二人のビーストテイマー~インフィニティ・モーメント&ホロウ・フラグメントVer~ 作:ほにゃー
階段を上がり、76層の扉をくぐると、俺たちが最初に見たのは草原だった。
そして、その先には76層の主街区と思われる街の門がある。
「ここが76層か………75層の階段を上がったらログアウトできるかもって、ちょっと期待してたんだけどな………」
「メニュー画面のログアウトの文字も、変わらず使用不能だな」
アルブスがメニュー画面のログアウトボタンをタップしながら落胆する。
アルブスだけじゃない、他の攻略組プレイヤーも落胆している。
「いや、問題はログアウトが未だにできないこともだが、それ以上に、もっとやばい問題があるぞ」
アヤメさんがそう言って、自身の槍を見つめる。
「どうしたんですか?」
「俺の槍、アイテム名が文字化けしてるんだ」
「え?」
「それどころか、性能もランクダウンしてる。攻略するにあたって支障はないだろうが、厄介だ」
まさかと思い、俺も自分の大太刀を調べると、《大■刀・白_秋水-龍-》となっていた。
性能もだ。
《エクソロサイス》よりいい性能だったのが、今じゃ《エクソロサイス》と同等になっている。
更に《エクソロサイス》も文字化けし、性能が下がってる。
「そんな……こんなことって………」
「大変なのはそれだけじゃないみたいだ」
すると、キリトさんが神妙な面持ちで、やってくる。
「スキルを見てみろ」
「スキル?……ってなんじゃこりゃ!?」
クラインさんが声を上げる。
それもそうだ。
何故なら、俺たちが二年と言う時間をかけて鍛え上げたスキルは、軒並み下がっていたり、いくつかロストしてるのがあった。
「俺が必死に鍛え上げたスキルが………!」
「おい!転移結晶の方にも問題が発生だ!下の層に転移が出来なくなってる!」
「なんだって!?」
「で、でも!転移が出来なくても、直接階段使って降りれば……!」
「無理だ。そもそも、転移結晶の不具合が見つかったのも、75層のボス部屋の扉が一向に開かないのに不安を感じて、使ったのが始まりだ」
「そんな……!ねぐらに色々置いてきちまったのに、取りに戻れねぇじゃねーかよ、チクショー!」
クラインさんはそう叫ぶと、座り込む。
徐々に攻略組内にも不安が広がり、全員が騒ぎ出す。
そんな時だった。
「皆、聞いてくれ!」
声を上げたのは、キリトさんだった。
「スキルの消失や、ログアウトの不可、アイテムの性能ダウンだったりと不安はあるかもしれないが、このまま待っても事態は好転しない。むしろ、これ以上厄介な不具合が起きる前に、前へ進むべきだ!」
「で、でも、まだ後24層もあるんだぞ………」
「確かに、まだ24層ある。だが、俺たちはこのゲームの管理者だったヒースクリフ、茅場昌彦を倒した。あとは、システムが動かしてるモンスターだけだ。そいつらよりも、茅場は何倍も強かった!俺達なら、残り24層も攻略できる!」
「……そうだよな。このままただ落ち込んでるより、ぞっちの方が何倍もマシだな!」
キリトさんの言葉に、クラインさんも立ち上がる。
「ま、キリトに賛成だな。幸い、レベルは無事なんだ。スキルを鍛えるのは大変かもしれんが、攻略する分にはまだマシな方だろ」
アヤメさんも、槍を装備し直し笑う。
「とりあえずは、転移門のアクティベートだな。さっさと行こうぜ」
アルブスはそう言い、主街区へと向かう。
その後に、他の攻略組も主街区へと向かい、徐々に人が居なくなる。
「はぁ~、ログアウトできると思ったのにな」
俺は頭を掻いて、溜息をもらす。
「仕方ないよ。でも。レインが無事で、本当に良かった」
隣にいたシリカが、俺の手を握ってそう言ってくる。
「でもさ……シリカを現実世界に帰してやれるって思ってたのに………ごめん」
「何謝ってるのさ」
そう言って、シリカはいつもの笑顔で言う。
「確かに、まだ帰れないってのは悲しいけどさ。でも、まだこうしてレインと一緒に居られる。それが、なんだが嬉しいなって思っちゃうんだ」
「シリカ………」
「ほら!早く街に行って、装備とかアイテムの補充とか色々しないと!」
「……ああ、そうだな」
お互いに手を繋いだまま歩き出し、主街区へと向かう。
色々不安もあるが、とりあえず今は、目の前のことに集中するか……………