咲-Saki-二度目の人生は雀士として   作:468(ヨルハ)

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早めに出せると言っておきながらこの遅さですよ…
ということでお待たせいたしました。
今話の内容は半分以上麻雀です!
知識が乏しいなりに書いたので軽い気持ちで見ていただけると幸いです。



それでは、本編へどうぞ。


第4局 開花

 全員の自己紹介が一区切りつくと、何か思いついたのか霞がポンッと手をたたく。

 

 

 

「そうだわ。せっかく雀卓もあるんだし遼太くんとの交流ついでに対局してみましょうか。」

「あ、そういえばみなさんもマージャンできるんですね。」

「ええ、力の制御をする修行の一環としてね。」

「遼太もできる…?」

「はい、だいじょうぶですよ。」

「ならよかったのですよー。」

 

 

 

 やることが決まったのはいいが、ここにいるのはぼくを含めて6人。

 最終的に巴さんと小蒔さんが見学になり、雀卓についたぼくの後ろに座った。

 あまり長い時間はできないので、今回行うのは東風戦、つまり東一局から東四局の4局で終わる形式である。

 ちなみに席は親が初美さん、それから順に霞さん、春さん、ぼくという並びになった。

 配牌が終わってまずは東一局、ぼくは北家ではじまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツモ。2000・4000ね。」

 

 

 

 東一局、最初に上がったのは霞で満貫のツモ和了り。

 場は切り替わり、霞が親、そして、()()()()()での東二局が始まった。

 

 

 

ーーーん?なんだろう、この雰囲気…

 

 

 

 違和感に気づいたのは東二局が始まってすぐだった。

 霞さんと春さんがやけに初美さんを注視している。

 といっても普通の人から見たらほんの微々たる差だろうが、対局相手のことををよく見ていたぼくには割とすぐ気づくことができた。

 ぼくにとっては対局中の相手の観察というのは麻雀において重要なファクターだと思っている。

 なにも相手のことを見るというのは相手の視線だけに限らない。

 ツモった牌を見たときの相手の表情、打牌や理牌のクセ、得意としている戦術や役、それらを行うための必然的行動などなど、他にも挙げればあるが、全てとはいかずとも相手を見てそれらを見抜くことができたなら、それは対局において相手よりも優位に立つための要素となりうる。

 まあまだ東二局のはじめという段階で分かっていることなんてほとんどないのだが、少なくとも分かっているのは、この東二局、大きく動くのは間違いなく初美さんだということだ。

 特定の条件のときだけ警戒しているということは明華おねえちゃんみたいなオカルト持ちの可能性も十分にある。

 

ーーーどういう能力かは分からないけど、この局の初美さんは要警戒!

 

 そう考えながらぼくの番が来て山牌からツモる。

 少しだけ逡巡して、切った牌は{北}。

 瞬間、初美さんの口角が上がった。

 

 

 

「ポン!」

「!」

 

 

 

 ぼくが{北}を切った瞬間に初美さんに鳴かれる。

 タイムラグが全くなかったから、おそらく{北}がきたら元から鳴くつもりだったのか。

 警戒していた初美さんが行動したことで一瞬動揺したが、すぐに表情を戻す。

 初美さんの手牌から感じるプレッシャーは弱い、おそらくまだ聴牌すらしていないはず。

 

 …無意識に使っていたけど、ぼくのこれもオカルトの一種なのかな…?

 手牌から感じるプレッシャーでおおよその聴牌気配が分かる、この世界に来てから全く意識せず自然に使ってたけど、よくよく考えれば十分これもオカルトだよね、前世ではこんなことできなかったし。

 

 

 

「それもポンですよー!」

「あら。」

「……」

 

 

 

 数巡後、僕が切った{東}を初美さんが再び鳴いた。

 そしてここで反応したのが霞さんと春さん、まあ春さんに関してはわずかに視線を初美さんに向けて少し眉をひそめたくらいだったけど。

 前から初美さんと対局している二人ならどういう能力かは知っているはず。

 あくまで推測に過ぎないが、一回目の{北}ではなく二回目の{東}で反応したということはこの二つを鳴くこと、もしくは{東}を鳴くことで発動する能力だと一応の仮定はできる。

 

ーーー1回目に鳴く直前に初美さんの口角が上がったから前者の可能性が高いか…?

