は馬上槍を。

 

「そこは賭け、ってコトか。よくもそんな不透明な状況で、全軍に指示を出したモンだ」

「逆だぞクリウス、実に分かりやすい状況だ。ラファエルを落とせば道は開かれ、落とせなければ未来(みち)は閉ざされる。ならば、我々のやるべきコトなど決まっているだろう?」

「ああ―――行くぞ!」

 

 そして、アスモデウスとキマリスが同時に動く。

 

 「ガンダム・アスモデウスベンジェンス」――長槍「ヴァナルガンド」の追加の他には、本体に大した変化は無い。ただ、バックパックは「フローズヴィトニル」と呼ばれる複合兵装に変更され、これにより戦闘能力を向上させている。サブアーム八基と八本の剣「イアールンヴィズ」を内蔵し、ダインスレイヴ用の特殊KEP弾頭を運用可能な二基のレールガン「グレイプニル」からなるこの武装を展開した姿は、まるで漆黒の竜のようでもある。

 

 「ガンダム・キマリスデストラクション」は、その名の通り破壊力に重きを置いた強化を施された。先端にドリルを内蔵し、基部には背部シールドと直結させてのダインスレイヴ発射機構と二百ミリ機関砲を備える新たな兵装「ドリルランス」とキマリスの「コンバットナイフ」、キマリストルーパーの「キマリス・サーベル」に比べ強力になった専用の太刀を装備。膝部には密着時に力を見せる接近戦用装備「ドリルニー」を内蔵する他、背部には「ガンダム・ボルフリ」から受け継いで改修されたシールドを持ち、攻守ともに能力が上昇した。

 

 二機の前に立ちはだかるは、新型MA「バラキエル」――子機(プルーマ)の生産、運用に長けながら、機動力と戦闘能力に優れる機体である。両腕部に接続された「スパークランス」を打ち鳴らし、帯電させた破壊槍を振るう敵に対し、キマリスが前に出る。

 右手に保持するドリルランスを突き出すキマリスを前に、バラキエルは二本のランスを交差させて攻撃を防ぐ。キマリスはドリルランスを左手に持ち替え、自由になった右手で左腰に懸架していた太刀を引き抜き、バラキエルの両腕を基部から切断。即座にアスモデウスがバラキエルに蹴りを叩き込み、バラキエルは月面へと吹き飛ばされていった。

 遠ざけたコトを確認したアスモデウスとキマリスは、即座に転進して「四大天使」ラファエルのいる方角へと全速で突撃を開始する。

 

「お前の道は我々が切り開く!」

「付いて来い、アグニカ!」

「アグニカ、行け! 指揮は私に任せろ!」

 

 フェンリス、クリウス、ドワームが立て続けに叫ぶ。アグニカは迷い無くドワームに背中を任せ、アマディスのフォカロルと共に、フェンリスとクリウスの後ろを追随し始めた。

 ――そして。アグニカの行く道を切り開くは、何もフェンリスとクリウスだけではない。

 

「貴方たちなんかに、良い所を持って行かせちゃたまらないわ! 行くわよ、我ら光神(ヘイムダル)―――」

「名乗ってる暇が有んなら、その分働きやがれ!」

「同感だが、面倒だから黙ってやらせておけ、ディアス」

 

 アスモデウスとキマリスに、更に三機のガンダム・フレームが並ぶ。

 

 意気揚々に名乗りを上げるカロム・イシューが駆るは、「ガンダム・パイモンビリーフ」だ。元々保持していた日本刀「クサナギノツルギ」を二本に増やすと共に、薙刀「アメノヌボコ」、特殊KEP弾頭を運用可能な大弓型のレールガン「アメノマカコユミ」に両腕の盾「アメノイワタテ」を新たに装備するコトで、貧弱だった武装が大幅に、かつ正当に強化されている。他の最終決戦仕様装備に比べればシンプルだが、カロムの優れた操縦技術を最大限に活かすコトの出来る機体に仕上がった。

 

 ディアス・バクラザンの「ガンダム・ヴィネアニヒレート」は、既存の武装に加えて両腕に高圧電流を纏わせるコトの出来る「イミディエート・アンカー」を追加で装備し、「ヴィゾーヴニル」と呼ばれる大型ウェポンを新たに随伴させている。六基のブレード・ファンネルに加え、側面に拡散型ダインスレイヴ「レーヴァテイン」が有り、装甲自体が堅牢な為、大盾としても活用するコトが出来る。これにより、更に多彩な攻撃を繰り出せるようになった。

