厄祭の英雄 -The Legend of the Calamity War-《完結》   作:アグニ会幹部

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今回もご覧頂き、ありがとうございます。
サブタイの訳は「俺はテメェを否定する」で。


#91 I deny you

『全ては、人類の未来の為だ』

 

 エイハブ・バーラエナが語った、自身の目的。モビルアーマーを人類殺戮の兵器に仕立て上げ、それを全世界へとバラ撒き、実に人類総人口の四分の一を犠牲とするに至らせたモノ。

 それが、人類の未来を憂いたからこその行動であったと、エイハブは言い放った。

 

「―――は?」

 

 アグニカ・カイエルは、ただただ絶句する。

 理解が出来ない。意味が全く分からない。何だ? 何なんだ、その綺麗事は?

 全てを仕組んでいた男、諸悪の根源たる老人の口から何故――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『人類史とは即ち、闘争の歴史だ。有史以来、人類は戦い続けて来た。――君は知らないだろうが、先の大戦もそうだ。人類は限りある資源を求めて争い続け、公正公平に分配すれば必要十分なハズのエネルギーを我欲によってのみ独占し、数多の血を流して戦い、殺し殺された。

 ……ああ、最初はまだマシだったか。挙げ句の果てに完成した自律型無人兵器のせいで、人類は自らの手を血で汚すコトすらしなくなったのだからな』

 

 意志を宿しつつも柔らかな口調を保っていたエイハブの声音が、この時に初めて、冷たく吐き捨てるかのようなモノへと変化した。

 そして、その口調は戻るコトなく、エイハブは忌々しそうに吐き捨て続ける。

 

『前大戦の反省を以て、二度と戦乱を引き起こさんが為に()されたハズの十国体制も、結局は空虚で形骸的なモノでしかなかった。十国会議の開催による融和姿勢と、「決闘」などと言う詭弁(ルール)を隠れ蓑にして、自らは傷付かず、ただ同族(てき)を害し殺めるだけの戦争ごっこ(ボードゲーム)に明け暮れていた。

 君にも分かるだろう、アグニカ君。君も見たハズだ。十国(やつら)は自分の利益(コト)しか考えていない。ミカエルという最大脅威を腹中にしてなお、ヘイムダルという組織の持つ力を削ぎつつも自国が損害を得ない方策――即ち、ミカエルの単独討伐をヘイムダルに求めた。

 結果として、ヘイムダルは無数の死傷者を出すコトになった。その原因が十国の身勝手な決定にこそ在るコトなど、君ならもう分かっているだろう?』

 

 だが、とエイハブは間を置く。その後の言葉は、柔らかな口調を取り戻していた。

 

『君たちヘイムダルは、本当によくやってくれた。特に「英雄」として錦の御旗(フラッグシップ)になり、人類の今在るべき姿勢を世界に示した君の宣言は、本当に素晴らしいモノだった。

 地球と大きな確執を抱える火星までも巻き込み、人類意志を一つとして強大な敵(ラファエル)を打ち破り、最初の天使(ガブリエル)をひれ伏せさせて見せた。

 ――嗚呼。よくぞ、ここまで辿り着いてくれた。私がMAに人類の抹殺を命じ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うモノだよ』

 

 アグニカはただ黙って、エイハブの言葉を聞いている。彼が駆る「ガンダム・バエル」も、エイハブの操る「ガンダム・アンドロマリウス」によって壁に激突させられた状態のまま、微動だにしない。

 

『ディヤウス君には重い責任(やくわり)を負わせてしまったが、おかげで人類は、次の段階に足を踏み入れるコトが出来る。ただ滅びるだけならば、それも仕方あるまいと思っていたが――人類は共通の敵を前に団結し、種族間闘争に明け暮れる日々を打破するコトが出来たのだから』

「―――次の段階、だと?」

『そうとも。人類は数千年――いや、数万年前から何一つとして進化していない。人類はこれから訪れる未来の為に、進化の歩を一つ、前へと進める時を迎えたのだよ。下らない同族殺しをやめ、闘争に依らない発展を目指す。それが次の段階だ』

 

 人類という種そのものを進化させる時が来た、とエイハブは口にした。

 

