3章 ほーかごぐらし
「はぁ~、終わった終わった~」
本日最後の授業チャイムがなり、ある者は部活に、ある者は生徒会に、ある者は帰途につき散り散りになる教室の一角で一般には知られていない秘密の会合が開かれるのであった」
「いや、こんな公の場でやる秘密の会合があってたまるか」
きいの冗談に適当につっこみながらいつものごとく集まってきているみんなに目を向ける。自分の手元にあるスマホとにらめっこしながらゲームをたのしんでいる。
「あぁあああああ、1グド…….」
「は?なんであそこ抜けるの??」
「りんごはまだましでしょ、りんごは文句言う資格ないから」
私ときい以外の鳴、なの、環は『パンドリ!ガールズパンドバーティ』、通称ガルバの協力ライブをしている。
「せっかくこれだけいるしなんかやろーよ。ほら、いさみも暇そうにしてるでしょ。」
自分が暇だからって私をだしに使わないでよ。確かに暇ではあるけど。
「別にいいけどなにやるの?」
めんどくさそうな返事をする環をスルーして、きいはおもむろにトランプを取り出す。
「このメンバーでインディアンポーカーをします!!」
インディアンポーカー?ポーカーは知ってるけど、インディアンポーカーは初めて聞いたな。
「インディアンポーカーってなに?」
めいの疑問に答えるべく、きいは意気揚々と説明をはじめる。ほんと楽しそうだな。
「インディアンポーカーとは、それぞれ1枚カードを見ないように引いてみんなが見えるようにおでこの前に掲げる。あとは普通にポーカーと同じ。自分が勝てると思えば「勝負」、負けると思えば「降りる」を宣言。今回は賭け金はなしで、単純に勝ったら1ポイント、勝負して負けたら-1ポイントで3ポイント先取で勝ち。最下位の人からジュース奢りでどう?」
「まあ、とにもかくにもやってみなきゃだな。」
「結構面白そうじゃん。」
なんだかんだノリがいいのありがたいな。ルールは大体分かったしやるか。
「じゃあ、さっそく始めようよ」
各々がカードを1枚ずつ手に取りおでこに掲げる。
なのが5、きいが8、環が6、鳴が10。ぱっと見、鳴が一番大きいが自分の数字が分からない以上簡単に降りるのももったいない。少し揺さぶりをかけてみるか。
「きいの数結構大きい。私は降りよっかな。」
さて、鳴はどうするか。
「え?鳴のほうが大きくない?」
ばっか、なの。こう言っちゃったら….
「じゃあ、私勝負する」
ほら~、鳴が勝負しちゃったじゃん。まあ、私の方が小さいことがわかったし降りるか。
「私は降りる」
「じゃあ、私も」
「自分は勝負する~」
「降りる」
なのと鳴だけ勝負して第一回目の話し合いは終了。
案の定、私のカードは6で10には届かなかった。マイナスポイントにならなかっただけましか。
現在ポイント きい、環、いさみ0 鳴1 なの-1
早速次のゲームを始める。
今回のカードはなのがJ、きいが5、環が3、鳴が3。早くも環が動いた。なのの方を見ながら
「今回はたまの勝ちかな~」
なるほど、そういう狙いか。この環が作った流れに乗るか。
「環が勝つかどうかはわからないけど、なのには勝てそうな気がする。」
さあ、どうする。なの。
「え?マジで??じゃあ降りちゃお」
あれ?簡単に降りてくれた。ちょろい。問題は自分がきいより大きいかどうかなんだよな。ここは勝負するか!!
「よし、勝負する」
「勝負」
「ここは降りる」
各々判断し、勝負を選んだのはは私と鳴ときいの3人になった。結果は私の勝ち。私のカードは8だった。やった!!
