厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

92 / 110
ご覧頂き、ありがとうございます。
サブタイの意味は「責任を果たす為に」。


#86 to Fulfill our Responsibilities

 戦闘開始から三時間半余り。

 火星防衛軍艦隊の合流により、人類軍が一転攻勢を図ったコトで、戦局は人類側に傾いた――という訳では決してない。

 

「クソ、数が多すぎるんだよ!」

 

 「ガンダム・フォカロルテンペスト」を駆るヘイムダルのパイロット、アマディス・クアークのその台詞は、モビルスーツを駆って最前線で戦う者たちの総意と言えるモノだった。

 そもそも、モビルアーマーの数が多すぎる。数ヶ月前からMAは戦力を月に集中させておきつつ、人類側と同じように、新型の開発と戦力の増強に努めていたようだ。一機一機が対ガンダム・フレームを想定して開発され、互角に渡り合うだけの性能を有したMAが、倒れるコトなく向かって来る――一瞬でも気を抜けば死ぬ、過酷すぎる戦場。

 最精鋭を集結させて敵群を突破し、「四大天使」ラファエルを叩く――言うは易しだが、そう簡単なコトではない。質に大差が無い以上、戦局を決定するのは「数」である。その面で、人類軍はMAに対して大きなディスアドバンテージを背負っている。

 

「――作戦を誤ったか……!?」

「いや、これが最善だろう。高性能機を与えられた最精鋭(エース)でなければ、この性能のMAの前ではただの的だ。(いたずら)に犠牲を増やしてどうする」

 

 「ガンダム・ストラス」を操るアラビアのラティーフ・ビン・ナーイフの言葉に、「ガンダム・カイム」に乗るイングランドのヴィンス・ウォーロックはそう返す。

 最精鋭部隊を最前線に配置して敵陣を突破させるのは、十国の軍を預かる者たちが集った作戦会議で決定された作戦だ。闇雲に兵の命を散らせるコトもなく、一番成功の可能性が高いと言える手ではあったが――三倍近い数で待ち構えていられては、流石に作戦の是非を疑わざるを得ない。

 

「全機が一斉に『覚醒』を使えば、可能性は出て来ると思いますが」

「―――『覚醒』回数にも限度が有る。十国軍(われわれ)はともかく、ヘイムダルの『覚醒』は『四大天使』戦まで温存させるべきだな」

 

 「オルトリンデ」を駆るサンスクリットのセグラ・ジジンと、同じくサンスクリットの「ガンダム・グレモリー」を操るイシュメル・ナディラはそのように言い合う。

 そもそも「四大天使」は、今ガンダム・フレーム達の手を煩わせているMAよりも、強大な力を有している。ガンダム・フレームであろうと「覚醒」を使わねば渡り合うコトは出来ないが、パイロットに大きな負担と犠牲を強いる「覚醒」は、一度の出撃で二度使うのが限界。使いどころを誤れば、それこそ「四大天使」ガブリエルの下に辿り着いたとしても、勝利を掴むコトは出来まい。

 

「だが、このまま乱戦を続けていれば、艦隊も弾薬もそう保たんぞ!」

「今は装填中みたいだが、まごついてればダインスレイヴの二射目が来る――艦隊が全滅したら、帰る手段(あし)も無くなっちまう」

 

 アメリアの「ガンダム・サブナック」を使うサイラス・セクストンと、ヘイムダルの「ガンダム・アスタロト」に乗るカサンドラ・ミラージが言う。

 恐ろしいのは眼前のMA群だけではなく、眼下の月面に備えられた、数千ものダインスレイヴだ。開戦直後の人類軍の攻撃で損傷を与えた為、ラファエルの特殊機能「万物修復」を以てしても特殊KEP弾頭の装填システムは修復しきれていないようだが――現状、いつ第二射が放たれるか、分かったモノではない。

 そもそも、戦艦の機動力と図体では、ダインスレイヴを回避するコトなど出来ない。なので、艦隊が壊滅する前に作戦を終わらせる必要がある。

 

「―――攻めあぐねているな」

 