『これは、人類の進化――人類の未来の為の祭事なのだよ。生活空間を拡大させ、宇宙にまでその裾野を広げた今、人類の敵は人類だけではなくなった。人類同士で相争っているようでは、人類の未来は遠からぬ内に閉ざされるだろう。

 人類は進化しなければならない。その先にしか、人類の栄えある未来は無い。より良い未来を人類に迎えさせる為に、私は今ここにいる』

 

 その為に、エイハブ・バーラエナは人類に試練を与えた。それこそがMAであり、MAによって引き起こされた戦争とは即ち、災厄を以て為す、人類の進化を目的とした祭事だった。

 これこそが、エイハブ・バーラエナがMAに人類殺戮を命じ、全世界を殺戮の渦に巻き込んだ理由。――人類の未来の為に、人類に牙を向けたのだ。

 

「そんな――そんなコトの為に、アイツらは死んで行ったってのか? テメェはそんな下らねぇコトの為に、スヴァハを……皆を、大勢の人をブッ殺しやがったってのか?」

『犠牲無くして、大義を為すコトなど出来ない。その犠牲が必要であるのなら、それは許容して然るべきモノだ。決して無駄な犠牲ではない。彼らの献身があったればこそ、人類は進化するコトが出来る。自らの犠牲によって、人類を未来へと繋げるコトが出来るのなら、彼らも本望だろう』

 

 アグニカが、操縦桿を折れそうなほど強く握り締める。そんなコトは露知らず、アンドロマリウスは左手に握る大剣「γナノラミネート・バスターソード」を持ち上げ、切っ先をバエルに突きつける。

 

『その人類の道標となるのが、このアンドロマリウスだ。人類の希望たるガンダム・フレームこそが、人類をより良い未来へと導く。私はこの場に集った兵器の全てを排斥するコトで、人類から戦争の手段を奪い、新たな時代への扉を開く。私は人類を進化させ、次なる段階に(いざな)う者なのだよ。

 ――象徴は、二機も必要無い。君には此処で倒れてもらうが、悪く思わないでくれ。全ては、人類の未来の為なのだから。君の望みでもある』

 

 アンドロマリウスが大剣を上段に振り上げ、背部のスラスターを吹かせ、バエルに向けて突撃する。ナノラミネートコートをすら容易く斬り裂いてみせる大剣の一撃を、既に損傷した胸部に受ければ、それだけでアグニカは死に至り、バエルは沈黙するだろう。

 

「ッ―――」

 

 一方、アグニカが歯を食いしばりながら、操縦桿を引くと――バエルの双眼は紅蓮の輝きを点し、一本のみ残されたバエル・ソードを、右手で柄が折れそうなほど固く握り締め、振り上げて。

 

 

「―――()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 降って来るアンドロマリウスの大剣に、力任せに激突させた。

 二本の剣はこれまでに無いほど激しい衝突をし、空間全体を照らすほどの火花を散らせ――()()()()()()()()()()()()()()()

 

『……何!?』

 

 特殊装備故に幾分か脆いとはいえ、高硬度レアアロイの塊である大剣を折られるコトは予測外だったらしく、アンドロマリウスはバエルの間合いのただ中で、大きな隙を晒すコトになった。

 対するバエルは左拳を握り、肘を上半身ごと後ろに引いて、右足を強く踏み込む。そのまま拳を全力で突き出し、アンドロマリウスの胸部に、真正面から拳を打ち込んだ。

 ナノラミネートコートで造られ、頑強極まりない――ハズの装甲がヘコみ、アンドロマリウスは後方に凄まじい速度でブッ飛ばされて、壁面へと勢い良く叩き付けられた。スラスター噴射による減速もままならないまま衝撃をモロに受け、流石のアンドロマリウスもその場で尻餅をつかさせられた。

 

「人類の進化? 未来の為? 犠牲は仕方ない?」

 

 バエルの全身から、蒼い炎が吹き上がる。リミッターが解除され、ツインリアクターシステムによって生み出される余剰エネルギーが、全身から溢れ出ているコトの証左だ。

 

 赤く輝く双眼が示すのは、バエルの「覚醒」。

 