「ちょっと!!私勝負してたら勝ってたじゃん!!!」
「ほんと、なの弱すぎwww」
「素直すぎ」
「次は絶対勝ってやる~~」
現在ポイント 環、鳴0 いさみ1 きい、なの-1
それからもゲームは続き、勝負は大詰め。ポイントが環1 鳴、私2 きい0 なの-3となった。それにしてもなのが弱すぎる。
次のゲームが始まった。
今回のカードはなのが3、きいが6、環が10、鳴が5。問題は初手だ。誰を勝負させ、誰を降りさせるか。自分が勝つためにはそこの見極めが大切だ。お互いがお互いに考察を巡らせ自分に有利な状況を作り上げていく。何度も繰り返してプレイしているため、より高度な心理戦を強いられる。先に動いたのは環だ。環はきいに揺さぶりをかける。
「勝ちたかったら今回は引いた方がいいかもよ~~。」
「あっそ、じゃあ引かないわ。」
まあ、そうなるでしょうね。大きめの数を落とすのはセオリー。ということは最初に狙われた人はその人にとって一番大きい数である可能性が高い。よって引かない方が得。というわけでもない。それを狙ってわざと低い数に揺さぶりをかけるという作戦も取れるのだ。結局そのあたりも色んな人の揺さぶりを聞きながら自分で判断するしかない。そのためにも引かずにしっかり見極めるというのは無難だろう。しかし、今回の場合は環からみても6という数字は高めにあるはずだ。他の数は3とか5なのだから。つまり、この揺さぶりはさっきの話の前者。大きい数を潰すという狙いがあったのかもしれない。ということは、私は少なくとも6よりも下である可能性が高い。これも含めもう少し考えてみよう。
「たまk….」
名前を言い終わる前に、ある危険性に気付いた。私が6より下という可能性がある以上、この場の一番大きい数は環の10である可能性が高い。ここで変に揺さぶりをかけると、環に一番大きい数を持っているということを教えることになってしまう。直接揺さぶりをかけずに自分が小さいと思い込ませる方法はなにかないかな。そうだ。これだ。私は環のおでこに掲げられたカードを横目で見ながら話し始めた。
「環はきいを潰したいだけだよ。信じるかどうかは任せるけど、勝負すると勝てる。こっち側としてもリーチが増えるよりまだマシ。降りちゃダメだよ。」
あえて、2番目に大きい数のきいを推すことで自分は小さいんだと思わせる。これで、乗ってくれれば降りてくれるはずだ。
「たまは降りるよ」
よし、これで私も降りてしまえば無駄な失点をおさえr…..待てよ….もしこれと同じことを最初から環がやってたとしたら?私を降りさせるためにあえて2番目に大きいきいに揺さぶりをかけてたとしたら?私のただの妄想だとしたらせっかくのリーチを逃すことになる。でもこれで俺が6よりも大きかったら?その可能性を見つけてしまったらそれ以外に考えられない。ここは….
「勝負する」
言ってしまった。でも、もうあとは結果を見るだけだ。後悔はない。
最終的に勝負したのは私、きい、鳴の三人。もし鳴が一番大きかったら鳴の勝ちでこのゲームは終わりだ。でも、私もリーチだ。もちろん、私の勝ちの可能性もある。さあ、勝負だ!
3人はおでこに掲げられたカードを同時に表向きで机に置く。きいが6、鳴が5、そして私が、、Q。やった!!!やっぱり、そういうことだったんだ!
「え?たま結構大きかったじゃん!」
「私、環と同じことしてたんだよ!!気付いたのはギリギリだったけどね。」
「なんだよぉ。悔しい!!」
わいわい、みんなでおしゃべりしたところでみんなが忘れてるであろう罰ゲームの話をしよう。
「1位は私で最下位はなのに決まったところで、ジュース奢りターイム!!!」
「忘れてた!!それで、なにが飲みたい?」
「魔剤」
ここぞとばかりに210円もするエナジードリンクを所望した。あ、魔剤っていうのはモンスターエナジーのことね。これ常識だから。
「いさみそれ好きよね」
「いや、いさみだけじゃなくてみんな好きでしょ。たまも好きだし。徹夜に効くんだよね」
わいわいしてると、廊下を歩いていた生物の麦田先生が教室のドアを開ける。
「おいお前ら、もうそろそろ下校時間だから早く帰れよ。木津、お前も早く帰るんだぞ」
え?木津さん?私は先生が目を向けた教室の後ろのドア近辺に目を向けるとそこには静かにひたすら何かを書いてる木津さんの姿があった。びっくりした。ていうか、木津さんどこにでもいるな….それはともかく、麦田先生にも言われたしさっさと帰ろう。
「じゃあ、みんな帰ろっか」
帰り支度を整え、教室を出る。一応あいさつしとこう。
「木津さん、また明日ね。さようなら」
「さっ….さよなら…」
少しキョドった様子で返してくれた。人見知りかな?クラスメイトだしもっと気軽に接してくれると嬉しいんだけどな。
私は教室を後にした。ただ一人、彼女をあとに残して