 その頃。最前線の少し後方、艦隊の先頭に位置するヘイムダルのラファイエット級汎用戦艦「サロモニス」の艦橋(ブリッジ)に姿を現したディヤウス・カイエルは、前面モニターを見てそう呟いた。

 MSデッキで整備班に加わっているハズのディヤウスが急に現れたコトに驚きつつ、艦長のフロレンシオ・レンフィールドは言葉を投げ返す。

 

「MSデッキの方は、よろしいのですか?」

「全機が最前線で戦っているからな。持久戦も終了したのだから、人員はそう必要無い。――それに、私は此処で、全てを見届けなければならん」

 

 艦長席の左側に設置された司令席に座りつつ、ディヤウスは前を見据えてこう述べた。

 MAの開発に携わった者として。多くの若者を死地へと送り出し、息子をすら自分の目的の為に傀儡とした者として――彼には、その戦いを見届ける責務があった。

 

「詳しい戦況は?」

「最前線、後方ともに膠着状態です。敵が持つ謎の修復能力のせいで、苦しい状況は依然として。

 先のダインスレイヴによる被害も大きく、いつまで艦隊を維持出来るか――」

「ッ―――月面に動きあり!」

「「!?」」

 

 オペレーターが叫ぶと同時、月面に並べられたダインスレイヴ発射器が一斉に展開した。弾頭の先端が発射器から突き出されると、各発射器に一基ずつ直列配置されたエイハブ・リアクターが唸り、銃身が勢い良く回転を始める。高圧な電磁を宿し、回転はどんどん加速して行く。

 それだけではない。沈黙を守っていたラファエルが頭部ビーム砲を展開し、その周辺から銀色の嵐――MA「タブリス」が吹き出す。戦場に十数機が飛び回る人型のMA「マスティマ」とガブリエル直属機「メタトロン」、MA「バラキエル」も一気に動き、最前線で戦うMS部隊に襲いかかる。

 

「な―――ダインスレイヴ、来るぞ! 艦隊ッ!」

「待て、他の敵も動いた! 警戒!」

「ラファエルめ、一体何を……!」

 

 ラファエルは頭部ビーム砲を、真上に向けて発射した。吐き出されたビームはラファエルが展開させるビーム・バリアーの裏側に刺さり、ビーム同士が干渉して拡散。タブリスごと悪魔(ガンダム)戦乙女(ヴァルキュリア)を屠るべく、雨のように全方位へと散らばって行く。

 

「クソ、これ以上撃たせるか――うわっ!?」

「待ちなさいヴァルミウス、そっちは―――ッ!」

 

 ヘイムダルのヴァルキュリア・フレーム、ヴァルミウス・ローケイズの乗る「ヴァルトラウテ」が拡散するビームとメタトロンのヒート・ウィップを受け、大きく弾かれる。

 カロム・イシューの「ガンダム・パイモンビリーフ」がカバーに入ろうと動いたが、マスティマ二機による攻撃を迎撃したコトで叶わず――ヴァルトラウテは、ダインスレイヴの射線上に押し出された。

 

 

 瞬間、月面から無数の閃光が発され―――再び、無数の禁忌の魔剣(ダインスレイヴ)が飛翔し、戦場を引き裂いた。

 

 

 無慈悲な天の裁きが、漆黒の宇宙(そら)を横断する。四番目の戦乙女(ヴァルトラウテ)は、直前で回避行動を取るも避けきれず、魔剣の直撃を受けて四散。無数のダインスレイヴは幾らかのMSを貫きつつ直進し、またも宇宙艦隊に襲いかかった。

 

「前方よりダインスレイヴ、来ます!」

「全艦回避行動! 耐ショック――クソッ!」

 

 堅牢なナノラミネートアーマーに守られているハズの戦艦たちが、いとも容易く貫かれて行く。各軍が損害を拡大させる中、取り返しのつかない被害――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「正面、直撃コースです!」

「バカな、こんな―――うわああああっ!!!」

 

 艦橋(ブリッジ)ごと艦を貫かれ、アラビア王国軍宇宙艦隊旗艦「メディナ」が撃沈。司令官であるラティーフはパイロットとして前線にいる為、完全な指揮系統の崩壊こそ起こっていないモノの――この段階で十国軍の旗艦の一隻が撃沈したコトは、非常に大きな損失と言わざるを得ない。