「くッッだらねぇコト抜かしてんじゃねぇぞ、ド腐れジジイが!!! テメェ一体何サマのつもりだァッ!!!? 何が必要な犠牲だ!!! アイツらがどんな覚悟を決めて、どんな想いで戦って、どんな風に死んでいったか知りもしねぇクセによ!!!  テメェ如きが、アイツらのコトで知ったような口を利くんじゃねぇ!!!! バカにすんのも大概にしろォッ!!!!!」

 

 多くの人が死んだ。

 多くの仲間が死んだ。

 かけがえの無い、多くの友が死んだ。

 ――本当に大切だった、絶対に護らなければならなかった(ひと)を失った。

 

 それを、お涙頂戴の茶番劇にさせてなるモノか。

 「仕方が無かった」の一言で、ハイお終いになんてさせてなるモノか。

 そんな侮辱、断じて受け入れる訳には行かない。受け入れられない。受け入れてはならない。

 

 

「上から目線で偉そうに、何も知らねぇクセに好き勝手やりやがって!!!! あんまり人間をナメてんじゃねぇぞ、クソがァァァッ!!!!!」

 

 

 人の死をそんな一言で片付けてしまえるような奴の言う「人類の未来」とやらが、死んでいった彼らの、彼女が望んだ「未来」であるハズが無い―――!

 

 

 

『――愚かな。何故抗う、何故否定する? 人類同士戦い続け、いつか滅びる未来を選ぶというのか?

 そんな未来に希望は無い。人類を進化させ、戦い続ける宿命から脱却させる以外に、人類の幸福な未来は有り得ないと、何故分からない?』

 

 アンドロマリウスは立ち上がって態勢を立て直しつつ、左手に握っていた折れた大剣を投げ捨て、右腰からビーム・サーベルを引き抜く。柄から集束、圧縮された細身のビーム刃が展開されると、アンドロマリウスはそれを構える。

 

「黙れ。テメェの至極ごもっとも()()()綺麗事はもうウンザリだっつってんだよ。良い加減、素直に言ったらどうだ?

 ―――()()()()()()()()()()()()()()

『……何だと?』

「俺はテメェが気に食わねぇ。俺はテメェを絶対に認めねぇ。アイツらの命を踏みにじって、生き様を侮辱したテメェを、俺は絶対に赦さねぇ。

 テメェは―――テメェだけは、俺が殺す!!!」

 

 バエルが両手を床面に叩きつけ、アンドロマリウスに襲いかかる。アンドロマリウスは左手のビーム・サーベルを振りかぶり、全身から蒼い炎を吹き出させて、バエルに対抗する。

 

 かたや、自らが定めた人類の未来の為に。

 かたや、これまでに死んでいった者たちの為に。

 

 ―――厄祭戦。その最後の戦いが、始まった。

 

 

 

   ◇

 

 

 アグニカ・カイエルの「ガンダム・バエル」と、エイハブ・バーラエナの「ガンダム・アンドロマリウス」による、最後の死闘が開始された頃。

 最奥がその舞台となった「天使の花園(ヘブンズフィア)」外部の戦闘は、終結の時を迎えていた。

 

「移動可能な艦は、いつでも宙域から離脱出来るよう備えろ! 損傷の激しい艦、モビルスーツは現場の判断で放棄せよ!」

「生存者の確認、救助も出来得る限り行え!」

 

 しかし、息つく暇など無い。艦隊は早速、撤収準備に取り掛かっている。

 

 犠牲者の数は、極めて甚大なモノとなった。

 三度に渡る敵のダインスレイヴに加えて、その後の掃討戦も被害拡大の要因と言える。損傷無しの機体は無く、失われた機体も多い。

 

「カサンドラ! どこだ、カサンドラ! アスタロト! ――エイハブ・ウェーブもダメか……!」

「シグルズ、答えなさい! ……おのれ!」

 

 カサンドラ・ミラージの乗っていた「ガンダム・アスタロト」は消息不明、エイハブ・ウェーブも確認出来ない。ヴァルキュリア・フレームの「ブリュンヒルデ」――シグルズ・ヴァーヴィンも、戦死していた。

 それぞれ同じチームであったドワーム・エリオンとカロム・イシューは、二人して歯噛みする。

 