 

 「ガンダム・アモンサヴァイヴ」――ミズガルズ・ファルクの新たなる機体は、既存の武装の数を二倍に増やすと共に、全身の装甲を「ナノパワードアーマー」なるモノに換装した。これは全身に受けた衝撃を吸収し、自機のエネルギーへと変化させる非常に優れた特殊装備であるが、衝撃を受けすぎると粉砕する他、コストがかかりすぎる為に他の機体には採用されなかった。優秀な装甲を過信せずに慎重な運用をするコトが求められる機体は、冷静沈着なミズガルズにこそ相応しい機体であろう。

 

「どきなさいッ!」

 

 次に立ちはだかった新型は、MA「マスティマ」――ガンダム・フレームのデータを元に開発された人型の機体であり、両手にビーム砲を内蔵した剣「ライフルソード」、両腰にはレールガンを装備する。

 三機のマスティマが振り下ろしてきた剣を、パイモンは左腕の盾、ヴィネは鎌の刃で受け、アモンは急制動をかけて回避。パイモンは盾を押し込んで剣を弾いて薙刀でマスティマの首を跳ね、ヴィネは鎌を回転させて鎖に繋がれた鉄球をマスティマの背のウィングバインダーに激突させ、出来た隙を突いて鎌で腰を両断。アモンは空振った間に至近距離で両手のライフルを連射し、マスティマの全身の関節を正確に撃ち抜いた。

 

「抜けた――我々も攻めるぞ、トビー!」

「了解……!」

 

 迫って来た二機のバラキエルをアスモデウスとキマリスが抑えにかかる傍ら、フォカロルと合わせ三機のガンダム・フレームがバエルの前に躍り出て、「四大天使」ラファエルの展開するビーム・バリアービットの一基に攻撃を仕掛ける。

 

 一機はソロモン・カルネシエルの「ガンダム・オセマジェスティ」。既存の武装はそのままに変形機構を廃止し、全身は光を放つコトが出来る黄金の特殊装甲「ゴールドクロージングアーマー」に覆われている。この装甲は新装備たる「フラッシュ・ライトファンネル」「ファントム・ミラーファンネル」と併用するコトで、様々な幻影を映し出したりビームを屈折させたりと、多様な使用が可能。また、この三つの装備で太陽光を集束、照射させれば、超高熱量攻撃を行うコトも出来る。

 

 もう一機は、トビー・メイが乗る「ガンダム・アンドラスレクイエム」だ。こちらはソードとライフルの既存武装を一新し、接続して銃剣とする機構を備えさせるとともに、それぞれの火力を向上。更には「リーベ・アイギス」なる堅牢でありながら、ソードを接続するコトで攻防一体を実現する盾を新たに装備し、ロングレンジ・ライフルにより遠距離攻撃能力も獲得した。ミサイルポッドも増設され、正当な火力、攻撃力の増加が図られている。

 

「一基でもブッ壊せばッ!」

 

 フォカロルが一基のダインスレイヴを放ち、オセが双剣「フレイヤ」、アンドラスは剣を接続した盾で斬りかかる。ラファエルのビーム・バリアーは強力な兵装だが、展開をビットに依存する以上、六基中一基でも破壊するコトが出来れば、最悪でも展開範囲の縮小、出力の減退が望めるハズだ―――

 

 ―――が。

 三機とビットの間に、一機のMAが躍り出る。

 

 それは四肢を持つ、人型のMA。しかし、先の「マスティマ」と違う点は、その四肢が不自然な形状に大型化しているコトだ。平面上に角ばった、巨大で分厚い装甲へと変化した四肢を、その機体は自身の前で接続させ―――()()()()()()()

 

「―――これは……!」

 

 ダインスレイヴが弾かれ、オセとアンドラスの攻撃も難なく防がれる。三機の後方についていたバエルは、全身から八基のブレード・ファンネルを射出し、盾を前方へと展開するMAを四方から攻撃。四肢を基部から切断され、胴体部を立体的な斬撃によりバラバラとするが――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 アグニカが舌打ちした時、バエルの背後から剣を構えたマスティマが襲いかかる。バエルがその剣を背部スラスターウィングに増設されたブレードで弾き返した瞬間、別方向から一機のガンダム・フレームがマスティマに殴りかかり、装甲を打ち砕いて月面へと叩きつけた。