 

「殿下、これは―――!」

「ッ、メディナが沈んだだと……!?」

 

 その他の軍も、損耗率は軒並み四十パーセントを超えている。ラファエルに対する突破口が見い出せないこの時点において、常ならば即座に撤退すべきほどの損害を被ったのは、非常にまずい状況だ。

 また、火星防衛軍の宇宙艦隊にも、取り返しがつかないほどの被害が発生していた。

 

「艦隊損失、八十パーセント! 全艦撃沈です!」

「損傷、更に拡大……! 隔壁、閉鎖します!」

「ダメージコントロール急げ! 艦とMS隊の損害を知らせろ、早急にだ!」

 

 先の第一射と合わせ、旗艦たるハーフビーク級宇宙戦艦「イシディス」以外の四隻が全て撃沈。文字通りの壊滅状態にまで追い込まれている。

 アラートが鳴り響く艦橋(ブリッジ)の艦長席に座し、艦隊を指揮している火星防衛軍総司令官エメリコ・ポスルスウェイトは、指示を出しつつ彼らしからぬ舌打ちをした。

 

「チッ――これはいよいよ、年貢の納め時か」

 

 敵味方問わぬダインスレイヴ攻撃で、MS隊にも損害が拡大している。敵には「四大天使」ラファエルの加護が有るので、事実上は人類側が一方的に擦り減らされている形だ。

 

 ―――言うまでもなく、最低最悪の状況である。

 

 どれだけ被害を受けようと、ラファエルの特殊機能によっていくらでもリカバリーが効くMA側とのダメージレースなど、成立する訳が無い。あまりにも前提条件が違いすぎる。

 

「艦隊被害、甚大! アラビア旗艦、撃沈です!」

「『ヴォルフウールヴ』は辛うじて航行能力を維持していますが、戦闘続行は不可能との報!」

「本艦は第二カタパルト喪失! エンジン稼働率、七十パーセントに低下!」

「火器管制システム、完全にダウンしました!」

 

 サロモニスも二十発近いダインスレイヴの直撃を受け、戦闘の続行どころか、生命維持すら難しい状態に追い込まれた。艦の各所で火災や爆発が発生しており、隔壁すら作動しないモノが有る。

 そして更に、悪報は続く。

 

「ッ、艦底部に複数のエイハブ・ウェーブ反応――データに該当無し! MAです!」

「取り付かれた模様――これは、制御システムへの異常なアクセスを確認! 乗っ取りを図っていると思われます!」

「何だと!? この状況で何故……!?」

「火器管制システムへのアクセスも確認! 侵攻が速すぎます、止められません!」

 

 新型MA「シャムシャエル」――艦やMSに取り付き、システムに乗っ取りをかける為の機体である。機体自体が小さい為、戦闘能力には乏しいが、乗っ取ったモノを自在に制御するコトが出来る。そのアクセス能力は非常に高く、戦艦であれば接触から三分と経たずに、全てのシステムを掌握可能だ。

 特にサロモニスは、他の艦に無い強力な武装を二基有している。その内の一基である高出力ビーム砲「クラウ・ソラス」はダインスレイヴ第一射を受けて破壊されているが、強化型ダインスレイヴと言える「カラドボルグ」は健在である。ここで艦隊旗艦でもあるサロモニスを掌中とすれば、MA側の優位はより強固なモノとなろう。

 だが、サロモニスにはこの男がいる。

 

「この敵への対処は任せろ。悪いがどいてくれ」

「え? は、はい?」

 

 司令席を立ったディヤウスが、火器管制担当のスタッフを離席させ、そこに座った。そして、モニターを一瞥した後、眼前のコンソールを凄まじい速度で入力し始める。

 

 ―――そう。

 この艦には、人類最高峰の頭脳と技術を持ち、兵器と人工知能に関連する膨大な知識を有する世界有数の技術者、ディヤウス・カイエルがいるのだ。

 

