今回の話は、
遠藤直と藤和ひより
のお話となっております。
ぜひごゆっくりお楽しみください。
あの人の好きな人になれたなら
誰もが一度は願う幻想
そんなありきたりに例外なく心を乱される私は
静かに本を閉じた。
そろそろあの子が来る頃だろう。
改札口を抜け、こちらに駆けよってくる人影を捉える
おっと、話をすればなんとやら。まあ、話はしてないんだけど。
「ごめん、すぐ!待った?」
「いや、今来たところだよ」
実際はそうではないのだが、変な気を使わせる必要も感じないのでテンプレを返す。
もっとも、集合時間30分前から待っていたことは言うまでもないだろう。
「じゃあ、行こっか!!」
今日はひよりの高校での友達の誕生日プレゼントを買いに行くということで私が駆り出された。
学校も違う、知らない友達の誕生日プレゼントを一緒に選ぶというよくわからない状況なのだが、ひよりと一緒にお出かけができるという利点が私の心を動かしたのだ。
「それで、どんなプレゼントをあげるか目星はついてるの?」
「ん~、なんも決まってないけど、良い感じのが見つかればそれでいいかな~」
「それでいいんだ。。。」
昔ながらの適当さに呆れながらも、変わってないことがなんだか嬉しく感じる。
高校で離れてからは、連絡は取っているものの顔を合わせる機会が少なくなっていた。
知ってるひよりが隣にいてくれる。変わらないものがあることにどこか安心していた。
そうこうしてるうちに、最寄りのショッピングモールにたどり着いた。と言っても、用事があるのはひよりだけなので、とりあえずひよりの赴くままに付き添う形になる。
「これ、可愛い!!」
「このヘアピン似合いそうな気がするな~!!」
一人でわいわい盛り上がってるひよりを横目に周りを見渡す。
ファッション小物がずら~っと並ぶ店には今をときめく学生たちでにぎわっていた。
あまりこういった店になかなか入る機会がないため、心なしか場違い感を覚える。
ひよりは普段からこういった店に行ったりするのだろうか。
小さい頃もこうやって、一人でいる私を連れまわしてくれたな。
他にもたくさん友達がいるはずなのにいつも私を誘っては連れ回してすごく大変だったことを思い出す。
ふふっ。ほんと高2になった今でも変わんない。そう、あの時も今もずっと“友達”だ。
「すぐ?次の店行くよ!」
「あ、ちょっと待って」
物思いにふけっている私をよそにひよりはすたすたと歩きだす。
次の店は雑貨屋さんのようだ。
例のごとく、プレゼントを選ぶひよりの後ろをついていく。
並んでいる商品をざっと目で流しながら歩いていくと、足を止めるほどに目を奪うものがあった。
凄く可愛い。
しかし、このキーホルダーは私には合わない気がする。
そう思いながら惜し気に目線を前に向けると、先に行ってたはずのひよりがそこにいた。
「ん?これ欲しいの?」
「い、いや、こんな可愛いの私には似合わないかなぁって」
「そんなことないよ?あ、そうだ!じゃあ、おそろいで二つ買っちゃおうよ!!」
「ひよりがそこまで言うなら。。。」
結局、ひよりの勢いに押され、その店で同じ種類のキーホルダーを一つずつ買った。
小さい頃から一緒にいるのだからおそろいで買ったのはたくさんあるが、おそろいの嬉しさは別に衰えるわけではない。
今回のキーホルダーも例外ではなく、しかも自分の好みでもあったため、とても嬉しかった。
「あはは、すぐ、めっちゃ嬉しそうじゃ~ん」
「まあね」
ひよりはたまに、私の心を見透かせるかのようにしたいことを叶えてくれる。でもそれは、友達としての親切でしかないとわかりきっていると、嬉しくなる反面、辛くなる。
ずっと隣にいたのに。ずっと手には届かない。
いや、届いてはいけないのだ。
私とひよりは「友達」。
今までそうしてきたし、ひよりだってその関係が一番のはずだ。
それを崩してまで手を伸ばそうとは思わない。
そう思って違う高校を選んではみたものの、その想いは消えてくれずにくすぶり続けている。
今思えば、自分の気持ちに耐えられずに逃げてしまっただけなのかもしれない。
いつか溢れ出してしまうことを恐れて。
なんやかんやでプレゼント選びが終わり、そろそろ帰る時間になってしまった。
夕焼け色のアスファルトを足取り重く踏みしめる。顔を上げれば、短かった二人だけの旅路の終着点が見えてしまう気がして、うつむきがちに歩いていく。
そんな無駄な抵抗も虚しく、あっさり分かれ道である駅までたどり着いてしまった。
「すぐ、今日はありがとね!」
「私も久しぶりにひよりと会えて嬉しかった。プレゼント喜んでくれるといいね」
「そうだね。じゃあ、またね!」
「うん。また」
遠ざかっていくひよりの背中を見えなくなるギリギリまで追う。人ごみに消えていくひよりを見届けてようやく帰途につくことができた。
今日も私はうまくやれていただろうか。
私の想いは普通ではない。
同性の友達を好きになってしまったのだから。
この想いが報われることがあってはならないのだ。
我慢だ。心の中に必死にしまい込んで蓋をする。
禁断の玉手箱を胸に秘めながら
今日も一人、箱から漏れ出た幻想を夢見るばかり。
これからは、サイドストーリーとして1000~2000文字程度の短編小説を気が向いたときにちょくちょく更新していけたらなと思います。今後とも宜しくお願い致します。