「大佐、マリベル―――ッ……!」

 

 ヴァルキュリア・フレームは八番機「グリムゲルデ」のパイロットであるファビアン・モンタークも、仮面の下で表情を歪めた。

 アメリア合衆国軍はサイラス・セクストン大佐の「ガンダム・サブナック」と、マリベル・コルケット大尉の「ガンダム・ボティス」が大破。パイロットの生存の可能性は、絶望的と言わざるを得ない。

 また、イングランド統合連合国軍の遼真・ウェルティ少佐――「ガンダム・ゼパル」のパイロットも、主であったヴィンス・ウォーロックを追うように、戦死したコトが確認されている。

 

「大佐、無事ですか――大佐? 大佐!」

 

 大破した「ロスヴァイセ」の放棄を決断し、自機から脱出しつつも、ヘヴォネン・ヴァルコイネンは直属の上官に呼びかける。

 サハラ連邦共和国軍の「ガンダム・シトリー」は原型を留め、コクピットも無事だったが、パイロットであったラッセル・クリーズからの返事は無い。――「覚醒」の代償で、その命を悪魔に奪われたのである。

 

「少尉は――そうか」

 

 李子轩(リ・ズーシュエン)は、「ガンダム・フォルネウス」のカメラ越しに部下の機体の様子を視認し、静かに目を伏せた。

 「ガンダム・レラージェ」――中華連盟共和国軍のマリアン・サックウィル少尉の機体は大破し、コクピットが敵MAのランスに貫かれていた。

 

「王子! 応答して下さい、ラティーフ王子!」

「貴方を失っては、我が国は……! 殿下!」

 

 アラビア王国軍の「ガンダム・ストラス」――ラティーフ・ビン・ナーイフが、「覚醒」の代償として自らの全てを悪魔(きたい)に捧げ、死亡。機体自体も深刻なダメージを受けており、頭部と右腕、両足が失われている。部下たちが泣きながら縋るように通信をし続けるが、ラティーフが声に応えるコトは、永遠に無い。

 また、「ヘルムヴィーゲ」――ラテンアメリア連邦共和国軍のパンサリー・キファラが駆ったヴァルキュリア・フレームの機体も撃墜され、「ガンダム・ガープ」も大破。そのコクピットで、メルヴィン・マレットはMAの刃により貫かれていた。

 

 MS隊だけではなく、艦隊も八割近くが壊滅。火星防衛軍の艦隊に至っては全艦が撃沈し、十国軍艦隊でも各国の旗艦のいくつかは撃沈させられた。戦術的な「全滅」など、とうに通り越している。

 人類が保有する戦力を全て集結させてなお、この結果に終わったコトが、戦いの激しさとMAの恐ろしさをもの語っている。

 

 それでもまだ、作戦は終わりではない。ガブリエルの要塞「天使の花園(ヘブンズフィア)」内では、今なお「ガンダム・バエル」が――アグニカ・カイエルが、人類の敵と戦っている。

 

「ヘイムダルは『ヴォルフウールヴ』の下に集結せよ! その後、アグニカの救援部隊を編成する!」

「だけどよフェンリス、こんな状況で要塞内に突撃出来るか!? 俺たちの機体も限界に近い!」

「アグニカ達だけで、いつまでも戦わせる訳には行かんだろう! 動ける機体は行くべきだ!」

 

 フェンリス・ファリドの指示にディアス・バクラザンが反論し、ケニング・クジャンが更に言い返す。機体状況を考えればフェンリスとケニングの言い分は土台無理な話だが、アグニカ達が戻って来ない以上、内部の状況を把握する為にも、突入部隊は必要だ。

 ただ、辛うじて戦えそうな機体など、片手で数えられる程度の数しか残っていない。想定以上に戦闘が長引き、艦の多くが沈んだコトもあって、補給物資も枯渇している。

 

「――生きているか、ウォーレン大佐」

「ああ、何とか……ただ、機体は自力じゃ動かせねぇ。悪いが、お前らの艦に回収してくれ」

「『ヴォルフウールヴ』は火器管制が全滅し、航行能力も万全ではない。――貴方一人を乗せるくらいは出来ても、機体は難しいだろう」

「そうか。……仕方がない、俺だけでも頼む」

 