 シャムシャエルに対して、既存のセキュリティやファイアーウォールは役に立たない。数秒とかからず突破される。ならば――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ディヤウスの防壁構築の方が速いか、シャムシャエルによる突破の方が速いか――人間であるディヤウスが、機械であるシャムシャエルの速度に勝てるハズも無いが、全く新しい難解極まる防壁を作り続けるコトによって、その差を埋めるコトは不可能ではない。今や、ディヤウスにしか出来ない荒業だ。

 

「君は『カラドボルグ』の方に行ってくれ。MSデッキにいるヨウィスとクマーラにも協力を仰げ。

 それから艦長――()()()()()()()()()()()()()。このサロモニスで、突破口を切り開くぞ」

「り、了解しました!」

「火器管制がダウンし、航行にも支障が出ている――この状態のサロモニスで、どのように突破口を切り開くと言うのですか? とても現実的とは思えません」

 

 フロレンシオ艦長の反対は尤もである。ディヤウスはモニターを見据え、コンソールに入力し続けながら、その問いに答える。

 

「今出せる全速でラファエルの懐に飛び込み、使用可能にしたカラドボルグで、ラファエルごとハッチを破壊する。最悪の場合、艦をぶつけてでもだ。ラファイエット級は、それが出来るように設計してあるからな――いや、その他の艦もそうではあるが」

「デタラメです! それは、全員で死にに行くコトと同じではないのか!?」

「こうして私が敵のハイジャックを止めていられるのも、長くて十分が限度だ。艦のシステムが乗っ取られれば、我々は最低の裏切り行為を働かされるコトになるぞ。

 それに、このまま此処に留まったとして、一体何になる? 第三射で今度こそ沈められて終わりだ」

 

 この戦況では、脱出もままならない。どうせ死ぬのなら、突破口を開くべく吶喊して死んだ方がマシと言うモノである。

 艦長は一瞬押し黙ったが、すぐに全速前進するよう命令を出した。他の乗員も既に覚悟を決めているので、すぐにサロモニスはラファエルの下に向かって進み出す。

 

「ヘイムダル旗艦、前進を開始!」

「全艦への通信です――『戦闘継続困難につき、本艦は吶喊作戦を決行する。現状を維持しつつ、ダインスレイヴ隊を用意されたし』とのコトです!」

「なるほど、そういうコトか」

 

 サロモニスの様子を見て、火星防衛軍のエメリコは一度頷き――次に、このような命令を発した。

 

「我が艦もサロモニスに続くぞ! 最大戦速!」

「――な、司令!? 一体どういう……!?」

「火星防衛軍は壊滅した。本艦が残ったところで、火星への帰還など不可能だ。――火星人の意地の一つくらいは見せてやらなければ、地球の者たちに嘲笑(わら)われるぞ!」

 

 サロモニスに続き、火星防衛軍も動き出す。艦には僅かに残った火星のMS部隊が直衛につき、艦砲射撃を行いながらラファエルへと接近をかけて行く。

 他の軍の艦隊は、サロモニスからの通信通りダインスレイヴ隊を用意しつつ、彼らを後方から討たせないよう、引き続きMAの迎撃に努めるようだ。

 

「サロモニスが、特攻をかけるだと!?」

「火星軍まで――どういうコトだ?」

 

 最前線で戦うMS部隊には、驚愕と困惑がもたらされたが――それでも、彼らの行動は速かった。

 

「援護するぞ! ヘイムダルは各艦の護衛だ!」

「地球軍には『覚醒』を許可する! 道を開け!」

 

 一斉に、ガンダム・フレームとヴァルキュリア・フレームが機動する。敵MAはいち早く、サロモニスとイシディスの特攻を阻止すべく動くが――その背後から、双眸(デュアルアイ)を赤く輝かせたガンダム・フレーム達が襲いかかった。

 

「アグニカ、僕たちも――!」

「ああ。サロモニスの援護だ、可能なら十国の『覚醒』もな」

「了解、っと!」

 

 アグニカ・カイエルを始めとするヘイムダルのガンダム・フレームも、弾やファンネルを撒きつつ、自分たちのいる最前線にやって来たサロモニスの直衛に回った。

 二隻から少し離れた場所では、十国軍と火星軍のガンダム・フレームが「覚醒」で新型を迎撃する。

 