 

 どちらにしても逆に言えばこれでおそらく能力発動の条件が整ってしまったとも仮定できてしまうわけだけど。

 その証拠に初美さんはさっきよりも笑みを浮かべているし、霞さんと春さんはより警戒を強めている。

 そして巡を追うごとに初美さんの手牌から感じるプレッシャーが桁違いに上がっていくのを感じる。

 ここまでの圧力はあの時の明華おねえちゃんと同じくらいだ。

 つまりは役満クラス、しかも今の初美さんのツモで、感じた限りもう聴牌までいっている。

 そしてここにきて動いたのは意外にも春さんだった。

 

 

 

「ポン。」

「チー。」

 

 

 

 ここにきての二副露、初美さんと幾度も対局している二人なら今がどういう状況かも知っているはず。

 副露するということは順子や刻子を早く作れるが、それだけ手牌を晒すと同時に自由にできる牌が少なくなり危険牌を出す可能性が高くなる。

 すなわち、攻めには使えど防御や逃げの場合で使うことは基本的にまずない。

 そう思って春さんを見るとちょうど目が合う。

 

ーーー……なるほど、ね。

 

 春さんがやろうとしていることを察したぼくは春さんの捨牌と副露を再確認する。

 そして、牌を切る。

 

 

 

「ポン。」

 

 

 

 予想どおり。

 なら、ここで切るのは…

 

 

 

「ロン。3900。」

「はい。」

 

 

 

 ぼくが春さんに振り込み、点棒を渡す。

 だけどぼくにとってはこれは想定していたことだった、いや、ドラが絡まって予想より痛かったけど。

 さっきの春さんの和了りはぼくとのコンビプレーである。

 春さんと目があった後、春さんの聴牌気配を見てみたら感じるプレッシャーこそ小さかったが既に聴牌に近い感じだった。

 捨牌と副露を再確認して狙いが読めたからワザと放銃したのだ。

 まあ頭にドラが被って少し痛かったけど、役満をくらうよりは安い代償だろう。

 初美さんを見てみると、分かりやすくむくれていた。

 気持ちは分かるがこれも勝負、気を取り直して東三局に入っていった。

 

 

 

「あら、ツモ。1300・2600。」

 

 

 

 この局の和了りはまた霞だった。

 遼太は東一局からこの東三局までツモの調子が全くと言っていいほど上がらず先に和了られる結果に。

 それでも幾度もつかまされた危険牌を切らず霞からの出和了りをかわしたのはさすがといったところか。

 現在オーラスを残して点数は次のようになった。

 

 

霞  38200

春  24300

初美 19700

遼太 17800

 

 

 春さんに振り込んだのは承知の上だから仕方ないけど、それ以外でもツモ和了りで削られてここまで毎局点数を落としている。

 トップの霞さんとの点差は実に20000点オーバー。

 オーラスはぼくが親だから満貫直撃、親跳ツモで一発逆転、連荘すればその限りではないけど。

 でもここまでツモの調子はかなり悪い。

 このままなら先に和了られて負けるのは自明の理。

 

 

ーーー負けたくない!

 

 

 遼太がそう強く思った瞬間、

 

 

 

ヒュウウゥッーーー

 

 

 

 外気から隔絶されているはずのこの部屋に、風が吹き始めた。

 

 

 

「………!」

「風、ですかー?」

「神の力とは違う……これは…?」

 

 

 

 突然吹き始めた風は徐々に指向性を持って遼太の周りに集まりだし、白銀の髪や、服を静かに揺らす。

 小蒔や六女仙の面々が困惑の表情を隠せないなか、遼太は驚きの中に心地よい感情が溢れ出し、かすかに笑顔を浮かべてその風を感じ取っていた。

 

 

ーーー明華おねえちゃん…!

 

 

 これは、遼太と明華との一つの絆の形。

 

 『人とのつながりを大切にする』

 

 魂に刻み込まれた遼太の想いと願い。

 そしてそれと同じくらい遼太のことを想った明華。

 そんな二人の間だからこそ発現した奇跡。

 誰に言われるでもなく、まるで天啓が舞い降りたように遼太は自分に起こった奇跡を理解した。

 

 

 絆を深めた者と同質の能力を得る能力。

 

 

 言葉にするなら遼太が得たオカルト能力はそう呼べるものだろう。

 同質といっても全く同じものではなく、よりその能力を昇華させたものなのだが。

 まるで遼太のためにあるような力。

 いや、遼太があの想いと願いを心から信じていたからこそこの能力が発現したのだろう。

 

 

