咲-Saki-二度目の人生は雀士として 作:468(ヨルハ)
今回の連続投稿はこれが最後です。
…というより今後連続投稿はしないと思います。プロットがないので。
今回から本格的に咲-Saki-の世界での話になります。
最初のヒロインは一体だれなのか!?
それでは、本編へどうぞ。
第1局 自覚
転生しました。
いや、ネット小説とかでよくある神様に会って特典もらって異世界に転生とかではないから厳密にいえば違うのかもしれないけど。もしかしたらかつての記憶を持った魂の生まれ変わり…なんて思ってみたり。
それよりまずはこの世界でのぼくの状況を整理してみようと思う。そうしないとこれからちゃんと生きていけないと思うから。
ぼくの名前は「向井遼太」、奇しくも思い出した記憶の僕と全く同じ名前だった。
歳は3歳、どうりでこんなに小さいわけだね。
そして今いる場所なんだけど…何とビックリフランスだった。
ちなみにもっと詳しく言うとフランスにある病院の個室のベッドに座っている。
まああんな髪色と瞳だったから純粋な日本人だとは思ってなかったけど、祖母がフランス人の日本人クォーターみたい。おかげでかは分からないけどフランス語は読み書きもある程度分かるみたい。
誰かに聞いたわけではなく"知ってた"。
どうやらしっかりとこの世界で生きてきたぼくの記憶もある…というよりぼくが前世の僕の記憶や知識を思い出したって言ったほうが近いかも。
でも"ぼく"と"僕"とで全く変わらないものが一つあったのにはおどろいた。
それは、『人とのつながりを大事にしたい』って思ってたってこと。
身体年齢が3歳の子どもが何を言ってるのかって自分でも思うけどね。
多分理屈じゃないんだと思ってる。
なにか特別な理由があったわけじゃなくて、ただただ当たり前のようにそう思ってたし、言ってしまえばそう思っていたことすら意識していなかった。
向井遼太という存在を形作る上での重要なアイデンティティ。
心のさらに奥、魂にまで刻み込まれた想いと願い。
だからこそ、"ぼく"と"僕"は同じ魂を持った存在なんだと思う。ちょっと厨二くさいかな?
話は変わってこの世界のことだ。
どうやらこの世界は21世紀、どうやら前世と大して変わらない時間らしい。
だが大きく違うことは、麻雀が老若男女に広く浸透した世界だということ。
世界の麻雀競技人口は1億人という大台を越しており、世界中でプロ・アマチュア問わず大規模な大会が毎年開催されている。
3人家族のぼくの家にも自動の麻雀卓があることからその人気は押して知るべしだろう。
あと前世の僕の世界と違うところは…その……女性の貞操観念がおかしいんだ。間違いなく。
まだぼくは3歳で身の回りの女性というのも親を除けば近所の人か一つ上の幼馴染しかいないから比較しきれない部分もあるけど、まずぼくに対する女性のスキンシップが激しい。
まあこれは今のぼくが自分で言うのもなんだけど子どもだから理解できる。男として見られてないってことだから。今思うといろいろ恥ずかしいものはあるけど。
でも明らかに服装がおかしい!特に若い人!
スカートも短いし肌の露出が多い服を着た人がやけに多いしで、一部の人に関しては痴女か露出狂って言われてもおかしくないほどだ。
そしてなによりもそれを見た男性が特に何も思ってないように見えることが決定的である。
ぼくの記憶にある人は大体そうだったからこれがこの世界の常識なんだよね…僕の常識と違うからこれから大変そうだな…って悲観するしかないんだけど
そんなことを考えていると、ドアが開いて誰かが入ってくる。
「…!遼太!目が覚めたのね!」
「……おかあさん」
安堵した声で入ってきたのは気を失う直前で見た若々しく美しい女性。
遼太はこの人を知っていた。より正確にはこの世界の、という冠詞がつくが。
この女性は紛れもなく遼太の母親であり、遼太のあまりの様子から病院に連れてきたのである。
そしてその後ろにはもう一人、遼太よりわずかに背が高いくらいの女の子が目に大粒の涙をためてこちらに走り寄ってきた。
「遼太くん!遼太くぅん!!!」
雀明華、それが彼女の名前である。
遼太と少し似ているシルバーグレイの髪は走るごとに波打ち、涙をためたルビーを彷彿とさせる瞳もまた遼太のものと酷似しており、遠目から並んでみたら姉弟に見られることもあるが、二人の関係は家が隣にある幼馴染である。
ただ明華の家は母子家庭であり、その母親も仕事上家にいないことがあるため、よく遼太の家に来ては寝食を共にすることも多かったので二人にとってお互いの存在はただの幼馴染では片付けられないほどの関係であるのだが。
そんな風に姉弟ではないが姉弟のように育てられてきた二人。
当然明華は心配するし不安になる、遼太も同じ立場だったら同様だっただろう。
「…おねえ、ちゃん」
「ひっく…こわかった……こわかったよぉ………」
「……ごめん、なさい。しんぱいかけて。もう、だいじょうぶだから」
遼太はそう言うとゆっくりと明華を抱きしめる。
体が密着し、温かく柔らかい感触と、鼻腔をくすぐる女の子特有の甘い香りが遼太を気恥ずかしくさせ自然と顔が赤くなるが、それでも明華を放すことなく苦しくならない程度にさらに抱きしめる力を強める。
明華から「んっ…」とわずかに声が漏れる。
遼太は明華の頭をゆっくり撫でながら、安心させるように言葉を紡ぐ。
「だいじょうぶ…ぼくは、ここにいるから。」
「……うん………うん…!」
明華は泣きながらもその顔にはたしかな笑顔があった。
遼太の母から事の顛末を聞いたときは幼いながら生きた気がしなかったと思っていた。
家族みたいに大切に想っている彼は、一人で寂しいときにいつも一緒にいてくれた。
声をかけてくれた。
明華に、暖かさをくれた。
だからこそまた一人になるのかとどうしようもない不安に駆られて、遼太の母の車に一緒に乗って病院に急行して、病室で遼太を見つけたときはいろんな感情が爆発して何も考えられなかった。
ただただ遼太に触れたくて、その暖かさを感じたくて、声を聴きたくて、そんな純粋な願いや思いだけが頭を支配した。
遼太はそれに応えてくれた、抱きしめてくれて、暖かさをくれて、たまっていた不安を一瞬で吹き飛ばしてしまうくらい優しく声をかけて安心させてくれた。
ーーー……だいすき…!
このとき明華が遼太に抱いた想いが家族に向けるものではなく一人の男の子に向けたものということに気づくのは、もう少しだけ後の話である。
明華ちゃんカワイイ…!
ということでファーストヒロインは『風神』こと雀明華でした!
個人的にトップクラスで好きなキャラなので作者権限で最初に登場させました。
明華の父親がいつ亡くなったのか分からなかったのでこちらで勝手に想像して書きました。
あと、遼太くんのセリフが平仮名なのは、体がまだ子どもなのでハッキリと声を出す力がないためです。
貞操逆転は一応タグ付けしますが程度としては結構軽いものだと考えています。
そこまで大きく変わることはないと思いますのであまり気にせず読んでいただけると嬉しいです。
ていうか咲-Saki-の世界がそもそも貞操逆転してそうですよね。
主に服装的な意味で。
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
ご意見、ご感想、誤字脱字報告もお待ちしております。
追記)8/5誤字報告を受けたので修正いたしました。
報告してくださった方、ありがとうございます!