「らしくないぞ総司令! ヤケになったか!?」

 

 火星軍のMS隊を率い、自らも「ガンダム・エリゴール」を「覚醒」させてイシディスの周囲を飛び回るレグロ・サッチは、刀身を爆破出来る剣を眼前のバラキエルに突き刺して蹴り飛ばしつつ、エメリコに問う。対して、エメリコは冷静に返答した。

 

『ガブリエルを造らせたのは我々、火星独立軍だった。にも関わらず、それを放置してむざむざ火星に逃げ帰る決断をしたのは、他でもない私だ。こんなコトで責任を取れるとは思わないが、せめて最期まで、やれるコトはやらなければならんだろう。

 ―――皆、付き合わせてすまないな』

『良いってコトですよ! 司令と一緒なら本望!』

『元火星独立軍第三艦隊の意地、地球の連中に見せつけてやりましょう!』

「……イシディスの道は、MS隊が切り開く! 行くぞ、シプリアノ!」

「了解! ――ダンタリオンの力、見せてやる!」

 

 シプリアノ・ザルムフォートが駆る「ガンダム・ダンタリオン」も「覚醒」し、全身をパーフェクトカウルで覆ってメタトロンのヒート・ウィップを弾き返しながら、接近をかけて殴り壊す。

 

「落とさせはしない!」

「何としても守ってみせる!」

 

 火星で共に戦った和弘・アルトランドの「ガンダム・グシオン」と、金元・カーゾンの「ガンダム・マルコシアス」もイシディスの援護に回る。四機のガンダム・フレームの守護を得て、火星軍のハーフビーク級宇宙戦艦は、着実に前へと進んで行く。

 

「火器管制室より報告! カラドボルグの制御を回復、使用可能とのコトです!」

「良し! このまま前進、敵陣に飛び込め!」

 

 サロモニスでは、辛うじて右舷に備えられた螺旋剣カラドボルグの制御を取り戻したが、火器管制がダウンしているコトには変わりなく、シャムシャエルによる侵攻も少しずつ進んでいる。

 ディヤウスの奮闘で、制御システムの全てはまだ奪われていないが――それも一体、どこまで保つか分からない。まさに決死の特攻だ。

 

「このエイハブ・ウェーブ、サロモニスに取り付いて――そうか、そういう腹か。

 ならば、これ以上やらせる訳には行かんな!」

 

 サロモニスの艦底部に取り付いたシャムシャエルに気付き、フェンリス・ファリドは「ガンダム・アスモデウスベンジェンス」の十本のサブアームに剣を持たせて展開させ、シャムシャエルと同じように艦底部に取り付いた。

 その場で縦横無尽の斬撃を放ち、シャムシャエルを斬りつけて艦から切り離させる。すぐに修復されて戻ろうとするシャムシャエルだったが、クリウス・ボードウィンの「ガンダム・キマリスデストラクション」とケニング・クジャンの「ガンダム・プルソンアサルト」が火砲を斉射し、シャムシャエルを粉砕した。

 

「艦底部のMA、艦より離脱! システムへの侵攻、止まりました!」

「――艦前方から、猛烈な速度でエイハブ・ウェーブが接近! 艦橋(ここ)を狙っています!」

 

 シャムシャエルの脅威が去ったのもつかの間、今度はメタトロンとマスティマが各二機ずつ、サロモニスに接近して来る。すると、メタトロンの一機が背部に射撃を受けて吹っ飛び、マスティマの一機も別方向からアンカーを受け、引き寄せられてサロモニスから離された。

 

「――命中。サロモニスは、やらせない」

「こっちに来やがれ、相手は俺だ!」

 

 メタトロンを撃ったのはトビー・メイの「ガンダム・アンドラスレクイエム」、マスティマを捕らえたのはアマディス・クアークの「ガンダム・フォカロルテンペスト」だ。

 しかし、残り二機は未だ、サロモニス目がけて直進している。そこに、ソロモン・カルネシエルの「ガンダム・オセマジェスティ」が滑り込む。

 