 嬉しくなった。

 オカルト能力を得たことじゃない。

 『人とのつながり』は本当に誰かの力になるのだと、たしかな形としてこの能力が証明してくれたように感じたから。

 自分が信じたことは、この世界でも間違いではなかったのだと、そう言ってくれたかのように思えたから。

 

 

 

「さあ、いこう…明華おねえちゃん。」

 

 

 

 風を纏った遼太は、そう言うと閉じていたルビーの瞳をゆっくり開く。

 その瞬間、一筋の雷光が瞳を走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしていよいよ始まった東四局(オーラス)

 配牌が終わり遼太は自分の手牌を見る。

 もうほとんど確信してたのか遼太は顔に出すことはなかったが、()()を見て後ろで見ていた巴と小蒔がわずかに息を呑む。

 

(これは、偶然…?)

(いえ、違う……)

 

 遼太の手牌にあったのは遼太の自風牌であり場風牌でもある{東}が3枚。

 普通ならただの偶然で済ませるものだが、先程のあの現象を見た後の二人ではどうしても関連性があると思わざるを得なかった。

 遼太に起きた現象に加えて、そんな二人の様子を見たのか対局している3人も遼太に対する警戒を強める。

 遼太たちのいる広間には風がなびく音と牌同士がぶつかる音のみが響く。

 勝負が決したのは10巡目。

 風が、よりいっそう強く吹き荒れた。

 

 

 

「カン!」

「…!なんて力…」

「まるで嵐…」

 

 

 

 遼太の手牌から晒されたのは4枚の{東}。

 王牌からとった牌を確認すると、吹き荒れる風とは裏腹にトンッと優しくその牌を置き手牌を開く。

 

 

 

「ツモ!嶺上開花、自摸、三暗刻、混一、ダブ東。8000オール!」

 

 

 

 親倍をツモって遼太の逆転一位で対局は終了となった。

 遼太はフゥッ、っと一つ息をつくと未だに唖然としてる小蒔たちに向かって一礼した。

 

 

 

「ありがとうございました!」

「!ええ、お疲れ様。」

「おつかれですよー。」

「おつかれ…」

 

 

 

 最初に我に返った霞を皮切りに対局していた3人もそれぞれ挨拶を交わす。

 そろそろ遼太が帰る時間が近づいてきたので後ろで見学していた巴と小蒔も輪に加わって雀卓を片付け始める。

 そしてちょうど片付けが終わったタイミングで先に別れた遼太の母親と老齢の女性が広間に入ってきた。

 

 

 

「遼太、おまたせ。」

「おかあさん。」

「顔合わせは済んだみたいですね。」

「はい、だいじょうぶです。」

「うん。それじゃあ私たちは帰りましょうか。」

 

 

 

 遼太は立ち上がると母親の元に向かう。

 そして最後に霞たちの方を振り向くと、それぞれ違いはあれどみな一様に名残惜しそうな表情をしていた。

 それを見て遼太は彼女たちと同様にせっかくできた新しいつながりの人たちと別れる名残惜しい気持ちになり、同時にそう思ってくれているのだと嬉しい気持ちにもなった。

 

 

 

「きょうは、おわかれですね。」

「そうね、少し寂しいものだけど…」

「六女仙のみんな以外で同世代の人とせっかく知り合えたのに…」

「もっといろんなお話したかったですよー。」

 

 

 

 それは当然遼太も同じ気持ちだ。

 だからこそ、こう言葉を紡ぐ。

 

 

 

「でも、またあえますから!」

「!…そうよね。また会えるわ。」

「ん、定期的にくるって聞いてた。」

「はい!だから、またこんど、です!」

「はい、また今度ですね!」

「楽しみにしてるわね。」

 

 

 

 そう会話を締めると、今度こそ笑顔で遼太たちは別れていった。




遼太くんの能力開花!
ありきたりな能力かもしれませんが生まれや生き方からやっぱりこの能力が一番似合うかなと思いますね。
当然能力の対象は明華だけではないので遼太くんの能力は今後強くなっていくかと思われます。



それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました!
ご意見、ご感想、誤字脱字報告もお待ちしております。



評価ありがとうございます!
☆10
AinScarletさん
ヒロケンさん
えりっくさん
ポンポン 丸さん

☆9
快楽さん
ヒキオタ神さん
oiちゃんさん
ティアナ000782さん



追記…
誤字修正いたしました。
報告してくださったRagnarokさん、オタでなにが悪いさん、ありがとうございました!
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