 

「破壊は出来そうか、アグニカ!」

「良いタイミングだったぜ、ケニング。――破壊は一筋縄じゃ行かなさそうだが」

 

 バエルを援護したのは、ケニング・クジャンの「ガンダム・プルソンアサルト」。片手持ち出来るハンマー「レイヴン」と四肢のナックル「レーヴァン」は大型化されて破壊力を増し、取り回しの良いアサルトライフルが新たに用意されたコトで、射撃戦にもある程度なら対応出来るようになった。新装備のシールドには小型化されたダインスレイヴの発射機構が備わっており、近距離だけでなく遠距離での破壊力を高める調整が行われた。

 

「カサンドラやウィルフレッドはどうした?」

「ドワームが各軍の援護へ行かせたぞ。広域での遅滞戦闘が続いているから、とか言っていたな」

「……ケニング、お前たちも分散してMAを散開させろ。この辺りに群がられると面倒だ」

「釣りあげろ、と言う訳か。良いだろう!」

 

 バエルと背中合わせになっていたプルソンが、カロムやフェンリスなどに指示を出しつつ、要塞入口から敵を引き離せるよう動き始める。一方、バエルは射出したブレード・ファンネルを回収しつつ、フォカロル、オセ、アンドラスの三機に改めて背中を預け、迎撃態勢を整えた。

 

「どうするの、アグニカ?」

「―――さあて、どうしたモンか」

 

 まずは「四大天使」ラファエルの展開するビーム・シールドを無力化し、要塞入口のハッチをダインスレイヴ隊に破壊してもらい、侵入路を切り開かなければならない。だが、件の「ビーム・バリアービット」は、ダインスレイヴを防げるほど防御力に特化したラファエルの直属機「ラジエル」に守られており、攻撃をかけるのは困難。そのラジエルを破壊しても、ラファエルの特殊機能「万物修復」によってすぐに戦線復帰されてしまう。

 

「まずは、あの盾野郎をラファエルから引き剥がさねぇと始まらねぇ。――持久戦を覚悟するのは、それが失敗してからだな」

「「「了解!」」」

 

 月の涙が流れる、厄祭戦最後にして最大の戦場。

 「天使の花園(ヘブンズフィア)」を眼前にし、人類と天使による、一進一退の消耗戦が開始された―――




Episode.83「Heaven's Fear」をご覧頂き、ありがとうございました。

さて、皆様の頭の中は「?」で埋め尽くされている頃合いと察します。私も全く同じ状態です。
理由は明白、新機体が出まくったから。乱戦の中で敵味方の新機体が縦横無尽に飛び交うとか、どうしてこんなコトやらせたんだ!?
そんな訳で以下、新機体紹介祭り。多いわ!


《新規機体》
ASW-G-41 ガンダム・フォカロルテンペスト
・「ガンダム・フォカロル」の最終決戦仕様。
・バスターオール、ガトリングにマシンガングレネード、ミサイルポッドにダインスレイヴと、火力マシマシアブラカタメの機体。純粋な火力オバケ。
・「テンペスト」は「嵐」の意。

ASW-G-57 ガンダム・オセマジェスティ
・「ガンダム・オセ」の最終決戦仕様。
・一言で言えば「光の魔術師」なファンネルを取り揃える、とにかく眩しい機体。何気に一人ソーラ・システムなので、土壇場での火力が期待出来る。
・「マジェスティ」は「威光」の意。設定製作自体は、ゲイツマジェスティが世に出るより早かった。

ASW-G-63 ガンダム・アンドラスレクイエム
・「ガンダム・アンドラス」の最終決戦仕様。
・剣を盾に付けるとサンドロックごっこが出来る。銃に付けると銃剣になる辺り、どことなくアガレスの銃を踏襲している気がして、ちょっと切なくなる機体。全体的に火力と汎用性が上がった。
・「レクイエム」は「鎮魂歌」の意。仲間の死が続き、トビーにも色々思うところが有ったようだ。

ASW-G-09 ガンダム・パイモンビリーフ
・「ガンダム・パイモン」の最終決戦仕様。
・薙刀、弓、盾を追加した、超正当強化な機体。弓はダインスレイヴを使えるので、遠距離火力もバッチリである。何気に刀も二本装備になっているが、カロム様は基本的に一本ずつしか使わない。
・「ビリーフ」は「信念」の意。