「ディヤウスさんの邪魔はさせん!」

 

 黄金の双剣を構え、マスティマが振るう剣を交差させてガードし、スラスターを吹かせて押し出す。最後に残ったメタトロンは、サロモニスをいよいよ射程距離に捉えたのか、高熱を帯びるヒート・ウィップを振るうが――サロモニスの上方から振るわれた黄金の剣により、弾き返された。

 サロモニスの前方に、アグニカ・カイエルの駆る「ガンダム・バエルバーデンド」が降臨し、すぐさま右手に持つバエル・ソードを投擲。剣はメタトロンの中枢コンピューター部を正確無比に貫き、沈黙させる。剣が刺さったままでは、ラファエルの修復もままならない。

 

「バエル―――アグニカか……!」

 

 サロモニスの艦橋(ブリッジ)で、ディヤウスは思わずそう呟いた。アグニカは通信越しにそれを聞いたが、言葉は返さない。

 そんなモノは、もう必要無い。言うべきコトは言い終え、言われるべきコトも言われ終わっている。

 

「―――」

 

 アグニカは視線をくれてやるコトもなく、バエルに新しい剣をブレードホルダーから一本、右手で引き抜かせながら、前進するサロモニスに接近してくるMAの迎撃に戻った。

 MS隊の奮戦により、道は開かれた。いよいよラファエルを射程圏内に捉えたが、その前にビーム・バリアーが立ちはだかっている。

 

「サロモニスの前に出る! 突っ込むぞ!」

「了解! 速度維持!」

 

 イシディスがサロモニスに先行し、減速する素振りも無いまま、ビーム・バリアーに突っ込まんと進む。しかし、その前にはラファエルの直属機たる防御型MA「ラジエル」が六機集い、ナノラミネートコート製の盾を展開させる。

 その群に対し、イシディスの前にエリゴールが突撃を仕掛けた。

 

「どきやがれッ!」

 

 エリゴールはランスと剣を突き出し、「覚醒」したが故の超スピードでラジエルの下に飛び込む。その貫通力は凄まじいモノであった、ハズだが――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、ん……だと!?」

「隊長ッ!!」

 

 ランスと剣は半ばから折れ、突撃の勢いは完全に殺された。エリゴールは一瞬、その場に停滞し――それが、致命的な隙となった。

 ダンタリオンがカバーに入るべく動くが、間に合わない。エリゴールは二機のラジエルが展開する盾に挟み込まれ、圧縮される。ナノラミネートコート製の頑強極まりない盾に押し潰される形で、エリゴールは胴体を中心に破壊され――コクピットが、ひねり潰された。

 

「おのれ!」

 

 ダンタリオンが殴りかかり、ラジエルを一機吹き飛ばすが、三機のラジエルが回転して振るってきた盾の直撃を受け、月面へと打ち出される。パーフェクトカウルの性能によって、こちらは死を免れたものの、シプリアノはシートから放り出され、全身を打ち付けられた。

 

「うおああああっ!」

「シプリアノ!」

「俺とウィルフでカバーする!」

 

 吹き飛ばされたダンタリオンを、カサンドラ・ミラージの「ガンダム・アスタロト」とウィルフレッド・ランドルの「ガンダム・バティン」が追う。

 一方、六機のラジエルは盾を集結させ、突撃するイシディス――一隻のハーフビーク級宇宙戦艦の質量を、マトモに受け止めた。

 

「ッ、止められました!」

「全砲門を前方へ集中させろ、撃ち落とせ!」

「後方からサロモニスが来ます!」

「遠慮は要らん! ぶつけて押し込め!」

 

 イシディスの後方に、サロモニスが突っ込んだ。戦艦二隻の推力と質量の前には、流石のラジエルも押され始め、ビーム・バリアーと接触した。スラスターが溶解した六機のラジエルは、ビーム・バリアーとイシディスに挟まれる形で大きな損傷を受け、次々と爆発していった。

 艦の先端がビーム・バリアーに接触し、ナノラミネート塗装が引き剥がされ、潰されていく。それでも、イシディスはゆっくりとビーム・バリアーを確実に突破して、艦首のミサイル発射管をラファエルに照準する。