 ヘイムダルと共に要塞入口付近で戦った、オセアニア連邦国軍の「ガンダム・ウヴァル」は、全身の装甲が剥がれ、フレームのみとなっていた。パイロットのアイトル・ウォーレン大佐は、機体の放棄を決断し、ドワームの「ガンダム・ベリアルコンセンサス」に回収される。

 機体の回収は、艦まで自力で帰還出来る、損傷の少ない機体が優先だ。艦が沈みすぎている為、全てのMSを回収するコトは不可能である。

 

「―――私は、アグニカの下へ行く。ついて来れる者だけついて来い」

 

 撤退準備が進む中、黄金の機体「ガンダム・オセマジェスティ」――ソロモン・カルネシエルは、要塞内部への突入を決断した。

 

「な、待てソロモン! 一人で行く気か!?

 ――クソ、行くしかないか……!」

 

 仲間の制止を無視し、オセは「天使の花園(ヘブンズフィア)」へ飛び込む。破壊されたハッチを二つ越えると、ソロモンの目にはMSの腕が挟まった状態で閉じられた最終ハッチと、無数のMAの残骸の中に浮かぶガンダム・フレームが映った。

 

「アンドラス、か――トビー! 無事か!? トビー!」

 

 通信で呼びかけるが、ソロモンは一目で分かっていた――トビーは最期まで戦い、死んだのだと。

 トビー・メイの乗っていた「ガンダム・アンドラスレクイエム」は、コクピットを完全に破壊されていた。この状況下では、例え脱出していたとしても、生存は絶望的である。

 最終ハッチが完全に閉じきるコトを妨げている腕は、アンドラスのモノだ。トビーは命を引き換えにして、進入路を――アグニカの帰る道を確保したのだろう。

 

「待て、ソロモン! ……アレは、アンドラス――か?」

 

 追って来た「ガンダム・キマリスデストラクション」――クリウス・ボードウィンも、アンドラスの残骸を見て愕然とする。

 ソロモンは歯を食いしばりつつ、乗機に残された最後にして最大の武装を展開する決断をした。

 

「―――ファンネル、展開」

 

 オセの全身から十六基のファンネルが外れ、前面にフォーメーションを敷いて展開する。オセの主武装である双剣「フレイヤ」は、戦闘の中で二本とも折れ、失われてしまったが――このファンネルだけは、アグニカを助けるべく、ソロモンが温存させていたモノだ。

 光を集束、照射する「フラッシュ・ライトファンネル」と、光を自在に偏光させる「ファントム・ミラーファンネル」が、それぞれ八基ずつ。ライトファンネルは八基が一ヶ所に纏まって配置され、ミラーファンネルはライトファンネルとオセ本体の間に広がり、角度を付けて展開されている。

 

「……ソロモン!? まさか、此処でそれを使うつもりか!? アンドラスは、トビーは!?」

「トビーは死んだ。……回収する余裕は無い。

 ―――リミッター解除、アーマー解放!」

 

 オセの双眼が赤い光を宿し、エイハブ・リアクターのリミッターが解除される。オセの全身を覆う黄金の装甲――光を放つ「ゴールドクロージングアーマー」が一際強く輝き、前方への拡散照射が始まった。

 光はミラーファンネルによって屈折させられ、ライトファンネルの下へ集束して行く。ライトファンネルの放つ光はどんどん強くなり、プラズマを発生させながら凝縮させられた光は高熱を帯び、遂に臨界を迎える。

 

「『ソーラ・キャノン』、発射!!!」

 

 単騎で「ソーラ・システム」を再現し得るオセの兵装――「ソーラ・キャノン」が、前方のハッチめがけて放たれた。純白の光がアンドラスの腕が作ったハッチの隙間に降り注ぎ、内側からハッチを溶解させて行く。

 照射が終わった時、ハッチは全面が赤熱しており――月の重力に引かれて、要塞内部へと落ちて行った。

 

「……開いた!」

「行くぞ!」

 

 オセとキマリスは開かれた穴から、要塞の最奥部へと突入する―――




次回「The Hero of the Calamity War」
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