地下時間   作:あくる

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遺跡 そのさんのに

Napstablookがいた落ち葉の上を通る。そこには彼が居た痕跡もぬくもりも、何も感じられなかった。彼はいったいどこへ消えたのだろうか。

 

二股に分かれている道を左に進んだ。その先には看板とFroggitが1、2、3。3匹もいる。しかし彼らは停戦のやり方を教えてくれたFroggitのようにそこから動くことなく、入ってきたこちらを一瞥しただけだった。戦闘に入る気配はない。

 

まずは入り口から一番近い看板の前に立つ。

 

*迷ったのかい?

*スパイダー・ベイク・セールは下に行って右だよ。

*クモの、クモによる、クモのためのお菓子をお楽しみください!

 

スパイダー・ベイク・セール…

看板にはクモのための、という記述があるが人間は利用しても良いのだろうか。

この部屋はまだ調べていないが、ベイク・セールが気になり、いってみることにした。来た道を引き返し、行っていなかった方への道歩く。

ベイクドセール会場と思わしき部屋には看板と小さなクモの巣と大きなクモの巣がある。看板には売り上げは全て本物のクモに渡ると書いてあった。

それぞれのクモの巣の前には値札がおかれている。

 

*クモのドーナッツ 7 gold

*クモのサイダー 14 gold

 

ドーナッツよりはサイダーの方が高いようだ。メニューを開いて所持金を確認する。手元には 9 gold ある。両方とも気になるが、両方買うにはお金が足りない。

とりあえず小さなクモの巣の前に7goldを置いた。

 

すると小さなクモたちが降りてきてお金を回収するとドーナッツを手渡してくれた。

渡してくれたクモのサイズよりドーナッツの方が大きい。彼らはとても力持ちのようだ。

 

さっそくメニュー画面で詳細を確認してみる。

 

*クモのドーナッツ HP12回復 -クモの手作り。リンゴ酒バター入り。

 

すごく美味しそうなメッセージが出てきた。

リンゴ酒バターという名前からして食欲をそそる。

持っているドーナッツからはまるで出来立てのようにふんわりと甘い香りが漂っている。

ドーナッツがこんなに美味しそうならサイダーだって美味しいに違いない。

今ドーナッツを食べたい気持ちをグッと我慢してドーナッツをしまい、サイダーのお金を貯めるためにベイク・セール会場を後にした。

ーーー

 

今まで通ってきた道を引き返してウロウロして12goldまでお金を貯めた。

なんだかお金をたかっているみたいで気が引けたがモンスターたちも楽しそうにしてくれて助かった。

ただ、Whimsunはいくら励ましてもACTをする前にMERCYしてもさっさと逃げていってしまう。

一度だけ手に力を入れてワナワナさせると逃げずに困惑していたが、それでも次のターンには逃げられてしまった。今までgoldを置いていかなかったWhimsunがそのときだけ2goldを置いていったのはひょっとして「有り金を置いていくから助けてください」ということだったのだろうか。

詫び金……?

次からWhimsunに会ったときはすぐにMERCYすることにした。

 

あと2goldだ。ひたすらいくつかの部屋をウロウロする。するとソウルが飛び出し戦闘画面になった。

これでウロウロするのが終われると良いのだが。

 

*Migospが這いよってきた!

 

Moldsmalの横に見たことのないモンスターがいる。ウサギっぽいがウサギの耳に見えるアレはひょっとしたら触覚かもしれない。

Migospというモンスターはすごく凶悪な目付きでこちらを睨み付けている。

とりあえず様子を見るためにMoldsmalの*真似をして相手にターンを渡す。

 

「*ヌメヌメ*」

「俺たちに従うのだ…!」

 

Moldsmalが上からカビを降らしてくると同時にソウルの入っている四角の左右に虫が集ってきた。

この虫がMigospの攻撃のようだ。

虫攻撃は動かず真ん中にいれば当たることはないが、動かなければMoldsmalの攻撃に当たってしまう。

なんとかかわそうとしたが、かわしきれずにMoldsmalの攻撃でHPが15になった。

しかし名前が黄色のMoldsmalを見逃せば、四角の左右に虫がいるだけになるはずだ。それなら攻撃だって食らわなくなるだろう。

 

*ゼラチン質のアロマの香りが漂っている。

 

ターンが回ってくるとMERCYでMoldsmalを見逃した。

これで楽になるはずだ。

 

するとMoldsmalがいなくなった途端Migospの表情がガラッと変わった。

鋭い目付きは目尻を垂れ、お気楽そうにヘラヘラ笑っている。まるで別人、いや別モンスターのようだ。

 

「ありのままの僕が一番!」

 

相手のターンになるが虫の攻撃はしてこなかった。

それどころか四角の一番下で突っ立っているだけでなにもしてこない。

 

*Migospはこの世界に何一つ悩みがないようだ。

*鼻歌も歌っている。なんてお気楽な…

 

名前を確認すると黄色く表示されていた。

Migospを見ると足でリズムを刻むほど浮かれているようだ。

そっと目をそらしてMERCYした。

 

*あなたは勝利した!

* 0 XPと 3 gold を得た。

 

Moldsmalのいたところに1 gold、Migospのいたところに2 gold落ちている。計3 goldだ。

これでサイダーが買える。

ドーナッツが手作りだったということは、サイダーも手作りなのだろうか。

期待に胸を膨らませてベイク・セール会場へ駆けていった。

 

 

ベイク・セール会場につくと大きな方のクモの巣に14 goldを置いた。

するとまた小さなクモたちが降りてきて水差しを渡してくれた。思っていたよりも大容量だ。少し重たい。

水差しのサイダーは透明ではなくほんのり色がついている。何かフレーバーがついているのかもしれない。

サイダーはシュワシュワと音をたてている。やはりこちらもおいしそうだ。

こちらもメニュー画面で詳細を選んで調べてみる。

 

*クモのサイダー HP24回復 -クモでできている、ヤバいジュース。

 

クモでできている…?

手の中にある水差しを確認する。

………。

具体的な描写は省くが、気が付かなければよかったと思った。

 

*あなたはクモがクモでできているものを売っているという事実に戦慄した。

*あなたは水差しをそっとしまった。

 

ドーナッツとサイダーで贅沢食いしたかったが、サイダーを見て、本当にどうしようもなくなったら食べようと思った。

少なくとも今は食べる気にはならない。

 

たくさんモンスターと話をして疲れたし、精神的にもジャブを食らったので決意がみなぎるセーブポイントへ戻ることにした。

 

ここの部屋は何度通っても変わらない。

机の上のチーズはへばりついたままだし、ネズミは巣穴に引きこもって出てこない。

光るセーブポイントに手を伸ばした。

 

*いつかネズミが穴から出てチーズを食べる日が来るのだろう…

*あなたは決意でみたされた。

 CHARA LV1 Ruins-ネズミの穴 セーブ完了

 

部屋だけではなくセーブポイントのメッセージも同じようだ。

決意を抱くと疲れがとれたような気がする。

HPも20に戻った。

 

なにも変わらないのが寂しくて、なんとなく机にこびりついたチーズをほんの一欠片だけとってネズミの巣に置いてみる。

このチーズがお気に召したならきっと机の上のチーズを食べるに違いない。

その時を楽しみに足取り軽く歩き始めた。


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