Shuffle more race plus   作:magnumheat

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稟の優しさの理由〜告白

麻弓「遅刻だーっ!!」

 

麻弓は朝から全力疾走でバーベナ学園へと向かっている。

昨夜は稟のことが頭から離れず、そのまま夜更かししてしまい、起きたときにはもう遅刻知るかしないかのデッドラインだった。

 

朝食もとらず朝からのダッシュで何とか学園が見えてきたが、どうやら間に合いそうにない。

 

麻弓「神様、奇跡をお願い!!」

 

麻弓は半分諦めながらもダッシュする。すると、本当に奇跡は起こった。

 

 

Side稟

 

稟「おはよーっす!!」

 

稟はラバーズ達といつも通りに投稿するが、ある生徒がいない。

 

稟「ん?麻弓がいないぞ。」

 

シア「麻弓ちゃん、いつもこの時間教室にいるよね。」

 

楓「確かに珍しいですね。」

 

ネリネ「緑葉様は何かご存知ですか?」

 

樹「いや、生憎俺様も知らないんだ。」

 

それから数分後、

 

ロサ「もうすぐ授業始まるけど、麻弓ちゃんまだ来ないわね。」

 

エーデル「寝坊でもされたのでしょうか?」

 

キキョウ「あー、麻弓ならあり得るかも。」

 

稟「ははは、ん?」

 

稟はふと窓の外を見てみる。

すると、そこには猛ダッシュで校舎に向かう少女の姿が。

 

 

 

稟「・・・・ちょっと待て、あれ麻弓じゃないか。」

 

楓「麻弓ちゃんものすごく走ってます。」

 

樹「まあ、あの様子じゃ間違いなく寝坊だね。」

 

ロサ「けど、距離的にもう間に合わないわよ。」

 

稟「だな。しょうがない、今回だけ助けるか。」

 

稟はそういうと、魔力を発動させて獣族モードになる。

 

エーデル「稟様?お助けするとは?」

 

稟(獣族モード)「麻弓、掴まれ!!」

 

稟は右腕を麻弓のところへ伸ばす。

 

 

Side麻弓

 

麻弓「はぁ、はぁ、待って。ん?」

 

麻弓は一瞬目を疑った。教室の窓から、ダークグレーの獣族の腕がこっちに向かって伸びてきている。

 

稟「麻弓、掴まれ!!」

 

窓の向こうから、いつもよりトーンが低い稟の声が聞こえた。

 

麻弓「土見君!!」

 

麻弓がその手を掴むと、麻弓は教室まで勢いよく引っ張られた。

 

麻弓「ちょ、きゃああああ!?」

 

勢いよく縮む腕に引かれ、飛び込むように教室の窓へとダイブする。

 

 

Side教室

 

稟(獣族モード)「おし、間に合ったな。」

 

麻弓「はぁ、はぁ、ありがと、土見、君。(便利だけど怖いわねあの腕は。)」ゼエハア

 

ギリギリで始業前に間に合った麻弓。

 

サイネリア「さあ、着席しなさい。授業を始めるわ、って、あら?稟君?」

 

サイネリアは獣族モードの稟に驚く。

 

稟(獣族モード)「あ、リア先生、その、これは。」

 

稟は説明しようとするが、

 

サイネリア「・・・・んまぁ!!何てワイルドな稟君♡狼になるなんて、先生の事食べちゃう気?」ポッ

 

土見ラバーズ「ええっ!?」

 

稟「誤解しないでください!!」ツッコミ

 

サイネリア「ジョークよ!でもそんな稟君にもラヴだから♡」ニヤニヤ

 

稟「ありがたいお言葉ですが、授業を始めてください。」ハァ

 

 

Side昼食時

 

稟(獣族モード)「さーて、食べるかな!」

 

シア「はい、稟君。」

 

楓「稟君、どうぞ。」

 

ネリネ「今日は新しいものに挑戦してみました。」

 

キキョウ「沢山食べられる姿っていいわね。」

 

エーデル「稟様、私からもどうぞ。」

 

ロサ「はい、ガブッといってね!!」

 

いつもながらに賑やかだが、そんな中、

 

樹「何て便利な身体を手に入れたんだ稟。今朝のあれだって、麻弓?」

 

麻弓はどこかぼーっとしてる。それどころか、手元の弁当が全く減ってない。

 

プリムラ「麻弓?具合悪いの?」

 

麻弓「はっ!?えと、だ、大丈夫よ、それより今朝はありがと土見君!!」

 

稟(獣族モード)「お、おう。」

 

麻弓は表情を誤魔化すべく、いつもより早いペースでガツガツ弁当を食べる。

 

エーデル「大丈夫ですか、麻弓さん。」

 

麻弓「いや〜、実は寝坊して朝ごはん抜きだったから。」

 

ロサ「ああ、それでいつもより元気なかったんだ。じゃあ麻弓ちゃんもこれどうぞ!!」

 

シア「はい、麻弓ちゃん。」

 