 

「照準できました!」

「ミサイル発射! 発射管が壊されるまで撃て!」

「くたばりやがれェッ!」

 

 イシディスの放ったミサイルが、ラファエルとその下のハッチに降り注ぐ。しかし、ラファエルはビクともせず、頭部ビーム砲を展開。真上に撃ち放って、イシディスに直撃させた。

 ナノラミネートアーマーが無効化された今、そのビームはイシディスへの致命打そのもの。艦首から粉砕して行き、ビーム・バリアーとの接触部と前方からのビーム照射で、イシディスは無力にも内部から爆発し、分解されて行く。

 

「被害甚大、消火不可―――うわあああっ!」

「後は頼んだぞ、ヘイムダル! 人類の未来を―――!」

 

 ビームは遂に艦橋(ブリッジ)にまで到達し、炎と共にエメリコ達を呑み込んだ。直後、内側から爆発するように、イシディスは弾け飛ぶ。

 しかし、この爆発でビーム・バリアーが揺らぎ、不安定化した。イシディスの真後ろにつけていたサロモニスは、イシディスの残骸を押し込みながら、ビーム・バリアーの中へと飛び込んだ。

 

「カラドボルグ照準! 目標、ラファエル!!」

「バリアーを突破します!」

 

 ナノラミネート装甲を焼かれながらもラファエルのビーム・バリアーを突破し、サロモニスは虎の子たるカラドボルグをラファエルに照準した。

 しかし、ラファエルが黙って撃たせる訳も無い。

 

「ラファエル、ビーム砲発射態勢!」

「構わん、撃―――何だ、うおわっ!?」

 

 ラファエルは超硬大型ワイヤーブレードを機動させ、カラドボルグ発射器から艦橋(ブリッジ)にかけて、削るように刃を走らせた。カラドボルグは弾頭を放つコト無く、エネルギーを暴発させて爆発。周辺の制御室でカラドボルグを操作していたヨウィス・ピトリ、クマーラ・シャクティダラの両名はこれに巻き込まれ、全身を焼かれたまま宇宙へと放り出された。

 ブレードは続けて艦橋(ブリッジ)の後方を(えぐ)り裂き、ちょうど艦長席を直撃した。艦長のフロレンシオ・レンフィールドは、これによって胴体を両断され、死亡。装甲に亀裂が走ったコトで空気が勢い良く宇宙へと吹き出し、他のスタッフも次々と吸い出されて、宇宙の塵となり果てていく。

 

「クソ、ただでは―――ッ!?」

 

 ディヤウス・カイエルもまた、同じように宇宙へと吸い出される。

 向かう先には、ビーム・バリアーが有り――回転する彼の翠瞳(すいどう)は最期に、悠然と佇む智天使(ラファエル)の姿を捉えた。

 

 

 その威容は、あまりにも禍々しく―――されど、ディヤウスの目には、どこまでも美しくも見えた。

 

 

 しかしそれは、殺戮の為だけの機械。どう使おうと、それは命を刈り取る為に造られたモノでしかなかった。美しいモノを作り出す力が有りながら、人類はそれを、同族殺しの為にしか使えなかった。ディヤウスもそうだ。

 

 ――一体どこで、一体いつから、この手の使い方を間違えていたのだろうか。

 

 追いつきたいと願い、終ぞ叶わなかった背中を思い出す。人類の未来の為、人生を捧げた偉大な科学者――エイハブ・バーラエナの背中を。

 

(貴方に会えれば、分かるだろうか―――エイハブさん)

 

 身体がビーム・バリアーに接触し、ディヤウス・カイエルは一秒と経たず、灰となって消えた。

 同時に、ラファエルが頭部ビーム砲をサロモニスへと撃ち込んだ。ワイヤーブレードにより作られた傷からビームが侵入し、艦内を蹂躙。サロモニスは内部から爆発し、四散する。

 

 エメリコ・ポスルスウェイトと、ディヤウス・カイエル。

 

 MAの開発、建造に対し、立場は違えど責任を負った二人は今、突破への道を切り開くべく、戦場へと散って行った―――




次回「One Way to the End」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。