ASW-G-32 ガンダム・アスモデウスベンジェンス
・「ガンダム・アスモデウス」の最終決戦仕様。
・槍が二本に増えた他、背部にサブアーム八本と剣八本、ダインスレイヴが追加。その全部を思うがままに操作出来るフェンリスさんは、大分人間をやめている。腕十本で近接戦とか狂ってるよコイツ。
・「ベンジェンス」は「復讐」の意。案外、マクギリスの方が似合うかも知れない。

ASW-G-66 ガンダム・キマリスデストラクション
・「ガンダム・キマリス」の最終決戦仕様。
・ドリルランス、太刀、ドリルニーにシールド裏のダインスレイヴ――ここまで言えば察して頂ける通り、三百年後には「ガンダム・キマリスヴィダール」と呼ばれる形態である。アインはいないが、実際にはキマリスヴィダールより強い。初代は偉大。
・「デストラクション」は「破壊」の意。

ASW-G-68 ガンダム・ベリアルコンセンサス
・「ガンダム・ベリアル」の最終決戦仕様。
・大剣が増えたばかりか、迫撃砲や頭部バルカン砲に加え、ダインスレイヴとファンネル・ミサイルが追加された制圧力高めの機体。指揮官機としての通信機器も充実しており、まさしく一人アリアンロッド艦隊と呼ぶに相応しい。やはり初代は偉d(ry
・「コンセンサス」は「総意」の意。

ASW-G-20 ガンダム・プルソンアサルト
・「ガンダム・プルソン」の最終決戦仕様。
・元々持ってた近接武器が大型化した更なるチンパン機体かと思いきや、ライフルとダインスレイヴが追加されて遠距離戦も出来るようになった。まさかの純格闘機卒業にバエルくんもビックリ。
・「アサルト」は「突撃」の意。V2と被っている。

ASW-G-45 ガンダム・ヴィネアニヒレート
・「ガンダム・ヴィネ」の最終決戦仕様。
・扱い辛すぎて鎌は増やされなかったが、アンカーとブレード・ファンネルに拡散型ダインスレイヴが追加された、バランス良く強い機体。ブレード・ファンネルとダインスレイヴ増やされて、強くならない訳がなかったぜ。
・「アニヒレート」は「殲滅」の意。

ASW-G-07 ガンダム・アモンサヴァイヴ
・「ガンダム・アモン」の最終決戦仕様。
・受けた衝撃をエネルギーに変換する、チート装甲の持ち主。防御力的にはそう強化されてなかったりするとは言え、何でお前だけそんなの付けたんや。単純に武装数が増えたコトも有り、総合的な継戦力が非常に高い。
・「サヴァイヴ」は「生存」の意。

メタトロン
・「四大天使」ガブリエルの直属機。
・全身には装甲の代わりにスラスターを配し、ヒート・ウィップにヒート・クローを装備する、対ガンダム・フレーム戦を想定したMA。ライフルを一発でも食らえば死ぬが、機動力が高すぎて基本的に当てられないし、当たったとしてもラファエルの特殊機能で即復活、と言うクソゲーの具現。コイツを軽くあしらってるアグニカが強すぎる。

バラキエル
・後期型のMA。
・本領は子機運用なのに、スパークランスとか言う電撃槍を装備しているので、普通にガンダム・フレームと近接戦で渡り合えるハイスペック機体。メタトロンほどではないが、機動性も高い。軽くいなされてるように見えるのは、初代セブンスターズが強すぎるからである。

マスティマ
・後期型のMA。
・ガンダム・フレームのデータを元に開発された、人型の対ガンダム・フレーム戦を想定した機体。何となく、マークニヒトみたいな見た目をしてそう。
・武装はビーム砲内蔵の剣。ファフナーのルガーランスを想像して頂ければ大体オッケー。デザインは鷲尾さんだし違和感も無い。

ラジエル
・「四大天使」ラファエルの直属機。
・四肢がナノラミネートコート製のクソほど硬い盾になっており、全部を繋げて大盾にしたり、複数方向からの攻撃をそれぞれの盾で捌いたりする防御特化型のMA。ラファエルの「ビーム・バリアービット」を護衛する、無敵のシールダーである。


《今回のまとめ》
・最終決戦仕様がここぞとばかりにお披露目
・新型のMAがどいつもこいつも厄介な性能してる
・ラファエルの撃破無くしてガブリエルの撃破は叶わず




次回「Stalemate, an Invisible Breakthrough」
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