地下時間   作:あくる

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Undertale熱が再燃したので



はじまり

*ひんやりとした感覚が体を包んでいる。

*あなたはそれに違和感を覚えた。

 

……?

 

花の匂いが鼻をくすぐる。うつぶせに倒れていた体を起こした。

体を起こすためについた手の下には柔らかな感触の花が群生して咲いていた。いや、倒れていた場所は咲いている花たちの中心だったらしい。よくよく見てみれば体の周りは花だらけで上からは光が差し込んでいた。

…じっとしていても仕方がない。この穴であろう場所から一つだけ伸びている道を進んでみることにした。

 

少し進むと門の様なものを見つけた。しばらくじっと見ていると目の前に白い枠で囲まれた四角いものが現れそこにメッセージが現れた。

 

*あなたは門を見つけた。

*だが扉はついておらず、どうしてこれがあるのだろうと疑問を抱いた。

 

四角いものは足を一歩踏み出せば消えてしまった。もう一度門の様なものを見れば同じメッセージが同じ四角に囲われて現れる。何度繰り返しても同じ現象が起きるようだ。

不思議に思いながらもそのまま門の様なものをくぐれば、小さく光が差し込む場所に顔のついた花が咲いていた。

その花を近くで見ようと足を進めると、なんと花は口を動かし話しかけてきた。

 

*やあ!

*ぼくはFLOWEY。

*お花のFLOWEYさ!

 

声と同時にまた四角いものが現れる。しかも今度は顔アイコン付きだ。

 

*きみは困っているみたいだから、この地下世界の過ごし方を教えてあげるよ!

*準備はいい?

*いくよ!

 

花が動いて話しているのは驚いたが、困ってはいたので申し出はありがたい。デジャブのような気がするが、気にせずうなずいた。すると不思議な効果音とともに胸のあたりから真っ赤なハートが飛び出した。

メッセージが書かれていた四角いものにハートが囲われる。

四角の下には LV1 と書かれ、その隣にHPの文字と黄色いバー、バーの横には 20/20 という数字。まるでゲームのようだ。

体を動かすとハートもそれに合わせて動いた。ハートに手を伸ばして動かせば手の動きに合わせて動く。ついでに手で動かしたハートに合わせて体も動いた。だがハートは四角の外に出すことはできないようだ。

なんだこれは。

 

「そのハートが見える?それはきみのソウル、君の心や体のあらわれさ。きみのソウルは弱いけど、LVを上げると強くなっていくから安心してね。

LVってどういう意味かって?もちろんLOVEのことさ。

LOVEがほしいよね?少しだけ僕がきみに分けてあげるよ!」

 

こんどは声とともに吹き出しがFloweyの横に飛び出した。

分けてあげる、と言うと花についた顔がウィンクをする。花のくせになんて器用なんだろう。白い小さな粒がFloweyの周りに浮かぶ。

 

「これがLOVEだよ。今から落とすから動いてたくさん集めてね!」

 

そう言いうと白い粒を一斉に落としてきた。

動いて、とは言われたが動かずともすべての白い粒が四角の中のハートに向かってきている。下手に動くと逆に取りこぼしてしまいそうだ。

ハートを動かさずにそのままじっとしていると粒がハートに触れる。すると立っているのがやっとなくらいの痛みと衝撃が体に響いた。どういうことかとFloweyを見ると醜悪に顔部分がゆがんだ。

 

「バーカ。

この世界は殺るか殺られるかなんだよ。」

 

吹き出しの文字は嘲笑うかのように震えていた。

ハートの入った四角がさっきの粒に隙間なく囲われる。

 

「 死 ね 。」

 

ヒャーハハハ!と狂ったような笑い声とともに粒でできた円が狭められていく。恐怖で体が動かない。体を動かしていないからかハートも動かない。これが自分を表すソウルという言葉をどうしようもなく理解した。

粒が寸前に迫る、というところで粒が消え痛みもスッと消えた。

Floweyも驚いたのか顔が元に戻る。そしてどこからともなく現れた火の玉に吹き飛ばされ茎部分からどこかへ飛んで行ってしまった。驚くことに彼には根っこが付いていなかったらしい。変わった植物もいたものだ。

突然の出来事に的外れなことを考えているとFloweyよりも大きな生物がやってきた。その生物は白くモフモフで頭に小さなツノが生えている。そして垂れ耳だ。

彼女は優しく語りかけてきた。

 

「なんて恐ろしいモンスターなんでしょう。か弱い子供を傷つけるなんて…

怖がらなくてもいいのよ、おちびさん。私はTOLIEL。このRUINSの管理をしているの。

ここにあなたのような人間が落ちてくるのは本当に久しぶりなの。

ついてきて!地下を案内するわ。」

 

どうやらFloweyとTolielはモンスターらしい。

*こっちよ。といってTolielは進んでいってしまう。

こちらはさっき優しくされた後にひどく裏切られた直後だ。彼女を信じていいものかと首を傾げた。しかし戻ってもあるのは小さな花畑のある行き止まりしかない。警戒しながら彼女の後を追った。

さっきと似たような門の様なものをくぐると待っていたTolielはこちらを気にしながら進んでいく。

目に映るのは落ち葉と階段と遺跡。落ち葉の中にはキラキラと輝く何かがあった。Tolielは階段を上っていくが自分はキラキラしたものが気になりそっと手を伸ばした。

すると

 

*遺跡の影がぼんやりと現れ、あなたは決意で満たされた。

*HPが全回復した。

 CHARA LV1 Ruins-入口 セーブ完了

 

というメッセージが現れた。CHARA…?

よくわからないがセーブとは節約したり、誰かを救うSAVEではなく、ゲームの方のSAVEでいいのだろうか。疑問に思いつつもTolielがこちらを待っているようなので少し早めに階段を駆け上った。

 


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