ロサとシアは弁当のおかずを分けてあげる。

 

楓「本当に寝坊だったんですね。」

 

樹「・・・・・・。」

 

友達から食料を分けてもらった麻弓だが、どうやら樹だけは気づいたようである。

 

 

放課後、樹は麻弓を屋上に呼び出す。

 

麻弓「どうしたの緑葉君、いつもならナンパしに行くのに。」

 

樹「友達の悩みを知らんぷりしてまで行くほど野暮じゃないさ、俺様も。」

 

樹は珍しく真面目な調子で話す。

 

樹「何か、自分でもよくわからないような事で悩んでいたりするんじゃないかと思ってね。」

 

麻弓「あ・・・、えと、それは。」

 

樹「一応、幼馴染だからね。ある程度は理解しているよ。」

 

麻弓は全てを見抜かれていると思い、観念して悩みを話すことに。

 

麻弓「・・・・土見君ってさ、誰にでも優しいよね。それにすごくモテモテ。」

 

樹「何を今更、とまあ、確かにそうだが。(悔しいけど。)」

 

麻弓「どうして土見君は、あそこまで優しくしていられるのかなって。」

 

樹「ふむ・・・・、そうだね、このタイミングで話すことじゃないかもしれないけど、それについての決定的な根拠は理解してるよ。」

 

麻弓「根拠?」

 

樹「ああ。覚えてるかい?中学時代の俺様達を。」

 

麻弓「そういえば、土見君や楓と出会うまでは、今みたいに楽しくはなかったわね。」

 

SIDE樹&麻弓の過去

 

麻弓は人間と魔族のハーフである事で、左右の目の色が違うことが理由で幼少期からいじめられていた。

唯一それに気づき、手を差し伸べてくれたのが樹であり、彼もまた人間不振であった事から、周りとうまくいかない同士気が合い、よく遊ぶようになっていた。

 

麻弓は樹の狡猾さから、イジメへの対抗手段として、今のような情報を巧みに扱う術を覚えたのだ。

 

中学時代のある日、樹はクラスの中でも特に悪い連中から目をつけられ、路上で絡まれた上に麻弓の悪口を聞かされた。

食ってかかろうにも人数で不利な事から、引いていたが、そこを、偶然通りかかったのが、稟と楓であり、一部始終を聞いていた稟は激昂してその不良連中に殴りかかったのだ。

 

Side現在

 

麻弓「嘘!?そういえば最近もあったけど、土見君が人を殴るなんて意外よね。」

 

樹「俺様もびっくりしたさ、ま、お陰で全員倒せたけど、実際、稟の方が殴り倒した人数が多いくらいだよ。稟曰く、悪口を言われている人が、自分の大切な人と重なって感じたからキレたんだとさ。」

 

麻弓「大切な人・・・・、それって。」

 

樹「ああ、楓ちゃんの事だよ。いつか話そうとは思ってたんだけどね。楓ちゃんは、今でこそ稟を愛しているけど、以前はその全くの逆さ。」

 

麻弓「嫌ってたって事?」

 

樹「もっと言えば、憎んでいたそうだね、それも、殺意といっても過言じゃないほどに。」

 

麻弓「!?」

 

さらに樹はその詳細を事細かに話した。

 

※詳細については省きます。

 

麻弓は、今の稟と楓の関係からは想像もつかない事実を聞かされ、ショックを受けるも、落ち着いて一つ納得する。

 

 

麻弓「土見君、そうまでして優しさを貫いていたんだ・・・・。」

 

樹「さて、とりあえず話せることは全部話したよ。けど、それで終わりじゃないんだろ麻弓。」

 

麻弓「・・・・。」

 

樹「まあ、言わなくてもわかるけどね。好きなんだろ、稟が。」

 

この段階で、普通なら何いってるのよ!的な返事をするところだが、

 

麻弓「・・・・多分、そうかも。」

 

麻弓はそれから心の中で考えていたことを話し出す。

 

麻弓「土見君、シアちゃん達との結婚が決まってから、凄く変わったり、成長したりしてるじゃない。それを見てて、最初は取り残された感じがしただけなのかと思ってたの、だけど。」

 

樹「稟の優しさに触れているうちに、意識するようになったと、そう言うことだね。」

 

麻弓「・・・う、ん。昨日も怪我を治してくれたし、今朝だって助けてくれた。でも、」

 

息が詰まって最後まで話せないようだ。

 

樹「他のみんながそれを許さないんじゃないかって思ってるわけだね。」

 

麻弓「!!」

 

麻弓は頭の中に土見ラバーズの存在を浮かべる。

 

樹「それなら大丈夫さ。桜ちゃんの例があるだろう。」

 

麻弓「!!」

 

桜の校門での稟への告白のシーンを思い出す。

 

樹「ま、俺様から言うことはもうないしね。あとは麻弓の気持ち次第さ、そろそろ失礼するよ。」

 

樹は真弓を置いて先に屋上を出る。

 

麻弓「・・・・・。」

 

一人取り残された麻弓は、しばらく考え込んで、屋上を出ようとした。だが、それをさせないと言わんばかりのタイミングで稟がやってきた。

 

稟(獣族モード)「あれ、麻弓?」

 

麻弓「つ、つつ、土見君!?」アタフタ

 

麻弓は思わずドギマギする。

 

稟(獣族モード)「どうしたんだ?」

 

麻弓「あ、えと、その、こ、この度は。」

 

喋り方がおかしくなる。

 

稟(獣族モード)「落ち着けって、何か悩みでもあるんじゃないか?」

 

麻弓「・・・・うん、ちょっとこっち来てくれる。」

 

稟(獣族モード)「?」

 

稟は麻弓に歩み寄る、すると、麻弓は不意に稟に抱きつく。

 

稟(獣族モード)「!?」

 

麻弓「土見君、いつも友達でいてくれて、ありがとう。だけど、なんだか、もっと近くに居たくなっちゃったって言うか・・・

楓やシアちゃん達が羨ましいって言うか・・・・。」

 

稟(獣族モード)「・・・・・・麻弓。」

 

麻弓は意を決して言い放つ。

 

麻弓「この麻弓=タイム、土見君が、好きなのですよ・・・・。」

 

稟(獣族モード)「えっ!?」

 

稟はあまりの出来事に驚いた。

 

麻弓「あたし、変かな、変だよね。こんなのガラじゃないし。」

 

稟(獣族モード)「・・・・いや、そんな事は絶対ない。麻弓だって、綺麗だぞ。」

 

稟はぎゅっと麻弓を抱きしめる。

 

麻弓「そ、そう?えへへ、嬉しいのですよ。」

 

麻弓は涙を流しながら笑顔になる。

 

麻弓「じゃ、じゃあさ、これからは、楓みたいに、稟君って呼んでもいい?」

 

稟(獣族モード)「ああ!俺だけ名前で呼ぶのもアレだしな。」

 

麻弓「えへへ、これからもずっとよろしくなのですよ、稟君♡」

 

麻弓は稟の頰にキスをした。その途端、屋上のドアがバント空いた。

 

ラバーズ一同「おめでとう(ございます)!!!」

 

稟(獣族モード)・麻弓「!?」

 

突然のことにびっくり仰天な二人だ。

 

楓「麻弓ちゃん、私達はこれからもずっと一緒ですよ。」

 

ネリネ「はい、麻弓さんは楽しさに欠かせませんから。」

 

エーデル「稟様となら絶対に幸せになれますわ、麻弓さん!」

 

ツボミ「麻弓おねーさん、これからもよろしくです!」

 

プリムラ「私も、麻弓にいてほしい!」

 

キキョウ「まさか麻弓まで恋するなんてね、さすが稟だわ。」

 

ロサ「麻弓ちゃんも、自信持っていいのよ!!」

 

樹「そうそう、胸以外はあぶらっ!?」

 

樹が胸のことを言った瞬間、稟が思い切り顔を殴り、そのまま腕を伸ばして拳で壁にめり込ませる。

 

樹「ぐ、何をするんだい稟・・・・。」ピクピク

 

稟(獣族モード)「悪い、今お前の顔にハエがいたからな。」

 

鋭い目つきで樹を横目で睨む稟。

 

麻弓「・・・・凄くかっこいいのですよ稟君。」

 

シア「麻弓ちゃん、一緒に稟君と結婚しようね!!」

 

麻弓「け、けけ、結婚!稟君の、妻・・・・・!!」プシューッ

 

麻弓は一気に赤くなる。

 

稟(獣族モード)「それじゃあ、フローラに行こうぜ、樹の奢りで。」

 

樹「おい稟、ちょっとまっ、」

 

一同「・・・・。」ジトー

 

樹「・・・・たくもって、俺様が奢らせていただきます。」

 

麻弓「緑葉君太っ腹!ちょっとだけ見直したわ。」ニヤニヤ

 

樹「くうう、稟、この借りはいつか必ず返させてもらうよ!」

 

こうして、みんなでフローラに行き、特に麻弓とエーデルのパフェ大量食いにより、樹の今月分の小遣いをゼロにした。

 

ちなみに、フローラには偶然桜、亜沙、カレハもいたので、稟は麻弓のラバーズ入りについて色々質問責めに。

 

亜沙「さっすがワイルド稟ちゃん!留まるところを知らないわねえ!どうやったらそこまでの事が出来るのかしら?」

 

稟(獣族モード)「いやその、そう言われても。」

 

麻弓「でもでも〜、稟君の美少女ハンティングは世界一なのですよ〜。」

 

麻弓は稟の尻尾にべったりだ。

 

カレハ「ままままぁ、ワイルド稟さんの武勇伝ですわ♡!」

 

稟(獣族モード)「・・・まあ、この格好じゃ言い返せない、かもな。」

 

改めて自分の恵まれた状況に困惑する稟であった。


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